映画・テレビ

2020/05/28

超人の面白テレビ観賞 NHK朝ドラ「エール」4

ここに名古屋の知り合いが送ってきた5月9日付『中日新聞』の夕刊がある。トップ記事が古関のエール。朝ドラで知られることになった古関裕而の妻の出身は豊橋市。愛知県をはじめ三重、岐阜県の中部圏を代表する地元紙が早速肖り取り上げた格好のような気がする。しかし、少し読んでみると古関裕而も様々な作曲をしてたことがよく理解できる。愛知県民歌をはじめ、豊橋市歌、名古屋銀行社歌、近鉄百貨店社歌、豊田トヨペット社歌、三重交通社歌、躍進四日市歌それに岐阜プラスチック工業社歌等々多岐にわたっている。『古関裕而―流行作曲家と激動の昭和』(中公新書)の著者刑部芳則日大准教授は、「クラシックの素養と流行歌で培った聴きやすい曲調が社歌や自治体の歌と相性が良かったため、依頼されるのが多かったのではないか」とコメントしている。生涯5000曲以上作曲しているから驚きだ(追記。5月27日付毎日新聞で見つけた。「古関さんはクラシックのほかに、日本古来の民謡や国内外各地に根ざした音楽に強い興味を持ち、深く勉強していました。曲の根底には日本人のもともとの気質に合うようなメロディーや和音があるのではないでしょうか」(古関裕而記念館の学芸員のコメント) 新聞記事の詳細を読むはこちら→
古関裕而の新聞記事.pdf)。

福島県の偉人に伝染病の研究で有名な野口英世がいるが(筆者は小学5年か6年の学芸会で野口英世の幼少期を演らされた)、彼は医学研究では優れた業績を残しても人間的には問題があったようだ。その点同じ偉人でも古関裕而は家族思いの真面目な人だったか。前にこのコラムで言及した「ビックショー」を見た限りではそう思った。しかし、戦争讃歌の曲も作ったが・・・。

今朝(2020年5月27日)の「エール」は、失恋後に幼なじみから詞の提供があって、裕一が曲をつけた「福島行進曲」。初めてのレコード化だ。コロンブスレコードが用意した女性歌手によってレコーディング、指揮はもちろん裕一。歌詞はテロップで流れた。妻音の喜びようは――。
余談だが、コロナ禍でNHK初の朝ドラがロケ中断を余儀なくされたため、放送は6月26日までになり、それ以後はしばらく再放送で凌ぐそうだ。最近のNHKは大河ドラマといい、今度の朝ドラといい、ついていない感じだ。厄払いしないといけないかも(笑)

2020/05/24

超人の面白テレビ観賞 NHK朝ドラ「エール」3

朝ドラで筆者がほぼ毎日見ていたのは第90回あたりからだから6年くらい前か。第90回「花とアン」(女性翻訳家の話)、第91回「マッサン」(日本のウィスキー生みの親物語)、第92回「まれ」(女性ケーキ職人物語)、第93回「あさがきた」(大阪商人物語)、第94回「とと姉ちゃん」(花森安治物語)、第95回「びっぴんさん」(神戸の洋服屋物語)、第96回「ひよっこ」(茨城の田舎娘東京奮戦記)、第97回「わろてんか」(吉本せい物語)、第98回「半分、青い」(岐阜・東京・岐阜で繰り広げられる男女の物語)、第99回「まんぷく」(カップ麺創業者物語)、第100回「夏空」(北海道開拓民の話)、第101回「スカーレット」(信楽焼女性陶芸家物語)。出社前の14分、始めは8時からの視聴だったが、この時間帯だと慌ただしくてBSの7時半から始まる時間帯に切り替えて現在に至っている。


ところで、知り合いがラインで送ってくれた朝ドラ「エール」の撮影場所の福島市民家園。知り合いが散歩中に撮影したものだ。

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超人の面白テレビ観賞 NHK朝ドラ「エール」2

朝ドラ「エール」のはじめの頃は、唐沢寿明扮する音楽好きの父親の福島弁がオモロかった。キャラが立った。しかも、あまり商売っけがなく趣味人風。当時家に蓄音機を持っていたところは少なかったはず。筆者の実家の2階には蓄音機があってコロンビアのレコードもあった。昭和31、2年頃だったか。それより30年前に田舎の中通りの福島に蓄音機があったのだからすごい。高校ではハーモニカを吹く変わり者で作曲も。主人公の才能を認めた音楽教師や友人との出会い、半ば諦めかけて叔父の銀行に赴き行員生活していた時に(風間杜夫扮する頑固な叔父の経営者や愉快な銀行仲間がこの回を盛り上げた)、新聞記者になっていた友人の勧めでイギリスの国際作曲賞に応募(応募作は舞踏組曲「竹取物語」ほか)、二等を獲得するも、主人公の実家の呉服屋が傾き自分の進路が危ぶまれた。主人公の優柔不断さもあって、イギリスから二等獲得ご褒美の留学取り消しの手紙が。不況のせいで資金を出せないという知らせ。一方、豊橋の音の家では、主人公の一ファンだった音が持ち前の行動力で裕一の音楽の才能を活かしてくれるよう母親や兄裕一に替わって呉服屋を継いだ弟などの説得ができず(実家が大変な時期に何を夢見ているのかと取り合ってくれない)、さっさと豊橋へ帰ってしまう。やがて音は姉と東京で学生生活を送る。そこへ音楽に理解がある父親に見送られて主人公が転がり込む。音の孤軍奮闘の甲斐あって主人公はコロンブスの専属作曲家になる。二人で借家住まいもするが、西洋音楽で学んだ者が、コロンブスレコード会社のディレクター(古田新太。はまり役に見えたが)からいきなり流行歌を作れと言われて主人公は打ちのめされ、尊敬する小山田先生(志村けん)にも相手にされない。そんななかライバルの木枯正人(野田洋次郎)と出会い、ある時など嫌気がさしていた木枯正人から銀座のカフェに誘われる。流行歌はこういうところで社会観察して出来上がると木枯がギターを奏でながら「影を慕いて」を唄ってみせる。これがカフェの女やお客さんにウケる。酔って帰った翌朝に裕一は、カフェの女に口紅をつけられたとは気づかずに昨日のシャツを着て朝食に臨んだが、妻音に見つかり夫婦喧嘩に発展、ドタバタ劇が繰り広げられる(朝から夫婦喧嘩を見せられてはたまんないと苦情のメールかあったとか、なかったとか)。
唐沢寿明の演技と福島弁、風間杜夫の明治気質で威厳を盛り込んだ演技、薬師丸ひろ子の包容力のある演技、ヒロインの野性的な顔立ちと大胆な演技、バイプレーたちのコミカルな演技など視聴者を惹きつける演出が目立った。筆者的には主人公裕一とヒロイン音の食卓に出る納豆と八丁味噌の対比がチョー面白い。土地柄、人柄が出ていたような気がする。そうそう、食物で県民性を言い合う番組があったっけ。そんな景色を思い出させてくれるシーンだ。

2020/05/23

超人の面白テレビ観賞 NHK朝ドラ「エール」

作曲家古関裕而といえば、福島駅東口にあるピアノを弾いているモニュメントがよく知られている。いつだったか知り合いの先生宅に行く途中、パチリと写真に収めたことがあった。このコラムのために今回スマホから取り出さそうとしたが見つからなかった。消去してしまったのかも(笑)。筆者的には萩本欽一司会の歌番組で名・迷審査員で丸顔のおじいちゃんのイメージしかない人だが、暖かみのある短いコメントも面白かったと記憶する。もう大分前の話だが、先々週の日曜日だったか、NHKはこの朝ドラ「エール」を盛り上げるため、NHKのアーカイブスから周辺資料を取り出して再放送していた。その一つに萩本欽一氏がリモートでゲスト出演し、「ビックショー 古関裕一」を見ながらコメントしていたのがあった。生き証人がいたのである。
古関裕而をモデルにした朝ドラ「エール」が好評だ。平均視聴率20%前半台をキープしている。時々ドタバタ劇が展開されコミカルなところが受けているのかも知れない。第40回は「紺碧の空」。主人公裕一(窪田正孝。心の動きをうまく取り入れた好感の持てる演技を披露している)の妻音(二階堂ふみ。野生的な顔立ちで思い切りのいい演技が冴える)が突然の「家出」をした先は馬具製造販売の豊橋の実家。姉は軍人と結ばれていたという家庭の幸せそうな変化を喜んでいるのもつかの間、実家から戻り音楽校に復帰、ライバルに刺激されて闘志を燃やす。裕一がコロンブスレコード会社の専属作曲家になっても一枚のレコードすら出せずにいるのをみかねて、またしても行動派の妻音の妙案で作曲できるいい方向に急展開する。音に仕込まれた早稲田の応援団長田中(三浦貫大。三浦友和・百恵夫妻の次男。体育会系らしい演技をしている)の“泣かせる芝居”に心動かされて一気に曲を書き上げる。尊敬する小山田先生(志村けん。渋い演技で存在感をアピール。作曲家山田耕筰がモデル)にも突き放されていた・・・。しかし、ライバルの専属作曲家木枯正人(野田洋次郎。古賀政男とすぐにわかるネーミングが可笑しい。少し屈折した男を演じている)とは彼が レコードを出して売れるようになっても、彼は何かと裕一を気にかけてくれる包容力のある人。早稲田の応援歌の作詞に曲をつける作業を一晩で仕上げ、早慶戦で披露、試合は早稲田が慶応に勝って応援団長に感謝される。そんな折、裕一は作詞を幼なじみの村野鉄男(中村蒼)に頼み、コンビを組むことを思いつき彼に打診する。これが第40回「紺碧の空」のあらすじ。

2020/03/09

超人の美味しい飲み物 熊本県人吉市鳥飼酒造 米焼酎『鳥飼』

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テレビ朝日の日曜日夜の人気番組「ポツンと一軒家」で紹介された熊本県人吉市の酒造メーカー株式会社鳥飼酒造。こんな山奥に何があるんだろうと興味津々だったが、上空から見えた一軒家に近づくにつれてモダーンな建物が現れた。近くを流れる川の水は澄みきっていて川底が見えるくらい。ここが米焼酎のメーカー鳥飼酒造の工場だという。ここで社長の鳥飼氏が登場。社長は画家志望だったこともあってかオシャレな出で立ちだが、それより凄いのはこの材木などの流木で荒れていた山沿い一帯を買い取り、自然を甦らせ自然と共生して生きて行こうとする彼の姿勢だ。幼少期に遊んだ川も澄みきった川に甦らせた。焼酎づくりには何より水が大切だからという。工場の内部も垣間見ることができた。設備も立派で作業に携わる人の心意気が伝わってきそうな、丁寧な仕事ぶりが伺えた。ホームページを拝見したら、鳥飼酒造の歴史も古い。社長のエコ重視のビジネスにアッパレである。

テレビ放映から一週間くらい経ってふと思い出し、先週の土曜日に東京駅周辺で焼酎「鳥飼」を買い求めたがなかった。あったのは意外にもT駅近くの酒屋だった。一日置いて飲んでみた。720mlの透明な瓶に絵文字と漢字を組み合わせたオシャレな文字デザインの焼酎の名前、瓶の曲線美もいい。さて、米焼酎の味だ。これがスッキリとしていてイケた。美味!価格は少し高めの2200円。

2020/02/29

超人の気になるニュース 新コロナウィルス感染拡大のニュース

今朝(2月26日)のニュースは、新コロナウィルス感染の恐れから異例の中国の全人代中止をトップに、死者まで出ているほど急激な感染のイタリア北部やイラン(イランの副大臣も感染したと笑えないニュースも)それに急拡散している韓国の現状を伝えていた。が、一方で、新コロナウィルス感染は少し前より減少していて企業再開の兆しも出てきたと中国メディアは伝えている。かつてのペスト、コロナ、スペイン風邪、などのパンデミックを引き起こさないためにも、ここはしっかりと専門家を意見に耳を傾け、素人診断を避け、感染防止の対策を一人ひとりが励行すべきだろう。(筆者注: 今ネットニュースを読んで思わずヤバいと呟いてしまった。新たに判明した千葉県の新コロナウィルス感染者は、同じジム通いの人たちだった!とうとう近づいてきたかと少し恐怖を感じている。気をつけなければ)

【追記】新コロナウィルス感染の拡大を防ぐため、安倍首相は3月2日から春休みまでの間小中高を臨時休校することを要請した由。これによりおよそ1300万人が自宅学習を余儀なくされるという(急な要請でこの受験や卒業シーズン、親たちは戸惑い、教育現場は突然の出来事で混乱は避けられない模様。大学も対応に苦慮しているかも。企業はというと、大手企業ではテレワークなどの在宅勤務に切り替えるところも。また、人の集まるコンサートなどの中止、通勤の時差出勤と感染を避ける具体的な動きも出ている。新コロナウィルス感染のピークはここ2週間くらいとみての判断らしい。パンデミックいやパニック!混乱する社会が出現か。やがて9年目の3.11がやってくる。大地震、スーパー台風などの自然災害の備えが必要だといわれているところに、今度は新コロナのインフルエンザの拡大である。どうなっているの、ジパング!(2012.2,27 記)

【追記2】新コロナウィルス(COVID-19)感染が、アメリカでも感染経路が不明な患者が見つかったことが報道されたが、世界48ヵ国までに拡大している。驚くなかれ、中国では新コロナウィルス感染者が7万人以上に達したと伝えられている。そして、先ほど入ってきた最新ニュースでは、WHO(世界保健機構)がパンデミックの可能性を示唆したのだ。(2020.2.28 記)

【追記3】新コロナウィルス感染拡大を防ぐため、3月2日から春休みまでの間臨時休校を要請したことについて、安倍首相が午後6時から記者会見を行った。①専門家の意見を聞いてここ一、二週間が新コロナウィルス感染のピークなので急遽一斉休校を要請した②現場サイドの裁量に任せる③休職する保護者らに対しては特別手当を新設する④新薬治療薬を開発中⑤中国の習近平主席の4月来日は予定(先ほど入ったニュースでは来日中止の方向で検討中と。3月1日午前7時頃)通り⑤東京オリンピックは予定通り開催などを語った。現場丸投げ、場当たり的か。長引かせないための安倍首相の独断?(2020.2.29 記)

【追記4】アメリカでも最初の新コロナウィルス感染者の死亡が報道された。そのニュースをNPR(アメリカ公共放送)で読むはこちら➡https://www.npr.org/2020/02/29/810722517/seattle-area-patient-with-coronavirus-dies

(2020.3.1 記)

【追記5】マスクは仕方がないにしても、トイレットペーパーまで店から消える始末。デマが横行しているのだ。トイレットペーパーは国産でなくなるのは考えにくいといわれている。クロスチェックが大事だという。

【追記6】そのトイレットペーパーが買い占められているのかスーパー、薬局それにコンビニにも本当にない。身内は困っている、困ったものだ !! (2020.3.2 記)

2020/02/27

超人の面白映画・ドラマ観賞 ウィンストン・チャーチルや吉田茂を題材にした映画とテレビドラマ

政治家を扱ったドラマと映画を日曜日と月曜日に続けて観た。前者はイギリスのウィンストン・チャーチル元首相で、後者は日本の吉田茂元首相である。両方とも偶然観賞したにすぎないが、もっとも後者の吉田茂については、テレビ東京が開局55周年記念と銘打って日曜日の夜に池上彰司会で特番を組んだほどで、その力の入れように引きづられた感じだ。スカパー映画の『ウィンストン・チャーチル ヒットラーから世界を救った男』は、第二次世界大戦初期、ナチスドイツによってフランスが陥落寸前まで追い込まれ、イギリスにも侵略の手が及びかけた最中、連合軍が北フランスの港町ダンケルクの戦いで窮地に陥る、その間近に迫った首相の決断までの苦悩の日々を軍関係者、秘書や夫人など側近をまじえて追ったもので、連合国の総指揮官としての重責をリアルに描いている。和平か徹底抗戦かの究極の選択に迫られるチャーチルの姿が印象的で、また、ラジオを通じて訴えた演説も感動的。リーダーシップを発揮して危機を回避したのだ。

他方、芸人鶴瓶演じる吉田茂の『アメリカに負けなかった男~バカヤロー総理 吉田茂~』は、第二次世界大戦後のアメリカ占領時期を脱却し、日本を独立に導べくサンフランシスコ講和条約締結前後の首相の動静をユーモラスに描いている。もちろんチャーチル、吉田茂とも実際にはイギリスで会っているはずだ。吉田茂は外交官でイギリス大使としてイギリスに赴任していた。戦後すぐに政界入りした遅蒔きの政治家なのだ。筆者が興味を持ったことの一つは、側近の白州次郎や麻生和子(その独特の文体で知られた吉田茂の長男、文芸評論家吉田健一は出てこなかったようだ)の存在そしてブレーン育成私的機関の吉田学校の面々だ。遠い昔、ホテルニュージャパンが火事で焼かれる前、外務大臣を務めた藤山愛一郎事務所と共に保守政治評論家の戸川猪左武氏の事務所もあって、当時赤坂東急ホテル内の書店でアルバイトをしていた筆者は注文書籍や定期購読している週刊誌などの雑誌類を届けていたのだ。微かな記憶を辿れば、その時その政治評論家は小説吉田学校を週刊誌に連載中だった(戸川氏はその何年か後に急死。死因は腹上死だった。筆者はすでに就職していてこのニュースを週刊誌か何かで知って驚いた)。さて、その吉田学校の面々で、このドラマでも活躍振りが描かれているが、今さらながら驚かされるのは錚々たるテクノクラートたちだ。今はソンタクの時代なのか官僚の劣化が目立つ。気骨な人たちが少ないような感じられる。
大磯の吉田茂邸でくり広げられた戦後政治は、池田勇人、佐藤栄作、田中角栄、宮澤喜一ら後の首相に就く人材を登用した、ある意味で密室政治、強い個性でリーダーシップを発揮して難局を乗り越えていく、パワフル ポリティシャンによって始まったといっても過言ではない。その秘書的役割を担ったのが英国仕込みの白州次郎だった(彼の本や細君の正子女史の本も少しは読んだ)。終戦連絡事務局に関わり、流暢なキングズ イングリッシュでマッカーサーやGHQの幹部たちと交渉しながら吉田を助ける。白州次郎役の生田斗真の演技力も様になっていたが、やはりサンフランシスコ講和条約の日の演説を英語原稿から日本語原稿に急遽替えて、しかも巻き紙の原稿を読み上げるという離れ技を展開したのだ。演出の妙技というべきか外交の晴れの舞台の圧巻だ。しかし、このドラマでは主役の吉田茂役を鶴瓶に抜擢したところが憎い。その仕草に自ずとユーモラスが感じられて、より親近感がわくから不思議だ。吉田の身の回りを切り盛りしたのは新橋芸者上がりの松嶋菜々子演じるこりん、なかなか物静かにみえて賢そうな女性である。吉田を動の人と捉えれば、こりんは静の人だろう。このバランスが吉田にとっては居心地良かったのかもしれない。今も残るJR戸塚駅近くの“ワンマン道路”、駅に隣接している開かずの踏切―何年間か前にやっと開通した―に嫌気がさして、大磯の自宅に帰るための迂回路をわざわざ造らせてしまったのだ。ワンマン宰相といわれる所以である。

2019/05/28

超人の映画鑑賞 ニューヨーク公共図書館 エクス・リブリス 3

改めてこの映画から図書館の役割や奉仕(サービス)とは何かというごく当たり前の問いを突きつけられた思いだ。〈知〉の集積場所である図書館は、その本来の姿から進化し続け、高度な調査能力を持つ―現に映画では移民のルーツを訊ねてきた女性に懇切丁寧に応対している光景を映し出していた―ライブラリアン、地図コレクションや貴重書(グーテンベルグの聖書や作家カポーティの草稿ほか多数)の所蔵、映画のシーンでもお馴染みの大閲覧室(3階、ローズ・メイン・リーディング・ルーム)、オーディオ関係の貸出はもちろんのこと、作家らのトークショー、学習プログラム、音楽やダンス教室の開催そして今やネット接続用のツールまで貸出されている(インターネットのサポートには目を見張るものがある)。言わば、カルチャーセンターやコミュニティセンターとしての役割も担っているのだ。サラダボールのニューヨークの人口800万人のうち11%に相当する90万人が貧困層といわれているが、そういう人たちにも利用できるよういろいろと工夫されている。身分証があれば原則無料だ。また、それぞれの地域に根差した地域館ともいうべき分館の役割はそれを物語っていて、カメラも捉えて離さない。ブロンクスの就職フェア、チャイナタウンでのパソコン指導、黒人文化研究図書館の作家を招聘してのトークショー、舞台芸術図書館でのピアノ演奏、点字・録音本図書館の勇気ある試みなどカメラは執拗に本質を抉るように追う。筆者は特に作家らのトークショーや黒人文化研究図書館それに職員幹部たちの会議のシーンが印象に残った。シビアな論戦のシーンも。この図書館を利用して作家や芸術家になった人たちもいるのも頷ける。知的好奇心を求める人たちには大いに開放されているのだ。1980年代後半にここを訪ねた際に分館も2、3訪ねている。それは寒いニューヨーク歩きに一休みできる安全な場所としてだったか、或いはある明治期に発行された新聞をあてもなく探していた時期だったか、今となっては定かではない。が、その新聞のありかをニューヨーク公共図書館で再チャレンジして探してみようと考えている。デジタル化が進んだ今、発見できるかも。それはともかくあっという間の3時間、迫力があったしニューヨーク公共図書館の内部を垣間観れて大変興味深かった。昨夏北欧の公共図書館・大学図書館を訪ねた筆者なりの“リアルな図書館”の旅に新たな映画芸術の所産が加わった格好だ。何よりもここには生き生きとした人間が描かれている。リアリズム映画の極致と言ってもいい。平等と民主主義そして人間参加・讃歌――。

※辞書を引くと、エクス・リブリスEx librisは 蔵書からという意味のラテン語。英語はbookplateというらしい。日本では蔵書印。

 

2019/05/27

超人の映画鑑賞 ニューヨーク公共図書館 エクス・リブリス 2

映画は図書館の科学者とのトークから始まる。やがてこれが民主主義だと言わんばかりの職員たちの熱い議論の場面が展開される。カメラは図書館の内部奧深く潜入していくが、基本はこの職員たちの熱い議論が全編を貫いている。公共図書館といっても中身は私立図書館でニューヨーク市の財政支援と残りは寄付で賄われているのが現状である。そこには財源確保に四苦八苦する図書館側の事情が見え隠れする。何にもまして企画立案がものをいうし、実現に向けて多種多様なプロジェクトを立ち上げ、分館や専門図書館を含めた巨大な図書館の運営が行政側にまた、寄付者側に対しても現実的に応えられているか、絶えず検証し続け結果を示している。でないと予算が削減され図書館運営に支障をきたすからだ。ニューヨーク公共図書館は、恐らく全ての点で世界中のライブラリアンが羨む、否憧れる筆頭図書館なのだ。

それでは3時間余の上映の中身をパンフレットで追ってみよう。午後の本 Books at Noon)~リチャード・ドーキンス博士   司書たちの対応   民間支援者に語りかけるマーク館長  ジェローム・パーティー分館   著者と語る~イスラム教と奴隷性   舞台芸術図書館~ブルーノ・パーティーワルター講堂のピアノコンサート   ブロンクス分館の就職フェア   幹部たちの会議   ピクチャー・コレクション   ニューヨークのユダヤ2世について著者のトーク   (公共図書館ライブ)~エルヴィス・コステロ   幹部たちの会議   (午後の本 Books at Noon)~ユーセフ・コマンヤーカ   中国系住民のためのパソコン講座   点字・録音本図書館   ミッドマンハッタン分館   ブロンクス分館の演奏会   黒人文化研究図書館~“ブラック・イマジネーション”展   舞台芸術図書館~マイルズ・ホッジス   幹部たちの会議   読書会   幹部たちの会議   舞台芸術図書館~劇場の手話通訳者   図書館の内側   パークチェスター分館   ジョージ・ブルース分館   シニアダンス教室   ウェストチェスター・スクエア分館   黒人文化研究図書館~90周年の祝賀会   読み聞かせ教室~マクドナルドおじさんの歌   ハーグ・コレクション   幹部たちの会議   印刷コレクション  各分館スタッフとのミーティング   点字・録音本図書館   ジェファーソン・マーケット分館   (公共図書館ライブ)~パティ・スミス   施設担当の報告  幹部たちの会議   図書館ディナーの準備    委員会への報告~黒人文化研究図書館の蔵書について   幹部たちの記念撮影   (公共図書館ライブ)~タナハシ・コーツ   幹部たちの会議   マコーズ・ブリッジ分館   (公共図書館ライブ)~エドムンド・デ・ワール   以上が上映内容である。

 

2019/05/24

超人の映画鑑賞 ニューヨーク公共図書館 エクス・リブリス

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世界的に有名なニューヨーク公共図書館 NewYork Public Library。三越ではないが二つのライオン像(ライオン像には母体となったAstorアスター図書館とLenoxレノックス図書館に因んだ名称がありまた、恐慌時代に名付けられたpatience忍耐とfortitude不屈の精神の愛称もある)が出迎えてくれる、あのニューヨークは5番街42丁目にある威厳のある図書館。その名前の経緯は何度も訪ねたり調べたりして筆者なりに分かっていたつもりでいたが、今回ドキュメンタリー映画を観てその名前をしかと認識した次第。氷解したのだ。名称はpublicだが中身はprivateなのだ。それは鉄鋼などで財をなしたカーネギ―たちが私財を投じてできた世界屈指の私立図書館だからである。カーネギーは教育、文化や福祉にも力を入れた慈善家としても有名だ(これに匹敵する人が日本では倉敷の実業家・慈善家大原孫三郎か)。筆者が最初に訪ねたのは1980年代後半だ。プライベート旅行だったが、当時勤めていた会社の商品を閲覧室のコンピューターを使って検索、その会社の商品の何点かが出てきて興奮したことを昨日のように鮮やかに覚えている。また、マップコレクション室や2階(?)にあるチャールズ・ディケンズの展示品等を観て回った。そのあとニューヨーク旅行では時々訪ねている。ニューヨーク公共図書館の建物のまわりには様々な人間模様が見て取れて、これまた興味深い。2013年春5月にはとうとう仕事でお邪魔して館内を案内されたりもした。映画のシーンでお馴染みの大閲覧室も。その時は日本関係の担当者が休暇中でイタリア旅行中、代わりにウェブデザイン担当の女性が応対してくれた。こちらはお近づきの印として日本から箸や和紙などを持参してプレゼントした。日本のラーメンがブームらしく(ここ2、3年でラーメンも更に進化したらしくニューヨークのあちこちに店舗ができているらしい)、話題は豚骨ラーメンの『一風堂』の話で盛り上がった。ラーメンにありつけるまで2時間待ちでtoo crazyと。一緒にお付き合い頂いた某書店ニューヨーク店のキューバ人を伴侶にした千葉県出身の女性スタッフと素晴らしい環境の事務室でしばし会話を楽しんだのだ。それも今となっては懐かしい思い出だ。

さて、『ニューヨーク公共図書館』は、NYPLの略称で親しまれている、分館や研究図書館を含めて92館、予算規模340億円(日本の公共図書館の数は3292館、経常予算1427億円―日本の図書館総計2018より)、蔵書5295万冊、職員3100人余、年間来館者数1700万人、貸出数346万人(ウィキペディア)の巨大かつ民主的な図書館だ。そこにカメラが入った。ドキュメンタリー映画の巨匠フレデリック・ワイズマン監督の『ニューヨーク公共図書館 エクス・リブリス』である。午後6時15分開始、午後9時50分に終了の3時間30分の上映(途中5分の休憩)だった。

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