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2020/03/03

超人の面白読書 146 阿部武司著『アーカイブズと私ー大阪大学での経験ー』

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アーカイブズが多様な情報源として研究者にとってはもちろんのこと、内外の行政に携わる人々 、さらには、一般の人々にも欠かせない機関であることは国際的常識となっている。ところが最近の日本では、政府が都合の悪い文書を隠蔽・廃棄・改竄するといった嘆かわしい事態がまかり通っている。日本人は、記録をきちんと残すアーカイブズの重要性を今こそきちんと認識しなければならない。

Internatinal common sense indicates that archives play an important role as are organized data for providing diverse sources of imformation not only for scholars but also for govermental bodies at home and abroad and people in general. In today's Japan, however, it is highly regrettable that government documents have been concealed, disposed of and even altered. Now is the time for us Japanese to realize the importance of archives in preserving actual records.

本書の巻末にある和英語による要約の冒頭から引用したが 、最近の政府の公文書の扱い方が森友・加計問題等で分かるように安易で杜撰、しかも嘘や忖度する官僚が目立った。自分に都合悪いことには記録を残さないか、あるいは隠蔽し揚げ句には捨てる。自己保身である。記録・整理・保管そして情報を公開することの重要性が無視され、言わば、民主主義の根幹をなす営為が勝手に踏みにじられている。

本書は、経済経営史の専門家が経験した、日本ではまだ設置が十分に確立していない大学アーカイブズ(文書館 ぶんしょかん)の設立をはじめ、図書館、博物館それに企業アーカイブズなどについてその都度雑誌等に書いたものを一冊にまとめたものである。たとえ小さなものでも手を抜かずきちんと論理的に書き記していることに加えて、格調も高い。更に自分の考えを明解に綴るあたりは社会科学者の眼だけではなく、人文学の知も感じさせる幅の広い教養に裏打ちされているように筆者には思える。筆者的には第9章 社会科学研究の国際化、第10章 読書の効用の章も侮れない。著者も書いているようにアメリカの大学では何百ページもある本を読まされ要約させられる。その読書量の凄さはよく知られたことだが、似たような読書体験を持つ著者から発せられる“粘り強い思考”、これが養われることは確かだろう。読書の効用たる所以だ。因みに、第1章~第8章までは次の通り。第1章 図書館・博物館・文書館 第2章 企業アーカイブズと大学 第3章 大学アーカイブズと企業アーカイブズ―現状と課題― 第4章 アーカイブズ創設とアーキビスト 第5章 大阪大学アーカイブズの構築 第6章 日本の官公庁における文書保存 第7章 外国のアーカイブズ 第8章 大阪大学経済史・経営史資料室。
雑文の類いなので内容に多少の重複はあるものの、それはそれで生きた証言と読めば新たな発見もあるかもしれない。大阪大学アーカイブズ設立のご苦労は文面に滲み出ているが、手さぐりからの出発を思えば、いろんな人たちとの連携プレーがあったからこそ成し遂げられたことで、著者のアナーザーヒストリーでもある。今となってはお宝だ。少し言いにくいが本書は大阪大学の宣伝には絶好の書。在校生だけではなく、卒業生にもぜひ読んで頂きたい(特に人文社会系の分野の人たち)。と同時に、図書館・博物館・文書館関係者だけではなく、若い研究者などにも勧めたい一冊である。
最後に文章の鮮やかさが本の表紙に反映しているかのようで“クールさ”を感じさせるがまた、帯風のエンジの暖かさと対比させたシンプルなデザインにも注目だ。
A5判・並製・184頁。定価: 本体2000円+税。2020年2月29日、クロスカルチャー出版刊。(クロスカルチャー出版のホームページを見るはこちら→
http://crosscul.com) 本書の詳細を読むはこちら→https://www.hanmoto.com/bd/isbn/9784908823671 新刊チラシの三輪宗弘先生(九州大学教授)の推薦文を読むはこちら→


三輪先生の推薦文の入った新刊チラシ - 20200304151537.pdf

【追記】昨夜の『報道ステーション』でも放送されたが、3月19日付毎日新聞朝刊一面に「森友改ざん 遺族が国提訴」 手記に「佐川氏の指示」 財務局職員自殺の見出しとリードの文字。森友学園への国有地売却を巡る財務省の改ざん問題で、2018年3月に自殺した近畿財務局の職員の妻が損害賠償を求め、大阪地裁に提訴した。改ざん作業で苦痛と過労でうつ病を発症し自殺したのは、すべて佐川氏の指示だったという手記が残されていた。自殺に追い込まれた原因を明らかにしてほしいと遺族は訴えている。―毎日新聞朝刊(2020年3月19日)より
公文書改ざんの真相をぜひ解明してほしいと願うのは筆者だけではあるまい。本書でも公文書管理の重要性を指摘している。それにしても改めて手記を読んでみると、役所の役所といわれているところで幹部らによる組織ぐるみの公文書改ざん指示、それを現場担当者に押しつけている様子が手に取るようにわかる。(2020.3.19 記)
毎日新聞の記事を読むはこちら→

毎日新聞森友学園国有地手記 - 20200320115554.pdf


朝日新聞の記事を読むはこちら→https://www.asahi.com/sp/articles/ASN3L6K55N3LPTIL00Z.html

【追記】大阪大学アーカイブズニューズレター 15号(2020年3月31日)に菅真城先生の【書評】が掲載されたみたい。掲載誌を含めたチラシを読むはこちら→書評ほか - 20200401193340.pdf

【追記2】《著者関連参考資料》著者が小雑誌に書いた故中村隆英先生の業績それに御厨貴先生が毎日新聞に寄稿した記事。

阿部先生 ・御厨先生エッセイ- 20200420125927.pdf

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