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2020/02/11

雑誌『すばる』2020年2月号拾い読み

さて、北野道夫の「予測A」を読んだついでに、最近の文学シーンを少し眺めてみようと拾い読みをしてみた。その昔は文芸誌を何種類か定期講読していたことも。巻末の執筆陣を見ると、大分若い世代が書き手として名を連ねているようだ。その中で面白そうな、スバルクリティーク 藤田直哉の「江藤淳はネトウヨの“父”なのか」を読んだ。そのあと著名なロシア文学者のドストエフスキー絡みのエッセイやフランス文学者のポール・ヴァレリーのエッセイなどを拾い読みした。前野健太コラム「グラサン便り 66 冬のラブホテル街」も面白く読んだ。小説は続きものが多くスルー、鼎談もスルーした。「江藤淳はネトウヨの“父”なのか」を書いた藤田直哉はそう、北野道夫とほぼ同年で出身大学学部まで同じである。彼の略歴をネットで調べたところ、なかなか気骨のある人物のようだ。

ヘイトと炎上と宗教とイデオロギーの時代へ いまこそ江藤淳を(この項で江藤淳の生い立ち、代表作『夏目漱石』、『小林秀雄』、『成熟と喪失』などを簡単に述べ、「第三の新人」批評に触れ、現在最も参照されているのは『閉ざされた言語空間 占領軍の検閲と戦後日本』ではないかと書く。WGIPとは、ウォー・ギルト・インフォーメーション・プログラム 戦争についての罪悪感を日本人の心に植えつけるための宣伝計画の略で、保守論壇やネトウヨに多く参照されているという) WGIP史観――『閉ざされた言語空間』 WGIP史観のアップデート――百田尚紀樹『日本国紀』 WGIP論と、冷戦時代 『幼年時代』――禁止もなければ、検閲も存在しない世界 『一族再会』――言葉による死者との交換 フィクションの役割――「奴隷の思想を排す」 『一族再会』の言語観・批評観 『自由と禁忌――何が禁忌で、なぜ自由が必要か 死者の充満した国家の回復――『落葉の掃き良寄せ』』 断絶の原因はアメリカだけか 江藤淳とネトウヨの断絶 健全で簡素な場所へ

以上が小見出し。最後に次のように書いて締める。それが「政治」リアリズムだとしたら、あなたたちは何を「保守」するために戦ってきたのか。必要なのは政治のリアリズムではない。文学のリリシズムである。うまいこというものである。
筆者的には彼の文章の中で次のような箇所に目を奪われた。

内閣調査室が江藤に研究費を渡していたことが分かっている。内閣調査室のメンバーだった志垣民郎の回想録『内閣調査室秘録』(文藝春秋)に収録されているメモによると、1971年10月21日に志垣は江藤に接触している。「月7万円ぐらいをOKする」と記述がある。これは「委託調査」「委託研究」を「お願いする」ためのお金を、内閣から出したいということである。編者の岸俊光によると「志垣氏らは、若い有望な学者に委託費を出して研究をさせることで、現実主義の論客を育て、それを政策にフィードバックしていた」という。
志垣は「学者の会」を組織していった。「左翼学者はなかなか多く、政府としては対策が必要だった」からだ。その「学者の会」の筆頭に上がっている「アメリカ研究会」に江藤は参加し、月一回、アメリカと日本のことを中心に発表や議論が行われていたようだ。メンバーは政治学者の本間長世、永井陽之助らである。(P.208)

なぜか欧米文化研究者は当局に利用しやすい素地があるのかも。

【追記】江藤淳の『閉ざされた言語空間 占領軍の検閲と戦後日本』については、下記の本の書評の冒頭にも引用されている。その記事を読むはこちら→

『目からウロコの海外資料館めぐり』―図書新聞の書評 - 20200213173039.pdf

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