« 2020年1月 | トップページ | 2020年3月 »

2020/02/29

超人の気になるニュース 新コロナウィルス感染拡大のニュース

今朝(2月26日)のニュースは、新コロナウィルス感染の恐れから異例の中国の全人代中止をトップに、死者まで出ているほど急激な感染のイタリア北部やイラン(イランの副大臣も感染したと笑えないニュースも)それに急拡散している韓国の現状を伝えていた。が、一方で、新コロナウィルス感染は少し前より減少していて企業再開の兆しも出てきたと中国メディアは伝えている。かつてのペスト、コロナ、スペイン風邪、などのパンデミックを引き起こさないためにも、ここはしっかりと専門家を意見に耳を傾け、素人診断を避け、感染防止の対策を一人ひとりが励行すべきだろう。(筆者注: 今ネットニュースを読んで思わずヤバいと呟いてしまった。新たに判明した千葉県の新コロナウィルス感染者は、同じジム通いの人たちだった!とうとう近づいてきたかと少し恐怖を感じている。気をつけなければ)

【追記】新コロナウィルス感染の拡大を防ぐため、安倍首相は3月2日から春休みまでの間小中高を臨時休校することを要請した由。これによりおよそ1300万人が自宅学習を余儀なくされるという(急な要請でこの受験や卒業シーズン、親たちは戸惑い、教育現場は突然の出来事で混乱は避けられない模様。大学も対応に苦慮しているかも。企業はというと、大手企業ではテレワークなどの在宅勤務に切り替えるところも。また、人の集まるコンサートなどの中止、通勤の時差出勤と感染を避ける具体的な動きも出ている。新コロナウィルス感染のピークはここ2週間くらいとみての判断らしい。パンデミックいやパニック!混乱する社会が出現か。やがて9年目の3.11がやってくる。大地震、スーパー台風などの自然災害の備えが必要だといわれているところに、今度は新コロナのインフルエンザの拡大である。どうなっているの、ジパング!(2012.2,27 記)

【追記2】新コロナウィルス(COVID-19)感染が、アメリカでも感染経路が不明な患者が見つかったことが報道されたが、世界48ヵ国までに拡大している。驚くなかれ、中国では新コロナウィルス感染者が7万人以上に達したと伝えられている。そして、先ほど入ってきた最新ニュースでは、WHO(世界保健機構)がパンデミックの可能性を示唆したのだ。(2020.2.28 記)

【追記3】新コロナウィルス感染拡大を防ぐため、3月2日から春休みまでの間臨時休校を要請したことについて、安倍首相が午後6時から記者会見を行った。①専門家の意見を聞いてここ一、二週間が新コロナウィルス感染のピークなので急遽一斉休校を要請した②現場サイドの裁量に任せる③休職する保護者らに対しては特別手当を新設する④新薬治療薬を開発中⑤中国の習近平主席の4月来日は予定(先ほど入ったニュースでは来日中止の方向で検討中と。3月1日午前7時頃)通り⑤東京オリンピックは予定通り開催などを語った。現場丸投げ、場当たり的か。長引かせないための安倍首相の独断?(2020.2.29 記)

【追記4】アメリカでも最初の新コロナウィルス感染者の死亡が報道された。そのニュースをNPR(アメリカ公共放送)で読むはこちら➡https://www.npr.org/2020/02/29/810722517/seattle-area-patient-with-coronavirus-dies

(2020.3.1 記)

【追記5】マスクは仕方がないにしても、トイレットペーパーまで店から消える始末。デマが横行しているのだ。トイレットペーパーは国産でなくなるのは考えにくいといわれている。クロスチェックが大事だという。

【追記6】そのトイレットペーパーが買い占められているのかスーパー、薬局それにコンビニにも本当にない。身内は困っている、困ったものだ !! (2020.3.2 記)

2020/02/27

超人の面白映画・ドラマ観賞 ウィンストン・チャーチルや吉田茂を題材にした映画とテレビドラマ

政治家を扱ったドラマと映画を日曜日と月曜日に続けて観た。前者はイギリスのウィンストン・チャーチル元首相で、後者は日本の吉田茂元首相である。両方とも偶然観賞したにすぎないが、もっとも後者の吉田茂については、テレビ東京が開局55周年記念と銘打って日曜日の夜に池上彰司会で特番を組んだほどで、その力の入れように引きづられた感じだ。スカパー映画の『ウィンストン・チャーチル ヒットラーから世界を救った男』は、第二次世界大戦初期、ナチスドイツによってフランスが陥落寸前まで追い込まれ、イギリスにも侵略の手が及びかけた最中、連合軍が北フランスの港町ダンケルクの戦いで窮地に陥る、その間近に迫った首相の決断までの苦悩の日々を軍関係者、秘書や夫人など側近をまじえて追ったもので、連合国の総指揮官としての重責をリアルに描いている。和平か徹底抗戦かの究極の選択に迫られるチャーチルの姿が印象的で、また、ラジオを通じて訴えた演説も感動的。リーダーシップを発揮して危機を回避したのだ。

他方、芸人鶴瓶演じる吉田茂の『アメリカに負けなかった男~バカヤロー総理 吉田茂~』は、第二次世界大戦後のアメリカ占領時期を脱却し、日本を独立に導べくサンフランシスコ講和条約締結前後の首相の動静をユーモラスに描いている。もちろんチャーチル、吉田茂とも実際にはイギリスで会っているはずだ。吉田茂は外交官でイギリス大使としてイギリスに赴任していた。戦後すぐに政界入りした遅蒔きの政治家なのだ。筆者が興味を持ったことの一つは、側近の白州次郎や麻生和子(その独特の文体で知られた吉田茂の長男、文芸評論家吉田健一は出てこなかったようだ)の存在そしてブレーン育成私的機関の吉田学校の面々だ。遠い昔、ホテルニュージャパンが火事で焼かれる前、外務大臣を務めた藤山愛一郎事務所と共に保守政治評論家の戸川猪左武氏の事務所もあって、当時赤坂東急ホテル内の書店でアルバイトをしていた筆者は注文書籍や定期購読している週刊誌などの雑誌類を届けていたのだ。微かな記憶を辿れば、その時その政治評論家は小説吉田学校を週刊誌に連載中だった(戸川氏はその何年か後に急死。死因は腹上死だった。筆者はすでに就職していてこのニュースを週刊誌か何かで知って驚いた)。さて、その吉田学校の面々で、このドラマでも活躍振りが描かれているが、今さらながら驚かされるのは錚々たるテクノクラートたちだ。今はソンタクの時代なのか官僚の劣化が目立つ。気骨な人たちが少ないような感じられる。
大磯の吉田茂邸でくり広げられた戦後政治は、池田勇人、佐藤栄作、田中角栄、宮澤喜一ら後の首相に就く人材を登用した、ある意味で密室政治、強い個性でリーダーシップを発揮して難局を乗り越えていく、パワフル ポリティシャンによって始まったといっても過言ではない。その秘書的役割を担ったのが英国仕込みの白州次郎だった(彼の本や細君の正子女史の本も少しは読んだ)。終戦連絡事務局に関わり、流暢なキングズ イングリッシュでマッカーサーやGHQの幹部たちと交渉しながら吉田を助ける。白州次郎役の生田斗真の演技力も様になっていたが、やはりサンフランシスコ講和条約の日の演説を英語原稿から日本語原稿に急遽替えて、しかも巻き紙の原稿を読み上げるという離れ技を展開したのだ。演出の妙技というべきか外交の晴れの舞台の圧巻だ。しかし、このドラマでは主役の吉田茂役を鶴瓶に抜擢したところが憎い。その仕草に自ずとユーモラスが感じられて、より親近感がわくから不思議だ。吉田の身の回りを切り盛りしたのは新橋芸者上がりの松嶋菜々子演じるこりん、なかなか物静かにみえて賢そうな女性である。吉田を動の人と捉えれば、こりんは静の人だろう。このバランスが吉田にとっては居心地良かったのかもしれない。今も残るJR戸塚駅近くの“ワンマン道路”、駅に隣接している開かずの踏切―何年間か前にやっと開通した―に嫌気がさして、大磯の自宅に帰るための迂回路をわざわざ造らせてしまったのだ。ワンマン宰相といわれる所以である。

2020/02/23

超人の面白動画 問題のSASのコマーシャル

Dsc_0563Dsc_0564

【コペンハーゲン空港に駐機中のSASの飛行機 写真=筆者撮影】
1年半前に利用したSAS(スカンジナビア航空) 。若いときは憧れだったSASだったが、実際に乗ってみると機内はそれほど快適でもなく、むしろ使い古された感じを受けたほど。トランジットのコペンハーゲンからヘルシンキへ、また、ストックホルムからコペンハーゲンへの比較的短いフライトでも同じような印象を持った。機内食も目新しいものでもなかった。欲を言えば真新しい飛行機に乗りたかった――。その最近のSASのコマーシャルが一部で顰蹙を買っているらしい。北欧は外国からいろいろなものを取り入れて来たコピーの文化だと言いたげなSASのコマーシャル。しかし、いち早く難民・移民を受け入れて来た北欧諸国では、今移民受け入れに反対する勢力も台頭し、以前ほど柔軟性が見られなくなっているのだ。筆者らが訪ねたヘルシンキやストックホルムの公共図書館では難民・移民のための雑誌や書籍、ビデオのコーナーが設けられ、また、特別に彼ら彼女らのための自国語(フィンランド語やスウェーデン語)講習会も開催されるなど具体的な支援策が行われていて、北欧の国々は進んでいるなと思ったものだ。その動画を見るはこちら→https://youtu.be/ShfsBPrNcTI
ここで【北欧に関するトレビア】。ScandinavianとNordic の違いは? その説明のあるコラムはこちら→https://crocul.cocolog-nifty.com/callsay/2005/06/post_d69a.html

【追記】2020年6月6日からANA(全日空)が東京・羽田空港からストックホルム・アーランダ空港へ直行便を就航する予定。飛行時間は11時間~12時間。これで北欧の国々もさらに身近になり日本から行きやすくなる。今は昔と違って若者などが気軽に出かけ、福祉政策や教育政策の現場を見、北欧家具やデザイン、また、児童文学、映画、演劇、絵画、音楽などの文化や歴史に直に触れているのだ。さて、SASも競争に晒されるということか。


【追記2】SASが新コロナウィルス感染の影響で収益が悪化(新コロナウィルス感染拡大を防ぐため、ヨーロッパほかの国々で渡航禁止が出ている)、1万人の人員削除を発表と今朝のNHKBS1のニュース。(2020.3.16 記)

2020/02/18

超人の面白ラーメン紀行 271 神田神保町『ひつじそば 人と羊』

_20200217_191245


ラム肉ラーメンである。錦華通りにあるここの場所もレモンラーメン、ローストビーフ丼ほか何回か替わって『ひつじそば 人と羊』に。開店してまだ3ヶ月、いずれは豊洲の方へ引っ越すと店に貼り出してあった。しじみラーメンの次はラム肉ラーメンと“本来のラーメン”から少し外れてチャレンジャー精神を発揮してのラーメン食べ歩きだ。店に入るなりひつじちゃん臭いに少しドギマギ(何せ強烈でインパクトあるし)、羊ひつじしている店内を見渡したら、女性、男性と会社員風の人たちが2、3人食べていた。券売機もひつじそば(1350円)、羊中華(850円)、羊味噌ラーメン(900円)とひつじづくしで、思わずひつじの群れを想像してしまった(笑)。ここは無難に思えた羊中華をチョイスしてカウンター席の右端に座った。しばらくすると注文のラーメンが出てきた。見た目中華そばそのもの、違うのは鶏や豚でないことぐらい(笑)。魚介系(サバ節使用)とラム肉のコラボスープで独特の脂も強烈だがもちもちした細麺に絡み、トッピングはちょっぴりクセがあるものの洗練されたラム肉のチャーシュー(普通の鶏や豚のチャーシューとほとんど変わらない)とテリーヌ(フランス料理に見かける)、水菜にこれまたインパクトのある大きなモロッコいんげんとシンプルな組み合わせだ。味はいいし、ラム肉のチャーシューもやわらかい。店主はラム肉の臭み、コラボの品、スープの味など調理法をいろいろと工夫されているみたいだ。食べ終わる頃には客が大分入っていた。ラム肉は苦手な人もいるはず。誰にもおすすめはできないが、調理法も工夫されているし、低カロリーでヘルシーだ。チャレンジする価値はあるかも。
筆者的には京都木屋町に「あった」ラム肉専門店『カウロウ館』を思い出した。こちらはラム肉をコースで食べさせてくれた。ラム肉のクセをほとんど感じさせない名物料理だった。
京都木屋町にあった仔羊専門店『カウロウ館』の訪問記を読むはこちら→https://crocul.cocolog-nifty.com/callsay/2013/07/95-4b85.html

神田神保町『ひつじそば 人羊』1.スープ★★2.麺★★3.接客・雰囲気★★5.価格★☆

2020/02/16

超人の面白読書 145 雑誌『すばる』2019年7月号 特集「教育が変わる 教育を変える」ほか 2 余滴

今私立大学の入試が一段落ついた頃だが、今年度は英語の共通テスト、国語や数学の記述式問題で揺れに揺れた。元々文科省が民間会社に丸投げするシステムが問題だった。英語共通テストについては、「しんぶん赤旗」(2020年2月16日号)も図解入りでその仕組みを分かりやすく書いていたが、教育は公平性や平等それに経済性が基本でブレないことが重要だ。アルバイトに採点させるなど民間に委託するやり方は、信頼性が疑われ、思慮に欠けている。もう一つは雑誌『すばる』でも特集を組んだほど大問題になっている、高校の教科書から文学作品(例えば、高校国語教科書の常連、中島敦の『山月記』は短編ながら秀逸)が消え、代わりに駐車場の契約書などの実用文が掲載されること、また、高校の国語の内容など高校の国語教育改革もまた物議を醸し出しているのだ。ここに来て様相が変わったことを告げたい。ある親しい文学研究者が、高校国語教科書に文学作品は今までと変わらず掲載されることになると言っていたことだ。この事実を上述の先生から直接聞いたのはつい先週のことだ。
高校の教科書問題については、下記のコラムを参照されたい。
https://crocul.cocolog-nifty.com/callsay/2019/11/post-0e7cb1.html

 

【追記】文系か理系かの問題については次の記事を参照されたい。AI時代に必要とされる「人文系」―NHK BS1 キャッチ! 世界のトップニュース 特集ダイジェストを読むはこちら→https://www.nhk.or.jp/kokusaihoudou/catch/archive/2019/01/0128.html

2020/02/15

超人のジャーナリスト・アイ 179 ストックホルム・スルッセンの新金の橋がまもなく開通

609de0c9350a498e9c64c7ba449ac327

約1年半前の2018年8月下旬に近くをバスで通ったストックホルムのスルッセンの橋、セーデルマルムとガムラスタン(旧市街)を結ぶ橋だ。当時このエリアは再開発で橋の改修工事中、2年後の2020年に完成すると通りの看板に大きく書かれていた(従って、筆者らを乗せたバスは、セーデルマルムからトンネルの中を走ってガムラスタンへ抜けた)。その時の様子をバスの窓から見た筆者は、「メーラレン湖とバルト海の水面を調節する水門(Slussen)の橋では150年に一度の大改修工事中で、大型の重機が何台も動いていた」と綴っている。その遅れていた新生金の橋が来たる2月24日に開通とのニュース。2020年2月14日のスウェーデンラジオ放送が伝えている。【写真: スウェーデンラジオ放送の電子版より】
NYA SLUSSEN
Slussens guldbro snart framme – trafikstörningar att vänta
Anländer 24 februari. Den försenade guldbron till Slussen beräknas nå Stockholm tidigast den 26 februari. Men redan nu stängs all trafik
av vid Stadsgårdsleden. ―från 14 februari, Sverige Radio P4 Stockholm
スウェーデンラジオ放送の視聴はこちら→https://sverigesradio.se/artikel/7407274 真新しい現代的なスルッセンエリアを見てみたい。写真でみる限りではデザイン性に優れスマート、しかも眺めもいい。そして、屋台でニシンハンバーガーを食べてみたい(このエリアにあったらの話)。

 

【追記】約1年半前に訪ねたスルッセンエリアの工事中を含むストックホルムバス市内遊覧を見るはこちら→https://crocul.cocolog-nifty.com/callsay/2019/07/219-13-4bca.html

 

【追記2】“スルッセン”といえば、筆者的にはノーベル文学受賞者で詩人のトーマス・トランスロンメル氏を思い出す。彼の自伝「わが回想」に出てる子ども時分に迷子になって、スルッセンやセーデルマルム周辺を歩くシーン(そのシーンを筆者の試訳で読むはこちら→https://crocul.cocolog-nifty.com/callsay/2011/10/90---7-7cf9.html を)が印象的で、筆者は地図に落として読んだ。筆者が言及したコラムを読むはこちら→https://crocul.cocolog-nifty.com/callsay/2018/09/post-4dd2.html

2020/02/14

超人の面白ラーメン紀行 270 神田神保町『しじみ軒』

_20200213_134911

JR水道橋駅から神保町交差点に向かって白山通りを歩くと旧『いもや』の店に出くわす。そこはつい最近まであったとんかつ店『いまかつ』だったが、この店もラーメン店に衣替えした。しかも少しオドロキのラーメン店だ。その名も「しじみ」を売りにしたラーメン店である。しじみといえば、青森県ではしじみラーメンはお馴染みのラーメンだ。
さて、味が気になるところだが、思いきって入り塩しじみラーメン(800円)を頼んだ。あっさりさっぱりの塩ラーメンで小振りなチャーシュー(これが柔らかいと思いきや弾力性はあるが食べたらなかなか切れない代物)、刻みネギほんの少しとシンプルそのもの。細麺で多少もちもち感があってスープに絡んでいる。その肝心のスープは、もちろん塩味でまろやかな感じだが、「しじみ」の味がほとんどしない。えっ、これはしじみのエキスをほんの少々入れた感じ?うわぁ、丸っきり塩ラーメンみたいと呟いてしまった!で、店の人に訊ねたところ、はい、すみません、これから精進しますだと。他のラーメン(中華そば?)を食べていた女性は、美味しかったですと店の人に告げていた――。
今度は金華公園近くに出来たラムラーメンにチャレンジだ。

神田神保町ラーメン店『しじみ軒』1.スープ☆☆2.麺★★3.トッピング★☆4.接客・雰囲気☆☆5.価格☆☆


_20200213_134844

2020/02/13

知の巨人・批評家ジョージ・スタイナーの死

20200213120654_0000120200213120654_00002

雑誌『すばる』2020年2月号の藤田直哉の「江藤淳はネトウヨの“父”なのか」を読んだあと筆者は、江藤淳についてある思いを巡らしていた。妻の死後あとを追うようにして鎌倉の自宅で自殺したこと、著名な英文学者・詩人の慶大教授の西脇順三郎氏が若いうちからマスコミにちらほらされている江藤淳(西脇先生の教え子)を嫌っていたこと、『三田文学』に関わったこと、そして、1970年代前半に慶応大学の招きで来日した英国の文芸批評家・哲学者のジョージ・スタイナーと激しいバトルを繰り広げたこと(司会は彼の著書『言語と沈黙』の翻訳者由良君美)だ(見つけ出したらこのコラムに掲載したい。ジョージ・スタイナーと日本の知識人たちのやりとりがチョーオモシロイ。要は噛み合わないのである)。掲載誌が『展望』だったか(筆者の記憶が正しければの話だが)それとも他の雑誌だったか確認しようとあちこちの本棚を探しているが、今のところ未発見なのだ(その後確か髙宮利行氏がそのことを書いていたと記憶していて、探したがその記事も見当たらない。そうしたらネットで彼の記事を見つけ、雑誌は1974年8月号の『世界』であることが判明した。感謝!見つけ出した !! 該当のコピーがジョージ・スタイナー著高田康成訳『師弟のまじわり』の本に挟まっていた)。その記事を読むはこちら→
雑誌『世界』1974年/8月号 - 20200213120228.pdf
ついでに翻訳者の訪問記を読むはこちら→
翻訳者の訪問記 - 20200213120523.pdf
ジョージ・スタイナーの原著と翻訳書は何冊か持っているが、多言語を駆使し西洋古典文学(特にダンテやシェークスピアなど)や哲学を縦横無尽に論じたまさに博覧強記の記述の羅列で、素人にはなかなか手に負えない難解な書物だ。そうこうしているうちに昨日ネットでジョージ・スタイナーの死亡記事に出くわした。2月3日逝去、享年90歳。彼の新刊書や翻訳書が出る度に、少しかじっては投げ出しまた、かじりとその繰り返しが10年前までは続いたか。雑誌『ニューヨーカー』の書評でジョン・アップダイクと並んで彼の名前が出ている記事を読んだことが今となっては懐かしい。西欧文化中心主義に根ざしたユダヤ系の知の巨人だった。アウシュビッツにこだわり続けた人でもあった。イギリスの『ガーディアン』紙電子版にも彼の死亡記事が掲載されていたが、ここではアメリカの『ニューヨークタイムズ』の記事を引用したい。その記事を読むはこちら➡https://www.nytimes.com/2020/02/03/books/george-steiner-dead.html
【追記】上記で言及している慶大名誉教授髙宮利行氏が、オンライン『三田評論』にジョージ・スタイナーの来日とその一部始終を書いている。その記事を読むはこちら➡https://www.mita-hyoron.keio.ac.jp/foreign-visitors/201705-1.html

【追記2】人間の記憶はいい加減なものだということがよく分かった。図書館でジョージ・スタイナー来日時前後の雑誌『展望』を調べたら、1974年7月号の『展望』にジョージ・スタイナーの慶応大学での講演の記事を見つけ出すことができた。(その講演収録記事を読むはこちら→ジョージ・スタイナーの慶応大学での講演収録記事 - 20200224153630.pdf)
この雑誌で由良君美司会、ジョージ・スタイナー、加藤周一、江藤淳で鼎談したと思っていたのだ。筆者の勘違いだった。ついでに合本してある『展望』の目次などをしばし眺めた。花田清輝、いいだもも、森有正、堀田善衛、鶴見俊輔らの名前が目に留まった。1970年代前半の思想状況を概括していた評論もあった。

2020/02/11

雑誌『すばる』2020年2月号拾い読み

さて、北野道夫の「予測A」を読んだついでに、最近の文学シーンを少し眺めてみようと拾い読みをしてみた。その昔は文芸誌を何種類か定期講読していたことも。巻末の執筆陣を見ると、大分若い世代が書き手として名を連ねているようだ。その中で面白そうな、スバルクリティーク 藤田直哉の「江藤淳はネトウヨの“父”なのか」を読んだ。そのあと著名なロシア文学者のドストエフスキー絡みのエッセイやフランス文学者のポール・ヴァレリーのエッセイなどを拾い読みした。前野健太コラム「グラサン便り 66 冬のラブホテル街」も面白く読んだ。小説は続きものが多くスルー、鼎談もスルーした。「江藤淳はネトウヨの“父”なのか」を書いた藤田直哉はそう、北野道夫とほぼ同年で出身大学学部まで同じである。彼の略歴をネットで調べたところ、なかなか気骨のある人物のようだ。

ヘイトと炎上と宗教とイデオロギーの時代へ いまこそ江藤淳を(この項で江藤淳の生い立ち、代表作『夏目漱石』、『小林秀雄』、『成熟と喪失』などを簡単に述べ、「第三の新人」批評に触れ、現在最も参照されているのは『閉ざされた言語空間 占領軍の検閲と戦後日本』ではないかと書く。WGIPとは、ウォー・ギルト・インフォーメーション・プログラム 戦争についての罪悪感を日本人の心に植えつけるための宣伝計画の略で、保守論壇やネトウヨに多く参照されているという) WGIP史観――『閉ざされた言語空間』 WGIP史観のアップデート――百田尚紀樹『日本国紀』 WGIP論と、冷戦時代 『幼年時代』――禁止もなければ、検閲も存在しない世界 『一族再会』――言葉による死者との交換 フィクションの役割――「奴隷の思想を排す」 『一族再会』の言語観・批評観 『自由と禁忌――何が禁忌で、なぜ自由が必要か 死者の充満した国家の回復――『落葉の掃き良寄せ』』 断絶の原因はアメリカだけか 江藤淳とネトウヨの断絶 健全で簡素な場所へ

以上が小見出し。最後に次のように書いて締める。それが「政治」リアリズムだとしたら、あなたたちは何を「保守」するために戦ってきたのか。必要なのは政治のリアリズムではない。文学のリリシズムである。うまいこというものである。
筆者的には彼の文章の中で次のような箇所に目を奪われた。

内閣調査室が江藤に研究費を渡していたことが分かっている。内閣調査室のメンバーだった志垣民郎の回想録『内閣調査室秘録』(文藝春秋)に収録されているメモによると、1971年10月21日に志垣は江藤に接触している。「月7万円ぐらいをOKする」と記述がある。これは「委託調査」「委託研究」を「お願いする」ためのお金を、内閣から出したいということである。編者の岸俊光によると「志垣氏らは、若い有望な学者に委託費を出して研究をさせることで、現実主義の論客を育て、それを政策にフィードバックしていた」という。
志垣は「学者の会」を組織していった。「左翼学者はなかなか多く、政府としては対策が必要だった」からだ。その「学者の会」の筆頭に上がっている「アメリカ研究会」に江藤は参加し、月一回、アメリカと日本のことを中心に発表や議論が行われていたようだ。メンバーは政治学者の本間長世、永井陽之助らである。(P.208)

なぜか欧米文化研究者は当局に利用しやすい素地があるのかも。

【追記】江藤淳の『閉ざされた言語空間 占領軍の検閲と戦後日本』については、下記の本の書評の冒頭にも引用されている。その記事を読むはこちら→

『目からウロコの海外資料館めぐり』―図書新聞の書評 - 20200213173039.pdf

2020/02/10

雑誌『すばる』2020年2月号を拾い読み その前に新型コロナウィルス

中国の武漢市(人口約1100万人)の海鮮市場が発生元とされる新型コロナウィルスの流行が、今や世界中に広まって経済にも影響を及ぼしかねない事態が出始めている。それだけ中国人をはじめ人の移動が一昔前より頻繁になっている証左だ。それは連日の加熱気味のマスメディアの報道を見れば明らかだ。筆者的には横浜港に停泊中の豪華クルーズ船「ダイアモンド・プリンセス」の乗客の感染者が日々増えて70名ほどになっている事実に注目している(直近では新たに60人が感染していることがわかり、これで2月10日現在までで130人になると厚生省が発表した由)。3700人いる乗客全員に検査すれば良いものの、具合が良くないとみられた270人余の乗客のみの検査で、あとは2週間船内に閉じ込めて要観察の状態。多くは70代以上の高齢者で高血圧や糖尿病といった持病を持った人たちだ。ともかく全員にウィルス検査が必要だろう。抗ウィルスの治療薬は実験中の段階でまだまだ普及するのには時間がかかるようだ。中国では812人が死亡、前回のサーズを抜いている。そもそもは去年の12月末に武漢市の医師が不明なウィルスが出ていると警告を鳴らしたにもかかわらず、中国当局がその事実を隠蔽、情報操作したことがその後の感染拡大に繋がったと伝えられている。ともかく手洗いやうがいを励行し、マスク(マスク売れ切れで、ない、ないが続いていてパニック状態。特に中国では。中国人が日本にまで来て買い占めている!)着用で当分の間終息を待しかないようだ。過剰に反応せず冷静さが必要だろう。

2020/02/07

超人の面白ラーメン紀行 269 水道橋『蜂塚』

_20200207_140600

水道橋駅東口から神保町交差点に向かって徒歩5分ののところにあるラーメン店『蜂塚』。まだ入っていなかったラーメン店らしく、昼時に食べてみた。醤油ラーメンと餃子(3ヶ)のラーメンセットを頼んだ(税込1100円)。大山鶏のスープに麺は群馬産の小麦粉を使用した、なかなかこだわりの感じられる一杯。確かに麺はもちもち感があったが、肝心のスープがイマイチ(スープを少し多めにと頼んだのは筆者だから致し方ないか。味が多少ボケた感じだ)。新宿『はやし田』と関係あるラーメン店らしく、醤油味の中華そばが得意。JR戸塚駅近くにある『ふじ松』も確か『はやし田』の姉妹店。カウンターやテーブル席あわせて14席。1時半頃だったので客入りはそれほどでもなかった。2階は日本酒を取り揃えた居酒屋になっているみたい。狭い厨房で客がカウンターにいるのに従業員が携帯電話をかけているのにはオドロキ、店のマナーの悪さが目立った。

水道橋駅『蟻塚』1.スープ★☆☆2.麺★★3.トッピング★☆☆4.接客・雰囲気★5.価格★☆

_20200207_140716

2020/02/05

超人のジャーナリスト・アイ 178 毎日新聞2020年1月27日(月)夕刊特集ワイド 吉原――大衆の裏面史眠る街

毎日新聞2020年1月27日(月)夕刊特集ワイド 吉原――大衆の裏面史眠る街を読んだ。遊郭専門の書店主渡辺豪さんとのインタビュー記事。この記事で興味深い記事を発見。記事によると、18年に始めた有料の「遊郭ツアー」には毎月100人弱が参加、意外なことに女性が9割占めるという。「水商売や風俗に対する偏見は薄まっており、女性のほうが純粋にサブカルチャー的な興味をそそられているのだと思います」渡辺さんが焦燥感に駆られるように、近年の人気ぶりの一方で色街に関する学術的な研究は進んでいない。「売春をポジティブに捉えることになりかねず、タブー視されてきた面がある。特に近現代の記録は少ない。でも歴史は歴史として切り分けてもいいのでは」。こう話すのは郷土史に詳しい地元関係者である。売春防止法施行直後の1960年、台東区が主に江戸時代の吉原をまとめた「新吉原史考」の序説にはこう記されている。〈この遊里の特殊性を冷静に分析することは、たとえ公娼制度が全面的に否認された現在においてすら、あながち無意味な企てではあるまい〉と。その記事を読むはこちら→毎日新聞2020年1月27日 - 20200203190143.pdf

筆者の千束界隈散策の記事を読む①はこちら➡

https://crocul.cocolog-nifty.com/callsay/2009/05/post-d2af.html

筆者の千束界隈散策の記事を読む②(続)を読むはこちら➡ https://crocul.cocolog-nifty.com/callsay/2009/05/post-52f2.html

 

2020/02/04

超人の面白読書 145 雑誌『すばる』2020年2月号 北野道夫「予測A」を読む 4

奇妙な想像物をこしらえて滑稽がっているシーンも。

*3 (全年齢向け)

今日も合併相手の男子校から生徒会の役員が4人来て2時間ほど議論していったが、委員会の女子たちの頭の中はチ●コのことでいっぱいだった。
男子生徒たちが退室するとき、女子生徒たちは誰も立ち上がらなかった。彼女たちの股間に生えたチ●コがはち切れんばかりに勃起していて、立ち上がれなかったのだ。
それが生えてきたのは1ヶ月前のことで、委員会の女子生徒たち全員に同時に発生した。◻◻の娘の★★も例外ではない。
女子生徒だけになると、教室はたちまち賑やかな声で溢れる。会議資料の上に携帯端末や菓子や化粧道具が広がり、会議の内容はすぐに忘れた。
「ウサイン君ってチ●コでかそうだよね」
「え―、ガダイがいいからって分からないよ。李君のチ●コ見てみたいな」
「クリス君は?」
「被ってそう」
〈中略)
こんなことは親にも教師にも相談できないが、別に問題はない。彼女たちは真っ先にクロールに相談した。
「オッケー・クロール、うちらチ●コが生えてるんだけど?」
クロールによれば、それは想像ペニス〈イマジナリー・チ●コ)というものだった。想像妊娠はよく知られているが、その前段階として想像ペニス、想像性交があり、妊娠の後には想像出産、想像子女がある。
主な原因はストレスで、彼女たちの場合は男子校との合併というストレスが、意識、無意識、物理、様々な位相で影響を及ぼしていると考えられる。

(P.45-P.46)

そしてこの物語は次のように書いて終わる。


こうしている間にも、妻は間男に抱かれているかも知れない。現在進行形で私の家族は消滅し、仕事は奪われ、社会や歴史や自然環境は誰かの都合で改変されつづけている。それなのに私は、ここでこうしてロボット掃除機の小娘のAIを相手にセクハラごっこに興じている。これも誰かの予測通りだろうか。

(P.67)

2020/02/03

超人の面白読書 145 雑誌『すばる』2020年2月号 北野道夫「予測A」を読む 3

そして、主人公が部屋でセルフプレジャー(マスタベーション)する場面。

私は部屋の机の前に一人座って、性器に血が集まって来るのを感じた。
「僕は■■さんのことを考えて毎日エロいことをしている。300回回した」
「へえ、数えてるの?」
私のもう一つ告白を、■■は電話口で聞く限りは平然と受け止めたようだった。
「引かないの?」
「男ってそういうものなんでしょう?」
きっと年上の男に教えてもらったのだろう。■■のクラスメートたち、童貞の、10代の男子たちが家で何をしているか、男なら誰でも知っていることだ。
「これからも続けるの?」
「たぶん」

(P.25)


主人公と同じ会社の女性が交流した男性と情事にふける場面。


✳2 (成人向け)

池本の陰茎が鈴木の膣に半分入ったところで、ホテルの部屋の電話が鳴った。向こう三部屋先まで聞こえるようなけたたましい音だった。池本は無視して続けようとしたが、鈴木は膝を狭めて池本の動きを制した。
「出て」
池本は鈴木と半分繋がったまま、生っ白い腕と身体を伸ばして枕の上の電話を取った。ベルが止まって静かになる。池本は憮然とした態度で応答し、受話器を鈴木に差し出した。
「きみと話がしたいって」
「誰?」
「女の人」
役立たずと心の中で罵りなから、鈴木は受話器を受け取って耳に当てた。
「もしもし」
「鈴木さん、あなたと話がしたいんだけど、一時間後に池袋に出てこられる?」
「どなたですか」
「会ったら教えてあげるわ。断るとあなたにとって面白くないことになるって、分かるでしょう?」
鈴木には朝から違和感があって、家を出るときにははっきりと視線を感じたら、すっと尾行され、今も監視されているのかも知れない。だからこんな電話に敢えて出たのだ。
「高田の差し金ですか」
「詮索は無駄よ」
池本がにやりと口を歪ませて陰茎を一気に根元まで差し込み、激しく腰を振り出す。ベッドが軋み、身体は波打ち、接合部は泡立ったが、鈴木は無表情を崩さず、平然と会話を続けた。
「今、取り込み中なんです。2時間後じゃだめですか」
「私は結構忙しいの。1時間ですべて済ませて池袋まで来て。あなたならできるわ」
電話の女は鈴木が今何をしているか分かっているような口振りだった。池本は相変わらず一生懸命腰を振っているが、鈴木にはまったく響かない。膣の中で陰茎がだんだん失ってゆく。
「なら、あなたが渋谷まで来たらどうですか?」
「嫌よ、あんなどぶ臭いところ」
池袋だって大差ないだろうと思ったが黙っていた。電話が切れると、鈴木は頭上に受話器を持っていって器用に本体の上に戻した。
「あのさ」
池本が気まずそうに見下ろしている。
「全然気持ちよくない?」
こいつは相手がよがらないと自分も気持ちよくなれないタイプか、面倒くさいな、これきりにしようかな。鈴木は両足を池本の腰に絡めて密着し、恥骨同士をぶつけた。
「我慢してたの、もう、馬鹿!」
萎えかけていた陰茎が再び鈴木の中で実体化してくる。そして最大限のそれを軽く締め付けてやると、池本はあっけなく果てた。

(P.39)


2020/02/02

超人の面白読書 145 雑誌『すばる』2020年2月号 北野道夫「予測A」を読む 2

それでは印象的な場面を本文から引用してみよう。57頁もあるのでほんの少しの引用だ。はじめの出だし36行。主人公が自分の家にいてシャワーを浴びるところからこの物語は始まる。


今、家の中には私しかいない。浴室でぬるい湯船に身を浸し、どこかに水滴が落ちる音を聞き、壁の外に広がる薄暗い静寂を感じている。
妻は5歳の長男を空手教室に連れていき、16歳の娘は土曜日なのに朝から学校に行った。最近は何かの委員会活動で忙しいらしく、土日も関係なく制服を着て出ていく。まともな企業なら働かせ過ぎで摘発されているところだ。
湯船に浸るつもりはなかったのだが、昨日遅くに帰ってそのまま寝てしまい、朝、シャワーを浴びようと思って浴室に入ったら、湯が張ってあった。おそらく娘の朝風呂の残りである。わが家では珍しいことではなく、昨日も会社の同僚とそんな話をした記憶がある。温度を確かめて、少しだけ湯を足して入った。
目を凝らすと、水面に細かいごみが浮かんでいるのが見える。娘は妻と先夫の間の子なので、私とは血は繋がっていない。純粋な女子高生の残り湯じゃないですか、と会社の後輩が興奮していたが、血は繋がっていなくとも子供の頃から知っているので、前後の脈絡なく純粋な女子高生として娘を見ることは決してない。決してないが、今や出会った頃の妻と同い年になった娘は、とても美しかった。私などの血を引かなくて良かったと思う。
妻とは6年前に結婚し、5年前に長男が生まれた。長男は生物学的にも私の子供である可能性が高い。父親譲りの運動音痴を矯正するため、空手教室に通わせているが、本人はあまり乗り気ではない。
「オッケー・クロール。換気扉を回して」
私が命じると、小さな電子音がして換気扉が回り始める。同時に、クロールは私が換気扉を付けさせたことを知っている。30分ほど前に目覚めて、まずトイレに行ったことも、冷蔵庫の気の抜けた炭酸水をらっぱ飲みしたことも知っている。それは世界中のあらゆる端末に偏在しながら、東京の中心、千代田区千代田に巨大ビルとして聳えている。もはや神にも等しいクロールに生活の細部まで把握されることを、人々は恐れなくなった。あるいはほとんど忘れた。それは圧倒的な便利さのためでもあり、無力感のためでもあり、双方の無関心のためでもある。

(P.10―P.11)


2020/02/01

超人の面白読書 145 雑誌『すばる』2020年2月号 北野道夫「予測A」を読む

_20200201_154316


雑誌『すばる』2020年2月号の巻頭を飾った北野道夫の小説最新作を読む(P.11~P.67)


題名の「予測A」は、妄想を逞しくした結果のタイトルだろうか――。 それにしても好きですね、男女間、否、男女間とおぼしき人たちのプレイが。一歩間違えば、否、間違えなくポルノ小説、性愛小説、自慰小説だろう。自己愛小説か。ウーム、谷崎みたいにフェティシズムまでには至らない、少し抑止力が働いて醒めた感覚で自分の肉体や相手とのやり取りを捉えている。あらすじは単純そのもの(妻と子供二人のいるマンション住まいの30才後半にかかった会社員が、家のことや会社のこと、妻や子どもや会社の仲間を描く。拾って来たロボット掃除機が壊れ、直しに長野県にある会社を訪ねる……)だが(しかし、現実と夢の交差するような描写もあって、読んでいるうちに戸惑ったことも)、いろいろと仕掛けが施されていて、読者はその仕掛け(ロボット掃除機が大きな役割を果たしている。それはAIを駆使した現代の象徴的なモノ)に引きずられて非日常の不思議な空間に立ち会わせられる。何と言うことはない、少しアンニュイ感の漂う中年手前の人間のスリリングなチャレンジかも。異常な世界に誘惑されたい妄想が、仕掛けられた小道具自体を有機的に作動することによってある種の「予測」を引き立たせ、自分の実在感を曖昧にしたまま、異空間の居心地さを体験している。
夫婦間、職場での男女間そしてモノに感情移入しながら男女間の垣根を越えて、筆者的に言わせれば、溶けているようななまめかしい世界を演出している。ダリの絵のゆがんだやわらかい時計、それを白い精液で満たした感覚といったら良いだろうか。
セルフプレジャー、この言葉の何と新鮮なこと。作者は自慰行為に新たな意味を賦与した。それはかつての罪悪感的なイメージから解き放たれて軽いゲーム的な遊戯に異化し、むしろ行為自身を楽しんでいるような素振り書き振りである。私たちはこの「ネオ ポルノ ノベル」を歓迎すべきか今しばらく時間が必要かもしれない。夫婦間のあり方が変わって来ている気配、否、仮面夫婦的な様相の肥大化、それは現代の日常を切り取った一つのリアルさかもしれない。また、文章は読みやすく現代の若者言葉も多用されているが、傑作なのは、■■、★★、□□、チ●コといった人名が入りそうな言葉だったり、猥褻な言葉をすぐ想像つくことだったりと伏せ字効果を散りばめ面白可笑しくしていることだ。伏せ字にゲーム感覚的な要素を取り入れている。一つ忘れてならないことは、性別の交換可能な(願望)、いわば、男がオンナに、女がオトコになってその仕草特に性的な仕草を楽しんでいる。性倒錯とは古い概念で、むしろアニメ的な世界観の反映だろうか。男の象徴的なモノがオトコ化した女に弄ばれている。これは明らかに現代の性生活の乱用、悪戯、戯画化したとしか思えない。いやいや、やっと陽にあてられた感じなのか。現代的なフーゾクは、どっこい変容し続け、ゲーム的な進化を遂げているということなのか。誰でも抱いていて誰でも躊躇する世界を、「予測」しながら妄想を掻き立てて行く実験的な小説なのである。谷崎潤一郎、永井荷風、澁澤龍彦、渡辺淳一、アナイス・ニン、マルグリッド・デュラスなどに代表される性を扱う小説は性愛文学といわれ人間の根源的な事柄で、今までもタブーに挑戦した作家は結構いる。チマチマしていてミニマニズム風だがそういったジャンルの延長線上にある中編小説だ。

【追記】ある統計によれば、2、30年後の日本の社会は3人に1人が独身者と「予測」されている。快楽あるいは自己愛・自己欲求のために精液は大量に流される運命にあるのか。セルフプレジャーは健康に良いと見直す見方もあるが・・・。文學界新人賞受賞歴(芥川賞賞候補にも。その後しばらく鳴りを潜めていた様子)のあるこの作家は2、30年後にどのような作品を書いているのか「予測」がつきにくい。が、きっと通俗小説も書いているだろうが、筆者的には彼独特のオリジナルな領域を開拓してもらいたい。文学に何ができるかではなく、狭い文学領域にとどまらず文学を超えて書き続けてしてほしい。(2020.2.4 記)

【追記2】2020年2月4日の東京新聞「大波小波」欄に北野道夫の最新作「予測A」の短評が掲載されていた(名古屋の知人がショートメールで知らせてきた)。その記事を読むはこちら→


大波小波 - 20200206182708.pdf
少し飛躍しすぎ、深読みしすぎと思うが・・・。ジョージ・オーウェルの『1984』(テレスクリーン)の近未来小説を思わせる、千代田区千代田、改変、クロール➡コントロールねぇ・・・。それより素直に読んだ方がオモロイ、エロい。(2020.2.6 記)


【追記3】新たな書評記事を知り合いのYさんから教えてもらった。読売新聞2020年1月28日【文化欄】文芸月評。北野道夫氏は写真入り、しかも辻原登氏の脇に並んで。その書評を読むはこちら→


読売新聞書評2020年1月28日 - 20200213183506.pdf
(2020.2.13 記)

【追記4】小説関連記事。2020年年2月21日付毎日新聞夕刊特集「吉本ばななさんらを育てた名編集者 根本昌夫さん」の記事が面白い。インタビュー記事で、聞き手は毎日新聞記者の藤原章生氏。吉本ばなな、島田雅彦、石黒達昌、竹野雅人、野中柊、高山羽根子、木村友祐、嶋津輝、佐々木愛、湊ナオ、高橋陽子、高瀬隼子らのデビューに携わった名編集者で『海燕』や『野性時代』の文芸誌の編集長を経験した人。彼の小説教室が人気だという。小説を書くこととは恥しいこと、自分をさらけ出すこと、なりすますことだと。「僕は編集者だから、この人が本当は何を書きたいのかということはわかる方だと思います。すると、書いているものと書きたいものとの距離がわかり、それを埋める手伝いをしているんです。その人自身がどうすれば近づけるかということです」ここには名編集者の読み手としての確かさ、鋭敏 な感受力と眼力があるようだ。そして、「小説として読めるものが全体の5%、そのうちの5%が候補に残る。さらに、2000人の応募があるので最終候補は5人という勘定だ」という。文学賞にありつける確率は全人口の5%の5%の5%で、1万人に1人強と書く記者。才能と覚悟、文章修業の結実、良き文学アドバイザーを得て、 最後は運も味方につけることか。

その毎日新聞の記事を読むはこちら→

根本昌男夫毎日新聞夕刊特集ワイド - 20200224154718.pdf


(2020.2.22 記)

« 2020年1月 | トップページ | 2020年3月 »

2020年8月
            1
2 3 4 5 6 7 8
9 10 11 12 13 14 15
16 17 18 19 20 21 22
23 24 25 26 27 28 29
30 31