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2019/02/18

超人のドキッとする絵画 32 ムンク展―共鳴する魂の叫び(東京都美術館) 3

会場は人で溢れ(中には車椅子で熱心に鑑賞していた年配者も)作品鑑賞もままならぬまま出口のミュージアムショップへ(館内鑑賞時間は約1時間30分。いつもより40分くらい少ない)。ところが、ここも人で溢れていたのだ。15分くらい並んでいつものように図録と絵葉書を買ってさっさと外に出た。外はこの季節にしては意外と日差しがあって暖か。右にフェルメール展、左にルーベンス展の看板が並び、上野公園界隈はさながら著名な西洋絵画のオンパレード風。先々週あたりの新聞の文化欄には美術館関係者が美術館は儲かるかのタイトルで最近の美術館事情を書いていたが、その関係者によると、この界隈で150万人が来館したようだ。
さて、筆者なりの今回のお気に入りをピックアップしてみたのが前々回のコラムだ。その中でも⑦「生命のダンス」や⑧「マドンナ」、⑩「メランコリー」(以前から取り上げていた)を除いて⑨「星月夜」、⑪「二人、孤独な人たち」と⑫「自画像、時計とベッドの間」の絵がいい。⑨の「星月夜」はゴッホの同名の絵1433695175288_2

【写真: ニューヨークのMoMA 美術館所蔵のゴッホ作「星月夜」 筆者=撮影】

と比べて夜景がどう描かれているか。⑪の「二人、孤独な人たち」の色遣いと配置が抜群、気に入った一枚。なぜ二人は後ろ向き?チコちゃんに訊いてみたい(笑)。そして⑪の「自画像、時計とベッドとの間」の絵がこれまたいいではないか。最晩年、死と隣り合わせの生活の一コマ、都美術館の図録の解説でも言及していたが、自意識過剰から解放されたありのままの作者がいる、しかもかつてはすべてを“捧げた”彼女の姿も侍らせて、柱時計には時間は刻まれず“溶けている、“あるいは消えかけている、今や何にも役に立たない、時間が止まったまま。赤と黒のツートンカラーのベッド、そして猫背で立っている。すべては自然、ありのままの自分を受け入れている、老境、死を意識した姿だ。実際にムンクはこの絵を描いた翌年の1944年に亡くなっている。絵に一生を捧げ独身を貫いた。
今回のムンク展はテーマ別の構成で配置され、暗さから明るさへと変化していく様が絵間(感)から読み取れた。“感性の画家”理解が更に深まったようだ。残念ながら、筆者が好きな「思春期」や「カール・ヨハン通りの夕べ」は観ることができなかった。今回のオスロ市立ムンク美術館所蔵とは違う美術館などで所蔵しているみたいだ。これらの絵を観に今年の夏はノルウェーのオスロに飛んでみたい。その前に1970年開催の「ムンク展」のことを遠い記憶を辿りながら書いてみるつもり。手がかりは少しはあるのだ。筆者の古いノートから雑誌『世界』(1971年2月号。P.221~P.242)の座談会、ムンク―芸術と狂気の間―(小野忠重、寺田透、なだいなだ、針生一郎)の切り抜きが出てきたのだ。
その出てきた雑誌『世界』の座談会ではムンクの版画、リトグラフ、エッチングなどの技法を取り上げていた。そこには日本の浮世絵の影響もみられると 。また、なだいなだが精神科医らしくムンクの狂気について熱く語っていた。美術評論家の針生一郎の意見が鑑賞者としては一番参考になった。座談会の冒頭で次のようにムンクについて語っている。
「彼は絵画のなかに文学をもちこんでいるんじゃなくて絵画でも文学でもなくなるような、表現の限界を越えるようなところにぶつかった作家ではないか」
作家の寺田透は、ムンクの絵など日本人に人気なのは、絵より人なのかもと、精神に異常のある人たちの絵がカタルシスになるような要素があると。
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【写真左上: 「思春期」 写真左下: 「カール・ヨハン通りの夕べ」『図録 ムンク展 ―フリーズ・装飾性 』(東京新聞 2007年)より】

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