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2019/02/12

超人のドキッとする絵画 32 ムンク展―共鳴する魂の叫び(東京都美術館) 2

ムンク展は1970年、2007年それに今回の2019年1月と3度鑑賞した。ムンクの絵画はルノアール、モネやセザンヌなど印象派の絵画それにゴッホ、モジリアーニ、ユトリロ、ミッシャなどと同様に日本人にウケるらしく、今回も開催日の2018年10月27日~最終日の2019年1月20日の約3ヶ月間で67万人が来館し成功を収めたようだ。
筆者は前売券をコンビニで購入していたにもかかわらず、会場の上野の東京都美術館に足を運んだのは最終日の前々日だった。平日とあって30分くらい並ぶだけで会場に入れたのでラッキーだった。今回はやはり目玉の「叫び」を鑑賞することが主目的だが、過去に観たものとどう違うかも興味のあるところ。
1 ムンクとは誰か 2 家族―死と喪失 3 夏の夜―孤独と憂鬱 4 魂の叫び―不安と絶望 5 接吻、吸血鬼、マドンナ 6 男と女―愛、嫉妬、別れ 7 肖像画 8 躍動する風景 9 画家の晩年 の9パーツから構成。第一印象は自画像や肖像画が多いことだった。エドヴァルト・ムンクはドイツ「表現主義」、北欧リアリズムそして資本主義の矛盾を突く社会派の画家で、巧みな心理描写で愛、欲望、不安、絶望、嫉妬、憧憬、孤独、死をテーマにいくつもの作品を残した。また、多くの自画像や肖像画も描いた。代表作『人形の家』のイプセン、代表作『令嬢ジュリ―
_20190212_171826_3_20190212_105015_2や映画監督ベルィマンにも多大な影響を与えたストリンドベリ、フランスの象徴主義を代表する大詩人マラルメ(筆者はまたまたこの詩人に挑戦中)それに『ツァストラはかく語りき』でニヒリズムの創始者ニーチェの肖像画は、ごく身近に作家や哲学者がいて交流、刺激を受けた人たちを優しさを込めて描いている。イプセンやストリンドベリは明治期・大正期に日本でも流行った自然主義文学に影響を与え、ムンクの絵は大正文学の一大潮流を形成した“白樺派”によって日本に紹介されたのが最初らしい。
超有名な「叫び」の前では、係員が立ち止まらないで次にお進みくださいと何度も来館者に声をかけていて煩いくらいだった。それほど多くの人たちが観に来たということだが、肝心の絵の前ですっと通りすぎるとは画家に対して失礼と思うのだが・・・。じっくり鑑賞する暇がないのだ!美術館に来ていつも思うのだか何とかならないものか。しかも混雑している館内では少し離れて作品を眺めざるを得ない、視力の衰えた筆者などにとっては何かと不自由さも感じたのだ。
さて、「叫び」である(「叫び」は様式や描いた時期が違うものが全部で5点存在している。今回の回顧展ではオスロ市立ムンク美術館所蔵の1910年制作?の絵が初出展された)。橋の上で耳を塞いで何かを叫んでいる、顔には目玉が描かれていない、そう、あの有名な絵だ。夕陽が血の色に染まるような空の明るさと微妙な暗さも不気味、また、橋の奥に見える黒い無関心を装う男たちにも注目だ。恐怖―。画家はこの時期精神を病んでいて、心の、魂の叫びを表出、人間として一杯一杯の表情を見せているのだ。それはレッドとオレンジ、ディープブルーそれにグリーンを配した独特の色彩と曲線で紡いだ心模様、言い換えれば、心象風景だろうか。〈不安〉と〈疎外感〉の象徴―。画集ほかでこの絵を何度観てもその時々で印象がかわるから不思議だ。今に生きる私たちにも共感を呼び起こす「叫び」は確かに普遍性を帯びている(だからこの絵はスキャンダルにまみれ、窃盗団―テレビでは事件の一部始終をドキュメンタリータッチで放送していた―に持ち逃げされたり、価格が跳ね上がったりと善悪は別として世界中の絵画ファンを魅了しているのだ)。はて、この人は叫びながら何を訴えているのだろう、それとも声にならない声を心の底から発しているのだろうか。後ろから何者かに追いかけられている、切羽詰まったものが・・・。うむ、橋の右上の方にはフィヨルドに浮かぶ小さな二艘の舟の姿も―。忘れようとしても忘れられない強烈な印象を残す。大昔作家の五木寛之がこの絵を繙いて解説していたのを思い出した。そして今回印象に残った作品は前のコラムで書いた作品だが、特に―。(続く)

【写真右上: 『令嬢ジュリー』英文ペーパーバック版 の表紙と裏表紙 METHUEN &CO LTD 1967。購入日: 北澤書店にて1972年10月28日】

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