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2017/08/02

超人の面白読書 128 雑誌『うえいぶ』第50号 終刊号(2017年3月31日発行) 5

阿武隈高地(昔は確か山脈と言っていたが)、とりわけ二ツ箭山近くの磐越東線「小川郷」駅周辺の地域を巡る物語は、明治、否江戸後期、大正、昭和の時代を逞しく生きた草野家の人々の物語、言い換えれば個性豊かな人々の輩出であったことがこのエッセイから読み取れる。夏井川、本郷、紋十郎家、登と欽一郎、小川の百貨店、佐平太と遠平、戊辰戦争と奥羽出張病院、宮本壽硯、櫻關と培根塾、牧牛共立社、小川劇場、常慶寺、天文一揆と草野興八、高蔵・馨・心平、皇室と戸渡のヤマユリ、櫛田民蔵とマルクス學、眞崎甚三郎、草野氏文書、生と死と、祖父の家、結びにそして謝辞が小見出しで、読み進むにつれ、静寂の地下道から水滴がぽとりぽとりと零れ落ちる音が聞こえてくるようだ。
ここで草野心平自身の詩作品、かの有名な詩篇「上小川村」を書き写してみれば本郷界隈、“火の見やぐら”周辺がより鮮明になる。

上小川村

  大字上小川

ひるまはげんげと藤のむらさき。
夜は梟のほろすけほう。
ブリキ屋のとなりは下駄屋。下駄屋のとなりは小作人。小作人のとなりは質屋。
質屋のとなりは鍛冶屋。鍛冶屋のとなりはおしんちやん。おしんちやんのとなり
は馬車屋。馬車屋のとなりは蹄鉄の彦・・・・・・。
昔はこれらはみんななかつた。
昔は十六七軒の百姓部落。
静脈のやうに部落を流れる小川にはぎぎよや山魚もたんさんゐた。
戸渡あたりから鹿が丸太でかつがれてきた。
その頃ここで。
白井遠平が生まれ育つた。
櫛田民蔵が生まれ育つた。
いまも変なのが少しはゐる。
人のいい海坊主みたいにのろんとした草野千之助も生きてゐる。

ひるまはげんげんと藤のむらさき。
夜は梟のほろすけほう。

   背戸は赤松の山。前はすすきや草のなだらか
   な丘に屏風岩。そのまんなかのにぶい蛍色の
   出で湯をまもる家一軒。ここを湯の沢といふ。

ー岩波文庫『草野心平詩集』より
(続く)

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