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2015/01/25

超人の面白テレビ鑑賞 NHK戦後史証言プロジェクトと100分de日本人論

全豪テニス男子シングルス3回戦・第5シード、世界ランキング第5位の錦織圭選手と世界ランキング第38位のアメリカのスティーブ・ジョンソン選手との対戦をテレビ観戦。日本時間3時半から5時半頃の2時間強の白熱した対戦は、結局日本の錦織選手が6-7、6-1、6-2、6-3で逆転勝ちし4回戦へ進んだ。テレビ中継終了時では4回戦の対戦相手がまだ判らなかったが、そのあとスペインのダビド・フェレール選手と戦うことが判明した。久し振りにテニスを観戦した感想は、序盤で苦しんだものの、錦織選手の迫力のあるサーブとリターンのうまさ、左右に揺さぶる頭脳的なショット、ラリー、特に相手の苦手なバックハンドへ持ち込む攻撃は見事だった。ディビット・チャンという優秀なコーチを得てからの活躍は眼を見張るものがあるが、何より試合経験の豊富さが彼をして一回りも二回りも大きくしているような感じを受けた。「ともかく勝つことがすべて」と語る錦織選手の意気込みが感じられて頼もしい。

さて、土曜日は出張帰りで一休みしたかったが、結局テレビ視聴日になってしまった。土曜日深夜に観た番組が面白かったので少し書き留めてみよう。いずれもNHK ETVの番組から。

①NHK 戦後史証言プロジェクト 2014年度「知の巨人たち」 日本人は何をめざしてきたのか
第7回 三島由紀夫

ノーベル賞候補にもなった作家の三島由紀夫を取り上げていた。大蔵省時代の友人、日本文学研究者のドナルド・キーン、詩人の高橋睦郎、美術家の横尾忠則、歌手の美輪明宏、編集者、元全共闘メンバーの演劇人などの証言を交えて構成。本邦初公開の三島自身の肉声の入ったテープ(東大の安田講堂で行った学生との対話はすごく興味を引いた)、“盾の会”員に残された檄文や自筆の手紙、元全共闘メンバーの証言、遺作『豊饒の海』の結末シーンが替えられていたいう新事実公開など現在知りえる情報が満載。やはり何人かが異口同音に言っていたのは、三島由紀夫は「大虚無」を抱えていた作家だったいうことが印象的。今年は三島由紀夫生誕90年、没後45年にあたる節目の年、三島が憂いて止まなかった日本だが、現在の日本の政治・経済・社会・文化的な状況をどう見るか―。想像を掻き立てるテーマなのは確かだ。筆者的にはドナルド・キーンの「大虚無」発言、東大の安田講堂での全共闘メンバーとの右翼対新左翼の対話、そしてその中で三島が自分と全共闘との思考の違いは、時間的思考と空間的思考の違いだと言及していたことだ。また、この番組の圧巻は自衛隊市ヶ谷駐屯基地での生々しい三島自決に至るシーンの映像だ。筆者はその時どこにいたか―。

この第5回には全共闘の教祖的存在だった評論家の吉本隆明も登場していた。吉本はどこの機関にも属さない民間思想家だった。筆者的には吉本と同時に、思想家久野収を思い出す。吉本の影響を受けて育ったミュージシャン、社会学者上野千鶴子、社会学者橋爪大三郎、哲学者梅原猛、漫画家の長女などの証言で構成。彼は自らの雑誌「試行」を発行し続け、著作や講演などで生計を立てていた。詩人でもあった彼は『言語にとって美とは何か』(筆者も何回も読んだが解りにくかったのを覚えている)他多数の書物を残している。
文京区西片の自宅7畳の本や雑誌で天井高く積まれた書斎は、独自の思想が生まれた空間でもある。醸し出す雰囲気が観る者に迫る。晩年は拡大できるモニターを使って最後まで書き続けた信念の人でもある。

第8回は手塚治虫。因みに2014年度「知の巨人」の過去の登場人物は、第1回、原子力 科学者は発言する〜湯川秀樹と武谷三男〜、第2回、ひとびとの哲学を見つめて〜鶴見俊輔と「思想の科学」〜、第3回、民主主義を求めて〜政治学者丸山眞男〜、第4回22歳の自分への手紙〜司馬遼太郎〜だった。

そして上記の番組のあとに再放送の番組「100分de日本人論」を続けて観た。番組が終わったのは午前2時過ぎだった。
古今東西の「名著」を、25分×4回で読み解く「100分de名著」の正月スペシャル版。2,014年1月2日放送。日本人とは何か ?を名著で探る番組だ。Mv1_3【写真はNHKの番組ホームページから】
①評論家松岡正剛は九鬼周造著『いきの構造』 、②作家赤坂真理は折口信夫著『死者の書』、③精神科医斉藤環は河合隼雄著『中空構造日本の深層』、④人類学者中沢新一は鈴木大拙著『日本的霊性』をそれぞれ取り上げてプレゼン。司会はNHKの武内陶子アナウンサーとタレントの伊集院光。それぞれ取り上げた本はもちろん名著でプレゼンターはよく読み込んでいる。筆者はあまり日本人はと、特殊日本人論を打つのはかつてのイザヤ・ベンダサンの著作みたいで、いやーな雰囲気を感じる。むしろ世界の中に日本を位置づけ直し、外と内、特に近隣諸国との位置関係を捉え直すキーワードとして、今回のプレゼンの共通項を活かせば良いと思うのだ。日本人のものの考え方にある中心が落ちている、いな、中心がない、“中空構造”、“無分別智”思想は、争いを避け平和を維持する日本人が自ら編み出したものごとの根本にある解決方法だろう。知恵とも言ってもいいものだ。未来的にはこれを深化してゆくことで文明圏の違う人たちと渡り合うことができれば、真のグローバル化の中のローカル化、ローカル化の中のグローバル化が実現可能と思うのだ。周縁思考や楕円思考、そして互恵もこの範疇に付け加えたらさらに盤石になるかもしれない。
河合隼男著『中空構造日本の深層』、鈴木大拙著『日本的霊性』は読んでみたい。この2人の他の著書はかつて若いときに読んだことがあるが。番組の最後の方で触れていた鈴木大拙著『日本的霊性』に書かれている“妙好人”の話は日本人の生き方の極致を示唆していて印象的。司会の伊集院光の学者先生などへの的確な質問も良かった。この番組で一番唖然とさせられたのはひょっとしたら若者ことばだったかも。日本人の心性について議論していたときだった。小生も知らなかったけれど、NHKの女性アナウンサーさえも知らなかったのだ。さすがのタレント伊集院光は知っていて、怒りの微妙なニュアンスを伝える若者ことば、「激おこぶんぶん丸」(怒っているの意)を怒りをやわらかく伝える表現として実例を挙げた。筆者はこの若者ことばに新鮮な驚きを覚えて思わず笑ってしまった。また、精神科医の斉藤環も若者のある集団を指す言葉に「マイルドヤンキー」(不良と言えばいえる程度の柔かいヤンキーの意)というのがあると指摘。かつて“やわらかい個人主義”と言った評論家もいたが・・・・・・。時代状況を感覚的に映し出していて鋭い ?

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