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2013/07/29

超人の面白映画鑑賞 イングマール・ベルイマンの初期作品『野いちご』と『処女の泉』

渋谷の映画館「ユーロスペース」で始まったイングマール・ベルイマン映画のデジタルリマスター版での上映第二弾。今回は1956年の第10回カンヌ国際映画祭審査員特別賞作品の『第七の封印』、1957年の第8回ベルリン国際映画金熊賞受賞作品の『野いちご』それに1959年の第33回アカデミー賞外国語映画賞作品の『処女の泉』の初期3大傑作。20130731120937_00001
【写真は「ユーロスペース」のパンフレットより】

筆者は酷暑の中、ゲリラ豪雨が来ないことを祈りつつ、渋谷の道玄坂の映画館「ユーロスペース」に向かった。昨年12月に上映された『秋のソナタ』に続いてのベルイマン作品鑑賞のためである。渋谷の人混みの中を掻き分けて真っ直ぐに目的地へ。到着したのはなんと上映開始の1分前だった。ネットで書いてある案内で3本、1500円と思っていたら、当映画館は“名画座“ではありませんとチケット売り場の受付嬢に言われた。各作品、1500円ときちっと書いておかないと勘違いする人もいると筆者が指摘。『野いちご』と『処女の泉』を続けて鑑賞。
『野いちご』は人生の終焉にさしかかって小旅行する老医師が、短い一日を通して人間の老いや死や家族を、夢や追想を織り交ぜながら描いた映画。青春の叙情的な象徴としての野いちごがこの映画のタイトル名。人生の豊饒さと優しさに満ち溢れた作品。成功者として名誉博士号を授与される老医師にも、夢にまで出てくる青春の甘酸っぱさがあったこと、息子の妻が同伴する小旅行では青春を過ごした家の周りにあった野いちごを案内、それは青春時代を過ごした、男女間の懐かしい一コマ、車中で息子のことを語る息子の妻、老母見舞い、また、イタリア行きの若い男女に出会い世代間を超えた優しい交流を、たまには“交通事故”もー。旅は道ずれ世は情けを地でいく。やがてルンド大学での名誉博士号の授与式に出席、祝福のうちにそれも無事終える。息子夫婦も仲直り、家の外ではイタリア行きの若者が歓喜の歌を披露、家政婦に最高の日と祝福され、老医師は平和のうちに眠りにつく。
誰でもやがては味わう老後、大事な人生の充実感をいかに味わうかと問うた作品。何でもこの映画の着想はベルイマンの出身地ウップサラに行く途中に浮かんだとか。出演はビビ・アンデショーンやイングリッド・チューリン、ヴィクトル・シューラストルムなど。女優のあやしい演技が光るが、主旋律は哲学的。56年前の映画だが現代でも充分に通用するテーマ、否現代に生きる日本にとっては更に深刻かも。映画のタイトルの『野いちご』からの連想だけでは全体のストーリーは掴めなかった。もっとロマンチックなものとずっと考えていたのだった。
午後3時から始まった2本目は『処女の泉』。ベルイマンが黒澤明監督の作品『羅生門』に感銘を受けてできた作品といわれている。清らかな少女に起こった悲劇と父親の痛烈な復讐を描いた名作。北欧独特の光のコントラストが見事。出演はマックス・フォン・シドー、ビルギッタ・ヴァルベルィ、ビルギッタ・ペテルソン、グンネル・リンドブロム他。
ある本によれば、この映画の直接の題材はスウェーデン南部のイェトランド地方に伝わるバラード『浮浪者の処女殺し』から取られたらしい。しかもスウェーデンの中世を題材にしている。スウェーデンの最初の宗教は戦いの神オーディンを中心とする自然神的多神教だったが、9世紀前半ごろから急速にキリスト教ーカトリック教にとって代わられた。しかし、民間、特に下層階級には、古来の信仰も長いこと根強く残っていた。この映画のテーマは、そうした時代と社会とを反映している。
浮浪者に処女殺しをされた父親の復讐は凄絶で聴衆の目に鋭く焼き付き、心にもぐさっと来るものがあった。迫力満点の演技。浮浪者の犯すシーンも凄まじいが、それにもまして感動的なシーンは、娘の死体を抱き上げた後その亡骸の前で父親が叫ぶシーンだった。父親が神に向かって痛烈な祈りを捧げる。神の存在する余地がないほど、哲学的な命題が露出する。復讐と異常な殺人の後の祈り。ラストシーンは死体のほとりから自然に湧き出た水だ。やがて清らかな泉に。父親はここに教会を建てることを誓う。
今回ベルイマンの初期作品『野いちご』と『処女の泉』の2作品を鑑賞したが、これらの作品に共通していることは、一見静と動のコントラストのようにみえて実は二つとも神の赦しの問題を扱っている。Gods silenceー。ベルイマンは牧師の息子で権威主義的だった牧師の父を長い間嫌っていたー。


残りの一本『第七の封印』はかつてテレビで観たので今回はパス。

追記 この7月30日でベルイマン監督が亡くなって丸6年が経った。(2013年7月31日 記)

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