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2013/01/09

超人の面白映画鑑賞 アルベール・カミュ原作『最初の人間』 2

題名の「最初の人間」とはアルジェリアに根を降ろした家族、特に父を指すものだろうか。また、この物語は移民の子が貧困のなかでその環境に負けず成長してゆく人間ドラマを描くだけではなく、当時のアルジェリア独立戦争の相対立する政治的状況も描いている。
物語は著名な作家になった主人公ジャック・コルムリが戦争で死んだ父親の墓を訪ねるところから始まる。そしてジャックが大学で講演するためアルジェリアへ飛ぶ。本当の旅の目的は母親を訪ねることだが。講演はアルジェリア人とフランス人の派閥の言い争いで混乱するが、講演はこう締めくくって終える。作家の義務とは、歴史を作る側ではなく、歴史を生きる側に身を置くことです。私は固く信じます。アラブ人とフランス人が共存できる可能性を。自由と平等な人々による共存こそが、現在での唯一の解決策です。講演を終えて独りで住む母親のアパートへ。そこで実感したこと、それは相変わらずの母親、そして地中海の青い海ー。いつか心は少年時代に。若くして父親が戦死した家庭には、厳格な祖母、懸命に働く母親、人のいい叔父の慎ましやかな暮らしがあったが、彼らは字が読めなかった。ジャックは貧しさ故に上級学校へ進学できず新聞社で働く。ジャックの才能を見抜いていた教師が上級学校へ行かせようと家族を説得、奨学金をもらうことで上級学校進学が実現―。
場面はアルジェリア里帰りの続きへ。かつての教師に再会する。また、ジャックはアラブ人居住区にかつての憎き級友ムハッドを訪ねるが、そこでムハッドからレンガ職人の息子が爆弾を製造したかどで当局に捕まってしまったことを聞かされ、息子は無実なので助けてほしいと懇願される。ジャックは奔走したが彼は死刑を言い渡されてしまう。その後ジャックは彼の死を知って戦争の無惨さを感じる。そしてラジオで呼びかける。アルジェリア人には人々に相応しい民主的な法が必要である。分裂ではなく団結せよ、しかしテロには反対だ。映画はここで終わる。

久し振りの岩波ホールでの映画鑑賞、このホールも45年か。いつも気になっていて観ようとした時にはすでに遅しのことが多い。パンフレットで過去の上映タイトルを見るとベルイマンやワイダ監督など問題話題作品も数多い。刺激的なのは確か。この映画もカミュ生誕100年記念映画作品で、2011年に作られている。ジャック・ガブラン、カトリーヌ・ソラなどシブイ演技が光った。イタリア人のジンニ・アメリオ監督は、今なお、深く刻まれた戦争の記憶を抱えている人々の懊悩が、正確に表現されている映画を作りたかったと書いている(「EQUIPE de CINEMA No.191」)。また、同じ誌面で仏文学者の海老坂武氏はカミュ研究の最近の成果としてカミュ家の移民はボルドー出身の曾祖父が1代目、父親で3代目だと書いている。

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