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2012/12/27

余りにも早すぎたYさんの死ーある死その5

その死は余りにも早過ぎた。

懐かしさ凍る季節に訊ねるも誰もが返す言の葉知らず

Yさん享年63歳。人はいつかは死ぬ。早いか遅いかの問題である。大昔英文法の例文で習った単純な文章を思い出す。Man is mortal. 確かこんな文章だったと思うが、当時このmortalの単語に何か道徳臭さを感じて、be動詞の働きの理解がスキップされ、「人は死ぬものである」の日本語が一人歩きした。そしていつの間にか頭にこぶりついた。だが人はそう簡単に死ぬわけがないと買い被っていた。今思えば若気の至りだったか。そうして疾風怒濤の時代には芸術家気取りよろしく早世を夢見た。その後は死を忘れて生を謳歌してきた。矛盾した感情を抱きしめて疾走したとも言える筆者。冠婚葬祭という人生の儀式を遠ざけて、今ここを生きた。筆者と違ってYさんは執拗にコモンセンスの人であった。幼いときの苦労を乗り越えて、術は共に生きよ、共助、共生、共存の精神に貫かれていたのかも知れない。何を造っているんだろ、でお馴染みの会社に入って幾星霜、決して本流を歩んだ訳でもないが、一技術屋あるいは設計屋と自ら造り自ら内外問わず需要のあるところはどこへも駆け巡った。金沢、青森、フランス、マレーシア、中国などへ飛んだ。その仕事に賭けるバイタリティーも凄かった。あるいは良き家庭人として。ワーカホイックなまでの会社人間の顔を覗かせていたのも事実。
しかし、悲しいかな、人はやはりいつかは死ぬ。この紛れもない事実に直面したとき、人はかけがえのない存在者を失った喪失感で絶望的になり、ポカーンと穴が空いた感情にとらわれる。あえて言えば存在の不快、といった感情だろうか。ある作家のエピゴーネンでは毛頭ない。人間の儚さを思うのだ。

赤ワイン、飛びっきり辛いの下さいな、この際ちびっとではなく、ガブッと飲み干したいな、誰ともないつぶやきが聞えた。幻聴かと疑ったが確かな人間の声、寒空に三弦の月が光り、雲間に誰かがお隠れになった。一瞬、静寂―。

それにしても死、最近評論に近い英文書評を読んだノルウェーの作家、クナウスゴルト作『わが闘争』には父の死に直面して作者と思しき主人公が漏らす言葉が印象的。結局人間は死によって物質になる、大地に帰るのだ。そして本当に久し振りにー学生以来かーアルチュール・ランボーの有名な詩句を思い出した。

とうとう見つかった
何がさ、永遠だよ
海に沈む夕陽

Yさん、さようなら。合掌。 

因みに今年亡くなった著名人は下記の通り。
二谷英明、芦野宏、淡島千景、尾崎紀世彦、小野ヤスシ、地井武男、山田五十鈴、大滝秀治、桑名正博、桜井センリ、馬渕晴子、森光子、中村勘三郎、小沢昭一、伊藤エミ、藤本義一、浜田幸一、横森良造、三宅久之、安岡力也、ベアテ・シロタ・ゴードン。著名人のなかにも早過ぎた人も。御冥福をお祈りいたします。

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