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2012/06/08

リトルマガジン拾い読み 澁澤龍彦の話など

筆者は4年半前に横須賀美術館「澁澤龍彦 幻想美術館」の展示会についての感想を書いたが、その記事はもうすでに忘れられたものと受けとめていた。しかし、どっこい、どうしてどうして、生きのびているのだ。しかも筆者のこのコラムで1位をキープしているから驚きである。澁澤人気恐るべし。恐らくまだ美術館巡回を実施中で、その余波かも知れない。もっと大袈裟に言ってしまえば、今の時代に澁澤ワールドが迎えられたのだろう。時代を先取りしていたのだ。
さて、リトルマガジンの典型的なタウン誌『かんだ』(季刊・春・206号 平成24年3月30日刊)Img025_3の連載もの、「あの町、この人」に登場している日本舞踊家坂東鼓登治が、澁澤龍彦について言及している内容が面白い。坂東鼓登治についてはあまり知る由もない筆者だが、彼は演劇評論家の堂本正樹に連れられて澁澤龍彦のサロンに出入りしていた。一見畑違いに思えるが、そこには刺激的な雰囲気を共有できる空間があったのだ。本文から引用してみよう。

澁澤さんが咽頭がんで亡くなくなられる3年前、堂本さんに連れられて鎌倉の自宅に顔を出すようになった。
「それまでは自分の才能に結構自身を抱いていたのですが、この時ほど自分が天才などではないんだと思い知らされたことはありませんね。皆さん飲みながら5、6時間も盛んに話されているんですが、何を話しているのかさっぱり分からない。日本語で話しているというのに・・・。私は家に帰って泣きました。そして思いました。ただうなずいてきいているばかりではなく、いつかあの話の輪の中に入れるようになろうと・・・」
澁澤さんのサロンにあつまった人々は、当時の文芸芸術の分野における異才鬼才、錚々たる人物ばかり。当然、高踏で難解で、しかも先鋭なる文学論、芸術論、哲学論もポンポン飛び出す。そんな中にいきなり飛び込んだのだから当然のことである。
「君も才能のある人物だと堂本君から聞いているよ。そのうちに君の話も聞いてあげるからね」

「外面はあくまでも古典を守りながら、精神は前衛でありたいんです」とおっしゃる鼓登治さん。一見柔和でだじゃれ好きの鼓登治さんだが、その内面には、堂本さんや澁澤さんとの交流で培われた強靭で尖鋭な精神と芸術観が脈々と流れていると、聞き手の梅谷桂三氏が締め括っている。

知的刺激の最たるものがここにはあったということだろう。
「澁澤龍彦 幻想美術館」展示の最後のコーナーには野中ユリ作「新月輪の澁澤龍彦」があったが何度観ても飽きないから不思議だ。幻想的でユーモアがある。

追記。横須賀美術館が毎年3億数千万円の赤字で、人気ロックバンドの「ラルクアンシェル」の音楽活動をアートとしてとらえた企画展を開催するという。7月8日まで。(6月9日付毎日新聞朝刊)

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