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2012/06/24

スウェーデンの夏至祭で何か゛?

スウェーデンの夏至祭前夜に起きた粗暴と犯罪。しかし、ダーラナ地方の夏至祭は比較的静かだと23日のRadio Swedenが伝えている。下記はその記事。

"Normal" Midsummer rowdiness and crime
Updated: lördag 23 juni kl 12:28 (publicerades lördag 23 juni kl 11:21) , Radio Sweden 2 gillar

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Midsummer festivities, Photo: Hasse Holmberg/Scanpix.
Midsummer Eve saw the usual traffic snarls, drunkenness, fights, and robberies around Sweden.

A man was taken into custody on suspicion of attempted murder in Kinna, south of Borås, after attacking another man with a knife.

Six people were taken in for questioning after a shooting in Arlöv, in southern Sweden. The victim was able to take himself to the hospital, and reportedly was not seriously injured.

A truck driver was stabbed in Ljungskile early Saturday morning. A suspect has been detained for attempted murder or manslaughter.

One man was detained after a boat chase from the police and Coast Guard north of the island of Smögen, which ended in his ramming a police boat. According to the newspaper Aftonbladet, the chase began after he tested positive for alcohol, was released, and took off again in his boat.

Five people were injured in a boat accident outside Värmdö in the Stockholm archipelago, one woman seriously.

Many areas reported more than the usual drunkenness, but police in Gothenburg said the trouble was not worse than the normal weekend after payday, and in Dalarna Midsummer Eve reportedly was relatively calm.

2012/06/23

Trevlig midsommar ! 今日 6月23日はスウェーデンの夏至祭

今日6月23日はスウェーデンの夏至祭。Midsommardagenとなり祝日。

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【写真 :夏至祭に使われる メイポール】

若い頃スウェーデン人やノルウェー人によく聞かされたのが夏至祭とルチア祭・クリスマス。6月と12月に行われる北欧の二大伝統行事。その一つが夏至祭。セント・ジョンズ・ワート(セイヨウオトギリソウ)をイブの夜に枕の下に敷いて寝ると、夢に現れる聖人のご加護があるととも、また、未婚の女性の場合、未来の夫が夢枕に立つともいわれる。

■スウェーデン国の公式サイト

Happy Midsummer!

Welcome to Sweden's official website. Experience Sweden on the web through facts, films, stories and images — and don't miss our blogs. You'll also find us on Facebook, Twitter, YouTube and Flickr.

June 22 is Midsummer Eve in Sweden. Watch our Midsummer film below and read all about how we celebrate this tradition.

http://www.youtube.com/watch?feature=player_embedded&v=u8ZLpGOOA1Q

■スウェーデン大使館サイト

6月20日から26日の間の、夏至に最も近い土曜日が夏至祭(当日)Midsommardagen(ミッドソンマルダーゲン)となり祝日となります。

そしてその前夜祭である金曜日Midsommarafton(ミッドソンマルアフトン)は祝日ではないのですが、お休み、あるいは営業時間を短縮するところが多いです。お祝いの仕方ですが、夏の草花で飾られた夏至柱とよばれるポールをたて、その周りで人々は沈まない太陽の下、輪になって楽しく踊りつづけます。夏至祭のテーブルにはニシンのマリネやシンジャガ、イチゴなどが並びます。夏至祭の前夜に若い女性が7種類の花を摘んで花輪をつくり、枕の上において寝ると将来の伴侶が夢に現れるという言い伝えがあります。

■スウェーデンの新聞「8 sidor」の昨日の記事。

Glad midsommar

Publicerad: 2012-06-21

I morgon, fredag, är det midsommarafton.
Då är de flesta som jobbar lediga.
I år verkar det som om det blir
fint väder i större delen av landet.

Vi på 8 SIDOR är också lediga
under midsommarhelgen.
Då kommer inga nyheter på 8sidor.se
Men på måndag är vi tillbaka igen som vanligt.

Glad midsommar

こんな小さな記事でも楽しさが伝わってくるから不思議。月曜日には普通通りに戻ると締めている。


すうぇーでんに行きたくともスウェーデンは遠し
せめてイケアにのせられ
木製のテーブルにスウェーデン刺繍のテーブルクロス
ストックホルムビールで

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trevlig midsommar !

………………………………………………………………………………………………………………………

さて、今年はイプセンと並んで北欧が生んだ偉大な劇作家ストリンドベリィの没後100年。日本でもそろそろイベントがあってもよさそうだとキョロキョロしていたら下記のような講演会を見つけた。生憎出張で聴けないのが残念。
アメリカのwebsite「Strindberg 2012 Festival」に今年のイベント情報が載っているし、もちろんスウェーデン本国でも始まっている。どこかで観たいものだ。日本では俳優座あたりが再演してほしい。「令嬢ジュリー」など。

■スウェーデン大使館文化情報

「ストリンドベリィの女たちーなぜストリンドベリィを演じてきたか」

講演会


第134回 スウェーデン研究講座
日時:6月28日(木)午後6時~8時(5時半開場)
場所:スウェーデン大使館1階アルフレッド・ノーベルオーディトリアム
駐車場はありません。
講師:女優及び脚本家 毛利 まこ氏
言語:日本語
会費:スウェーデン社会研究所会員、スウェーデン語講座受講生は無料、非会員1000円、学生500円(当日受付にて)
申込:sweden@tkm.att.ne.jp 電話:03-5661-6035 ファクス:03-3655-1596
主催:(社)スウェーデン社会研究所

6月は白夜にちなんで毎年スウェーデンの芸術シリーズです。今回は、 元劇団グスタフの看板女優として、また、脚本家として16年間活躍している毛利 まこさんに表題のお話を頂きます。ストリンドベリィはイプセンやチェーホフと並び称せられる世界的なスウェーデンの劇作家ですが、その反社会的な言葉、徹底した人間不信、埋めることのできない男女間の憎悪などの描写で常に衝撃を与えてきました。毛利さんはそのストリンドベリィ劇の女たちを日本で最も多く演じてきた稀有な女優さんです。なぜストリンドベリィなのでしょうか。女優みずから語ってくださいます。

2012/06/20

6月に8年振りの台風

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昨日6月としては8年振りの台風が上陸した。台風4号は南の海上に発生してからわずか2、3日で日本上陸という速さ、幸いにそれほど大きな被害が出ずに済んだ。昨夕和歌山に上陸して一旦海上に出たが、再上陸、静岡、長野そして宮城沖へ。台風一過の今朝は快晴だが、すぐに台風5号が近づいている。
久し振りに「8 sidor」の電子版を覗いたら、スウェーデンも6月としては記録的な雨降りの多い月、1956年以来らしい。ストックホルムの人々が傘を差しレインコートを着るのは極めて稀だと報じていた。今は晴れている日が続いているが、本格的な夏のシーズンに雨降りの日が戻って来ると予報。昨夜遅くのテレビ番組ではライブでニューヨークの街角を映し出していた。30℃を超えて蒸し暑いらしい。今は世界各地の気象情報など瞬時に得られるから便利だ。情報の”洪水“には充分気をつけなければならないが。
写真は街角に咲く紫陽花。


2012/06/18

超人の面白読書 94 木村誠著『危ない私立大学 残る私立大学』 4

3の続き。高校の先生が勧める大学ランキング。金沢工大、立命大、中央大、同志社大、立教大、上智大、津田塾大、愛知大、武蔵大、成蹊大、学習院大、関西学院大、南山大、関西大、青山学院大、明治学院大、立命館アジア太平洋大、東京女子大、同志社女子大、東北学院大、中村学園大、法政大、専修大、京産大、京都女子大、近畿大、芝浦工大、崇城大学、中京大、ノートルダム清心女子大、佛教大、松山大、美作大だ。
危ない私立大学の要因はいくつかあるようだが、その一つに1980年代以降「公私協力方式」が生まれて私立大学が増加したことだと著者は書く。公私協力方式とは、自治体が敷地を提供したり補助金を出したりして、地元に私立大学を誘致し私学法人に経営を任せる方式をいう。また地元の短期大学法人の4年生移行を財政支援する形もある。少子化は着実に進行していたにもかかわらず、1982年以降、公私協力方式の私立大学数は、実に約130校、現在の私立大学の約2割を占めると言われている。(本文P.170〜P.170)
公私協力方式の小規模新設私立大学は、志願者が減る一方となり、半数近くが定員割れらしい。募集力の劣化がサバイバル度が低い原因と言われ、地元の高校などへのPRが欠かせないと解決策を提示している。
いずれにしても、人口減少にフィットした大学のあり方が求められている。要は大学数が多いのだ。大学間のニュースとニーズをいち早く正確にキャッチして、相互のメリットを活かした大学間の救済合併が必要になって来るだろう。残る私立大学も試練を強いられる時代である。小手先の改組程度では先行き不安なはず。行政側の文科省の果たす役割も重要だろう。最後に本書の巻末に大学評価の指標を掲げているので、それを記して本書の書評を締め括りたい。

【研究水準】
論文引用度指数、科研費配分額、大学院進学率、外部資金の額と内容、教員の研究レベル、卒業論文、ゼミ論文の重視度
【教育力】
FDの実施状況、PBLの実施状況、リメディアル教育の実施、授業評価の運用、中退率、卒業率
【大学生活】
学生相談制度の充実、奨学金制度の充実、学生寮や福利厚生施設、サークル、体育会の施設、国内・海外留学制度、外国人留学生との交流
【就職率】
キャリアデザイン教育、就職指導の多面的展開、国家(公的)資格取得率、離職者のアフターケア

追記。今日の毎日新聞のコラムは文科省が「大学改革実行プラン」を表明し「学ぶ意欲と力を測る入試への転換」を掲げたと書き、具体的取りかかりそうだとコメントしている。(2012年6月19日 記)

追記2。世界139カ国・地域の2400校が導入している大学入学資格取得に必要な教育課程「国際バカロレア」について、文科省は国内で広げることを決めたと6月19日付毎日新聞夕刊が報じた。グローバル人材の育成が目的。現在インターナショナルスクールなど23校が実施しているが、5年後に200校 に増やす計画と。また、教科の日本語での実施も考えるという。
国際バカロレア⇒16歳から19歳の2年間、言語、数字など6科目を学ぶ。修了試験に合格すれば大学入学資格が得られる。1968年にスイスで発足した国際バカロレア機構が導入校を認定するシステム。以上毎日新聞夕刊から。(2012年6月21日 記)

追記3。「私大閉校 反発広がる 東京女学館 大学募集停止へ 少子化で定員割れ拡大」の見出しが昨日の毎日新聞夕刊社会面を賑わしていた。この小中高は名門女子高校で、2002年に短大を母体として開校、毎年定員割れが続いていたという。来年度から募集停止し、在校生264人が卒業する4年後に閉校する。保護者と卒業生有志が「存続させる会」を結成して署名活動を続けている。こういうことがこれからも起こり得るはず。より健全な大学経営が求められるが。(2012年6月22日 記)

追記4。大学問題はもはやドラマ化の様相。また役者が登場し物議を醸し出したのだ。野田政権の内閣改造で田中真紀子文科省大臣が誕生(先の内閣では旦那の田中氏が防衛相を首になったばかりなのに)、大学設置認可問題で内定を覆し短大から四大に衣替えする札幌保健医療大、秋田公立美術大学と岡崎大学の3大学を不認可の裁定を下したのだ。(2012年11月8日 記)
ところが、二三転した後、今度は認可に転じた。どうなってんの?田中真紀子文科省大臣は許可したものの、審議会のあり方を見直すという。少子化にもかかわらず大学が増え続けている一因は、文科省が20年以上前に設置基準を緩めたことだ。当初はそうすることで淘汰していくと文科省側は読んだが、現実的には大学は増え続けた。やはり長期的な高等教育に関する制度設計が必要だろう。レベルの低下他問題は山積している教育だが、入試制度や高校教育のあり方も考えなくてはいけない時期に来ている。(2012.11.12 記)

2012/06/16

超人の面白読書 94 木村誠著『危ない私立大学 残る私立大学』 3

蛇足だが現にアメリカの公立大学に通っている知人の息子は、特にテストが近づくと15、6時間の猛勉強をしている。でないとテストでいい成績が取れないらしい。アメリカ人の学生はダメだとさっさと諦めてしまうらしい。アジア人とのハンディはあるか?日本の大学を卒業してヒューストンとニューヨークの語学学校に2年以上在籍した後の公立大学、専門コースはかなり難しいと聞いている。

2の続きだ。東北芸術工科大学、高知工科大学、静岡文化芸術大学、名桜大学、鳥取環境大学の公設民営も衣替えして志願者数が回復(本文P.156)。筆者としては常日頃馴染みのない理系の傾向を読むのも楽しみだった。。理・工・理工系は関西学院大学理工が偏差値急上昇、農・水産系は獣医と応用化学は難易度かわらず、医療系では歯と薬が定員割れ、ということらしい。何度本書を巡っても画期的な解決策は見えてこない。明治時代の教育者、森有礼の極端な教育改革は無理としても(今でも無茶過ぎて困るが、変なことに言語偏重主義が蔓延し始めている)、高等教育機関の施策はもっとビビツトに感応していい。しかし問題は教育力だ。よく100年の計といわれるが、それなりの人材を輩出するために、教育力その一点の解決こそ大学にとって肝要と思うのだがどうだろう。もちろん大学での研究も大事なことは百も承知 、ここではこの問題を詳述しない。
ここまで書いてきてふと気づいたことがある。それは本書にも書かれているが、少子化 、少子化と騒がれている割には大学が増加しているという不思議な現象である。その謎を解く鍵は、どうやら文系ではなく理系のある分野が膨らんでいることらしい。看護と医療の分野だ。また、本書を通読すれば分かることだが、有名私立大学も危機意識を持って斬新な改革を試みていることだ。そんな斬新な改革やユニークな取り組みを折り込みながら、北は北海道から南は九州まで主要な大学の今を掻い摘んでリポートしている。
さて、今流行りの大学ランキング。ここに興味深いランキングがある(本文P.203の表)。高校の先生が生徒に勧めたい私立大学の2012年版。慶応大、早稲田大、ICU、東京理科大、明治大と続き、この後も興味があるが字数が尽きた。この後は次回へ。(続く)

2012/06/14

超人の面白読書 94 木村誠著『危ない私立大学 残る私立大学』 2

毎日新聞のコラムにある記者が書いていたが、大学生の”勉強”時間をヨーロッパ並みに多くする施策を文科省が打ち出しているという。今頃気づいたかと少し遅すぎた感を持つものの、やはり実現した方が良さそうだ。とにかくアルバイトも大事(という筆者もその一人だった!)だが、若い時の知的吸収力はそれより大切。その昔は講義にでなくとも自由かつ自主的に勉強していたが、今は講義の出席率がかなりいいらしく、先生がきちっと講義に来ないと怒るらしいのだ。例の講義評価に表れているのかも。でも学力の低下は何を意味するのか。それは推薦入学やAO方式入学や入試制度そのもののあり方に起因しているに違いないのだ。所謂制度疲労だ。また、大学の思惑もあるからややこしいようだ。アメリカみたいに入り易く出にくくすればいい。が、それでは特に約600校ある私立大学は財政的にも成立しなくなってしまう。少子化傾向もあって今や4年間保証付きの員数がどうしても必要なのだ。大学院生を増やした結果もいろんな意味でマイナス効果。
さてさて、それではそんな柵の中で現状打破を図るにはどうすれば良いか。生き残りをかけて各大学の知恵比べが始まっているのだ。本書がその辺の最新事情をリポートしている。例えば、関西大学の社会安全学部、同志社大学のグローバル・コミュニケーション学部(更に元中学校跡地に地域社会学部を創設する予定とかーこれは今年2月にある研究者から直接聞いた話。新学部の名称は正確でないかもしれないが)・・・。

2012/06/11

超人の面白読書 94 木村誠著『危ない私立大学 残る私立大学』

20120619134852_00001著者は教育系の雑誌を長年手掛けた教育問題研究家。大学秋入学を検討し始めた東大、高校2年で大学入学可能を打ち出した文科省、青山学院大や同志社大学などに典型的にみられる大学の都心回帰現象、定員割れが続き経営が厳しい大学、大学生の質の低下と研究レベルの低下、東京女学館など大学そのものをやめてしまう経営破綻現象、韓国、中国 、台湾などから留学生を積極的に受け入れて生き残りにかける大学、法科大学院の将来、最近では管理などに嫌気がさして東大教授の早期退職等々大学問題の話題に事欠かない。
そんな中最近の大学の傾向を調査したコンパクトな本が出た 。二項対立的なタイトルは刺激的だが、内容はジャーナリスティックで軽く読み進める。最近の傾向と対策が具体的に大学名を挙げて記されていて大いに参考になる。今東大などがイギリス、アメリカ、香港、上海などの大学が行っている大学ランキングに一喜一憂しながら外に向けて発信し始めているが、ここ何年かの海外留学の低迷傾向にも歯止めをかけようと対策を打ち出している。世界の競争力に打ち勝てる人材育成が急務の大学なのだが、最近の学生は海外留学にあまり魅力を感じず内向きになっているらしい。就職に不利だからとも・・・。
私立大学が100校以上消える、これが大学を見るポイントだ!東京ビック6の飽くなき膨張戦略、地盤変動が進行する関西の私立大学、校風を生かしたミッションスクールが上昇、地方の元気印大学、危ない大学、高校の先生が評価する私立大学はここだ!そして大学評価の指標付き。これが213頁ある本書の内容のあらまし。ジャーナリスティックな点とやや刺激的な見出しや小見出しが躍っている点が気になるが、本の性格上仕方がないのかもしれない。筆者も大学問題については大分フォローしてきたつもりでいるがまだまだカバーし切れないでいる。本書はその最近の動向をカバーしている。(続く)


2012/06/08

リトルマガジン拾い読み 澁澤龍彦の話など

筆者は4年半前に横須賀美術館「澁澤龍彦 幻想美術館」の展示会についての感想を書いたが、その記事はもうすでに忘れられたものと受けとめていた。しかし、どっこい、どうしてどうして、生きのびているのだ。しかも筆者のこのコラムで1位をキープしているから驚きである。澁澤人気恐るべし。恐らくまだ美術館巡回を実施中で、その余波かも知れない。もっと大袈裟に言ってしまえば、今の時代に澁澤ワールドが迎えられたのだろう。時代を先取りしていたのだ。
さて、リトルマガジンの典型的なタウン誌『かんだ』(季刊・春・206号 平成24年3月30日刊)Img025_3の連載もの、「あの町、この人」に登場している日本舞踊家坂東鼓登治が、澁澤龍彦について言及している内容が面白い。坂東鼓登治についてはあまり知る由もない筆者だが、彼は演劇評論家の堂本正樹に連れられて澁澤龍彦のサロンに出入りしていた。一見畑違いに思えるが、そこには刺激的な雰囲気を共有できる空間があったのだ。本文から引用してみよう。

澁澤さんが咽頭がんで亡くなくなられる3年前、堂本さんに連れられて鎌倉の自宅に顔を出すようになった。
「それまでは自分の才能に結構自身を抱いていたのですが、この時ほど自分が天才などではないんだと思い知らされたことはありませんね。皆さん飲みながら5、6時間も盛んに話されているんですが、何を話しているのかさっぱり分からない。日本語で話しているというのに・・・。私は家に帰って泣きました。そして思いました。ただうなずいてきいているばかりではなく、いつかあの話の輪の中に入れるようになろうと・・・」
澁澤さんのサロンにあつまった人々は、当時の文芸芸術の分野における異才鬼才、錚々たる人物ばかり。当然、高踏で難解で、しかも先鋭なる文学論、芸術論、哲学論もポンポン飛び出す。そんな中にいきなり飛び込んだのだから当然のことである。
「君も才能のある人物だと堂本君から聞いているよ。そのうちに君の話も聞いてあげるからね」

「外面はあくまでも古典を守りながら、精神は前衛でありたいんです」とおっしゃる鼓登治さん。一見柔和でだじゃれ好きの鼓登治さんだが、その内面には、堂本さんや澁澤さんとの交流で培われた強靭で尖鋭な精神と芸術観が脈々と流れていると、聞き手の梅谷桂三氏が締め括っている。

知的刺激の最たるものがここにはあったということだろう。
「澁澤龍彦 幻想美術館」展示の最後のコーナーには野中ユリ作「新月輪の澁澤龍彦」があったが何度観ても飽きないから不思議だ。幻想的でユーモアがある。

追記。横須賀美術館が毎年3億数千万円の赤字で、人気ロックバンドの「ラルクアンシェル」の音楽活動をアートとしてとらえた企画展を開催するという。7月8日まで。(6月9日付毎日新聞朝刊)

2012/06/05

一枚のハガキ「文化講演会」開催のこと

ある友人から一枚のハガキが届いた。それには文化講演会の開催の話が淡々と書かれていた。6月16日(土)午後1時30分〜4時30分、JR両国駅西口徒歩3分、国技館の隣の江戸東京博物館1階学習室で「原発を考えるーフクシマからの発言」と題して人権派弁護士安田純治氏と元福島大学教授の澤正宏氏との対談だ。3・11から1年3ヶ月、大飯原発が再稼働されようとしている。福島では未だに先の見通しの立たない暮らしが余儀なくされているというのに。この大いなる無策と矛盾を許して良いのかー。一枚のハガキが云う。すでに30年以上前に福島原発設置反対運動に関わり、原発の危険性を訴えて来た弁護士がいた。その人こそが安田純治氏。運動に関わってきたからこそ聴ける話など盛りだくさんのようだ。聴き手に原発問題に詳しい文学者の澤正宏氏を迎えての対談。入場料500円。ご関心のある方は下記まで連絡されたい。会場の定員は99名、まだ間に合うようだ。連絡先:電話03-5577-6707 ファクス03-5577-6708 email:crocul99@sound.ocn.ne.jp クロスカルチャー出版文化講演会係まで。一枚のハガキには小さな絵が添えられていた。No more genpatsu という心象図だ。

2012/06/04

超人のドキッとする絵画 20 レオナルド・ダ・ヴィンチ作『ほつれ髪の女』

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「モナ・リザ」の作者はヨーロッパ中世、ルネサンス期の代表者だが、「ほつれ髪の女」もいい、その視線の意地らしさー。筆者はこの絵を観ながら視線の赴く方向へ、左下20度位傾いてみた。この笑みを正面から観ようと想像を巡らしたのだが。

2012/06/02

超人の面白読書 93 田中慎弥著『共喰い』 7

選評の続き。『共喰い』の中心にあるのは、父を乗り越えてゆく息子の、ありふれた物語。古典的なテーマでありながら尚、新鮮な力で読み手を引っ張るのは、父親でなく、彼女たちの生命力あふれる手と、義手なのだ。(小川洋子)『共喰い』は女を殴らずにはいられない父と子の物語だが、全編に流れる下関の方言と緊張度の高い地の文が、リズミカルに交錯しており、叙事詩の格調さえも漂わす。(島田雅彦)何物かへの鬱屈した怒りのマグマの依って来たる根をもっと具体的にしなければ、肝心なところから腰が引けていることになるのではないのか。(宮本輝)戦後間もなく場末の盛り場で流行った「お化け屋敷」のショーのように次から次安手でえげつない出し物が続く作品だが、読み物としては一番読みやすかった。(石原慎太郎)

毎日新聞5月文芸時評(2012年5月30日)で文芸評論家の田中和生は、「戦争」や「父」の姿は戦後文学では描かれたことがない、新鮮な感触なもの、と最新作「夜蜘蛛」(『文学界』)を評価している。
田中慎弥の上記以外の作品は次の通り。

・図書準備室
・冷たい水の羊
・不意の償い
・蛹
・切れた鎖
・神様のいない日本シリーズ
・犬と鴉
・血脈
・聖書の煙草
・実験
・汽笛
・週末の葬儀
・第三紀層の魚
・田中慎弥の掌劇場 
・燃える家

新潮新人賞、川端康成文学賞、三島由紀夫賞の受賞歴。作家歴20年。芥川賞後の記者会見で一躍注目されたキャラの持ち主でもある。筆者的には彼の短編をもう少し読んでみたい。

追記。作家田中慎弥についての新聞記事を5月15日付朝日新聞「文芸/批評」それに6月6日毎日新聞夕刊「新幸福論 生き方再発見」で読んだ。ただ書くだけと一言、“帰ってきた文士”のような趣・・・。(201206.8 記)

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