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2012/05/30

超人の面白読書 93 田中慎弥著『共喰い』 6

中上健次が『岬』で芥川賞を取った時に、筆者は即座に雑誌「文藝春秋」を買い四畳半のアパートで寝ころびながら読んだ記憶がある。 その場面は鮮明に覚えているのに、肝心の出だしの文章や内容が一向に思い出せないでいる。それで思い切って文庫本を買ったのだ。初版は昭和53年12月なので大分昔だ。しかし古本は新刊本より少し高価だった。そして出だしの二三ページを読み直してみた。残念ながら記憶に残っていなかった。飯場での話、路地・・・。

さて、選評である。芥川賞候補は5回目、明らかに力強さを増し、文章が躍動し作品の密度が高まっている。冒頭の海に近い淀んだ川の描写には暗い力がひそみ、それが全篇を貫いている。(黒岩千次)血と性の生臭い悲劇をくぐり抜けた先のカタルシスまで、弛むことなく緊張が続き、濃密な空気を持続させている。(高木のぶ子)この文章には遠近法があると感心した。しかし、それは、世にも気の滅入る3D。何故だろう。時折、乱暴になすり付けられたように見える、実は計算されたであろう色彩が点在して、グロテスクなエピソードを美しく詩的に反転させる。(山田詠美)
山田詠美が指摘しているように、生理用品は拘置所が出してくれるのだろう、と遠馬は思った、この最後のところは蛇足だろう。「なあんもない。」で終わっている方が余韻があっていい。(続く)

2012/05/25

超人の面白読 93田中慎弥著『共喰い』 5

この物語は後半思わぬ展開をみせる。推理小説さながらの場面展開だ。前妻の義手の仁子さんが、遠馬の父親を殺してしまうのだ。遠馬の恋人の千種を犯した腹いせか、はた自分の息子でもある恋人を弄んだことへの怒り狂った感情がそうさせたかは行間を読み取る他ないが、社近くで父親の身体に義手が刺さっていたのを遠馬が目撃して判明するのだった。後は警察での事情聴取、刑務所行きのお決まりのコース。罪を犯してしまった仁子さんと主人公遠馬との会話は何もかも吹っ切れたのか、サバサバしたものだった。そして物語はあっけなく終わるのだ。
面会に来た遠馬の気遣いの言葉、
「差し入れ、出来るみたいやけど、ほしいもん、ない?」
仁子さんが、
「なあんもない。」
生理用品は拘置所がくれるのだろう、と遠馬は思った。

400字詰め原稿用紙で100枚位の短編だが、濃厚な文体、古風な言葉使い、地方性、血縁、性とテーマやストーリー展開が予め構想されていたと思われる。と同時に、妄想、妄想狂がこの私小説的短編を書かせた、とも思えるのだ。作者は書き終えて霧が晴れた感じを抱いただろうか。いや、賞取りレースに躍起になっていたかも知れない。下記は選考委員の評である。ちょっとその前にー。(続く)

2012/05/24

超人の美味しい飲み物 ストックホルムビール

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Stockholm beer。「イケア」でゲット。249円。有名なデンマークのチボリビールは昔大分飲んだがスウェーデンのストックホルムビールは初めて。ライト系でイケた。


2012/05/23

超人の面白読書 93 田中慎弥著『共喰い』 4

「ほじゃけえちゃ、琴子探してあっちィこっちィ行ってみよったら、社の鳥居のとこに子どもらあが溜っちょってから、馬あ君まだか、千種ちゃん待っちよるのに、言うもんじゃけえ上まで行ってみたら、あの子がおったけえちゃ、ほんとは琴子がよかったんじゃけどよ遠馬、ほじゃけど、お前も分かろうが、ああ?我慢出来ん時は、誰でもよかろうが。割れ目じゃったらなんでもよかろうが。お前、あの子、まだ殴っちょらんそか。」
晩飯はまだなんかと訊く口調で行ってまた歩き出し、父に何も言えないまま、遠馬も反対方向へ走り出す。

上記は本文中からの引用。下関弁での親子の会話、方言の軟らかい味わいが読み取れそうだが、そのベールを剥ぐととんでもない行為の、残忍さ、悔しさ、やるせ無さが滲み、言葉の表象が無化している。方言でこの感の事情を巧みに表現しているあたり、やはり表現力に尋常でないものを感じる。作者田中慎弥氏は『源氏物語』を愛読、何度も通読したという。その感じがトレースされて現代に蘇生したと言ったら大袈裟だろうか。むしろ西村賢太らと同様に身辺雑記風の私小説、Ich Roman 文学のジャンルに属すると理解した方がよさそうだ。それにしてもムズムズ、ジメジメのイメージー。(続く)

2012/05/22

超人の面白読書 93 田中慎弥著『共喰い』 3

「共喰い」とは動物界で個体が同種の他の個体を食べること。共食い現象とかいう。この短編は濃厚なイメージとそれを膨らませる描写力に優れていて、リアルさ、生臭さを圧倒しているようにみえる。血と性の題材と言えば、筆者がまず思い浮かべる作家に三浦哲郎と中上健次がいる。八戸、新宮そして、田中慎弥の下関、地霊までは行かなくとも独特の地方の臭いがある。それは血縁という家族の持つ繋がりの因果から更に茂みに分け入った性、陰湿なまでの近親相関図だが、地方の臭いが漂う。お主そこまでやるか、とタブーに挑戦した格好だ。いや、どうしても作者が通り過ぎることのできないテーマなのだ。

川のようになった道を、一歩一歩を重たく引き抜きながら走る。夕暮の、鈍い黄土色の雲が空を埋めている。あたりの雨樋や溝、マンホールから水が溢れるごぼごぼという音が聞こえ、流れ出してきた下水がにおい、泥や石、植木鉢が流れてき、鼠や虫や蛙がもがきながら消えてゆく 。
水を割ってアスファルトを踏む下駄の音が聞こえ、少ない髪が赤ん坊のように額に張りついている父が歩いてくるのが見えた。
「遠馬あ、遠馬あ。」声まで幼くなって、「琴子がおらんそじゃあ、どこ探しても。」
「千種は?千種はどうしたんか。社でなにしよったんか。」(続く)

2012/05/21

超人の面白読書 93 田中慎弥著『共喰い』 2

閑話休題。金環日食で大騒ぎの朝、特に7時34分、その騒ぐが頂点に達し、あるテレビ局の名古屋での中継で932年振りと女子アナウンサーが興奮気味に伝えていた。確かに太陽、月、地球が一直線に並ぶ瞬間は滅多に見られるものではないが、ちとはしゃぎ過ぎだ。NHK、TBS、日テレ、フジ、テレビ朝日とチャンネルを回してみた。まあ、どの局も金環日食の中継一色だった。和歌山、名古屋、塩尻、スカイツリー、六本木ヒルズ等々。生憎の曇り空にもかかわらず、雲間からだんだん輪となる金環日食が見えた。
注目された動物への影響はあまりなかったらしい。日差しが弱かったからか?
「金環日食」の天体ショーと「共喰い」の構図を対比させることはシュールだ。マクロとミクロの世界へ、次元を超えてほんの少し暗室風に覗かしてくれた。
どういうわけか、筆者はどうしても“澁澤龍彦コレクション”の野中ユリ作「新月輪の澁澤龍彦」の絵を思い浮かべてしまうのだ。なぜだろう?(続く)

2012/05/20

超人の面白読書 93 田中慎弥著『共喰い』

第46回(平成24年上半期)芥川賞受賞者は田中慎弥氏。彼は受賞後の記者会見で人を喰ったような発言で大いに話題を提供した人。彼の受賞作品『共喰い』を「文藝春秋」抜粋版(筆者自身の手作り簡易製本)で読んだ。ここ2、3ヶ月間鞄に入れたままだった。実はその前に2冊読む本があったのだ。
『共喰い』は思春期の性を赤裸々に描き出した短編私小説である。しかも軟らかな下関弁を巧みに挟み込むことによって、より豊かなイメージを鮮明に打ち出したローカル小説だ。肉欲に長けた親子、スキモノ同士の戯れだが、水際の陰湿なイメージに特有な軟体生物をセッティングさせるあたり、連想ゲームを際立たせ、粘着かつ濃厚な世界を構築している。それは水、うす汚れている水に蠢くイメージだ。すべてはそこに溶け込んで行くような、大人のうす汚れた世界を思春期の男がぬるっと垣間浸かる感じー。
ある地方の川辺に暮らす父親、息子、後妻、近くに住む右手が義手の魚屋を営む前妻、息子の恋人それにアパートの角の女、息子遠馬が中心に織りなす歪んだ欲望の世界だ。〈続く〉

2012/05/15

超人の美味しい果物発見 3 浅井さんの温室メロン

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誕生日に届いた浅井さんの温室メロン。甘くて美味しかった ! 贈って頂いたSさんに感謝。


2012/05/12

クロカル超人が行く 163 ラ・フォル・ジュルネ・オ・ジャポン 2012 ロシア音楽 5

先生はサービスも忘れなかった。講演終了間近で持参した紙袋から何冊か自著を取り出して曰く、本日は本のプレゼントを用意しましたと。聴衆から拍手が沸き起こり少しざわめいた。次の瞬間、亀山先生ご本人からブレゼント用の質問は用意してありますと。筆者は新しい靴を履いていて靴擦れを起こしていたので靴紐を解いていたのだが。途中から偶然に座れほっとしたのもつかの間、一番若い人、はい、キミ、次は一番年老いている人・・・、そしてそれでは今日誕生日の人?と亀山先生の声にすぐ反応し手を挙げてしまった筆者。微かに拍手ー。片方の靴紐を結ぶ暇なく亀山先生のところへ。我ながら恥ずかしかった。ありがとうございましたと深々と頭を下げた。人生にはこういうこともあるのだ。思わずラッキーと叫んだ。でもそれは声にはならなかった。亀山先生に感謝である。。
このあと別の会場に現れた亀山先生、先の比較的細い洒落た靴を履いていた!Ca92vskx

午後5時少し前ホールA214の2階ほぼ中央席に着席。イーゴリ・チェチュエフのピアノ、フェイサル・カルイ指揮、ベアルン地方ポー管弦楽団によるラフマニノフ:ピアノ協奏曲第3番イ短調を聴いた。手許のブログラムによると、ピアニストチェチュエフはウクライナ出身、指揮者のカルイ氏は1971年生まれの41才、比較的若い人たちによる演奏だ。流れるようなピアノの調べ、ときに力強く鍵盤を叩く音が会場に響き渡った。左右2台の大型スクリーンには演奏家の表情が逐一リアルに映し出されていた。ラフマニノ協奏曲、万歳、ブラボー。こうして筆者にとってたった1日の“熱狂の日は”終わった。

今年のラ・フォル・ジュルネ・オ・ジャポン クラシック音楽祭ではチェブラーシカが大人気、アニメーションと指揮など新しい顔も登場したらしい。しかし筆者的にはチェブラーシカ Cheburashka , who ?人気アニメの主人公“バッタリ倒れ屋さん”らしい。また、モスクワ大司教座合唱団や大きなバラライカCaetvph0_2など独特な楽器を駆使して演奏するロシアの民族音楽、カペラ・サンクトペテルブルクの合唱等々多彩。仕掛け人ルネ. ・マルタン氏の面目躍如といったところかー。来年は二つのことを実行したい。日本人演奏家のものを聴くこととホールをハシゴすることだ。インターネットラジオ「オッターヴァ」のキャスターの一人は、ハシゴして聴いていたらポケットに1000円しか残っていなかったらしい。一体いくら使ったのかしらん。

クロカル超人が行く 163 ラ・フォル・ジュルネ・オ・ジャポン 2012 ロシア音楽 4

ここに一冊の本がある。本のタイトルが「チャイコフスキーがなぜか好き」という新書、しかもキリル文字で書かれた著者自身のサイン入りのものだ。Img022_4親しくしているS先生曰く、それはお宝ですときっぱり。その経緯は後ほど触れることにして亀山先生の講演内容に少し触れてみたい。実は立見席の聴講者はレジュメを受け取れなかったのだ。やっと手に入れた時には講演後。 主催者側の準備不足かも知れない。走り書き風のメモが残っているのでそれをみながら印象を記してみたい。

ロシア音楽の真髄は、ひょっとしたら帰れない⇨ノスタルジー、くさみ⇨生活の臭いだー。

最近刊行された上記の本「チャイコフスキーがなぜか好き」に言及、2011年12月〜2012年1月にかけて書き上げ、雑誌「レコード藝術」などに書いたものと合わせた、言わば、書き下ろしプラス雑文の類の本 。一二ヶ月で上梓できるとは書くスピードが速いということだろう。ドストエフスキーの翻訳家はもちろんロシア音楽にも造詣が深いのだ。地方性、大地⇨ロシア正教以前は汎神論的⇨スラブ異教などなどロシア人の魂のふるさとにも及んだ。無料でダウンロードして聴けるyou tubeの話しでは、バイオリニストの五嶋みどりが奏でるチャイコフスキーのヴァイオリン協奏曲に惚れ込んでいる様子、筆者も聴いてみたいと思ったほど。このあとロシアプリミティズム、プロコフィエフ、ストラヴィンスキー、旧ソ連の国歌が好き、アヴァンギャルド芸術やソ連の1920年代・30年代研究から50代でドストエフスキー研究再び、と続いた。9.11の時はロンドンにいた由、そして去年3.11以後の7月に被災地を150km歩き、海を眺めた時第六感⇨永遠の感覚、四次元⇨運命の世界を感じたという。被災地で出会った週刊誌記者の“もうやることがなくなってしまった“という話しには胸を打たれた。
最近ラフマニノフもいいとそしてロシア現代音楽をもっと聴いてほしいと講演を締め括った。約1時間の講演は聴衆を魅了した。

追記。先週の日曜日にS先生と会う機会があった。亀山先生には英語学者のお兄さんがいる(そう言えば、スピーカーを直してもらったと講演のなかで話していたっけ)し、NHKテレビロシア語講座を担当していた時には、親しい人たちに1分でも視てと声をかけていたとか。その昔筆者は主にラジオロシア語講座を聴いていたので、テレビの講座はたまに視る程度だった。講師の亀山先生か、残念ながら記憶にない。恐らく大分後かも・・・。ラジオロシア語講座の講師は東郷何某或いは八杉何某と言ったかな、それも今となっては朧げだ。(2012年5月15日 記)

2012/05/11

クロカル超人が行く 164 お雹

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雹 ヒョウ おひょう のあと。


2012/05/10

クロカル超人が行く 163 ラ・フオル・ジュルネ・オ・ジャポン 2012 ロシア音楽 3

立見席も一杯の講演会場ースペースが狭すぎたーでは講演者の亀山郁夫先生が講演タイトルについて話し始めていた。「熱狂とノスタルジー 歴史のなかのロシア音楽」。琵琶湖で開催したラ・フォル・ジュルネ・オ・ジャポンでの浅田彰氏との対談から帰ったばかりと疲れを知らない風の亀山先生、浅田彰氏にはこの講演のあとメールで報告しますと満足げだった。浅田氏とは余程息のあった対談だったのだろう。亀山先生は聴衆の緊張感をほぐす術も心得ていた。浅田彰氏といえば、『構造と力』(何と筆者の書棚にまだある)の著者で当時ニューアカディズムの旗手と騒がれ、一世を風靡したフランス思想の専門家(京大経済研に在職した経済学者でもあった ! )。しかし自らピアノを弾くほどクラシック音楽に造詣が深い学者でもある。ここで思い出した、京大人文研にいた頃、雑誌「レコード藝術」も届けていた某営業所のY氏、その頃から精力的だったのか研究室は不在気味ー。そしてもう3年前になるか、京都芸術劇場 春秋座のマラルメ・プロジェクトで対談やら挨拶をしていたのだ。

人生の終わりの一曲、仮説の検証、西欧文化との対決、暴力のアイロニー、ムソルグスキーが嫌い、人工か神がかりか、スクリャービンの「革命」、ラフマニノフがなぜか好き、ストラヴィンスキー現象、封印されたアイロニー、二枚舌の闘い、現代ロシア音楽を聴く、が後で受取ったレジュメの中身。

2012/05/09

クロカル超人が行く 163 ラ・フォル・ジュルネ・オ・ジャポン 2012 ロシア音楽 2

5月4日当日は曇りのち雨のち晴という定まらない天気で傘が必要だった。が、筆者は傘を持たず出かけてしまった。インターネットラジオ「オッターヴア」を見学した後、一旦外へ出たら雨に会い、一瞬しまったと思ったが後のまつり。濡れながら屋台で買ったソーセージを頬張ったのだ。
ここまで書いて一休み。今朝の毎日新聞「余録」欄の記事が面白い。「完璧な欧州とは」のあとにこう続く。「イギリス人のように料理上手、フランス人のように謙遜、ドイツ人のようにユーモアに満ち、イタリア人のようにきちょうめん、オランダ人のように気前よく、ギリシャ人のように組織立って。そして他にもと、地味なスペイン人、技術に強いポルトガル人、融通がきくスウェーデン人、おしゃべりなフィンランド人が並ぶのは、それぞれの国民性の当てこすりで、実際は逆だとからかい合っている・・・」という記事。ではロシア人は?さしずめ「明るいロシア人」か―。お後がよろしいようで。
さて、会場内をぶらぶらしてたら午後2時、講演会が始まる30分前に会場の国際フォーラム6階会議室に到着。すでにたくさんの人が並んでいた。またしてもしまった、である。整理券を持っていた人はもう座っていた。(続く)

2012/05/07

クロカル超人が行く 163 ラ・フォル・ジュルネ・オ・ジャポン 2012 ロシア 音楽

ラ・フォル・ジュルネ・オ・ジャボン熱狂の日、クラシック音楽祭2012。今年も5月3日〜5日まで開催された。今年のテーマはロシア音楽。この気軽にクラシックを楽しんでもらう音楽祭は、新潟、金沢、琵琶湖そして東京丸の内と4ヶ所で開催され、日本でも開催地が増えているのだ。特に若い人たちに浸透していることはクラシックをより身近に感じ始めている証拠。2005年、フランスのナントより上陸して7年目、最近ではすっかり定着した感じである。マスコミの報道によれば、2005年〜2010年までの経済波及効果は650億円でその人気が伺え知れよう。
さて、今年のテーマはロシア音楽、チャイコフスキー、モソロフ、ストラヴィンスキー、ラフマニノフ、プロコフィエフ、ショスタコービッチ、スクリャービン、ソルグスキー、ボロディンなどの作曲家たちを取り上げ、歴史、民族、宗教、大地、異教、ノスタルジーなどロシア音楽に浸透しているこれらの独自性を他種多様な指揮者や演奏家によって解釈開陳、聴く者を厳かでたまにメランコリーにさせてくれる。ロシア音楽は奥深いのだ。
4月30日に東京フォーラムのチケットピアで予約したチケットを持って、誕生日の5月4日に出かけた。開演が17時30分なのでその前にロシア文学者の亀山郁夫東京外大学長の講演を聴くことにしていた。この音楽祭ではもう一人仏文学者の鹿島茂氏の講演もあって興味があったが日にちが合わず取り止めた。(続く)

2012/05/05

クロカル超人が行く 162 谷根千あちこち 4

団子坂にある「鷗外記念図書館」へ向かう途中に小さな骨董店「Gallery ULALA」に寄った。表に出ていた小品の焼物が目につき購入。黒を基調としたぐい呑み。主はフランス人女性。
筆者とK子の会話は続く。その前に女主人との会話。
「パリのモンパルナスの丘から来たの?」
と藪から棒に尋ねた筆者。
「ええ、そうです。ここに来て5、6年経ちます」
モンパルナスの丘の骨董市は有名だとテレビなどで知っていたのだ。
「焼物は市で見つけるんですか?」
「日本全国いろんなところへ行きますから大変です」物静かそうな白髪雑じりの実年フランス人女性。狭いスペースに渋目の日本の焼物が並んでいた。
「ご主人か誰か働いていないとこれだけではやっていけないと思うわ」
「そうだと思うね」

鷗外記念図書館は只今改築中で11月に「森鷗外記念館」としてオープンするらしい。今年は鷗外生誕150年、商店街は鷗外生誕150年フラッグで盛り上げている。
さて、団子坂を下り地下鉄千駄木駅を左折、「天外天」を通り過ぎて2つ目の信号を今度は右折。すぐ前が谷中銀座だ。

「コーヒーでも飲んで休む?」
「たらふく食べて気持ち悪かったあー。アイスラテにしょうっと」
「オーケー」
「アイスコーヒーとアイスラテ、下さい」
狭いスペースを奥に、コーヒーブレークの人たちがそれなりにいた。
「トイレに行きたいのですが」
「ここにはないので、この先のドラッグストアでお願いします」
「コーヒー店にトイレがない、なぬ!水系を飲んだら出るものは出るのに…」
「早く行って来てよ」
谷中銀座に人が一杯、先ほどの根津神社よりは大分若い層みたい。
「テレビでやってた、アド街あたりで、惣菜屋のメンチ、これだ」
「でも、メンチがないっす、また揚げてる最中?」
「へえー、こんなに並んでんの!」
「メンチ食べられない!」「この店も惣菜屋」
斜め向かいの店に並んだ。唐揚げ(200g200円)とメンチ(140円)をゲット。「この店に入るから待ってて」
「わかった」
「この徳利もいいかも」
と呟く筆者。2、3日前にテレビで徳利の蘊蓄をしていたので、括りなど気になっていたのだ。しかし手頃な値段と色合いそれに形の良いのがない。
「このマグカップ下さい」
「はい、皸割れがあるか確認して参りますので少々お待ち下さい」
碧の鮮やかさ、そんなに大きくなく値段も手頃。
これで焼物3品目、4個ゲット。Ncm_00091

「思い出した、カエルの店があるはず」
「右曲がって真っ直ぐ行けば左側にあるよ」とは絵葉書屋のご主人。
カエルグッズ様々、小物に文房具、キーホルダーにハンカチなどなど。
「これ買っちゃおーかな。カエルのお守りでーす。3つ」
「良いんじゃない」

岡倉天心記念公園でK子トイレタイム。夕焼けだんだんを通り過ぎた。

ぼちぼち行きまひょか。谷中墓地へ。

「そんなに早くあるかないでよ!」
「遅い」
幸田露伴の五重塔のある碑のベンチで一休み。
「木々が青々で気持ちがいいっす」
先ほど買ったメンチをつまみにロングサイズのビールを飲み干した筆者。
「このメンチ、油ぽい!」「やはり、あの大分並んでいた店の方が良かったみたい」
「ダミーだったか、クッソー」

「トイレ行って来る」
「また!」

「この辺に引き回しの刑に処せられた、ええと、何と言ったかな、高橋、うっ、お伝の墓があるはず?」
墓の前の墓誌を読んで、
「高橋お伝って、不条理やねえ、ひどい!」
「境遇があんまりや」
以前に来たときは花が供えられていたお伝の墓だったが…。
「そうそう、馬場辰猪の墓捜しぃ」
途中スカイツリーがくっきり見えた。
201204301538000_2

「カメラカメラ、このアングルっ」
「墓の囲いのブロックに乗っていいの」
「……」
「ダメだ、ズームアップしなくちゃ!」
「馬場辰猪の墓、アラベスク調の、どこだっけ?」
「どこ、10乙左側?」
「ちょっと待て、携帯で調べるから」
「えっ?」
「ここ、アラベスク調の墓、やはり立派だ、弟さんの胡蝶さんの墓もね」
野草の花を添えた。

谷根千歩きは終わった。携帯の万歩計は22032歩を指していた。計り始めたのは有楽町駅近くの国際フォーラムだった。

2012/05/04

クロカル超人が行く 162 谷根千あちこち 3

「天外天」でK子が注文した料理は、海老チリ、四川風麻婆豆腐、チャーハンセット、餃子2個(1個100円)、ザーサイ。量はハーフサイズ。

「こんなに食べられんの?」
「食べる、食べる」
チャーハンセットから平らげ、スープ、海老チリ、比較的辛い四川風麻婆豆腐、餃子それにデザートの杏仁豆腐と口に入れて行ったのだ。
「麻婆豆腐の味は?」201204301208000_2「少し辛いけど、イケるね。この分食べてよ」
「この店、12年前に来たけど、隠れた名店の趣だよ」
「食った、食った」
K子は動けなそうというよりは眩暈を感じたらしい。狭い店内は中高年の夫婦で一杯、外では並んでいる。人気店なのだ。
「おしぼりを頼んだのに、まだこないんだけど」
右奥のテーブルの男性の声。
だんだん忙しくなってきたらしくて、女将と店員それに料理人の間で掛け漫才っぽいやり取りが聞こえてきた。

「すいません、おしぼりです」
少し過ぎて女将が持ってきた。筆者は隣の客が美味しいそうに紹興酒の水割りを飲んでいて刺激された。

「なにっ、紹興酒の水割り!」
半ばあきれた風のK子。
筆者はザーサイ、餃子、麻婆豆腐と海老少々をつまみにビール1本と紹興酒1杯を飲んだ。
「はい、お勘定、お願いします」
「いくらだと思う?」
「7000円」
「惜しい、残念!6650円でした!」
「カロリー消費しなくちゃ」だって。

須藤公園ですでにK子はトイレ。その左側の狭い通りを抜けると元雑誌「谷根千」の編集室、今は映画研究室とか。古い団地風の住まいに某氏が住んでいたっけ。
「風呂屋の近くのアパート探しにいくぞと」と筆者。この辺の通りはともかく狭い。
「どこまで歩かせんのよ!」
小学校で思わず風呂屋を訊いた。
「この路の先の右側にあるよ」とお兄さん。
「あった、あった、あれっ、サブタイトルがついてるっ」
肝心のアパートがない。二度ほど回ったあと、タバコ屋のおばさんに尋ねた。
「あのー、この前にアパートがあったんですが」
「取り壊して、半分はあそこ、公園になっています。もう5、6年になるかな」
「ありがとうございました」
やはり想像した通りだった。実は知り合いが以前に6年ほど住んでいたところだった。(つづく)

2012/05/03

クロカル超人が行く 163 谷根千あちこち 2

露店の多いこと、境内の周りを左へ行って今度は右へ、神社の裏側の方に行ったのだ。30軒以上並んだ露店で筆者とK子の会話は続く。
「何か食べたいすっ」
「もやもや風か、それにしても多いや」
「たこ焼きがいいなあ、あっち行ってみるよ」
「ビール下さい」
「500円です」と店の女性。
「串もんじゃ、玉子ありの、一つ」
「たこ焼き、止めた、これでいい」
「じゃ、二つっ!」
「500円です」ともんじゃ屋の女将。
中高年がやはり多い。何せ中高年女性用の下着まで堂々と売っている店まであるのだ。“おばあちゃんの原宿”ではあるまいし。ともかく商魂逞しい。
近くの階段のところで頬張った。何とも言えないうどん粉の味、かための玉子。しかし冷えたビールの方が美味かった。220円がここでは500円か!ランチ前に食べて大丈夫かと気になるK子。

「この離れの神社でみんなお詣りしてるけど、お詣りする?」
とK子が5円玉を財布から取り出そうとした。
「いや、別に」
結局食べ終えてすぐに移動した。祭りで見かける光景のオンパレード―。具だくさんの大きな煮込み鍋が軒先に置かれた店、ぱぱーんと的を鉄砲で撃つ男性の真剣な姿、小さな金魚が所狭しとたくさん泳ぎ回っていた、だだっ広い店、饅頭屋、アイス屋、ほんまに数え切れない。

「ツツジガミエルトコロハドコデスカ?」
突然外国の女学生が話しかけてきた。
「Over there」と筆者。
「アリガト、ゴザイマシタ」
「直感で英語を話せる人だと思ったんじゃないの」
「そんなバカな」
やがて境内を抜けて脇坂不動産や地下鉄千代田線千駄木駅を通過。目指すは中華料理店。
「確かこの辺だった?うっ、工事してる!もしかしたら…」
「まだなの!」
「もう少し先に行ってみて、あっ、あった、天外天」
「タバコ吸いますか?」
ふくよかな店の女性が訊いてきた。
「すいません」
と筆者が呟いたが相手には通じなかったようだ(笑)。(つづく)

2012/05/02

クロカル超人が行く 163 谷根千あちこち

「ひまね」じゃないよ「しまね」だよ、「リョーマ」の休日。島根県と高知県の観光キャチフレーズが面白い。変われば変わるものだと感心するほど。これは今朝のみのもんた司会の「朝ズバッ」の一コマだ。このゴールデンウィークは2200万人移動で一人33000円使う勘定だそうだ。

4月30日のゴールデンウィーク2日目に出かけた。場所は安・近・短の典型、東京は下町、谷根千など。今回は会話編でお届けしたい。

筆者とK子との会話。

「どこいくの?」
「わかんない」
「ひょっとしたら、足尾どうざん」
「何、それ、行きたくなーい!」
「じゃ、ともかく、東京方面や」
「最近オープンした駅ナカの、あんぱん屋」
「丸の内のイタメシ」
「昨日スパ食べ過ぎたから、パス」

この後二人はともかく電車に乗った。

「山手線で有楽町駅だな」
「どこいくの?ま、いいか」
「熱狂の森」
「それって、なぬ?こんなところにそんな森あんの、ウッソー」
「クラシックのリーズナブルな祭典や、今年はロシアあれこれや」
「チケットの予約に、立ち寄りや」
「チミも行く?」
「パス!」
「バスと聞こえたよ」

この後二人は三菱村→高級ブティック街→工事中の新東京中央郵便局→改築中の新東京駅へ。そして千代田線二重橋駅へ。

「どこいくの?」
「根津、千駄木、谷中」
「えっ、」
「つつじで有名な根津神社にお詣りや」
「ウッソー、お詣りしたことないくせに!」
「最近はなんでも神頼みや」
「しゃーないな」

根津駅下車。

「京都の漬物屋のデモ、お茶屋に雑貨屋八百屋、ええと、わかなくなっちゃた、多くて」
「このデカサイズのコーヒーカップの焼物、いいね、渋い緑の色合いサイコー」
「誕生日プレゼントに買ってあげるよ」

信号を左折してフリーマーケットっぽい通りを過ぎると根津神社。201204301114000_4「早く歩かないでよ」
「チミが遅いじゃん、ババたちを避けて行かなくちゃ、エネルギーいんのよ」
「ゴンギツネの根津神社到着!いやに赤いね」
「つつじの写真撮っちゃうかな。つつじの中にいるおじさん、邪魔、民家があるって、幻滅、はずしちゃおーっと」

デジカメのパチリとした音のあと、

「撮れたけど、電池がもうないっ」201204301116001

「おバカ、喝 !」

「つつじ見の入口に来たけどぉ、入る?200円、高い、パス!」

境内の左側に並ぶ露天。

「このつつじ、きれい」
「なんぼ、62000円、売約済みや!」(つづく)
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