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2012/01/21

クロカル超人が行く 154 港区三田 慶応義塾大学三田キャンパスで開催された講演会『大いなる伝統 西脇順三郎から田村隆一まで』

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 三田の慶応義塾大学で西脇順三郎アーカイヴ開設記念の講演会があって出かけた。講師は明治学院大学名誉教授の新倉俊一氏。今年は西脇順三郎没後30年で誕生日の今日、記念講演会が東館の5階で行われた(歴史を感じさせる瀟洒なホール)。ホールはほぼ満員の80名以上が聴講。西脇順三郎と親交があった詩人、影響を受けた人などを俎上に乗せ、大いなる伝統について詩やエピソードなどを交えて講演。紳士的ソフトムードの講演会だった。その中で戦後の荒地派の代表者、鮎川信夫の西脇詩の評価についての話が興味を引いた。「橋上の人」はやはり倫理の人、西脇詩についても厳しい評価―。その荒地派同人の、晩年は鎌倉の呑んべえ詩人こと田村隆一の話が印象的。西脇先生に表札をお願いしたとは。それは尊敬を通り越して崇拝者だろう。そう言えば英文学者の福原麟太郎、西脇順三郎、中野好夫、阿部知二の戦中行われた座談会(『文芸』昭和15年12月1日 改造社)で司会をしていた若い田村隆一がいたっけ。
 最後に演劇関係者の西脇順三郎や田村隆一の詩の朗読で終了。この後西脇順三郎アーカイヴ開設のお披露目を兼ねたプチパーティーが、「西脇順三郎―大いなる伝統」展開催中の南館アート・センターの2階であった。

 西脇順三郎アーカイヴ開設記念「没後30年 西脇順三郎―大いなる伝統」展は2012年1月10日〜2月24日まで慶応義塾大学アート・スペースで開催中。Nishiwaki_ten2ジョン・コリア、英文詩集『スぺクトラム』(この本の出版事情についての記事は、2012年2月10日刊行の小冊子『CPC Journal』第5号に掲載されるはず)、ジョン・コリアより新倉俊一宛書簡、「旅人かへらず」の詩稿ノート、表紙に使われた鳥居清長≪菖蒲の池≫、『アムバルワリア』、『詩の原理』、『昭和詩抄』、T・S・エリオット、エズラ・パウンド、瀧口修三、西脇セミナーの報告が連載された雑誌「詩学」など60余点が展示されている。狭いスペースにもかかわらずいろいろな詩人の息吹が感じられ、また、小千谷訛りの残る西脇順三郎「最終講義」も聴ける。鑑賞中にちょっと耳に入ったのが次の言葉。ぺらぺらと英語を話すばかりではねえ、文化がなければ・・・。
 この講演会のパンフレットの最後に掲載されている田村隆一の詩を引用しよう。



ぼくは17歳の4月、早稲田の古本屋で
不思議な詩集を見つけて
東京の田舎 大塚から疾走しつづけた
ワインレッドの菊型の詩集をめくっていると
ほんとに手まで赤く染まってきて

小千谷の偉大な詩人 J・N
言葉の輪のある世界に僕は閉じこめられてしまって
古代ギリシャの「灰色の菫」という酒場もおぼえたし
イタリアの白い波頭に裸足のぼくは古代的歓喜をあじわって
だしぬけに中世英語から第一次世界大戦後の
近代的憂鬱に入る

ぼくは50歳 偉大なるJ・Nは80歳 
ハムレットの 「旅人帰らず」という台詞がお気に召したらしく
J・Nはピクニックに出かけてしまったが
「じゃ現代はいったいなんなのです?」

おお ポポイ
哀ですよ
人は言葉から産まれたのだから
J・Nは言葉のなかにいつのまにか帰っているのだ

四千年前の 二千年前の 百年まえの
言葉という母胎に帰ってくる旅人たち
<4月は残酷そのものさ>
いつのまにか猟犬が地に鼻をつけ
まるでT・S・エリオットのような声で
ここ掘れワンワン

ここ掘れワンワン

吠えつづけていて

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