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2011/10/02

超人の再び外国語考

 再び外国語考である。今読んでいる本は筑摩書房のPR雑誌『ちくま』の最新号の巻頭のページ、なだいなだ氏に触発されて読んでいる本だが、言葉に関連してこれまた岩波書店のPR雑誌『図書』にも載っている。この西洋古典学が専門の執筆者の言葉にしばし耳を傾けてみたい。少し長いが引用しよう。

 ペンと文字と書物で成り立つ文学部が昨今ははなはだ不人気である。とりわけ外国語の修練を必要とする分野がそうであるが、これには長い歴史がありそうである。明治の日本は西洋の社会制度や科学技術を学ぶために英独仏語を高等教育の柱に据えたが、経済や技術のある分野で西欧を超えたと言われ始めた頃から、日本はまるでもう学ぶものはなくなったと言わんばかりに、外国語教育を軽視するようになった。「ふらんすへ行きたしと思えども ふらんすはあまりに遠し」という憧れも消えて久しい。そして文部科学省と大学は、自国を知り異文化を知るためには何が必要かという観点からではなく、教育における実利と、学生からの需要の観点から必修外国語を減らして来たから、外国語学習とセットになった外国文学研究も衰微するのである。そして、学生の来ない分野は必要がないということになる。大学から教育の思想が抜け落ち、需要と供給の経済法則のみが突っ走るとどうなるか。私学では受講生のなくなった外国語クラスはたちまち廃されるし、国公立大学でも、何ら生産せず場所ばかり取る膨大な蔵書に敵意が向けれる。書物の天に厚く埃の積もるのを見て、数十年披見されぬような本は不要ではないのか、と考える人が現れる。明治の日本を唾棄して止まなかった荷風がこんなことを言っている。
「われ等の意味する愛国主義は、郷土の美を永遠に保護し、国語の純化洗練に勉むる事を以て第一の義務なりと考ふるのである」(『日和下駄』)。
これこそ文学部に課せられた義務、文学部にしか負えない使命であろうと思うが、これを実践しているのだろうか。確かに、負のグローバリゼーションの覆うこの世界では、英語さえ知ればコミュニケーションが叶うから、ややこしい言語に難儀する必要はない。ペンと紙のいらない携帯で情報交換する段には、国文学科で日本の古典を修める必要もない。しかしこれは、言わば地面に二本の足で立っているだけの状態であり、立っているが危うく貧しい。文学部の担う人文学は、この両足の周りに広がる広大な大地のようなものではなかろうか。

 この執筆者の嘆きがどこまで届くだろうか。最近では電子辞書や電子書籍も定着しつつあるし、この分野のテクノロジーは凄い、グーグル、アマゾン、ソニー他各国各社しのぎを削る戦いが展開されている。メディアはそれを追いかける。消費者には安く買えるから便利に違いないが、あっさり感で全てが片付いてしまうような気がするのだ。じっくりものを考えたり、苦労して暗記したり、想像力をはっきりしたりすることが人間力を強固するはずなのだが、頭脳や精神のしなやかな使いこなしがだんだんできなくなるような気がする。ペン如くのツールが著しく進化して使い勝手が良くなって来ているのだが…。大学では現にコキペを使って同じような答案が頻発していて困っているという。
 今読んでいる本の言語学がご専門の著者にして一つの言語をマスターするのはなかなか難しいものだと言わしめている。また、別の詩の翻訳に関しての記事は、実例としてアメリカに40年住んでいるヨーロッパ系の外国人が英文でそれなりの詩集を出したが、書評ではどこか英文がおかしいとネイティブのアメリカ人から指摘されたという。それほどまでに外国語習得は難しいということだろう。
さて、本読みの続きに戻ろう。その前に仕事用の資料読みも(主に雑誌論文やエッセイ)150ページはあるのだ。すべて投げうって寝てしまうのも手ではあるが。たまにはミューズとの出会いもと行きたいところだが、なぜかバッカスの神に捕まってしまった―。

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