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2011/06/07

超人のジャーナリスト・アイ 142 テレビ番組評 最近の出版事情関連 続

 横浜駅西口ダイヤモンド地下街にある「有隣堂」。神奈川県を中心した日販帳合の書店業界第3位の大手書店。かつては時間帯によっては客で溢れていた有名書店なのだ。ここにも時代の波が押し寄せている。筆者も驚いたのだが、店内の吊り看板を見て本屋の中に本屋がある感じ。古書と新刊の混在、何%、何10%オフの値札が躍る、有隣堂もコラボかと思ったのだ。古本屋の連中の仕掛けかなとふと頭を過ったのも事実。有隣堂西口店の話のついでにもう一つ。伊勢佐木町にある有隣堂本店の話。日本文学関係の英訳書を探しに立ち寄ったのだが地下1階のコーナーに並んでいる本の貧弱なこと、これでは全然置かない方が却って良いくらい。しかもアルバイトの女性らしく、棚にあるだけですと素っ気ない。みなとみらいにある有隣堂の洋書部門の店に訊いて在庫の有無を確かめてくれるサービスぐらいできないものかと正直腹が立った。つい3、4日前の話だ。本店にも昔は洋書もそれなりにあったが今やインターネットで買える時代、しかも自宅まで1日足らずで運んでくれる超便利な世の中だ。回転の悪い本が棚から消えていくことも致し方ないのかも知れない。
急いで話を元に戻そう。
というわけで、番組でも取り上げていたが新刊書店と古書店とのコラボレーション。これも書店サバイバルの一環だろう。いやはや、時代は変わったのだ。と思いきや、明治時代の始めには古書店も新刊書を売っていて、やがて政府が条例を出し古書と新刊書を売る店に分離、書店ビジネスを方向づけた由。この近代本屋曙の話は鹿島茂の連載「神田神保町書肆街考」(「ちくま」2011年6月号)に詳しい。大変示唆に富む連載で毎回メモを取りたくなるほど。書店も原点に戻ったということか。有隣堂を見ててそう思ったのだ。まさかブックオフを意識した?確かにこの横浜駅界隈は都内の新宿、渋谷、池袋などのターミナル地区と同様に書店激戦区。有隣堂は地元の雄として迎う打つ立場だが、有隣堂自体このダイヤモンド地下街だけでも5店舗もあるのだ。他の追随を許さんとばかりに。横浜駅界隈は栄松堂、丸善ブックメイツ、紀伊國屋書店などがひしめき合っている。
そのブックオフにも番組は取材していて、新古書店の利点は新刊寿命が短い新刊書店と比べて新刊書店にない本をフォローしつつ、品揃えを充実させていることだという。現在1077店舗、売上は444億円だ(因みに紀伊國屋書店は1145億円、丸善は889億円、有隣堂547億円、ジュンク堂486億円)。しかしブックオフも大型店舗展開をしていくらしい。町田などにあるブックオフはもはや老舗の感もあるけれども、ともかく多品種でそれなりに人も入っている。このビジネスも市民権を得たのだろうが、これからはサバイバル作戦?“ブックオフ大賞”を設けたりして集客力を高めることかも知れない…。
 筆者は書店生き残りは立地、仕入れそれに単品管理(接客や係数管理能力も入るが本好きが一番のモチベーションかも)にあると考えている一人なのだが、中小書店の典型の書店も番組は取材していた。地下鉄早稲田駅に近いあゆみブックスだ。業界でも有名な店らしい。ここに中小書店の生き残る道のヒントが隠されているような気がする。札幌駅ビルにかつてあった某書店での話はこのコラムでも書いたが、コンピュータ(棚は縦横にコンピュータにより在庫管理されている)に頼り過ぎて実際の棚にある本が活かされていない本末転倒の話。それとは違ってこのあゆみブックスは、今日売れた本を調べるのにスリップを実際に手に取り管理しているという。アナログ的といえばそれまでだが実際身体で覚えることで傾向と対策が打てる。今は忘れかけている目利きの効用だ。手先と口先だけでは書店の仕事は務まらない。棚を舐めるように絶えず触ってなんぼ、書店はもっと奥が深いのだ。あゆみブックス(確か仙台にもあった)にはもう一つ狭いスペースを活かした工夫があった。女性店長がテレビ取材ににこにこと応えて曰く、文庫の棚が二重棚になっていて品揃えが充実していると。ここは早稲田の先生や学生さんが多いので買切の岩波文庫も揃えていると。咄嗟に地震のときは…と想像してしまったが。また、手書きポップを置いて客を引き付けることも忘れない。いろいろと努力していかないと生き残れないことが分かる。そんな中最近書店との直取引が増えていてこの傾向は今後増えていくかも知れないとは司会の財部氏の予測。アマゾンと出版社、ベストセラーを出した出版社と書店のように。筆者も正味問題や促進などを考えると直取引にはマイナス面もあるがプラス面もあるような気がするのだが。アメリカでは小売大手のダブルデイが倒産して何ヵ月が経っているが、再生したのだろうか。番組は最後にコミックのベストセラー仕掛け人にインタビューしていた。この若い編集者は作家さんは書くのが仕事、私たちは売るのが仕事、編集はうまく整理すること、なぜ本が売れない、売れ方が変わってきていることが分からない、どう造るしか考えていないと淡々と喋っているわりには鋭い。ベストセラーを産み出した自信が見え隠れしていた。それにしても財部氏の声のハスキーなこと。
 ここまで書いてきてこのテレビ番組のタイトルに戻れば、本は売れているのかの命題は、これだけの現象を追っただけでは解けないということに行き当たる。実際にきちんとした統計がつかみ切れていない。アマゾンなどの売上―。紙媒体から電子媒体への変化は確実に社会や読書環境に大きな変革をもたらすはずだ。
 最後にコンビニの話。大手取次店にいたこともあるコンビニ最大手の経営者が、その経験を生かしてコンビニの一角に雑誌を置き販売する書店ビジネスに進出。始めは周りの書店の協定もあったのか、限られた雑誌の店頭販売しかできなかったが、今や扱う雑誌や書籍のアイテムも増え、スペースも拡大して3000億円の売上規模、その分どこが割りを食ったか、自ずと明らかだ。町の中小書店だ。年間廃業数は凄まじい。パイの食い争い、取次代理戦争―。栄枯盛衰、世の慣わしというが…。

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