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2010/12/09

超人の面白読書 77 ノルウェーのノーベル賞作家 ビョルンソン著『アルネ』

 20101209115301_00001ノルウェーのノーベル賞作家ビョルンスチュルネ・ビョルンソンBjørnstjerne Bjørnson(1882-1910)【写真左: ノーベル賞文学全集 19(主婦の友社昭和47刊)より】の代表作の一つ、『アルネ』を小林英夫訳の岩波文庫で読んだ。それこそ気になっていたノルウェーの作家だが、ずっと読まないままだった。あまり気乗りしなかったのが正直なところ。双璧の『日向の少女』は山室静(これを機に『山室静自選集』をペラペラ捲っている)訳で角川文庫から出ている。それよりも掘り出し物は昭和3年刊の世界文学全集(27)『北欧3人集』(新潮社)だ。ある女子大の図書館にあったリサイクルコーナーで見つけて手に入れた。山室静の師匠こと宮原晃一郎と生田春月訳。ここにはビョルンソンの上記2作品が訳され簡潔な解説もあった。
 『アルネ』はノルウェー西部最北端山岳地帯の自然美豊かなところを舞台に繰り広げられる純愛物語だ。昔は親同士が敵対関係の間柄でそれを乗り越えてお互いの息子と娘が結ばれるというハッピーエンドの小説仕立て。しかしこの小説には唄や民謡、それに讃美歌が大分挿入されていて、むしろ始めに唄があって後から筋書きを施したと、訳者が言うのも合点がいく感じだ。例えば次のような唄だ。

「わたしの小やぎよ小羊よ
山みち坂みち切り断って
どんなにけわしく高くも
おまえの鈴の音追っていけ

わたしの小やぎよ小羊よ
おまえの毛皮をよごすなよ夜なべの仕事に母さんが
外套に仕立ててくれるもの

わたしの小やぎよ小羊よ
おまえのししむら肥らせよごぞんじないかえ母さんがスープにこさえて下さるの?」
( 本文P.43-P.44)

 主人公アルネは父親ニルス譲りの唄う詩人、母親は敬虔なクリスチャン、父親はバイオリン弾き語りを得意とするが、今でいうちょい悪親父の典型的な男性だ。
 物語は突如サ―ガ(北欧叙事詩)を思わせる書き出しが4ページ半続くが、それは山々の困難をみんなで助けて山をまた緑に覆うという咄だ。ムンクの『生命のダンス』の絵を連想させた。森の仲間に語らせる。それはネズやカシやシラカバや匕ースやモミだったりした……。そしてこの散文詩は、この物語の最後のところで呼応しているようだ。
 アルネの誕生は山岳地帯、上のカンペン、母親の名はマルギット、水呑百姓の一人娘だ。〈続く〉

Nec_0269
Aulestad, Karoline og Bjørnstjerne Bjørnsons hjem
Dikteren Bjørnstjerne Bjørnsons gård Aulestad i
Gausdal. Foto: Axel Lindahl, 1890-Ǻrene.
Nec_0270_2
【写真左上:1890年代のビョルンソンの家(ネットより) 写真左下: 筆者が10代の時にノルウェー人から頂いた写真集『NORGE』 より】

追記。ノルウェー、ノーベル賞関連で至急付け加えて置かなければならことは、すでにマスコミ報道で周知の事実だが、やはり今日オスロで行われるノーベル賞平和賞受賞式での中国の民主活動家・劉暁波氏(服役中)の代理人への賞の授与すら行われないことだ。毎日新聞「余禄子」は、中国の教典「中庸」の「隠れたるより見(あらわ)るるは莫(な)く 、微かなるより顕らかなるは莫し」を引用しながら、昨今にわかに国際社会との価値観のズレをみせつける調子外れな対外行動が目立つ中国を批判している(2010年12月10日付毎日新聞朝刊「余禄」)。中国は他の国々に働きかけてノーベル賞平和賞受賞式に出席しないよう圧力をかけたらしい。結果、ロシア、サウジアラビア、イラン、キューバなど20ヵ国ちかくが欠席するようだ。また、賞授与がない式は、ナチスに弾圧された平和活動家オシエツキー以来という(同紙「余禄」)。
 また、同紙2010年12月9日付夕刊では「たった一人を恐れる中国」との見出しでノーベル賞平和賞受賞式に参加する米国在住の中国人活動家、楊建利氏の記事を載せている。「民衆が既に受け入れていないことを知っている。だから余計に劉氏を恐れる」と中国の指導者の考え方を説明している。中国も困ったものである(2010年12月10日 記)。


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