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2010/09/15

超人のジャーナリスト・アイ 129 大型書店考

 筆者は、8月28日付朝日新聞のフロントランナーに丸善の小城武彦社長の記事が掲載されていることをネットで知った。早速その新聞を買い込んで読んだ。
 ここ何年間か大日本印刷(DNP)が、丸善→図書館流通センター(TRC)→ジュンク堂→文教堂→ブックオフ、主婦の友などを次々に傘下に収め、一大出版流通再編が加速し始めていて、少し目を離せば関係が分からなくなるほど巨大な地殻変動が起きている。その仕掛人こそ通産省ベンチャー企業支援出身でTSUTAYA常務、産業再生機構,カネボウ社長を歴任した小城氏その人と噂されている(ネットを読む限りではの話だが)。朝日新聞の記事を端折って読めば、日本の知を支える基盤産業が崩壊しつつあることが看過できない、「委託制度」に問題があるとしつつも、書店は顧客のニーズを掴み、売り切って行く姿勢が大事と強調している。購買意欲を高める店舗工夫が必要と斬新なアイデアを店内に展開中だ。松岡正剛(元工作舎雑誌「遊」編集長、『千夜千冊』の著者、現丸善の子会社「編集工学研究所」所長)棚(松丸本舗)はその一つで、デザインや棚構成も斬新だ(参加した出版社の話では、売れ行きはイマイチとの声もあることも事実)。 紙とデジタル、リアル書店とネット書店という「二次元ハイブリッド」を構想、ネットと書店がうまくコンビネーションをはかり、紙とデジタルでどうシナジーを出すかを考えていて、日本ならではの書籍流通のモデルを生み出したいと。それは店舗で本がなければそれで終わりでなく、なければ通販で届けるか、デジタル配信するか、その場でプリントオンデマンドで印字するか、お客が選択できるようにしたいと。目指すは大日本印刷の力も借りて、電子書籍配信やプリントオンデマンドなどの機能を統合したデジタル・プラットホームを構築することだと語っていた。
 日本には二大取次会社(トーハンと日販)が出版流通を独占しているが、出版流通業界再編がさらに進化し続けていくのか注目されるところ(取次会社のサバイバルも過激さを増している)。
 来年2月に丸善と同様に正式に大日本印刷傘下に入るジュンク堂が、大型書店出店を計画、その場所が最近業界紙に発表された。今度は大阪の阪急梅田駅茶屋町に2060坪で12月に出店する。MARUZEN&ジュンク堂のブランドでの出店もあり得ることを示唆。これは既存の紀伊國屋書店梅田本店(改装計画中)を直撃するばかりではなく、周辺書店も影響を受けるはずだ。大阪梅田周辺には大型書店が結構あるが、果たして生き延びられるのか心配だ。ジュンク堂は同一商圏にある梅田ヒルトンプラザ店を縮小して丸善の看板で運営することも検討しているらしい。 堂島の旧毎日新聞社跡地のビルには大規模なジュンク堂大阪本店もある。いやはや中小書店の淘汰の時代が目の前に来ている感じだが、大型書店同士の戦いもしのぎを削るということだろう。共存共栄はありえない?
 MARUZEN&ジュンク堂の連合体は、最近渋谷の東急本店に開店したばかりだが、福島・郡山のうすい百貨店に県内一のワンフロア700坪で、10月の中旬には吉祥寺の伊勢丹跡地の商業施設に1100坪で、10月下旬には広島の天満屋にも出店予定。2012年までにこの連合体は、全国の主要都市で大型店舗を10店出店する計画。そのため売り上げが芳しくない小規模店を閉店する。また、丸善やジュンク堂のある既存店がある場合には、かち合わないように調整しながら出店するらしい。出店ラッシュもいいが、要は、店舗運用資金とその後の売り上げ伸長だ。豊富な商品と質のいい人材確保ができるかがポイントだ。これだけの出店だから決して容易ではないとは素人でも想像がつくが、内部もいろいろと混成チーム、その苦労もあるはず。そもそも小売業の書店も本離れ現象やネットショッピングに読者を奪われたりして販売不振が続いている。
 印刷業界の二大大手、大日本印刷と凸版印刷もデジタル化の波が押し寄せ、旧来の印刷工程を直撃、新技術、コスト提案等のプレ部分や製本他まで視野に入れたポスト部分を取り込まないと特に中小規模の印刷会社は生き残れないらしい。印刷業界も不振で他業界への連携を強め始めたのだ。その豊富な資本力と川上から川下までの出版流通全体を視野に入れた印刷会社の戦略か。
大日本印刷傘下の丸善・ジュンク堂・TRC・主婦の友のCHIグループ、他方、凸版印刷も紀伊國屋書店と国会図書館のデジタル化に乗り出した。アマゾン、アップルやグーグルの「黒船」も来ている。新たな読者の囲い込みが始まっている。
 リアル書店の店頭の活性化はただ端末に頼り切りにするのではなく、お客が立ち寄りたくなる棚構成、棚管理、接客に尽きる、これは一朝一夕ではできない。この辺が筆者の常日頃から思っていることなのだ。最近では手書きポップなどで既刊書や文庫本の売り上げを驚くほど伸ばしている書店もあって、活性化も見られるし、書店を舞台にした小説や奮戦記なども出て来た。それにしても付録のバックが目当ての雑誌が渦高く積み上げられているコーナーに行くと、筆者などは逃げ出したくなって図書館に駆け込んでしまう。
いずれにせよ、コングリマット化した書店の大型化は、新たな流れが出来つつある兆候かもしれないが、文化受発信基地であることを忘れないでほしい。ビジネスも大事だが―。
 余談だが、久し振りに朝日新聞のbe欄を読んだ。丸善社長の記事以外にも面白いものがあった。勝ち組、負け組についての若者インタビュー記事、簡単にできてしまう、be report 電子書籍の自作法、まだあるフジマキ兄の記事そして何より面白かったのは、車屋長吉の悩みのるつぼだった。今回は老人の浮気を扱っていた。
2010年7月19日付毎日新聞朝刊メディア欄には、苦境「本屋さん」生き残り模索中 カギは本棚づくりとの見出し。この話は別な機会に。 最後に一つ付け加えると、上記で触れた梅田界隈に大阪が拠点の旭屋書店本店がある(最近元気がないようだ)。かつてはここの人文書は男女ペアで本の補充など棚管理をきめ細かく行っていた。
 さて、最後。ネット書き込みにここまで来たら大日本印刷は、ソフトバンクを買収したらとの大胆な意見が載っていた。

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