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2010/04/03

超人の面白創作 携帯連載小説 ミルクプラント 60

 戦前戦後を生き抜いてきた父は、一家の長として家族を支えてきた。生業が何であろうと家族を食べさせていかなければならなかった。遅い結婚でそれから子どもを6人設けた。結婚当初はほとんど家を空けていたらしい。当時―戦前だったと思うが―馬喰で鳥取辺りまで行っていたらしい。それは後年母がナオミの結納で相手の親に語った話からも伺えた。戦後一家の長として恐らくはこの牛の仲介業で儲けて次の業種に発展的に転換したのだ。すでにアイスキャンディ関係の商売は始めていた。戦後のどさくさの時代は地方にも経済の新たな風をもたらしたのだ。もちろん他方では田畑や近隣と共同の山林(ナオミも祖父に連れられて下刈りに行ったことがある)や蚕産業(戦前でむしろ祖母たちの仕事だったか。その名残を母屋の囲炉裏のあった天井裏に見ることができた)、お茶栽培(当時は二軒先の床屋で何人か共同でお茶の乾燥作業があった。ここのおじさんはひょうきんな人で有名だった)などもしていたのであった。稲作は借りていたところも合わせれば全盛期には1町歩ほどあった。N川の堤防に沿って歩くこと20分の隣の地域沿いから菩提寺のあるお寺の下の方まであちこちに点在していた。この田畑の仕事は祖父と母が取り仕切っていた。祖父が亡くなってからは母一人だった。だから冒頭近くですでに書いたことだが、母は百姓女そのものだった。春の種まき、除草、収穫期そして田んぼの後片付けと結構それなりに忙しかった。繁忙期には母方の親戚が手伝いに来てくれたのだった。また、ユイが残っていた時代で、ナオミもお返しに母方や叔母の田植えに駆り出されたのだった。その中にある時期から毎年耕運機で春になると苗代を作ってきた人物がいた。吃り症の笑うと目がなくなりそうな、ナオミの2才年上の従兄弟T男である。今ナオミの瞼に浮かぶ光景は、ミルクプラントから道路を挟んだ向かえの田んぼでT男が耕運機で水を張った苗代を何度も何度も平らにしている農作業の光景だ。顔に泥が跳ね、手で拭い去ろうとするがまた、泥が跳ねる。T男さん、目のところに泥が、とナオミの声。その声に反応したのか彼は笑った。母から休憩時の差し入れの味噌おにぎりを持参したのだ。

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