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2010/02/10

超人の面白創作 携帯連載小説 ミルクプラント 46

ポリフォニー 2。

 ナオミはボイラー室の缶の前で転寝してしまっていた。そしていつの間にか不思議な世界に引きずり込まれていた。確かにここはミルクプラントの中、蒸気が充満していて目の前の缶の中はこうこうと燃えている。時折パチパチと音をたてながら。後ろのコンクリートの壁は限りなく黒い、その壁に寄りかかってうとうとのナオミ―。

 どう辿り着いたのか、ナオミはギリシャ船内にいて、何やらギリシャ人の船員と手真似口真似で会話をしようとしている。君はどこから来たんだい、何年生?船員は優しそうにまだ幼さの残るそれでいて一見大人びいたナオミの顔を見やった。そのうち会話が途切れ、筆談になっていた。ギリシャ語でありがとうは、[efharisto] 、こんにちは、[jia sas] 、さよならは、[adio] と簡単な日常会話を教えてくれた。幾何学的文字のギリシャ文字、とてもすぐには飲み込めない、シュリーマンじゃあるまいし…。ナオミはぶつぶつ、しかしギリシャ人の船員は万年筆を走らせていた。罫線の入った薄いピンク色の紙片の上にその文字は踊った。初めて見る言葉だった。何とへんてこな文字、キリル文字、否ヘブライ文字、そう、あのギリシャ文明の、でも船員の格好はお世辞にも良くなかった。会ったのは船長近くの船員だったはずだ。それでも長旅で何度も読んだのか右上の角が取れていたよれよれの英語版のバルザック作『ゴリオ爺さん』のペーパーバックをくれた。覚えたてのドイツ語でダンケシェーンと言っても通じなかった。ヨーロッパの人だから中にはもちろん読み書きできる人もいるのだ。結局中学程度の英語でやり取りした。あの船は燃料をたくさん積んでいた。O港は国際貿易港だったが甲板から見下ろす海の色は多少汚れていた。

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