« クロカル超人が行く 126 新丸ビル パスタハウス『A W kitchen Tokyo』 | トップページ | 超人の面白創作 携帯連載小説 ミルクブラント 22 »

2009/11/25

超人の面白創作 携帯連載小説 ミルクプラント 21

 奥の間あるいは奥座敷と呼ばれていた8畳の間、そこには白壁に斜めに沿ってやや急な階段があった。もちろん取り外しが安易にできた。重いが二人ですれば簡単だった。ただ取り外したときに感じる1階と2階の隔たりがナオミにとっては恐怖に近かった。ここでの遠い記憶は、ナオミの母が滑り落ちて膝に水をためたことや暑い夏に階段の下で涼を取っていたことだ。ナオミはよく壁に背中を合わせ、そのひんやり感を味わった。2階から降りてくる風が心地良かったのである。母の膝の水たまりはその晩年まで尾を引くことになる。上京した折りなど駅の階段の上り下りがしんどかったようだ。よく欄に掴まって歩いていた。足腰が弱っていたことは確かだったが。
 ナオミには残念でならなかったことがある。それは母が階段から転げ落ちた原因を訊き忘れたことだった。何回か訊いたが母はその度に惚けてはぐらかした。多分うるさかった姑との葛藤の中での出来事だったろう。嫁いで来てまもなくの時期だったのだろうか。しかし、ナオミにはこの祖母の記憶はない。ナオミが1才1か月目で肺炎で亡くなっていたからだ。この気丈夫な体格のいい百姓女が階段から落ちた、ナオミには想像しただけで可笑しかった。蚤夫婦の典型で、ナオミの父は背丈が低くせっかちであった。この客間、中の間、奥の間のあいだがたまには小さな“運動会”にもなるときもあった。

おいっ、ナオミ! かまうんじゃない!

振り向くと母が箒をもって追いかけて来る。その度に襖や障子戸の開閉の音がうるさかった。

ピシャリ、ガタリ、
ピシャ、ガタ。

S男が泣きじゃくっていた。

« クロカル超人が行く 126 新丸ビル パスタハウス『A W kitchen Tokyo』 | トップページ | 超人の面白創作 携帯連載小説 ミルクブラント 22 »

コメント

コメントを書く

コメントは記事投稿者が公開するまで表示されません。

(ウェブ上には掲載しません)

トラックバック


この記事へのトラックバック一覧です: 超人の面白創作 携帯連載小説 ミルクプラント 21:

« クロカル超人が行く 126 新丸ビル パスタハウス『A W kitchen Tokyo』 | トップページ | 超人の面白創作 携帯連載小説 ミルクブラント 22 »

2020年8月
            1
2 3 4 5 6 7 8
9 10 11 12 13 14 15
16 17 18 19 20 21 22
23 24 25 26 27 28 29
30 31