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2009/10/20

超人の面白創作 携帯連載小説 ミルクプラント 1

ポリフォニー―。

 事故は砂利道を走ってわずか20分後に起きた。
あっ、トラックが左方向から向かってくる、こちらは120キロは出ているオート三輪車だ。今思えばあっという間の出来事なのだが、当時はある種のモーメントと言おうか、時間の落差があった。次の瞬間大きな弧を描いて前方右の梨畑へ吹き飛ばされた。梨の木がぽきぽきと折れたか知らないが、身体は宙返りしてそのまま意識がとまった。季節は秋だったか―。遠い記憶は砕けた梨のように淡い味だ。
 今ナオミは右足の膝あたりをじっくりと見ている。当時の事故の形跡がないか、白い傷痕がないか、捜し出しているのだ。そしてあの事故は何だったのか、田舎の叔母の葬式のバスの中から覗いてふと浮かんだ言葉が、そうか、奇跡だったか。ナオミは右足の膝あたりをまた見入った。
今は舗装されて昔の埃っぽい道を見ることができないが、だんだん細くなって消えそうな道はまだ健在だった。梨畑でさえその辺りが急変しているのに、細々と梨の木々が春に備えているようだった。あれから何十年が経った?指を折るナオミの指はすでに片手では足りなくなっていた。記憶のいい加減さはさておき、記憶のエキスというものが存在するとすれば、それだなと頷いた。

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