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2009/10/24

超人の面白創作 携帯連載小説 ミルクプラント 7

 ナオミは小さいときから母屋とは別の場所で寝起きしていた。わずか畳二畳の狭い部屋だった。祖父と一緒で朝と夜は食事を運んでもらったり、自分でも運んだりした。時折入る鉄製の四角い入れ物が風呂代わりであった。鉄製だから手など触れると熱い。このお湯はどこから持ってきたのだろうか。沸かしていた記憶がない。確かすぐ隣のミルクプラントから窓越しにパイプで引いていたはずだ。その鉄製の“風呂”で祖父の身体を手拭いでごしごしと洗った。祖父はいつだったか植えた苗がうまく育っているか近くの田んぼを見に行った軒先の豚小屋近くの柿の木の下で倒れた。中気であった。遠い記憶はさらに祖父との死別を思い起こさせてくれる。当時は今と違ってまだ土葬でまた、葬儀所もほとんどなく隣組と菩提寺との連係で執行されるのが普通だった。駆け付けたホームドクターのM医院の院長がご臨終ですと告げると、ナオミは祖父のその特徴的な多少長い睫毛から顔全体を見入り、そして手のまだある温もりを感じて一旦祖父の身体から離れた。何年か一緒だった祖父は死んでしまった、逝ってしまったとナオミは悲しみを押さえることができず、一晩中呆然と祖父の遺体の前にいた。翌日親戚の人たちが駆け付けた。遺体はきれいにアルコールで拭かれ、来世に行くための準備が整えられた。白装束に着替える役柄はナオミがすべて担った。袖に手を入れる、すると動くものとすっかり思い込んでいたから、異常な力が多少必要だったことに気づき、あっ、死んだのだとその時やっと実感したのだった。昼実家で行われた祖父の葬式は古い家屋のせいか、室内は暗く障子窓を外しても外との明暗はくっきりしていた。今でもその光景が目に焼き付いていて離れないのだ。薄暗いなかでの葬式準備、息子娘叔父叔母など親近者でごった返し、外は近所の人たちが集まってきていた。その家の中から外へみやる視線にある画家の絵の構図をみたナオミ。この地方では詩人の草野新平もその詩に書いたことで多少知られているが、葬式のことを“じゃんぽん“と言うのだ。この響きは木魚の叩く音を連想させて可笑しい。

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