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2009/07/21

クロカル超人が行く 117 七月の夜―ブルーノ・シュルツ祭 Noc Lipcowa-Festiwal Schulzowski w Tokio

200907201349000_2海の日の今日、T大学文学部現代文芸論研究室主催/ポーランド大使館後援、シアターX(カイ)協力の「七月の夜―ブルーノ・シュルツ祭 Noc Lipcowa-Festiwal Schulzowski w Tokio」を観に会場のT大学法文2号館1番大教室に足を運んだ。実は10日ほど前に新聞でこのイベントを知り、無料かつ先着順ということが気に入り顔を出してみようと思ったのだ。午後2時から6時までの長時間に渡り、映画上映、次にパネルディスカッションそして最後に朗読ありと盛りだくさんだ。ブルーノ・シュルツはポーランドでは国民的な作家、そのシュルツの日本紹介に尽力した、翻訳家・エッセイスト・詩人の工藤幸雄氏の一周忌も兼ねてのブルーノ・シュルツ祭―。

 2時過ぎに主催者からの挨拶があり、パソコンのオーディオシステムで早速映画上映が始まった。
ドキュメンタリー『ブルーノ・シュルツ―二度目の幼年期』)野中剛監督』(1994)、日本語(ポーランド語ナレーション、ヤン・ペシェック)、28分、映画『砂時計サナトリウム』Sanatorium pod klepsydrヴォイチェフ・ハス監督(1973)、英語字幕、124分(日本語字幕なし)

 映画2本で約2時間半、前半のドキュメンタリーはブルーノ・シュルツの挿絵を背景にポーランドの名優、ヤン・ペシェクの原文朗読しながらシュルツ文学の宇宙を奏でる。幼年期への回帰、再構築・・・。野中剛の声もいい。
映画『砂時計サナトリウム』Sanatorium pod klepsydrヴォイチェフ・ハス監督(1973)、英語字幕、124分(日本語字幕なし)は、初めて視るものにとっては視終わったときに感じる一種の眩暈が生じるような不思議な映画である。現実と非現実が錯乱しているような世界、世界の終りと始め、グロテスクで創生的、かつエロチックで社会批判的、寓話的世界が蠢く薄暗い世界だ。あらすじはこうだ。ヨーゼフは、サナトリウムに療養中の父に会うため列車に乗った。そのサナトリウムは郊外の静かな森の中にあり、大きな扉が聳えその中に一歩足を踏み入れるとそこは幻想的な世界―。厳格だがおかしな医者と可憐だが挑発的な看護婦、そんな中めぐり合った父は病人のようにベットに横たわっている。ふと窓の外をのぞくと幼年期の情景がそこにはあった。父と母、召使のアデル、友人、女等々、時間の流れが重複し、いつの間にかそのサナトリウムは万華鏡のように交錯する。そして脱出。最後はホロコーストを喚起させるシーンで終わる(この映画に関するサイトを参照)。

 パネルデイスカッションは赤塚若樹氏、加藤有子氏そして沼野充義氏の中欧、東欧文学がご専門の三人。詩人白石かずこは大のシュルツファンでこの会場に来てもらうつもりでコンタクトを取ったが、生憎外国にいるということで来れなかったと舞台裏を覗かせた沼野氏。監督ハスのシュルツ解釈が出ていると専門的な立場から語る加藤氏、ブラザー・クイエ監督の「ストリート オブ クロコダイル」の映画のシーンを見せながら覗き見の世界解釈とエロティシズム−その脚フェチとマゾヒズムを語る赤塚氏。たくさん語る材料を用意してきたが時間がないのでカットせよのご命令云々もあって、とブツブツ。最後に沼野氏のまとめ、ポーランド文学者は工藤、米川氏らの上の世代、沼野、関口、西氏らの世代、そして加藤氏らの次の世代が来ているとし、先駆的な翻訳を果たした工藤幸雄氏の仕事を讃えた。最後に多和田葉子が専門のポーランド人ダヌータ・ウォンツカ氏(なかなかの美人)原文、日本語井上暁子朗読(短編「七月の夜」より)があって閉会した。子音の連続音が心地よく響き、語末にくる母音そしてイントネーション、この階梯がポーランド語の魅力か―。200907201801000
確か工藤氏も自著でそんなことを言っていたと思うが・・・。帰り際に『シュルツ全小説集』(平凡社刊)を買い求めて電車の中で多少読んだ。そしてある一節を見つけて納得。そこには筆者がふと思い描いたことが書かれていたのだ。田中純氏による巻末エッセイの最後の一節だ。

 最後の作品集『砂時計サナトリウム』の末尾に中途半端に残されたこの甲殻類の脚のイメージは、創世記第二の書に擬似造物主が書き記した、グロテスクで惨めだからこそひどく滑稽な署名のようにも見えて、脳裏からなかなか消え去ろうとしない。恐らくはそれもまた、奇妙な歪みによってわれわれを呪縛し続ける、幼年時代のかけらなのである。
聴講者は映画終了時とその後では人数に差が生じたみたい。100人前後か。面白かった。

この講堂はオマケである。中国人の観光客が写真を撮っていた。200907201649000

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