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2009/06/19

クロカル超人が行く 116  K大学講演会 「詩のボクシング」で対戦した谷川俊太郎 VS ねじめ正一が再び対戦 ? 生きる言葉を語りそして自作詩朗読 

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「詩のボクシング」で対戦した詩人・谷川俊太郎とねじめ正一が再び対戦?と期待して出かけたK大学の講演会。先週の土曜日にNHK-BSで再放送されたらしいが見逃した。その著名な二人の詩人が詩のボクシングを主宰する楠かつのり氏のいる大学のチャペルで講演したのだ。パイプオルガンがドーンと中央に鎮座したホールで学生そして一般人あわせておよそ600人(一般人は30人ほど)、大物詩人の講演とあって会場は満員御礼。もっとも授業の一環という意味合いもあったが。
 早速登場した二人、Tシャツやホワイトシャツの軽装スタイルだ。手には朗読用の本や原稿の入った紙袋を携えて。楠かつのり氏の進行で「声と言葉が教えてくれる生きる低力」の講演会が始まった。はじめに司会者のゲスト紹介、鉄腕アトムやフランク永井の作詞者でもある谷川俊太郎氏(詩で生計を立てている数少ない詩人の一人)、一方、詩の登竜門のH賞受賞者で直木賞受賞者のねじめ正一氏(鈴木志郎康や正津勉の系譜か)、ねじめ正一氏は阿佐ヶ谷で民芸品店も営んでいる(先日筆者は夕刊に載った彼の記事を興味深く読んだばかりだ。中学時代に先生に君は意外と文章が上手いんだねと褒められた。そのことがきっかけで俺でも書けると思ったという。筆者にもそんな経験もあるが・・・)。打ち合わせは十分に練ったとは思うのだが、聴きづらい司会者の声、それにゲストをうまく引き出ださなければいけない役なのに司会者が喋り過ぎたようだ。「ことば」について語り始めた。「ことば」の存在は矛盾の塊であってことばの意味づけ以前のことに着目していると語る谷川俊太郎氏に対して、中学2年から詩を書いてきているが、未だに宙ぶらりんの自分がいるのを感じていると語るねじめ正一氏。兄弟がいない孤独な環境下と甲子園をめざした野球少年、時代状況も環境も違うが、どちらも東京育ちだ。そして資質は違うがお二人ともユーモアのセンスが抜群なのだ。ねじめ正一氏が野球の話をすると、野球と詩、関係あんのと谷川俊太郎氏が突っ込むのだ。詩を信用しないで詩を書いてきたこと、信用できることばをさがすこと、意識的な散文とは違って、詩を書くときは深層からでてくることばで書くこと、だからなんでこんな詩を書いてしまったか分からないのだという。それが詩だと。ポエジー―。これは二人に共通だった。司会者の主宰する「詩のボクシング」については、声が優先されて詩が出てこないとは谷川俊太郎氏、また、現代詩には現場感覚が徹底的に欠けていたとも言って、朗読はむしろ先祖帰りだと。ねじめ正一氏は今でこそ詩の朗読は一般的になってきたが、それまでは悲惨なものだったと。「詩のボクシング」も詩を壊すくらいにやることを主張すること(谷川俊太郎氏)、今や“教育的”になってしまった、負けたら全否定だもの、遊びの精神がないと(ねじめ正一氏)。お互いの言い分がノッてきたように見えたが、学生が飽きてきたせいか(聴きづらいこともあったが)筆者等一般人席の二階からも居眠りしている学生が男女と問わず増えてきたのがすぐわかった。谷川俊太郎氏がその光景を見るや、飽きてきたんです、そろそろ朗読でもしますかと切り出した。そして、ねじめ正一氏から朗読が始まった。すると、何事が起きたのかとマイクでがなりたてる声に反応したのか今まで寝ていた学生ほぼ全員が起きてしまった。効果抜群だ。放送禁止用語も多用するねじめ正一氏の詩だがと司会者の楠かつのり氏、「かあさんがあーちゃんになった」、テンポの速い、コミカルな詩だ。続いて谷川俊太郎氏のちょっと過激でユーモアたっぷりの「なんでもオマンコ」。いやー、これには笑った。学生は戸惑ったか―。かつて介護の疲れで一時もの書きを中断していた78歳の老詩人は今は健在だ。なぜか"スッピン"という言葉が出てしまった。普通は女性の表情に使う言葉だが、谷川俊太郎にぴったりだ。その後交互に詩の朗読が2,3回続いた。久し振りに詩の朗読を堪能した感じだ。ねじめ正一氏の詩は面白いが長い、さっと読んだ原稿を床に投げ飛ばす姿がまたニクイ。ここで谷川俊太郎氏が朗読した詩の一つを引用してみよう。

さようなら

私の肝臓さんよさようなら
腎臓さん膵臓さんもお別れだ
私はこれから死ぬところだが
かたわらに誰もいないから
君らに挨拶する

長きにわたって私のために働いてくれたが
これでもう君らは自由だ
どこへなりとも立ち去るがいい
君らと別れて私もすっかり身軽になる
魂だけのすっぴんだ

心臓さんよどきどきはらはら迷惑かけたな
脳髄さんよよしないことを考えさせた
目耳口にもちんちんさんにも苦労をかけた
みんなみんな悪く思うな
君らあっての私だったのだから

とは言うものの君ら抜きの未来は明るい
もう私は私に未練がないから
迷わずに私を(この先4文字あり ! メモ書き判読不明!)
泥にとけよう空に消えよう
言葉なきものたちの仲間になろう

(詩集『私』より)

谷川氏は最新刊の『トロムソコラージュ』(2009年5月刊)で187行の長いバラード風の詩を書いている。
一方、ねじめ氏は詩人の那珂太郎のことを書いた『荒地の恋』、絵本、野球のことなど散文の方へエネルギーを注いでいるようだ。

この後学生から2、3の質問を受けて講演は予定時間を大幅に超過して終了。面白かった。

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