« 超人の面白読書 45 梅森直之編著『ベネディクト・アンダーソン グローバリゼーションを語る』 | トップページ | 超人のジャーナリスト・アイ 93 ハリケーン・グスターフ報道 »

2008/08/24

超人の面白建築 W.M.ヴォーリズ 

P001_2今回のテレビ東京の番組「美の巨人たち」は日本の建築スペシャルで建築家W.M.ヴォーリズ William Merrell Vories(1880-1964)を取り上げていた。題してウィリアム・メレル・ヴォーリス作「浮田山荘」("ヴォーリス"とテレビ東京の番組では表記していたが正式な読み名は"ヴォーリス゛"だろう)。いつものことだが、ナレーターの俳優小林薫の渋い落ち着いたナレーション。その声にのって紹介される建築群、その建築には簡素で優しく安らぎを与えた空間があったのだ。それではこの番組のHPから引用してみよう。

避暑地・軽井沢の小道沿いにひっそりと佇む小さな建物。ドアを開けると、暖炉を備えたおよそ5坪ほどの広間を中心にして、2段ベッドがある一坪ほどの寝室と同じくらいの大きさのキッチン。贅沢さはないものの、家族で夏のひとときを過ごしたいと思わせる素朴な魅力にあふれる空間。ここは元々ヴォーリスが妻と過ごした別荘でした。
戦前にアメリカから来日したヴォーリスは、神戸女学院などの学校やデパートなど約1500の建築を手がけました。しかし、彼は建築の教育を受けたことのない、いわゆる “素人建築家”でした。さらに、彼の建築にはモダンで洗練されたデザインは見当たりません。そんな彼の建築がなぜこれほど日本人に受け入れられ、今なお愛されているのだろうか。その秘密に迫る。 ―という文言。

 この「浮田山荘」は思ったより小さいが、光がよく入るような大きな窓、料理が食卓にすぐ届くような便利な食器棚、小さな寝室、暖炉等々狭いながらも工夫された配置は江戸時代の長屋の9尺2間(4畳半と竈)の簡素な生活空間に倣った建築になっているという。その個人まわりとした西洋風の別荘は声が届くような距離で優しさや安らぎを覚える空間なのだ。建築家藤森昭信よれば、ヴォーリスは図面書きも下手な素人の建築家だったらしい。しかし彼は教会、学校、図書館、講堂、郵便局、百貨店、個人宅などを手がけその建築物は1500を超すという。しかも彼は始めはアメリカから来たキリスト教の伝道師、高校の英語教師に任命されるもキリスト教の布教に熱心なあまり解雇を余儀なくされ挫折(近江八幡は仏教の盛んなところだった)、後にはメンソレータムの近江兄弟社、建築事務所を設立して信仰と事業に一生を捧げた。1941年には日本に帰化し一柳米来留と名乗り日本の女性と結婚して1964年83才で他界している。その簡素と優しさを象徴したデザインなど西洋風の建築はヴォーリズスタイルと呼ばれている。具体的な建物を千代田郷土史のHP他などから拾ってみよう。ちょっとその前に、近江兄弟社は昭和49年に倒産、その後富山の売薬業者、大鵬薬品会社、キリスト教関係者などの支援を受け再建、今日に至っている。この倒産劇はシカゴにあるメンソレータム本社が支援しないとかするとかあるいは日本の他の製薬会社との提携を拒否するとかでもめて当時新聞を賑した。だからこの倒産劇を筆者も記憶している。御茶ノ水駅を降りてスクランブル交差点を渡り駿河台下方面に歩くとすぐに緑色の近江兄弟社の看板に出くわすが、筆者はいつもこの看板をみては何か不思議な感じがしていたのだ。その謎は千代田郷土史のHPで氷解した。あっ、そうか、そうだぁ。brotherhood―(兄弟2人で創業した会社だと思い込んでいたのだ)。最近の建築は癒し系っぽいが・・・。それではその建築の数々を―。

浮田山荘、軽井沢ユニオン教会、近江兄弟社学園、近江金田教会、近江八幡YMCA博愛社礼拝堂、近江郵便局、神戸女学院大学礼拝堂・図書館、明治学院大学礼拝堂200812041136000
、同志社大学今出川キャンパス内校舎、西南大学博物館、関西学院大学、大阪医科大学、西南女学院ロウ講堂、旧百三十三銀行今津支店、旧寺庄銀行本店、旧居留地38番館[旧ナショナルシティ神戸支店]、大丸百貨店心斎橋店、石川記念館、主婦の友社写真館、佐藤新興生活館(後の山の上ホテル)等々。この番組で雑誌「主婦の友」(1922年2月号)―すでにこの雑誌は最近その長い歴史に終止符を打ったばかり―が特集を組んだほどでその隆盛を伝えていた。建築にかける情熱は相当なものだったことは想像にかたくないが、それよりもヴォーリズは私有財産を持たなかった。キリスト教の奉仕精神を実践したのだろうか。

追記。筆者は明治学院大学、関西学院大学、聖和学院大学、神戸女学院大学、主婦の友社、山の上ホテル、水口図書館などヴォーリズ建築物を外側からしか観ていないが、屋根の赤っぽい色、壁の色合いと木造の構図に素朴な温かみを感じたのだ。ヴォーリズ建築に関しては最近山形政昭監修『ヴォーリズ建築の100年』(2008年 創元社刊)が出ているし、ヴォーリズ自身の著書『失敗者の自伝』(1970年)なる本も出ている。各地で音楽にも造詣が深かったこの建築家のイベントが盛んらしい。

« 超人の面白読書 45 梅森直之編著『ベネディクト・アンダーソン グローバリゼーションを語る』 | トップページ | 超人のジャーナリスト・アイ 93 ハリケーン・グスターフ報道 »

コメント

コメントを書く

コメントは記事投稿者が公開するまで表示されません。

(ウェブ上には掲載しません)

トラックバック


この記事へのトラックバック一覧です: 超人の面白建築 W.M.ヴォーリズ :

« 超人の面白読書 45 梅森直之編著『ベネディクト・アンダーソン グローバリゼーションを語る』 | トップページ | 超人のジャーナリスト・アイ 93 ハリケーン・グスターフ報道 »

2020年8月
            1
2 3 4 5 6 7 8
9 10 11 12 13 14 15
16 17 18 19 20 21 22
23 24 25 26 27 28 29
30 31