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2008/01/12

超人の面白翻訳 42 余滴 続々

  スロヴェニア人の著者は路上に出て京都の街を探索する。交通事情、自動車やバイクに言及し、新聞を読んでは、たまたま起こった凶悪な犯罪事件に暴力が多く描かれているアニメやコミックの影響を読み取る。また、路上であった親子連れの“ガイジン”に向けた子どもの視線の話、冬の寒い日での屋外児童演奏会出席と感動、クリスマスと正月、初詣のやや冷やかな描写と自分に起きた身辺雑記そして自分の専門分野の言語学のことや学会出席の印象や感想、日本人の英語のことを綴り、更に京都郊外に引っ越したことそしてそこが故郷マリボールに似ていることや能舞台を見学して能楽師に質問し褒められたことなどが事細かに描かれている。4月に入って第4回目の最後のエッセーでは、京都の土手に咲く桜のこと、スロヴェニアの実家から送られて来た荷物の話などが思いの丈書かれていて面白い。そして、最後は4月の日本の天候不順を嘆いている。そういう時には同じ島国生活のイギリスのことを思い出して慰めるとこのエッセイは結んでいる。

"The likeness to the weather in Britain is all too evident."


  そろそろこの訳者あとがきも終わりに近づいてきた。前に少し触れたヘレン・ミアーズ著伊藤延司訳『アメリカの鏡・日本』はGHQ最高司令官マッカーサーも翻訳出版を禁じた本だが、近代日本の行動原理を分析した優れた日本論だ。もうひとつ、ある新聞の書評子が取り上げていた一冊、デニス・キーン著『忘れられた国ニッポン』は、絶版で図書館から借り出したばかりの本だが、長年日本に住んで丸谷才一や北杜夫の翻訳を手掛けたイギリスの詩人で翻訳家の辛辣な日本文化論である。西洋化したニッポンは伝統を忘れていて危ない。宮沢賢治の詩は下手、太宰は大衆文学そして漱石と荷風を評価した後、「源氏物語」を持つ国、日本の精神生活を豊かにするには漢詩、和歌や俳句のアンソロジーを中学や高校でしっかり学ばせることだと提案している。批評する精神を養うことが大切と書いているのだ。辛辣かつ痛快。何れも1995年の出版、前者は2005年に角川新書に抄訳が入ったもの。その「源氏物語」は今年千年紀を迎え、京都を中心にいろいろな催しが大々的に開かれるらしい。やはりこの際通読してみたい。さて、原文か現代語訳か誰の訳で?それとも英訳―。 
  『スロヴェニア人が見た不思議な国・ニッポン』は京都を舞台にした現在の日本の様子を描いて異文化接触の格好な材料を提供してくれたばかりではなく、軽い読み物としても面白かった。紹介してくれたL先生に感謝したい。

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