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2007/08/16

超人の面白読書 27 最相葉月著 『星新一 1001話をつくったひと』 4

1925年(大正14年) 5月阿片事件起こる 星一失墜の疑獄事件

ここは本文から引用してみよう。

発端は大正6年に阿片法が改正され、星製薬会社以外の製薬会社が原材阿片の輸入とモルヒネの製造に加わったこと、大正13年に憲政会系の伊沢多喜男が台湾総督に就任したことである。星製薬が台湾専売局と相談の上で大量に買い付け、横浜の保税倉庫に保管していた原料阿片に対して、税関から即時処分を命じられたのをやむなくロシアの商社に販売することにした。しかし、その売却行為が台湾阿片令に反するとして起訴されたのである。憲政会系の官僚、警察、裁判官といった国家権力を総動員し、星製薬に圧力を加えた。当時は、武田薬品、田辺製薬、星製薬が御三家と呼ばれ、新興会社の進出が困難な状況にあったが、背後には星製薬の躍進を妨害したい同業他社の画策もあった。<続く>

東京青山にあった星一の自宅は家宅捜索を受け、金融機関は星製薬と星一個人への融資を凍結した。融資が受けられないとは、すなわち事業が継続できなくなることを意味する。食品冷凍技術を事業化するため新しく立ち上げようとしていた低温工業株式会社という画期的な計画も、あえなく頓挫した。福島県で星の本家を継ぐ星照光によれば、郷里の家や土地は、遠い親族のものを含めてすべて抵当に入れられたという(本文P.33)。

著者は評論家で後藤新平の孫の鶴見俊輔の回想を引用している。
「星は財閥ではなかったでしょう。三井や三菱の政商でもない。第一次世界大戦後に急成長した鈴木商店とよく似ていますが、政府と太いつながりをもたないと企業は大きくなれなかった時代です。だから、悪いときには一気にだめになる。財閥が結託してつぶしにかかるのです」(本文P.33)

1925年(大正14年) 森鴎外の孫で文化人類学者で解剖学の草分け的存在の東大教授、小金井良精と森鴎外の妹、喜久子の娘・精と婚約・結婚 二人とも晩婚

この人生最大のピンチのときに星一は何故結婚できたか。筆者はその謎を星新一著『明治・父・アメリカ』や『人民は弱し、官民は強し』などを参考にしなから追っている。星一はニューヨーク時代に新渡戸稲造の紹介で津田梅子の妹と婚約、破棄されているが、このときは仕事優先とされている。一方、精は―ここで著者はアメリカ在住の新一の妹、鳩子に取材しその記憶をたどらせている。伯父の森鴎外の日記に陸軍大将に嫁がせるべく精子(当時は女性の名前に子をつける習慣があった)同伴の記述があったという。その日記は精の兄、小金井良一海軍軍医の家にしばらく保管していたらしい―その精はこの結婚に失敗して(この陸軍大将には結婚相手がいたのだ)実家にもどってきていた。結婚相手の候補にはあの東急のドン、五島慶太の名前も上がっていたらしい。森鴎外と同様、医学界の大御所、陸軍軍医総監だった石黒忠悳(この人物が留学中の森鴎外に送った手紙が最近発見され、その解釈を巡って論争が起きている。雑誌PS Journal 第7号所収)が良精に星一の人物を保障したという。

1926年(大正15年) 5月 台湾高等法院第二審で無罪判決を受ける 同月入籍 9月6日長男、新一誕生
二年後弟、協一、三年後妹、鳩子誕生

1932年(昭和7年) 4月 高利貸の芝商事から提出された破産申請が受理され、星製薬は破産 星一は税金滞納で二ヶ月間市ヶ谷刑務所に収監される

事業の失敗は地獄だね。なかなか大変な経験をしている。ノンフィクションの威力もある―。
このとき星新一は6歳、京北附属幼稚園に通っている。
<続く>


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