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2007/06/17

超人のジャーナリスト・アイ 64 最近の新聞・雑誌拾い読みそして最近買い込んだ書籍拾い読みなど    

  『論座』(朝日新聞社)」2007年6月号の文芸評論家・加藤典洋氏の戦後から遠く離れて −わたしの憲法「選び直し」の記事を読む。『敗戦後論』から10年後の憲法9条を巡る小論。左翼性からだけではなく、戦後からも遠く離れ、自分の理念の場所からではなく、ふつうの人のふつうの不安と希求の場所から憲法9条について考えることが、これを擁護するにあたり、必要なことであると、思うとこの小論を結ぶ。大学で教鞭を取っている身のこの評論家は、戦争を知らない、否、それどころか1980年代後半生まれの今の学生に英語で戦後の憲法、天皇の責任問題、教科書問題などを教えていて分ったことがあるという。戦後に知識もこだわりもないという意味では外国人の若者と日本の若者は良く似ているらしい。こうした相手に、戦後をどう伝えればいいのか。伝えることに意味があるのか。そうして突き詰めて考える中で、戦後というものをはずして物事を考えるようにならなくてはと思うようになったという。そして、僕が戦後といってきたのは結局、戦争で死んだ人への思いがバックボーンにある。でも、戦後を出発点にしなくとも、現実の生活の場でさまざまな問題や矛盾が埋め込まれている。そうした生活の中から、さまざまな問題を考えていけば、そこに自然に、戦争で死んでいった人たちの思いも入ってくると、雑誌「エコノミスト」2007.6.5号(ワイドインタビュー問答有用155 「戦後」を思索する 加藤典洋 「『戦後』は一度死ななくてはいけない」)で語っている。筆者はこの文芸評論家が雑誌に書いたものを(「群像」2006年11月号)加筆訂正した『太宰と井伏−ふたつの戦後』(講談社 2007年3月刊)と筑摩学芸文庫『敗戦後論』(筑摩書房 2005年12月刊)を近くのY書店で買い込みペラペラ捲っているところだ。加藤典洋については柄谷行人と同時に少し時間をかけて再度系統的に読んでみようと思う。

『神奈川大学評論』第56号(神奈川大学広報委員会 2007年3月刊)には歴史学者の中村政則氏の「評論 グローバリゼーションと歴史学 −21世紀歴史学の行方−」が掲載されていて刺激的である。歴史学の潮流を的確に捉えて参考になるし、外国人の日本研究者の一人、コロンビア大学のキャロル・グラック教授(ひろたまさき/キャロル・グラック監修『歴史の描き方』全3巻 東京大学出版会 2006年刊)の語った歴史学の要素は、「大きな問題提起、実証、そしてコミットメントの三つです」の引用も著者自身の長年実証研究に裏付けられた確信的言辞と重なる。最後にこれからの研究者向けに創造(想像)力と文章力と持続力をもっと身につけて欲しいと語る。これは2006年11月の日本史研究会例会報告(京都)および2007年1月15日、神奈川大学歴史民俗資料学研究科主催の最終講義をベースに文章化したもの。

歴史学者・中村政則氏の「評論 グローバリゼーションと歴史学 −21世紀歴史学の行方−」の全内容はこちら「img146.pdf」をダウンロード

今朝の毎日新聞書評欄には岩波書店の新聞広告が大きく出ている。いわく、地道な史料読解と雄大な構想力をもって日本史像を大胆に革新し、その清新な問題意識により多くの人々を魅了し続けている歴史家・網野善彦とある。網野善彦著作集 全18巻・別巻刊行の新聞広告だ。13巻の中世都市論は既刊、15巻の列島社会の多様性の予約募集広告のようだ。4410円は高いな−。2006年11月から刊行中の岩波新書・シリーズ日本近現代史は井上勝生著『幕末・維新』、牧原憲夫著『民権と憲法』、原田敬一著『日清・日露戦争』、成田龍一著『大正デモクラシー』はまだ読み始めたばかりだ。新史料も駆使して日本の歴史学、特に近現代史研究に新たな方向を示しているようだ。

言語関係ではある先生に薦めれた加藤晴久著「続出誤訳のケーススタディと翻訳者のメチエ 憂い顔の『星の王子さま』」(書肆心水 2007年5月刊 本体2200円)Img147_2
が面白い。かの有名な「星の王子さま」の翻訳本の誤訳指摘書だ。この本のはじめに著者は、本書の意義は次の3点という。いかにして、根拠のない億説がメディアをつうじて世の中に流布するかをケーススタディで示したこと、翻訳というものがいかに難しい仕事であるか翻訳をたずさわる者たちに、翻訳というものを信用してはいけないということを翻訳書の読者に、ケーススタディで示したことや出版社が欠陥翻訳の責任を問われない、翻訳公害垂れ流しの実態に一石を投じたことと書く。
扉の裏にはLa traduction est belle si elle est fidle. −Milan Kundera うつくしい翻訳とは忠実な翻訳のことだ(ミラン・クンデラ)と書かれていてこれがこの本のすべてを語っているかも知れない。翻訳者には高い職業倫理と出版社には最低限の商業道徳が求められて当然と著者は言う。なかなか耳の痛い言葉だ。その昔W・グロータス神父著『誤訳』を何度も読んだことがあるが、この本も熟読に値する本である。

今同時平行で読んでいるのが、英米文学者・行方昭夫著『英文の読み方』(岩波新書 P.233 2007年4月刊 740円)とシェイクスピア研究家で劇団「円」主宰者の安西徹雄著『英文読解術』(筑摩学芸文庫 P.221 2007年6月刊 本体840円)の2冊。二つともごくありふれた英文読解術だが、前者はピンぼけ訳から正確に訳すという英文読解訓練、後者は文意を読み解く→流れをつかむ→感じをつかむ→構成を分析するそして今度は日本語として発信し直す試みとして<全文を訳してみる>という具体的な方法を提示しての英文読解訓練、それぞれにその特徴が伺え知れて面白い。しかし二人とも精読と全体を掴むことの意義を強調していることは共通している。英語の例文も錆びかけた自分の英語力を試すのには良い材料だ。今筆者も拙い翻訳に挑戦中でもう少しで終えるところなのだ。参考になります !

雑誌『図書』5月号の精神医学者・中井久夫氏の「私の日本語雑記−6 生き残る言語−日本語のしたたかさとアキレス腱」、雑誌『学鐙』夏号の一橋大学教授・糟谷啓介氏の書評 K.David Harrison- When Laguages Die: The Extinction of the world's Languages and the Erosion of Human Knowledge 危機に瀕した言語の本、
雑誌『未来』 5月号のロドネフ・エティエンヌ 中村隆之訳「パン=クレオールの概念 国際クレオール語の活性化に果たす都市の役割」、ジャパンタイムズ ウィーリー2007年5月19日号 Serbia ecstatic after Eurovision victoryの記事、雑誌『本郷』5月号創業150周年記年号の吉川弘文館オーラル小史、芝宣弘著『ユーゴスロラヴィア現代史』そしてサマセット・モーム著行方昭夫著新訳『サミング・アップ』などを暇を見ては読んだり拾い読みしている。最後にひとつ、雑誌『UP』5月号の影浦峡氏の「ソシュール先生の声を聴く−『ソシュール 一般言語学講義』が生まれるとき」も面白い。更にこの際つけ加えると、神繁司氏の「ハワイ・北米における日本人移民および日系人に関する資料について(6)」(国立国会図書館主題情報部 参考書誌研究・第66号 2007年3月刊)は労作それに三輪宗弘著『太平洋戦争と石油』(日本経済評論社 2004年1月 5400円)は知人から借りたもの。著者は理系から出発して今や軍事史・経営史のプロパーだ。

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