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2007/03/24

超人のジャーナリスト・アイ 56 北欧最大の映画祭「イエーテボリ国際映画祭」

  先週フランスから女優のカトリーヌ・ドヌーブをゲストに迎え、「フランス映画祭2007」が東京・横浜・大阪で開催されたが、スウェーデンの第2の都市イエーテボリGöteborgでは今年30回を迎え11日間(1月26日~2月5日)で約450作品を延べ700回以上上映し、過去最高の12万2000枚(当日鑑賞券は80クローナ、日本円で約1333円)を超えるチケット販売を記録したと2007年3月22日付毎日新聞夕刊が伝えている。以下はその記事と同じ2月23日付毎日新聞朝刊の人欄に載ったこの国際映画祭実行委員長のヤニケ・オールンドJannike Åhlundさんのインタビュー記事に言及したもの。
スカンディナビア最大の映画祭、「イエーテボリ国際映画祭」は今年ドラケンをはじめ、禁酒団体や港湾労働者らが1892年(明治24年)設立し、クラブハウス、大学ホールや図書館など市内の10会場で68カ国のドキュメンタリーや劇映画を上映。ベトナムや旧ユーゴスラビアの作品特集もあって盛況だったという。現在は映画祭開催中の期間だけ復活するこの「イエーテボリ国際映画祭」の象徴的な映画館である「ドラケンDRAKEN」(声優下條アトムの抑揚の効いた独特のナレーションではないが、この記事を書いた毎日新聞の記者はすてきに出会った映画館なのだ)だが、Dragen_1【写真右:映画館「DRAKEN」(英)Dragon(日)龍】
  56年開館の同館は、95年に閉館に追い込まれ解体の危機に直面した。この館に親しんだ地元の映画関係者や市民が立ち上がり、「ドラケン友の会」を結成して存続運動を展開したという。運動の名残りは713席の深紅の椅子の背に名前が刻まれた黄金のプレートだ。市民が1席1000クローナ(約16000円)で椅子を買い取り、オーナーになった。反響は大きく、椅子だけでは足りずに「トイレの便器を購入する」という支持者も現れた。チケット売り場前にも支援者の名前が刻まれた。椅子を購入したある年配のサラリーマンは映画祭期間中はボランティアで関連商品の販売を手伝う。「劇場が存続したおかげで、建物の空気にも世界の作品にも年一度は出会える。昔の思い出にもね」スカンディナビア最大の映画祭、「イエーテボリ国際映画祭」にも隠れた歴史があることをこの記事は"市民が守った劇場"の見出しで伝えている。ナルホド、ザ、ワールドである。そして、この映画祭の実行委員長であるヤニケ・オールンドJannike Åhlundさんが来日。あの巨匠イングマール・ベルイマンIngmar Bergmanとも親しく(思い出したね、かつて朝日新聞の日曜版で世界の有名人に会う旅かなんかの連載の一環で、朝日新聞の記者がこの巨匠に会うため扇子などの日本の手土産も持ってはるばるスウェーデン南部の島を尋ねるも人嫌いで会ってくれなかったいう記事をね)、「ユーモアあふれる人。周囲があがめることで彼は知的刺激に乏しいようで、お気の毒。最近、棺が完成しただとか、埋葬場所など、死についてもおかしく話すんですよ」と語っているのも大変興味深い。
彼女は北欧映画は商業主義に流されず埋もれた秀作に焦点を当て、観客最優先の映画祭の原点に立ち返ることだ語り、また、北欧映画の魅力は質感だと語る。カンヌなど国際映画祭の審査員などのキャリアもあるヤニケ・オールンドさんImg108_5
の言葉には映画の魅力に惚れ込んだ言葉が滲む。このインタビュー記事を読んだ筆者の感想だ。はて、夕張市の「ゆうばり国際ファンタスティック映画祭2007」。市の財政破綻の真っ只中での市民の手による言わば手作りの映画祭だが、その温かいもてなしに出席者などが感動したとのマスコミ報道がこの2月にあったばかりだ。良い映画祭はスタッフの企画力もあるが、観客とともにが大切なのだ。
上映作品はイエーテボリ国際映画祭公式サイトのプログラムを開くと見れる。「GIFF_Program_2007_HELA.pdf」をダウンロード

下記はノルディックシネマ・インフォメーションのHPから。
上映作品はこのHPで徐々に紹介してくれるらしい。

第30回イェーテボリ国際映画祭報告(1)イェーテボリ国際映画祭とは
[2007/3/10]


 イェーテボリ国際映画祭が今年も1月26日から2月5日までの間開催された。この映画祭については、本書(「北欧映画ー完全ガイド」)でも取り上げている(58ページ)ので、ご存じの方も多いと思う。スウェーデン第2の都市、イェーテボリで毎年開催されている北欧では最大規模の映画祭のひとつだが、今回、本コラムの筆者も、本映画祭を観に行くことができたので、少し遅くなったが、その様子や各賞の受賞作品などについて何回かに分けてご報告しよう。

 なお、映画祭の詳細については、ぜひ上記の書籍の方もあわせてご覧いただきたい。今年は第30回という節目の年ということもあってか、映画祭史上最大規模での開催となった。今回は、イントロダクションのような感じで、イェーテボリ国際映画祭の概要や会場のようす、また、映画の街としてのイェーテボリをご紹介する。

映画祭の概要
 会期中に紹介された作品の数は68ヶ国からの450本にのぼり、のべ700回の上映が行われたという。そして前売りで1枚60スウェーデン・クローナ(以下SEK、日本円で約1000円)のチケットが122400枚売れたという。ちなみに、入場券の購入には35SEK(約580円)の会員証も必要だが、これが27000人分売れたというから、単純に平均すると1人あたり4~5作品は観ている計算になるわけだ。もっとも、映画祭の実行委員会が発行する映画雑誌、「Filmkonst」の定期購読者は会費を免除されるので、観客数としてはもう少し多くなるとは思うのだが、それでも、ここでしか観られない作品を観ようという、熱心なファンが多いことが伺われる。

 これだけこの映画祭が盛んになった背景にはいくつかの要因があるだろう。まず、ストックホルムに次ぐ、スウェーデン第2の都市ということで人口が多い(約50万人弱)ということはもちろんあるが、高等教育機関が多く、若者も多いので、映画人口も必然的に多いということだろう。もちろん、フィルムスクール、市民劇場や演劇学校といったスタッフや俳優の養成機関も充実している。

2つの「映画の街」
 また、映画やテレビ関係の製作会社も多い。近郊にはかつてスウェーデンの自動車産業の中心地だったトロルヘッタン(Trolhättan:いまでもサーブの本社工場がある)という街があって、その廃工場をスタジオに転用して映像作品がつくられている。ラース・フォン・トリアーの『ダンサー・イン・ザ・ダーク』(156ページ)や『ドッグヴィル』(183ページ)、『マンダレイ』(本コラム第13回)といった作品はまさにそういったスタジオや、周辺で撮影された作品である。さらに、フィルム・イ・ヴェースト(Film i Väst)という製作会社の本拠地となっているのがトロルヘッタンで、この会社が関わっているヨセフ・ファーレス(219ページ)の「Zozo」(2005)はこの街でロケが行われた。街をあげて、「トロリウッド(トロルヘッタン+ハリウッド)」と名付け、映画産業を次代の産業にしようと売り込んでいるのである。

 トロルヘッタンのスタジオに近いという背景もあってか、イェーテボリを舞台にした作品も近年数多い。たとえば、最近日本で紹介され、スウェーデンの父親の育児参加というテーマが大きな話題をよんだ『ダブルシフト』(本コラム第23回)や、小社刊行の「海の島」のテレビドラマ化作品も(本コラム第43回、原作の舞台がイェーテボリなので、当たり前かもしれないが)そうだし、一昨年公開された「Tjenare Kungen」(God Save the King)という1980年代にロックに青春をかけた少女たちを描いたコメディ作品も当時のイェーテボリが舞台の作品である。今回の映画祭でも、イェーテボリが舞台の作品がいくつか出品されていた。



古いたたずまいの残るハーガの街並みNordic_54_1_1


上映会場とその周辺について
 作品は今回、市の中心にある10会場、15スクリーンで上映された。市民ホールや劇場、市内にいくつかある大学のホールなど公共の施設のほか、一部のシネコンや普通の映画館も会場にあてられている。メインの会場となるのは、市の中心より少し西にある、ハーガ(Haga)というところのDraken(英語だとドラゴン、すなわち竜の意味)というホール。グッズや前売り券の販売などもここで行われているし、筆者のみた限りではゲストの舞台挨拶や、授賞式のようなメディアの取材などもこの会場で行われているようだった。

 また、このホールが入っているビルには、映画祭の事務局も入っていて、ストックホルムの映画協会(SFI)が主催するシネマテークも年間を通じ定期的に開催されている。このビルの前にはカフェやステージの入った巨大なテントが設営されていて、ここでも映画祭共催(?)のコンサートなどが催されていた。他にもこの地区にはFolkan(国民劇場)やHagabion(ハーガシネマ、みたいな意味で、通常は名画座のような上映形態の映画館らしい)、少し歩いたところにHandels(イェーテボリ大学付属の商業大学にあるホール)など、中心となるいくつかの上映会場が至近距離に集中しているので、けっこう便利である(会場の所在地がわかる地図が下記映画祭の公式サイトにあるので参照のこと)。

 ちなみにこのハーガという場所、昔は労働者の人々が住む庶民の街だったそうだ。近くには他にも小さな劇場があったり、路面電車と自動車の通る幹線道から一本入ったところの古いたたずまいを残す石畳の商店街にはおしゃれなカフェやブティックなどが並んでいたりと、通りをぶらぶらしているだけでもけっこう面白い。近くにはイェーテボリ大学や工科大学、あるいは国民高等学校など学校も多く、若者も多い場所柄で、トレンディなスポットでもあるのだろう。

 映画祭の会期中、ヨーロッパも暖冬なのか、寒さはほとんどこたえなかった。ふつうの年の東京の真冬くらいといった感じで、少し拍子抜けしたが、暖かい分次の映画までの待ち時間に街中をぶらぶらできるのは嬉しいことだった。

 今回はこのくらいにして、次回、イェーテボリ映画祭の上映のようすや、今回上映された日本映画についてご紹介する。


映画祭のメイン会場、Drakenの入り口。Nordic_54_2

2階がホールで、1階は案内所と前売り券売り場、2階のホール前にはオフィシャルグッズ売り場も

イェーテボリ国際映画祭公式サイト(スウェーデン語・英語):http://www.filmfestival.org/filmfestival/
トロールヘッタンの街の公式サイト(英語):http://www.trollhattan.se/thn_templates/StandardPage.aspx?id=3087
フィルム・イ・ヴェースト公式サイト(スウェーデン語):http://www.filmivast.se/
ハーガの街の歴史を紹介するイェーテボリ市公式観光ガイドのサイト内のページ(英語):http://www3.goteborg.com/templates/articel.asp?id=4235.com/templates/articel.asp?id=4235
メイン会場のあるビル、Folkets Husの公式サイト(英語:ホールの中の写真なども見られる):http://www.gbg.fh.se/_eng/index.asp

アイスランド映画祭も去年日本・アイスランド国交樹立50周年を記念して東京・神戸で行われた。
詳細はこちら。http://www.bio06.jp/movies/index.html



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