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2007/01/21

超人のジャーナリスト・アイ 54 ヒットサイト「日独同盟に風穴をあけた日本人<崎村茂樹>」他   

  筆者は先週T大学のI先生から小雑誌に寄稿するネタとして「ベルリン水曜会」(註)の話を聞いた。この「ベルリン水曜会」はこの大学の近くに住んでいて3年前位に亡くなった中澤護人氏の著作-I先生も情報提供していてその著作ではないが、著者本人から送られてきた私家版の書物に引用されている箇所を見せて頂いたーが新書版で刊行されていると教えて頂いたので、早速ネットで検索して注文しようと思ったが、新刊書店では品切れ、古本屋のサイトでもヒットしなかった。仕方なく図書館に尋ねてみたが所蔵していないという。はて困ったなと思いながら、今度はインターネットでベルリン水曜会を検索をしてみた。すると"日独同盟に風穴をあけた日本人<崎村茂樹>検索"のタイトルサイトに出くわした。このサイトは現代史の謎を扱っているサイトで、驚いたことに、去年8月に90万件ものアクセスがあった超人気サイトなのだ。
筆者はたまたま2007年1月15日付の刺激的なコラムから読み始めた。このサイトはベルリン水曜会の記述もあったが、農業経済学者で1940年代当時ナチス政権下の日本大使館に勤務していた謎の人物「崎村茂樹」を取り上げていた。インターネット上で情報収集しながら次第に謎を解き明かしていく様には、正直言って一種の知的興奮を覚えた。面白い。早速『ベルリン水曜会』の本を何としても手に入れて再度I先生に尋ね、またサイトをじっくり読んでみたい。この現代史の謎の話は、また。
海の向こうでは民主党上院議員、ヒラリー・クリントンが時期大統領選に立候補するとのニュースや国内では宮崎県知事選挙で元タレントのそのまんま東が当選確実とのニュースが飛び込んできた。それにしても環境問題のドキュメンタリー映画上映で来日したゴア元副大統領が大統領になっていたら、世界はもう少し良い方向に進んでいたかも知れないと思うのは筆者たけだろうか。

註。「ベルリン水曜会」についてのサイトを見ると下記のような記述。

水底の陰 中澤護人のサイト:(中澤護人は歴史学者・網野善彦の義兄で宗教学者・中沢新一の叔父)
 水曜会
 第一次世界大戦に敗れたドイツについて「カイゼル(皇帝)は消えたが、ゼネラル(将軍)は残った」との評がある。ワイマール憲法下でもユンカー層出身者を主とする将軍達の力は確実に温存されていた。25年のヒンデンブルグ大統領の出現は結果 的にはヒットラーの登場を準備したものだった。世界大恐慌はドイツに左右両翼を台頭させた。「国会議事堂の火炎」の中からナチス独裁政権が猛々しく立ち現われる。
 ユンカーの出身ではなかったベックが陸軍参謀総長の要職に就任したのは、35年ヒットラーの第三帝国の下であった。38年ヒットラー総統は、自身の故郷オーストリアを併合し、次いでドイツ系住民の多いチェコスロバキアのズデーテンの併合を企図した。ミユンヘン会議はこの事態へのイギリス、フランス等の対応であったが、ソ連の影響力拡大を阻止するためナチスの利用を図った「宥和政策」により併合は黙認された。この併合に反対したベック将軍は参謀総長を罷免された。
 1863年1月、プロイセンの文部大臣ベートマンの私邸に10余人の学者が集った。メンバーの数が16人以下とされた賢人会議は1944年7月26日の水曜日の1056回まで続いた。開催日に因み「水曜会」とよばれ、自然科学、文化科学、芸術、社会問題、戦争学等々幅広い分野の発表、報告、質疑、討論が極めて高い学問的水準を維持しながら約80年間続けられた。今日的話題は原則としては避けられていたがヒットラーの「革命」以後、しばしば時事問題をテーマにせざるを得なくなった。老齢、重病、死去の際に入れ替わるメンバーは全員の賛同を必要としたから、相対立する見解の表明は皆無かと予想されそうであるが事実はこれに相違する。ただし批判、論争は深い知性のもつ抑制力によって静穏に進行した。
 ベック将軍が水曜会に参加したのは39年、直後にヨーロッパにおける第2次世界大戦が始まった。当時の「水曜会」メンバーをみると 1 地理学者 2 文学史家 3 神学者 4 古代史家 5 医学・人類学者 6 植物学者  7 政治家 8 歴史学者 9 政治学者 10 外科医 11 哲学・教育学者 12 美術史家  13 古典学者 14 物理学者 15 外交官 等であり大多数がベルリン大学の教壇に立った経験を持っていた。
 この中から、対ナチス抵抗運動が起こる。政権に忠実な者も決して少なくはなかったし全く超然としている人も2、3には止まらなかった。抵抗運動派の中心がベック、忠誠派の中核は医学・人類学者フィッシアー、ゲーテ学者ベーターゼン、超然派の代表はかの原子物理学者ハイゼンベルグであった。

 1944年7月20日、ベック等が慎重、極秘裡に計画し実行に移したヒットラー暗殺の試みは僅かの手違いで失敗におわった。ベック将軍は自殺し、他の数名も処刑され、1・2が亡命に成功した。
 ベルリンがソ連軍に包囲され、ヒットラーが自殺するまでの時間は残り10カ月であった。第三帝国は崩壊したが、水曜会は44年7月26日、僅か数名の参集をもって終焉し、以後二度と開催されることはなかった。

 要約が過ぎるベック父子についての紹介は、言うまでもなくその圧倒的部分を中澤の「ベック将軍研究」に拠っている。
 第15集の完成は2000年1月21日である。88年に第1・2集、89年に第3・4集、90年第5・6集、91年7・8・9集。92年第10集、93年第11・12集そして1年とんで95年に第13集、3年間をおいて99年に第14集を自作出版し、第15集完成の約1ケ月後、2月22日 83歳の中澤は「天に召された」。
 第13集が(上)のみであったり、第15集は(中)であったりすることからも中澤は仕事半ばにして倒れた-「神」はお召しになるのが早すぎたのである。

 文頭、あるいは文中に挙げたもの以外の中澤の著作、訳書は略以下の通りである。

「近代溶鉱法の誕生」 1954 八幡製鉄
「幕末の思想家」 1966 筑摩書房
「鉄のメルヘン」 1975 アグネ
「栄光のいばらの道」 1987 アグネ
「ヨーロッパの世紀」 1987 東洋経済新報社
「ベッセマー自叙伝」共訳 1999 日鉄技術情報センター
「青山芳正山紀行」1~4 1989~91 自家版
「丹沢通信」1~5 1996~99  〃
「製鉄史研究」 1997  〃
「鉄鋼技術の過去・現在・未来」 1991  〃

追記。なかな中澤護人著『ベルリン水曜会』』の本が見つからない。版元の近代文芸社は絶版になって久しく再版の予定もないと拙い返事。それと雑誌「Intelligence」創刊号も読んだ。こうなったら何としても探して読んでみたい、ね。
2007年2月1日付『Personal_NewsN』 のブログで上記の「崎村茂樹他」記事に関するシンポジウムが早稲田大学である由。下記はその転用(2007年2月3日 記)。

2007.02.01
「日本の対ソ・対ロのインテリジェンス活動」
確かここは申し込みだけで参加費無料だったと思う。
>最近、"インテリジェンス 武器なき戦争" (手嶋 龍一, 佐藤 優)を読んだ。面白かったけど、こいつら、現場復帰は無理だろう、こんなに喋って。

20世紀メディア研究所主催特別研究会
「日本の対ソ・対ロのインテリジェンス活動」
3月10日(土)1ー5時
早稲田大学国際会議場・第一会議室

「加藤哲郎のネチズン・カレッジ」へようこそ!
「2007年の尋ね人」として「<崎村茂樹の6つの謎>について、情報をお寄せ下さい!」とよびかけた「国際歴史探偵」は、ついにドイツから、アマゾンで予約していた待望の『カレーナ・ニーホッフ伝記』 (Karena Niehoff. Feuilletgonistin und Kritikerin. Mit Aufsaetzen und Kritikenm von Karena Niehoff und einem Essay von Joerg Becker. FILM & SCHRIFT, Band 4. Muenchen ,Verlag edition text + kritik, 2007.1)が届きました。その内容は、前回ベルリン日独センターがらの要約として伝えた通りですが、同時に日本側では、戦時米国による日本外交暗号の解読記録「マジック文書」の中から、崎村茂樹についての重要な交信記録をみつけました。これから本格的解読に入りますが、その検討結果の一部は、来る3月10日(土)1ー5時、早稲田大学国際会議場・第一会議室で開かれる、20世紀メディア研究所主催特別研究会「日本の対ソ・対ロのインテリジェンス活動」で、「情報戦のスパイとされた在欧・在ソ知識人――国崎定洞から崎村茂樹まで」と題して報告します。この日はかの「外務省のラスプーチン」佐藤優さんとご一緒で、佐藤優さんの報告「近年の在外公館の対ロ・インテリジェンス活動」の後、私と佐藤さんとの対論形式で山本武利早稲田大学教授が司会するシンポジウムも予定されています。来月のことですが、予告しておきます。

追記2。中澤護人他著『ベルリン「水曜会」』(2003年刊 近代文芸新書 1050円)は国会図書館、公共図書館では札幌市立中央図書館それに滋賀県立図書館しか所蔵していないという。恐らくコンピューターの端末を叩いた結果の情報だろう。それせにしてもだ、こんなに所蔵していないということは不思議だし呆れるばかり。何か理由があるのか疑ってみたくなる。公共図書館(特に大都市の東京都や神奈川県では所蔵ゼロだ !!)版元ももっと力を入れてみてもよさそうだがそうでもない。古本屋のネットでも探したがダメ、これは以外と言えば以外だが、日本の図書館事情もお粗末なものだ。ま、近代文芸社は自費出版中心の出版社だが。それにしてもだ、むっ。滋賀県立図書館から有料で借り出して読むことにした。仲介役は地元の公共図書館。はて、いつ手元に届くか、今後のこともあるので一冊簡易製本にして取っておこうとは考えている(2007年2月6日 記)。
追記3。筆者はとうとう滋賀県立図書館所蔵ではなく世田谷区立中央図書館所蔵のこの本をつい一週間前に借り出した。高くつくが製本を依頼、近日中に取りに行くところだ。だからパラパラと捲ったきりでまだ読んでいない。
(2007年2月24日 記)

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