« 超人の面白読書 23 外岡秀俊著『情報のさばき方 新聞記者の実践ヒント』 | トップページ | 超人の面白ラーメン紀行 54 『ぶぶか国立店』 »

2006/11/24

超人の面白読書 24 澤正宏著・歌集『虫に聞け、草に聞け』

Img084
2006年11月20日(月)の朝日歌壇。佐佐木幸綱選一席に

里山に熊が現れリンリンと朝靄をつく集団登校

という朝の光景を詠んだ歌がありました。選者の佐佐木幸綱氏の評も付いていました。第一首、今週は各地から投稿された熊の歌が何種もあり、これはその中の一首。大きくひびく鈴を携行しての集団登校なのであろう。ふだんとはちがう緊張感がつたわるというコメント。急いで書き写した著者の直近の歌がこれ、"里山にリンリン"です。西脇順三郎研究家で福島大学教授の澤正宏著・歌集『虫に聞け、草に聞け』は、朝日歌壇入選の珠玉の歌を中心に編んだ第一歌集。「宣暁」「珊瑚の吹雪」「虫に聞け、草に聞け」「寒夜の虎落笛」の4章から成り、1994年から2006年までに書かれた330首の短歌が収められています。その中の数首を拾ってみました。

核兵器切り札ならば虫に草にまずは問うてみよ地球の破滅

リンドウの花は開かず群青の無口の潤い秋を深くす

わが胸に入りて出てゆく空気あり肺を切除し癌晴れる初夏

啄木の歌作の底の哀しみにいまだ届かず老母を背負う

妻活ける友は行きけりその国へ響きも悲しいアイスランドポピー

人生の機微に入り、ときに社会を鋭く射ち、そして自然とコレスポンデンスする秀歌の数々-。愛おしさ、哀しさが通低音として響きます。嗚呼、抒情 ! ページを捲る度にその都度口ずさみたくなる歌がここにはたくさんあります。お薦めの一冊です。
(発行:日本図書センター 発売:2006年11月24日 定価:2,100円)

追記。澤正宏先生の短歌最新作の一首が2007年6月18日付朝日歌壇永田和宏選に載っております。

川底を水面の影が伸び縮みしながら走る初夏の草取り

少し前には佐々木幸綱選で最上の棚田を詠った歌も掲載されていましたが、その短歌が携帯にあったはずなのがありません。見つかり次第upしておきます。
(2007年6月24日 記)

追記。昨日著者から月曜の朝日歌壇(2007年12月17日付朝日新聞朝刊)で最新作が高野公彦選と馬場あき子選の両方に入ったとのメールが届きました。その秀作は盛岡出張での作だそうです。(2007年12月18日)

遠き野の渋民村も市に入り啄木弾きしオルガン朽ちゆく
   
●馬場あき子選評
渋民村は啄木のふるさと。今や盛岡市である。啄木が弾いたオルガンはどんなモダンな音色だったか。移ろう時代の古びが寂しい。
●高野公彦選評
滔々たる時の流れを感じさせる歌。

« 超人の面白読書 23 外岡秀俊著『情報のさばき方 新聞記者の実践ヒント』 | トップページ | 超人の面白ラーメン紀行 54 『ぶぶか国立店』 »

コメント

コメントを書く

コメントは記事投稿者が公開するまで表示されません。

(ウェブ上には掲載しません)

トラックバック


この記事へのトラックバック一覧です: 超人の面白読書 24 澤正宏著・歌集『虫に聞け、草に聞け』:

« 超人の面白読書 23 外岡秀俊著『情報のさばき方 新聞記者の実践ヒント』 | トップページ | 超人の面白ラーメン紀行 54 『ぶぶか国立店』 »

2020年8月
            1
2 3 4 5 6 7 8
9 10 11 12 13 14 15
16 17 18 19 20 21 22
23 24 25 26 27 28 29
30 31