« 超人の面白音楽 北欧の音楽 エドヴァルド・グリーグ | トップページ | 超人のジャーナリスト・アイ 51 新生『暮らしの手帖』 »

2006/11/04

超人のジャーナリスト・アイ 50 新聞・雑誌拾い読み  

  雑誌『文学界』11月号で世界の文学賞を特集している。「世界の文学賞はどうなっているのか」がテーマだが、沼野充義の西欧中心からマイノリティへ-ノーベル賞、新元良一のヴェテランの君臨した25年-アメリカ、國分俊宏のゴンクール賞とライブァル達-フランス、縄田雄二の朗読と受賞演説の重要性-ドイツ語圏、生駒夏美の批判に晒されるブッカー賞、橋本勝雄の2000もの賞がひしめく-イタリア、安藤哲行の世界的成功への第一歩-スペイン語圏そして工藤正廣の文学賞はロシア文学再興の力となるか-ロシアとこの特集に52ページを割いている。なかでもロシア文学者の沼野充義氏の文章を興味深く読んだ。その最後のところで面白いことを言っていて実際当たったのだ。曰く、「最近のノーベル賞の傾向からすると、村上氏や、彼と同じ程度に国際的なスターといえるミラン・クンデラなどは、ちょっとポピュラーになりすぎてしまった感があって、かえって受賞は難しいのではないか。もっとも、こんな予言をしてもあまり意味はないし、予言がはずれたら私個人としては大変嬉しい。村上作品の新しさを前にして、スウェーデンの長老たちが判断基準を変えることだって、ありえるだろう。村上文学にはいわば「ゲームのルール」そのものを変える潜在的な力があると思う。」
10月13日の朝刊は各紙一斉に2006年度のノーベル文学賞はトルコのオルハン・パムク氏が受賞したと発表した。その時点で沼野氏は苦笑いをしていたと筆者などはすぐ想像してしまうが。そして、この他にもある世界の文学賞のなかで、アイルランドのオコナー国際短編小説賞、チェコのフランツ・カフカ賞が村上春樹氏に贈られたという記事が10月に立て続けに新聞に載ったのだ。チェコのフランツ・カフカ受賞者は、過去にその受賞実績もあってかノーベル文学賞に一番近いところにいると言われている。今回も村上氏が有力候補と騒がれていたらしい。『海辺のカフカ』という作品もあるし世界中で翻訳されているので(以前に書いた雑誌『遠近』の村上春樹特集に世界中の翻訳書の詳細が載っている)、東欧・ドイツ語圏でも読まれていると思う(チェコではこの『海辺のカフカ』は10月にでたばかりだった)。何と言ってもカフカの名前を広めた功績は大きいと思うのだ。何かネーミングが上手いし読者を擽るよね。したたかな戦略家かー。Img052_1

毎日新聞夕刊に書いていた現代詩人・荒川洋治氏の「文芸時評百年」が興味を引いた。最初の文芸時評は明治後期に正宗白鳥が読売新聞に書いたのが始まりだと披瀝していた。読み進めて途中で思わず、えっ、である。もうすでに中学の時に文芸時評を読んでいたのか、林房雄とか、この人は。想い出した、中三の頃かな、佐久間君という人がわら半紙に小説書いたから読んでよ、と何か坂の途中の大きなケヤキの下で見せてもらったことを。小生などは平野謙あたりかな、真剣に読み始めたのは。それと文芸評論家は意外と作家を掘り出す力がない云々とこの人らしい結構辛辣さもあって面白かった。これ以外にも2,3箇所なるほどと思わせるところもあったが忘れた。

そして、10月の文芸時評。朝日新聞は加藤典洋氏、毎日新聞は川村湊氏。芥川賞受賞作家の綿矢りさの新作『夢を与える』が雑誌『文藝』に載った500枚の長編小説を巡っての見解が面白かった。加藤氏はこの長編小説を失敗作と断じたがその将来性を感じたのかそれでもいいと評価、一方そこまでは評していないが、実験作っぽいところに期待している感じだったのが川村氏。読売新聞は誰が書いているのか興味があったが、つい買いそびれた。近いうち読んでまた書いてみたい。たまには比較して読むのも良いかも知れない。
追記。その読売新聞10月24日では文芸欄の記者、山内則史氏がCMモデルの美少女が高校入学時にブレーク、やがてスキャンダルにまみれるまでとごく簡単にあらすじを追った後、意欲、語りの才気は見えるけれど、展開には既視感がありやや物足りない、氏特有のリリシズムもなくこれまでの作品ほどには迫ってこないとの評価を下していた。10月の文学時評の冒頭でこの記者は、文学賞の応募数は「文芸」、「すばる」、「新潮」、「群像」そして「文学界」の純文学系で1万1000作を超えて、小説を書くことが「普通のこと」になっていると書くが、この秋は「豊作」の手応えがないらしい。量産されてはいるが質が高まっていないことを示唆しているようだ。それより同じページにあった詩評で安藤元雄の「ほんの少しではあるが、詩と短歌や俳句などのジャンルをへだてる垣根が乗りこえられる気配がある。一昨年来『日本詩歌句協会』という集団が立ち上げられたのもその一例云々」の記事の方に筆者は興味を持った。
【写真:フランツ・カフカ賞授賞式での作家・村上春樹氏。記者会見では「私にとっての賞は読者」と語り、それに先立つ授賞式では「本は、僕たちの内部の凍結した海を裂く斧でなければならない」とカフカの手紙の一節を朗読したと毎日新聞は伝えている】

秋の空晴れ渡ってはハルキ節

« 超人の面白音楽 北欧の音楽 エドヴァルド・グリーグ | トップページ | 超人のジャーナリスト・アイ 51 新生『暮らしの手帖』 »

コメント

コメントを書く

コメントは記事投稿者が公開するまで表示されません。

(ウェブ上には掲載しません)

トラックバック


この記事へのトラックバック一覧です: 超人のジャーナリスト・アイ 50 新聞・雑誌拾い読み  :

« 超人の面白音楽 北欧の音楽 エドヴァルド・グリーグ | トップページ | 超人のジャーナリスト・アイ 51 新生『暮らしの手帖』 »

2020年8月
            1
2 3 4 5 6 7 8
9 10 11 12 13 14 15
16 17 18 19 20 21 22
23 24 25 26 27 28 29
30 31