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2006/06/25

超人の面白読書 19 三浦 展著『下流社会』 続

  本書は博報堂研究開発局との2002年以来数回にわたる共同研究、2004年にイー・ファルコンと行ったマルチクライアント・プロジェクト「昭和4世代欲求比較調査」の結果、2005年に読売広告社にスポンサーになって頂いた「女性階層化調査」の結果や住環境研究所で行った調査の再集計結果を下敷きにしている。著者ははじめにのなかで「"下流"とは、単に所得が低いということではない。コミュニケーション能力、生活能力、働く意欲、学ぶ意欲、消費意欲、つまりは総じて人生の意欲が低いのである。その結果として所得が上がらず、未婚のままである確立も高い。そして彼らの中には、だらだら歩き、だらだら生きている者も少なくない。その方が楽だからだ」と書く。団塊ジュニアといわれる世代やそれよりも若い世代を中心に意識調査、消費調査を行い、その結果を分析した、副題にもある”新たな階層集団の出現”を表出させた階層問題に関する消費社会論だ。目次を見ると、第1章「中流化」から「下流化」へ 第2章階層化による消費者の分裂 第3章団塊ジュニアの「下流化」は進む? 第4章年収300万円では結婚できない!? 第5章自分らしいさを求めるのは「下流」である? 第6章「下流」の男性はひきこもり、女性は歌って踊る 第7章「下流」の性格、食生活、教育観 第8章階層による居住地の固定化が起きている?から成り立っている。著者もあとがきでこのアンケート調査のサンプル数が少なく、統計学的有意性に乏しいと認めざるを得ないと記しているが、その統計手法を駆使した現在の若者の意識、消費の引き出し方は見事と言わざるをえない。たまにはそうかななど首を傾げたくなるところやその結果の引き出し方にも疑問もあるところもあるが。著者指摘の面白いところを引用してみる。「その学歴、性格、容姿などが、純粋に個人の能力と努力だけの産物というわけではない。それらは親の階層によっても大きく規定されてしまう可能性が高い。男女の差別、男女間の階層性ではなく、女性同士の差別、そして個々の女性の背景にある親の階層性による差別が、今、拡大しているのだ」(本文P.70)。京都の有名私立大学のある教授が、幼稚園から小、中、高、大学まで否卒業して教職員としてその大学に就職するとしたら想像するだけでもぞっとするねと言っていた。しかも幼稚園入園金が約150万円、学校法人の囲い込みはとうとうここまで来たかの感を筆者などは持つが、どうしても入りたい親もいるのから不思議だ。入園倍率も高いらしい。
それは次の事柄に実にあてはまる。生まれたときから東京の郊外の同じような住宅地の同じような中流家庭に育った価値観の若者が増えるということは、異なる者同士のぶつかり合いから新しい文化が生まれる可能性を縮小させていると言えるだろう。それはいわば「世界の縮小」だ。(本文P.259~P.260)そして上述の例は団塊ジュニアが親になる世代だ。進行しているか、《格差社会》ー。かくして井の中の蛙の「バカの壁」は知らぬ間に築かれる。そして築かれても、その存在に誰も気がつかず、壁の中の快適さに耽溺する危険がある(本文P.261)。それでは下級社会を防ぐために求められるのは、「機会悪平等」の仕組みなのだと著者は言う。親の階層が低い子供は学力が低い傾向があり、それは遺伝ではなく、家庭環境のためであるとするなら、大学入試で、親の所得の低い家庭の子供は合格点数を下げればよい。いわゆる下駄を履かせるという方法である。(ついでに所得の高い親の子弟は合格点を上げてもよい)。東大や京大でまずは低所得者下駄履き入試を実施してみてはと提案。これは面白い、オモシロイ。そしてこのユニークな提案はこうも続く。東大学費無料化、大学授業インターネット化、地方から東京へ進学した場合の資金援助、上流には「ノブレス・オブリージュ」(高貴なる者の義務)を、と。
この本の性格上、数字とパーセントの多いのは仕方がないが、なかなか読み進みにくかった。ポスト資本主義はアメリカのそれを追随するのではなく、北欧型の社会民主主義をモデルに日本型・環境・社会・民主主義を目指すべきだろう。大格差を無くす意味でも。

それにしてもサッカーワールドカップ世界大会(FIFA 2006 Germany)で日本は一次リーグを突破できずに敗退。身体能力、技術力、監督采配力、リーダー力、チームワーク力いずれにせよ世界の猛者と伍していくには何か。プロ意識に欠けているとはジーコ監督の弁、しかしこの大会に勝つためにジーコは監督を引き受けたはずだったのにこの言辞。ま、プロリーグが出来て13年の日本のサッカー、これからを期待するしかないね。足の速い、切り替えが、ミドルシュートが、空中戦ができるなどの選手が出現するか、新監督の名前が川渕会長のslip of tongueで暴露されているが・・・・・・・。オシム氏有力と今日の毎日新聞朝刊に活字が躍った。サプライズだ。
サッカーの格差《社会》か、洒落にならないね。ハングリー精神が足りないのではと思うのは筆者だけだろうか。残念、斬りッ! それにしても初戦のオーストラリア戦の戦い振りが悔やまれるね、あーぁっ !


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