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2006/01/21

学術先端情報ー学術mini情報誌『PS Journal』の紹介 3

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2006年 第8号 女性学研究最前線

【目次】
■中国女性学の最新動向 中華女子学院大学客員教授 大浜 慶子
■ジェンダー統計に関する研究 日本女子大学助教授   天野 晴子 
■ジェンダー研究とセクシュアリティ研究の交差      女子栄養大学専任講師       田代美代子
■NPOと女性の学習         市原看護学校非常勤講師      山澤 和子
■学校女性管理職の研究      日本女子大学助手          高野 良子
■「家庭教育」の歴史研究について 彰栄保育福祉専門学校専任講師  藤枝 充子
■戦後(1970年代まで)の女子教育研究をめぐって
                      日本女子大学教授          真橋美智子
NPOと女性の学習          
山澤和子(日本女子大学大学院生・市原看護学校非常勤講師

現在、女性たちは大学、社会教育施設、カルチャーセンターなど様々な成人教育の場で学習をする機会に恵まれているが、NPOもそのひとつである。1998年にNPO法(特定非営利活動法)が成立してから、年々NPO法人の数は増加し、2005年9月現在では23,603のNPO法人が全国で活動している。活動分野別にみると、保健・医療・福祉、社会教育、学術・文化・芸術・スポーツ、国際協力、環境の保全、男女共同参画社会の形成、子どもの健全育成など多岐にわたっている。その割合は保健・医療・福祉56.8%、社会教育47.1%、学術・文化・芸術・スポーツ32.1%、国際協力21.5%、環境の保全28.9%、男女共同参画社会の形成9.0%、子どもの健全育成39.5%などである。女性達だけで運営するNPO法人も増えており、ジェンダーの視点で、女性の自立をめざしているNPO法人(特定非営利活動法人)4団体を紹介する。
神奈川県にある「WE21ジャパン」は国際援助活動を目的とし、30~50代の主婦たちがリサイクルショップを運営するNPO法人である。その収益金をアジアの女性たちの、生活の向上と自立を助けるために、アジアのNGO などに寄付をしている。1998年に第1店舗を開店し4年間で48店舗と増加を遂げているのは画期的である。WE は「Women’s Empowerment」の略で、女性の力を高め、市民と市民の交流の中から、アジアの平和を築くというビジョンを表している。会員や地域住民を対象とした、ショップ開店のための講座やNGOについての学習、各国の料理教室などの学習機会を提供している。支援先の調査や人々との交流のために、タイやカンボジア、フィリピンなどへのスタディーツアーもおこなっている。講座での学習や現地の人々と寝食を共にするスタディーツアーは異文化への理解を深め、女性たちの意識変容を促している。寄付や会費にだけに頼らず、女性たちが自ら事業を起こし、その収益によって活動を拡大している理由は、中年期の女性たちがそれまでに培ってきたネットワークにあるといえよう。
 一方、名古屋では、子育て中の専業主婦たちが託児所つきコンサートの企画、運営をおこなうNPO法人「SKIP」が活動している。名古屋市女性会館の講座で出会った、子育て中の4人の母親たちが、子育てをしながらもクラシック音楽を聴きたいと、1994年に全国初、朝の託児付き本格的クラシックコンサートを開催した。スタッフの「子育て中も私らしく輝きたい」という願いが、多くの同世代の母親たちに共感を与え、コンサートは成功したのである。子どもたちは成長するため、主要スタッフは随時世代交代をしているのがこのNPO法人の特徴だ。2001年には「ママたちのモーニングコンサート」と題する本も出版した。活動の意味を考える、女性学を学びたい、自分のことを話したいとの希望により講座の企画を兼ねた学習会をおこなっている。彼女たちは「専業主婦、子育て」というスキルは専門性であると考えている。家事や子育ては仕事とはみなされない現在の社会状況下で、この考えは注目すべきであろう。1986年の男女雇用機会均等法が施行されたころに、総合職としてOLを経験し、男性と対等に仕事をしてきた能力を、今度は芸術・子育て活動にと発揮しているのである。
 大阪では、ジェンダーフリーな社会の実現をめざし、ジェンダー教育を社会に浸透させるために、学校や行政に出前講座をおこなっているNPO法人「アートフル・エフ」が活動している。子どもたちは常にメディア(TV・ラジオ・新聞・絵本・雑誌など)や教科書にからジェンダーのすり込みが行われており、幼児期からのジェンダー教育は特に必要である。「アートフル・エフ」は性差にこだわらず、「自分らしく」生きるための社会の実現を、市民の立場から推進している。ジェンダーフリー教育プロジェクトを立ち上げ、幼稚園、小学校、保健所などで、子どもや保護者たちに出前講座による学習機会の提供をしている。オリジナルな人形や紙芝居教材を作成し、ゲーム・ロールプレイなどの方法を取り込みながら、自主公演を行っている。大人向けには市、公民館、女性センターとの共催の講座の開講、市民の意識啓発のための情報誌の発行、助成金事業、教職員研修や講座に講師を派遣する活動もおこなっている。全国的な取り組みへの発展にも意欲的である。
スポーツ分野でも女性の地位は低く、茨城県に本部を置く「ジュース」は1998年に男女平等をめざして、日本初のNPO法人となった。女性の地位の向上のために、女性指導者・研究者などへの支援事業、男女共同参画社会とスポーツをテーマとした啓発事業、女性スポーツに関する国際会議などの開催事業などをおこなっている。日本にとどまらず世界的に活動しているNPO法人である。行政や大企業(博報堂、全日空、NIKEなど)との関係が深いことが世界規模な活動を可能にしている。2001年にアジア女性スポーツ会議を大阪で開催し、シドニーオリンピック委員会へも会員を派遣した。2006年には熊本市の賛同を得て、第4回世界女性スポーツ会議を日本で開催予定である。国内では女性のスポーツ振興のためのワークショップや、女性指導者セミナーなどを開講している。2001年の文部科学省委嘱事業(女性のエンパワーメントのための男女共同参画学習促進事業)などの研究活動も行っている大規模なNPO法人である。
どの団体も、スタッフのジェンダーに対する思いが、活動の起爆剤になっている。そして家族や男性たちの理解を得ながら活動を進めている。つまり活動を通した学習が、家族との関係や地域との関係を変える力となっているのである。これらのNPO法人は、ジェンダーの視点を踏まえ、女性の地位向上のために社会で活躍し、女性たちのエンパワーメントに貢献しているのである。

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