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2005/12/23

超人の面白読書 16 岡田哲著『ラーメンの誕生』 続

岡田哲著『ラーメン誕生』には札幌ラーメンに言及した花森安治の1954年(昭和29年)1月17号の『週刊朝日』(この『週刊朝日』のバックナンバーは公共図書館から借り出したもの) の記事Nihon_haiken_1
がある。その週刊誌の記事の一部を抜粋してみよう。

「札幌の名物は、ラーメンである。鮭でもコンブでもない。中略。いきおい、名物はラーメンということになつてしまう。うまいから、というのではない、やたらに数が多いのである。札幌中、どこを歩いても、必ず一軒と行かないうちに、ラーメンの看板にぶつかる。薄野(すすきの)あたりでは、もう軒並みラーメン屋である。風呂の帰りにラーメンを食う、映画がハネたらラーメンを食う、ひるめし代わりにラーメンを食う、アベックで歩き疲れたらラーメンを食う、客が来たらラーメンを食う。デパートの食堂あたりで見ていても、大ていラーメンを食つている。一杯60円だから、札幌の物価にしては、安上がりだというせいもあるかもしれない。寒い土地だから脂肪分をとりたいという気も働いているのだろう。なんとなく安直だというかもしれない。それにしても、軒並ラーメン屋の提燈看板をながめ、広告塔の「ラーメン、ラーメン」とふり絞る声を聞いていると、これがサッポロだという気がしてくるのである。日本のそばの、あの伝統風味は、あろう筈はないが、さりとて、マカロニ、スパゲッティのような、本場のハイカラさからもほど遠い。なにか安手の異国ふうにみえて、実は日本製そのもの。サッポロ-まさしくラーメンの町」。

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ここには花森安治のテンポの良い文章に乗って半世紀前のサッポロの町の風景が活写されている。ラーメンの匂いがぷんぷんしている。今のラーメンブームとは違った生活感がある。
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典型的なご当地ラーメンー札幌ラーメンと九州ラーメンーの歴史を垣間覗いてみよう。何故なら、日本のラーメンの歴史の縮図が見えるからである。この本に従ってまずは札幌ラーメンの歴史を概略すると、1922年(大正11)札幌竹屋食堂が開店する。そこでは汁そばをラーメンと呼んでいたとの挿話は有名。1946年(昭和21)戦後の札幌ラーメンの原型である松田勘七の屋台が店開きする。1947年(昭和22)西山仙治の屋台『ダルマ軒』が開店する。西山製麺の誕生である。1948年(昭和23)大宮守人が「味の三平」を開店、1951年(昭和26年)南5西三東宝公楽横に公楽ラーメン名店街と称するラーメン屋が軒を連ねる。満州で外務官僚を務めた岡田銀八が「来来軒」を開店し大繁盛、ラーメン横丁の原型が出来上がる。
一方、対照的な九州ラーメンはどうかというと、『九州ラーメン物語』(九州ラーメン研究会)を参考にその概略を描てみよう。
1937年(昭和21)宮本時男が久留米駅前で屋台を開く。後の「南京千両」である。1946年(昭和21)うどん仲間の津田茂一が白濁したトンコツスープの「中華そば」を考案、赤く染めたのれんから「赤のれん」と呼ばれる。赤は遠くからでも目立つという理由で付けられたいう。1955年(昭和30)魚市場が長浜に移動して新たに「長浜ラーメン」が誕生。魚市場の仲買人の好みに合わせて茹りやすい細めんにし替え玉と称するめんだけの追加サービスを考案する。白濁ラーメンはその匂いに辟易させられるが、豚骨を時間をかけて煮込むときの血抜きや生姜などの香味野菜を入れるとこの独特な臭さがかなり緩和されるらしい。白濁した色は、骨髄に含まれたコラーゲンが乳化して生じたものである。九州白濁ラーメンは、久留米→玉名市での屋台ラーメン、それを真似して作られた熊本の「こむらき」が開店。1968年(昭和43)熊本ラーメン「圭花」が東京進出し白濁スープのコッテリ味とニンニクチップが話題になる。鹿児島では「日本のラーメンの母」と呼ばれた道岡ツナー横浜の同愛病院で看護婦をしたとき、その献身ぶりに入院していた中国人の料理人がせめてのお礼とめん料理の作り方を教えたというーが、1947年(昭和22)中華そば「のぼる屋」を開店する。ダイコンの漬物を添えたアイデアやかん水を使わずうどんのように白い手打ちめん、コクがありあっさりしたスープが受ける。その他ご当地ラーメンを上げると函館ラーメン、旭川ラーメン、喜多方ラーメン、佐野ラーメン、東京ラーメン、横浜ラーメン、飛騨高山ラーメン、京都ラーメン、大阪ラーメンそれに尾道ラーメンである。

筆者ばかりではなく誰もが思っていること、それは美味いラーメン店に出会えて満足感・満腹感を味わうことだ。著者はそれをラーメン通が行く店10ヶ条で教えてくれる。①めんを茹でる釜が大きい、家庭用の小さめの釜では熱量不足でダメ、②茹で上がっためんは、掬い網を使っている、③丼は小さめである、④近くにラーメン激戦地がある、⑤店構えがあまり広くなく、せいぜい15席ぐらい、⑥メニューは単純明快で少ない、⑦個性派の研究熱心な主人がいる、⑧特にチャーシューに拘りがある、⑨仕込み分が売り切れたら、閉店してしまう、⑩家族だけ、または、アルバイトの小人数で切り盛りしている。
ラーメンは身近な食べ物とは著者あとがきだが、また奥も深いらしい。新書版だがなかなか読み応えがあった。その歴史、かん水の話などときどき読み返してみたい本である。ラーメン大好きの筆者としては。
今年の年末はTBSで「ラーメン王」なる番組を放送するらしい(去年の年末は日本テレビで同じような番組をオンエアしていたが)。今年のラーメン王は誰か、 今から楽しみだ。


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