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2005/09/04

クロカル超人のジャーナリスト・アイ 新聞・雑誌拾い読み 15 新聞書評欄探訪・短評

2005年8月29日、アメリカの南部ルイジアナ、ミシシッピー、アラバマの3州を襲ったハリケーン『カトリーナ』。1900年以来の大災害で被害総額は日本円で11兆円と推定され膨大だ。各メディアはその報道を連日伝えているが、取り残された地域住民の避難生活は悲惨そのもの。略奪、暴動も起っており、家等を奪われた人たちは行き場を無くし助けを求めて動けない状態と。石油精製基地もあり、90%は操業停止状態でガソリンの高騰も懸念され、アメリカのブッシュ政権の危機管理能力がまさしく問われている。一部には対応が遅すぎるとの住民等の批判も出ていて苛立ちが募っているとのテレビ報道もある。ジャズの町ニューオーリンズは、海からの高波、川の氾濫、それに湖の防波堤も決壊したため町のほとんどが浸水。事前に非難勧告が出て100万人以上が他地域に車などで避難していたにもかかわらず、車も持てない貧民層などが取り残され、ここが富めるアメリカかと言えないほど、まるで発展途上国並みの様相を呈していると各メディアは報じている。テレビで観ている限りでは旧約聖書に出てくるノアの大洪水そのものー。今年アジアではスマトラの津波災害、日本では中越地震と、また、ヨーロッパではスイス、オーストリア近辺での洪水、スペイン、フランス、ポルトガルでの山火事、中国での水害とこのところ自然災害が相次いでいる。これも地球温暖化現象の一因と言えるかも知れない。市長の陣頭指揮は胸を打つが、アメリカ政府の対応が多少遅いように見受けられたのは筆者一人だけではないだろう。町の浸水を防ぐには防波堤の修復が肝心、土嚢、コンクリート船(以前にこのコラムで広島で防波堤として立派に活躍しているとのことを書いたが)他緊急堰き止め作業が急務だが、嬉しいことに干拓工法では先進国でその蓄積があるオランダがこの地域の防波堤修復に一躍買うとのニュースもある。何よりも被災者の救出と早い今後の復興を願って止まない。皆さん、できるだけ支援しましょう。

昨夜半から日本でも大型台風14号の影響か、首都圏で局地的大雨。東京の多摩、中野では床下浸水、杉並、世田谷、板橋、埼玉の所沢、狭山、和光市他、神奈川の川崎でも被害が出ている。2005年9月5日午前2時半現在。


■書評欄の短評


①若島 正評『驚異の百科事典男』 A・ジェイコブズ著(文春文庫・1200円)
アメリカの出版社で雑誌編集者をしている35歳の男が、あるとき一念発起して、『ブリタニカ百科事典』の通読を 思い立ち、全32巻、3万3千ページ、6万5千項目を1年で成し遂げたという話。A-akからZywiec(ポーランドの南部中央の町、このコラムにも以前書いた町)まで。結局はこれでほんの少しだけ賢くなったのだろうと、また書物の効用とはこういうことだろうと書評子。この手の話はたくさんある。ある英語学者は辞書を一ページ一ページ暗記しては食べてしまったとか、ある作家は広辞苑を丸々一冊読破したとか。でも面白いかもね。読んでみたくなる?
【「毎日新聞2005年9月4日」から】

②評者・新谷尚紀『②『西周と日本の近代』島根県立大学西周研究会編(ぺりかん社・5800円)
「哲学」、「概念」、「主観」、「演繹」などの訳語で有名な西周。津和野藩出身でオランダに留学して後明治新政府に出仕、日本の近代化の基礎を築いた哲学者で、また、軍人勅諭の起草者でもある。福沢諭吉から丸山真男とつながる儒教否定の文脈だけから読むものではなく、「近代儒学」というアジア的な新視点からの見直しが必要で、今後西周の評価を革新させていく魁の一書といっていいと評価している書評子。筆者は森鴎外の周辺を今読んでいるが、この西周は確か森鴎外の仲人をやった人 ? この哲学者で想い出されるのはある日蘭交渉史 が専門の研究者でオランダ留学時代の西周を研究テーマにしていた。研究室で西周の達筆なオランダ語の自筆原稿を見せてもらったことがある。この哲学者についてはやさしく書かれた本がもっとあってもよい。
 【「読売新聞2005年9月4日から】

③現代詩手帖特集版『塚本邦雄の宇宙ー詩魂玲瓏』(思潮社・2400円)
革命家作詞家に凭りかかられてすこしづつ液化してゆくピアノ
 6月に亡くなった前衛短歌運動の旗手的存在の塚本邦雄の代表作500首と、岡井隆、辻井喬、篠弘、小池 光 による座談会などを掲載。塚本邦雄氏と言えば、最晩年全集刊行中に近畿大学文芸学科の研究室でお会いして、文部省が漢字制限をしたからおかしいと、その長身から発せられる早口で多弁なのには驚いたほど。これは読んでみたい雑誌。
 【「読売新聞2005年9月4日から】
 
④今を読み解く 岐路に立つ公立ミュージアム 東京大学教授 木下直之
ここ何年か前から叫ばれている問題にこの社会史家がコメントしている記事。今春、長崎歴史文化博物館の指 定管理者を乃村工芸社が落札したニュースは衝撃的で、多くの公立博物館・美術館では、同社に展示業務を 委託し、当然のごとく学芸員が指示を出してきたのだが、立場は逆転、今度は同社が学芸員を募集し、採用するこ とになった。また、芦屋市立美術博物館もNPOに委託に向けて動き出したとニュースに書評子は驚いている。江戸博、東博、川崎ミュージアムなども新聞等でその運営方法が話題になったばかり。一昨年の地方自冶法改正で加速され、同法第244条にいう「公の施設」の運営が、民間にも開かれたからだという。博物館・美術館が冬の時代、参入可能となった民間が春とすれば、今が季節はどちらなのか見極めるのは利用者だと書評子は言う。
 『指定管理者制度で何が変わるか』、『博物館の誕生』、『こんなに面白い東京国立博物館』、『美術カタログ論』が簡潔に紹介されている。その中で関秀夫著『博物館の誕生』(2005年、岩波新書)は、幕末にイギリスに留学した薩摩藩士町田久成が、明治政府の中枢で大英博物館をモデルにした博物館構想を実現させようとした足跡をさぐる。結果は町田の通りに行かずの帝室博物館ができ、戦後の国立博物館、2001年には独立行政法人国立博物館となって現在に至っている由。岐路に立つ博物館・美術館は今は自問し再考すべく時であると結ぶ。
 バブルの産物の如く言われて久しい公立の美術館・博物館は、これからは法人税などの税収も見込みにくい時代、利用者をもっとひきつける魅力ある構想、展示を創り出してほしいものだ。石川県立美術館の良い例もあるのだから。
【「日経新聞2005年9月4日」から】


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