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2005/07/24

クロカル超人の最新読書案内①岡田哲著『ラーメン誕生』②網野善彦著『日本の歴史をよみなおす』③林博史著『BC級戦犯裁判』

最近買い込んだ書籍。raumentanjou
一冊目は岡田哲著『ラーメン誕生』(2002年1月刊 P.234 定価720+税  ちくま新書)。たまたまブックオフで見つけた本ですが、著者は『とんかつの誕生』、『コムギ粉の食文化史』、『カステラ文化史全書』などの著作をもつ食文化史研究家。中国めん料理の発達小史、日本のめん食文化の歩み、ラーメンへの芽生え、料理書にみるラーメンへの変遷、ラーメンの魅力を探る、日本が生んだ世界のラーメン、こだわりの味・くせになる味、ラーメンと日本人からなるとっても面白くためになる本です。巻末の参考文献、家庭向け料理書にみるらーめんへの変遷、ラーメン年表も参考になるし興味深い。通勤、出張の電車のなかで気軽に読めて、なるほどと唸ることしばしば。更なるラーメン道追求には恰好の書です。前半は歴史を紐解くあたり、多少忍耐が必要ですが、それもラーメンを深く知ればこその通過点です。筆者としてはラーメン食べ歩き最中、こんな本が欲しかったからハマリました。読了するまであと少し。
ところで、今流行りのラーメン店最新ニュース。超人気ラーメン店中野の「青葉」店主が監禁・暴行された事件にはビックリ、SURPRISE。この店へは筆者は残念ながらまだ入っていません。噂は聞いておりますが。スープの味を守るにも一苦労あって有名店は大変らしい。ラーメン戦争はエスカレートしていますが、生き残るのも大変。たかがラーメン、されどラーメン、です。

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二冊目の網野善彦著『日本の歴史をよみなおす』(2005年7月刊 P.499 定価1200+税 ちくま学芸文庫)は、網野史学のエッセンスが詰まった本。文字について、貨幣と商業・金融、畏怖と賎視、女性をめぐって、天皇と「日本」の国号、日本の社会は農業社会か、海からみた日本列島、荘園・公領の世界、悪党・海賊と商人・金融業者、日本の社会を考えなおすからなり、著者は日本中世史、日本海民史専攻の著名な歴史家。著作は『蒙古来襲』、『日本中世の非農業民と天皇』、『無縁・公界・楽』、『日本社会の歴史(上・中・下)』など多数。今までの歴史観を覆すその独特な歴史観は"網野史学"と呼ばれ多くのファンをもったが、惜しくも1年前の2004年に亡くなっています。折りしも歴史教科書問題でゆれている日本、中国、韓国。権力者や支配者におもねった歴史ばかりではなく民衆からの歴史を考えることが必要かも知れません。筆者は多少読んできましたが、思い切って通読してみようと企んで手に取った次第。

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三冊目は林博史著『BC級戦犯裁判』(2005年6月刊 P.218 定価740+税 岩波新書)。現代史専攻の著者が最近、日本社会は冷静さを失い、排外的なナショナリズムや他者へのバッシングが横行しています。日本の戦争責任への自覚も、戦争への抵抗感も薄れてきています。そんなときだからこそ、日本自らの過去と現在を冷静にかつ自己反省的にみつめることが必要だと思いますと、本書のあとがきで記しています。戦後60年の節目の8月はもう間近、ちょっとは考えてみようと読み始めています。
参考:PS JOURNAL 2004 SUMMER 第3号 林博史小論「研究者の現在 Ⅱ ジェンダーの視点からの軍隊・戦争研究」(2005年1月23日付記事)以下内容は転載。

ジェンダーの視点からの軍隊・戦争研究
                    

林博史(関東学院大学教授/現代史)

これまで日本軍の戦争犯罪・戦争責任についていろいろ調べ書いてきた。マレー半島での日本軍による華僑虐殺、東南アジアへの侵略、イギリスによる対日戦犯裁判をはじめとするBC級戦犯裁判、日本軍「慰安婦」、沖縄戦、戦争犯罪・戦争責任問題、など。調査で回ったのは、中国、北朝鮮、韓国、マレーシア、シンガポール、沖縄などの現地(資料館や大学も含めて)とイギリス、アメリカの公文書館、図書館などである。それらの研究は基本的には日本軍の問題だが、戦犯裁判はそれにとどまらず連合国の戦中戦後政策でもあるので、第2次大戦期から戦後冷戦期の各国の政治外交安全保障政策も勉強せざるをえない。当然、日本の戦前戦中戦後の近現代史は必須である。しかし日本のことしか知らないのでは日本のことをきちんと理解できない。特に日本史研究者はそういう傾向が強いので(外国史研究者は逆に日本のことを知らなさ過ぎるが)、アジア―米英―日本という複合的な観点で考えようとしてきた。
最近、米軍についての資料を集めている。今日、米軍が世界中で戦争をおこし、他国の女性たちを貶めているからには、やはり米軍をきちんと分析批判する必要があると思うのだが、自衛隊サイドの軍隊のための軍事研究者や軍事マニアを除くと、平和の視点からの軍隊・戦争研究がきわめて遅れている。特にジェンダーの視点で考えてみたいと思い、米軍の性問題に対する政策をテーマとして取り上げている。 アメリカの国立公文書館では現在、1950年代の途中まで、米軍(陸軍)の世界各地への派遣軍の資料を見ることができる。資料によっては60年代も公開されつつある。売買春、性病、性犯罪、同性愛、軍紀など性問題といってもいろいろなアプローチの仕方があるが、米軍がそうした性に対してどのように考え、対応してきたのかを19世紀末からたどっている。19世紀末というのはハワイ併合や米西戦争、義和団事件などによって、ハワイ、フィリピン、中国、パナマ、プエルトリコ、キューバなど各地に米軍が駐留をはじめたときだからである。戦後の日本や沖縄、韓国、フィリピン、タイなどアジア各地を占領あるいは駐留した米軍による性犯罪や買春などは大きな問題であったし、いまもそうである。かつての日本軍も国内では遊郭を利用し、海外では慰安所を作って女性たちを性奴隷として扱っていたが、その日本軍がやっていたことはどれほど世界的に共通のものであり、どれほど独自のものなのか、日米両軍を見ているといろいろ見えてくる。米軍資料のなかのどこにそうした関係資料があるのか、最初は手探りで調べ(もちろんアーキビストからは貴重な手がかりを教えてもらったが)、たくさんの資料を請求してもハズレだったことも多かったが、この4年ほど何度も公文書館に通ったので、そうした関係資料が含まれているファイルの見当がつくようになった。それらの資料を読みながら、米軍の性への対応が西欧や日本とはかなり異なったものであることがようやくわかってきた。日本軍慰安婦問題が1990年代に大きく取り上げられるようになり、その問題にかかわるようになったが、フェミニズムの議論から多くのことを学び、ジェンダーの視点の重要さをようやく理解できるようになった。そのこともこうしたテーマを取り上げようと考えた理由である。ほかにアカデミズムへの失望もある。たとえば日本の平和学会は1990年代を通じて日本の戦争犯罪や戦争責任問題をほとんどまったく取り上げなかったし、ジェンダーの視点が欠けていると思われるような企画が多かった。ようやく戦争と性暴力を大会で取り上げたのは2000年のことだった。日本の平和学は軍隊や戦争そのものを研究しようとしてこなかった。これは日本の平和思想・運動にも共通する致命的な欠陥であるだろう。歴史学会のなかでも侵略戦争への反省のうえに研究を進めているはずの歴史学研究会も90年代を通じて(その後も)、戦争責任問題や慰安婦問題を大会で取り上げようとしなかった。日本が突きつけられた戦争責任問題、とりわけその中の慰安婦問題を取り上げようとしない日本の平和学や歴史学とはいったい……。
女性国際戦犯法廷を開催したバウネット・ジャパンの企画である『「慰安婦」・戦時性暴力の実態』(緑風出版)の東南アジア編の責任編集者になったときにあらためて気がついたのは、東南アジア史研究者がほとんどこの問題を無視していることだった。結局、東南アジア編を執筆したのはほとんどがアカデミズムとは関係のない市民たちだった。そこで私は編者として次のようなことを書いた。「ところで奇妙なことに東南アジアを専門とする研究者はほとんど、日本軍の性暴力あるいは戦争犯罪・戦争責任について研究しようとしないし、被害者の声に対しても冷淡な現状がある。アカデミズムの中に閉じこもり、無難なテーマを取り上げて「業績」をあげ、大学のポストを確保するしか関心のない「学者」たちに対して、バウネットに参加してきた市民の力によって初めて本書の第Ⅱ部(東南アジア編のこと)が可能になった。」けっして全否定するつもりはないが、しかし戦争犯罪・戦争責任あるいは戦時性暴力について取り組む研究者の少なさをいつもながら痛感する。私は、アカデミズムの構成員に向かって語るのではなく、被害者の痛みに共感し現実を克服しようと努力している人々に向かって、その人々と一緒に歩きながら語りたいと思う。

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