« 最近買い込んだ本 | トップページ | クロカル超人が行く 9 京都・祇園 フラッシュバック ① »

2005/02/12

超人の面白読書 6 渡部 蓊著「教育行政」

Kyoikugyosei_3
渡部 蓊著「教育行政」 2004年10月刊 日本図書センター A5版 516ページ 定価6,090円 

今まさに教育基本法等の改正が問題になっているが、この本はわが国の教育法規、教育制度、学校体系・教育内容、教職員、高等教育、生涯学習、文化・芸術の行政について理論と現実の双方から展開した、初の教育行政の解説書である。以下は専門家からの立場から、2005年1月号「教職研修」に掲載された横浜市立大学助教授高橋寛人先生の書評をスペースの都合上一部割愛、一部直して転載。
本書は、現行の教育行政制度を、論理的、歴史的、体系的に記述したものである。類似の書物はほかにもあるが、本書の最大の特色は、元文部官僚によって書かれ点である。また、文教行政の全体を統一的に一人で論述した書物はきわめて少なく、貴重である。狭義の教育行政にとどまらず、学校教育・社会教育を含む広い意味での「教育行政」全般を扱っている。章末の随所に「補説」が付され、制度の原理や改革の理念などについて詳しい説明がなされ、法律の制定や改正をめぐる立法者意思を解説するために、審議会の答申や国会での提案理由説明なども豊富に引用されている。

この本を推薦します
「教育行政講義担当者必携の書」 渡部翁著「教育行政」
                          坂野 慎二(玉川大学助教授・国立教育政策研究所客員研究員)

 本書「教育行政」は、大学の講義におけるテキストとしてはもちろん、教育行政の講義担当者必携の書である。
 著者は元文部省に勤務し、1984-1987年の臨時教育審議会(臨教審)設置時には事務局として、関係者との接触も多かった。臨教審で審議された内容はその後の教育政策に大きな影響を与えたが、本書は臨教審の影響を強く読み取ることができる。そのことが、元文部官僚である著者にして、文教政策に一定の距離を置いた分析視点を提供し、場合によっては文教政策に対する批判を展開することを可能にしている。
 本書の特色を整理するならば、以下の点を指摘できる。

1.法令についての幅広い知識を基盤とした叙述と歴史的変遷が丁寧に記述されていること。元行政マンらしく、法令の歴史的変遷が丹念に調べられている。その対象は戦後の変遷のみならず、戦前の法令改正にも及んでいる。本書が教育行政講義担当者必携と考えられる理由の1つはここにある。現行法令の歴史的経緯を調べるとき、かなりの信頼性をもって、本書によりその目的を達成できるのである。
 例えば、住民等の学校建築に関わる割当的寄付金等の禁止の整理などは、従来の教育行政学テキストではあまりなされてこなかったのではないだろうか(141頁)。
 また、いわゆる教育法令のみならず、法全体への幅広い視野に立って本書は叙述されている。例えば、独立行政法人通則法などへの目配りは、一般行政と文部行政といった視点からではなく、行政全体の中での文部行政の視点を意識させてくれる(50頁)。教育政策の政治化が進行しつつある今日、こうした視点が教育行政の講義担当者には求められるであろう。

2.補説による詳細な記述。本書は全部で16の補説が盛り込まれている。この補説には著者が臨教審事務局としての体験が生かされている記述が多い。この補説としての記述が、本文の分量を抑えるとともに、ある種のトピックとして読者の関心をそそるのである。
 例えば[補説6]で扱われている「臨時教育審議会の学校体系の基本的立場」は、今日の教育改革を分析するために、有益な視座を提示してくれる。また、[補説9]の「臨時教育審議会の答申と教員免許制度の改正(昭和63年)」は、教員の資質向上を議論する際に、貴重な論述である。専門職大学院が議論されている昨今、こうした原理原則を振り返るために貴重な資料であるといえる。

3.学校教育行政以外への丁寧な記述。従来の教育行政のテキストはあまり詳細な記述がなされてこなかった社会教育や文化・スポーツ行政にも丁寧な記述がなされている。社会教育は、近年のテキストでは生涯学習として記述され、独立した章を起こすことは少ないのだが、本書は第9章「生涯学習の提唱と展開」と第10章「社会教育の役割と発展」として、それぞれ独立した章によって記述されている。とりわけ、諸外国と比較して、日本(の教育関係者)の生涯学習の概念は、職業能力開発の観点が希薄である。本書で著者は、この点を次のように明確に指摘している(338頁)。
「社会教育は教育委員会の所掌事務であるとの観念が強いが、生涯学習には、それを越えて職業能力の啓発……など、教育委員会以外の行政機関の所掌に係るものがあることによる。」

 以上のように、本書はこれまでの教育行政のテキストの枠組みを超えている部分がある。文部省内で、いわゆる学校教育以外の部局も経験した著者の、こうした広範な領域に対する教育行政に対する熱い思いが、本書には凝縮されているといえる。また、補説をトピック的に講義で紹介してみるものおもしろいであろう。是非、丁寧に読み進めることをお勧めしたい。

『臨時教育審議会-その提言と教育改革の展開-』(本体価格5,600円)  日本図書センター刊 好評発売中

『図解問答教育法規・教育行政入門』(本体価格3,200円) 好評発売中 日本図書センター刊 好評発売中

« 最近買い込んだ本 | トップページ | クロカル超人が行く 9 京都・祇園 フラッシュバック ① »

コメント

コメントを書く

コメントは記事投稿者が公開するまで表示されません。

(ウェブ上には掲載しません)

トラックバック


この記事へのトラックバック一覧です: 超人の面白読書 6 渡部 蓊著「教育行政」:

« 最近買い込んだ本 | トップページ | クロカル超人が行く 9 京都・祇園 フラッシュバック ① »

2020年8月
            1
2 3 4 5 6 7 8
9 10 11 12 13 14 15
16 17 18 19 20 21 22
23 24 25 26 27 28 29
30 31