書評

超人の面白読書 129 木村 誠著『大学大倒産時代』 8

さて、そろそろノーベル賞が発表される時期だが、日本のノーベル賞受賞の科学者が異口同音に話しているのは、このまま行けば日本はノーベル賞受賞者ゼロがずっと続くと嘆いている。なぜなら、科学の基礎研究にかける研究費があまりにも少なすぎるからだそうだ。一方、防衛費や防衛省の科研費がハネ上がっている現状をどうみるか。教育や研究にもっともっと予算を投入すべきだ。また、新自由主義の副産物で格差が広がり、経済的理由でまともに大学に行けない人も増えている。こちらも小手先だけではない手厚い救済制度が必要だろう。でないとアメリカみたいに大学は卒業したはいいが、奨学金返済で苦しむ羽目に陥ってしまいかねない。
本書の主眼は、様変わりしている大学の姿を追って、これから大学生になる人たちに確かなナビを提供することである。今大学は国公私立と問わず生き延びるのに必死だ。だからこそユニークな学部や学科が出来つつあるが、その中には理解に苦しむものも散見される。キーワードは“共創”とか。この際大学とはどんなところか再考してみてはどうだろう。専門学校に益々近づいた格好のような気が筆者にはするがー。それと統轄する文科省にも制度設計などに問題がある。アメとムチの使い分けが容赦ない。大学は企業と性格が違う。すべて目に見える成果主義で良いのか、要は質のいい人材育成と社会貢献ができる高水準の学問だろうか。そのためには時間がかかる。目先を追うだけではなく、長い地道な道程が必要だろう。グローバル、グローバル、いや、グローカリズム、英語がすべてではないので品のある母国語もしっかり大学で身につけてほしいものだ。仕事柄日本の大学を長らく訪ねた者の一人として、大学は強かに生き延びてほしい。
これでこの著者のものは『危ない私立大学 残る私立大学』に続き2冊目、手軽な新書版で読みやすかった。

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超人の面白読書 129 木村 誠著『大学大倒産時代』 7

以上が小見出しであぶり出したすべて。著者は「あとがき」で大学情報関係雑誌に長年籍を置いた立場から大学の生き残りのヒントを提案しているが、やはり地方の大学の活性化がポイントのようだ。何せ来年から本格的な少子化の波がどっと押し寄せれば、どこかにしわ寄せが来るのは目に見えている。すでに潰れている私立大学が出ておりまた、有名女子私立短大も募集停止を打ち出している。国立大学は予算減、役割分担、改編に晒され、地方私大の公立化現象も起こるなど大学を取り巻く環境がまさに激変しているのだ。こうなると負の連鎖が起こるかも知れない。そういった時代状況の中で、必死に取り組んでいる大学の姿が浮かび上がってくる。これは著者の長年の取材の賜物だろう。それに説得力を持たせているのが最新データだ。これは門外漢の筆者にも大いに参考になる。そもそも18才人口が減少しているのに拘わらず、大学数は増加していること自体が変で、定員割れを起こすのも無理ないこと。外国からの留学生を積極的に受け入れているが国との関係が良くないと留学生数も減少する。アジア、特に中国や韓国を例に取れば一目瞭然、現に関西の中堅大学では留学生が激変したそうだ。しかし、筆者は大学の未来について悲観論を呈しているのではなく、高等教育機関の説得力のある交通整理が必要だと言っているのだ。戦前の教育の反省から戦後すぐGHQの要請で当時のいろいろな立場の知識人たちが教育改革について幅広い議論を行い、それが戦後教育の根幹をなしている。6・3・3制の導入をはじめ高等教育機関にも及んだ大改革である。それから70年以上が経ち社会とのミスマッチが目立ち制度疲労が露呈している。(続く)

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超人の面白読書 129 木村 誠著『大学大倒産時代』 6

【第5章】高偏差値の一橋大がなぜ低評価なのか(文科省の再ミッション・3つの枠組み: 1.世界最高水準の教育研究 2.特定分野での世界的な教育研究 3.地域活性化の中核) 「世界最高水準の教育研究」とはどのように測るのか アメリカは大リーグ型、日本は甲子園型(大リーグ型→大リーグ的な金銭によるスカウト合戦 甲子園型→チームトレーニングで甲子園を目指す) 東京大学と経団連の「蜜月すぎる関係」が始まった 旧帝大系も地元の地域社会で足場を築かなければならない (東北大学経済学部の3年編入試験で神田外語学院から例年1~2名の合格者を出している!) 真価を発揮した名古屋と京都、追う大阪、九州 広島、金沢、千葉など利用有力大学の改革が意図するもの 入試の多様化は人材の多様化につながるのか

【第6章】64%の国立大がなぜ「地域活性化の中核」を選んだのか 教育系の国立単科大の軽視は文系軽視論と同じ文脈 強力に進めるべきCOC+プロジェクト(COC=地、知の拠点整備事業) ユニークな国立大学新学部が続々登場 地域科学では先駆者の岐阜大学(筆者は岐阜大学を訪ねたときに、旧教養学部を改編して新しい名称の書かれた看板の前で少し立ち止まって考えたものだ。地域科学部とはどういう学部かと。そうだったのか、アメリカの大学に肖っていたー) 学内改革と他大学との連携で古い殻を破る すべての国立大学が懸念する若手教員層の先細り

【第7章】共学化して成功した武蔵野大学 女子の選択ー第3の働き方 女子高校生の職業意識も変わりつつある 女子大志願者数トップの日本女子大学はスケールメリットを狙う 武庫川女子大学は、女子高生のニーズに敏感 津田塾大学は総合職キャリアに的を絞る 昭和女子大学は、お嬢様学校から即戦力育成へ 関西の女子大学は安定した強みを発揮 相模女子大学のユニークな地域貢献活動 福岡女子大学は、国際性で女子大ランキング2位 資格で勝負する女子栄養大学の強み 資格取得だけにこだわらないキャリアも育てる (続く)


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超人の面白読書 129 木村 誠著『大学大倒産時代』 5

【第3章】強気の定員増を申請した東の明治大学と西の近畿大 1990年代とは様変わりの各大学の姿勢 医学部の有無が左右する科研費 「成成明國武」は人気急上昇中 中堅私立大学地方キャンパスの存在意義 苫小牧駒沢大学の「身売り」に見る地方系列大学の悲哀 一躍注目された京都産業大学の「幻の獣医学部」 警察官や消防官が多い中堅私立大の就職状況

【第4章】 自治体お抱えの地方私立大学が大量出現 地方私立大の「逃げ恥」作戦 公私協力方式の私立大でも公立化に挑戦 公立化は良いことばかりではない 公立大学のDNAは地域貢献 地域活性化にパワーを発揮している地方私立大   (続く)

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超人の面白読書 129 木村 誠著『大学大倒産時代』 4

本書は「大学大倒産時代」の実態を明かし、大学の未来を探る目的で書かれた大学“入口”ナビ本。大学の現状をデータ(図表は大小24)を駆使して大学最新情報を伝えている。筆者的には先に目次を拾ったので、あとは小見出しを追えば大体のあらましが分かる。
【はじめに】大学大倒産時代は目前に迫っている

【序章】文系主体の私大がまず危機に陥る 大学倒産は政府の展望なき政策が引き起こす(〈図表3〉大学数の変化によれば、2016年現在国立大学86校、公立大学91校、私立大学600校の計777校)
軍事研究に手を出す工学系研究者 天下り問題に見る、文科省と国立大学の危うい関係 私立大学は生き残るのために天下りを積極利用

【第1章】大学が消滅すれば地方も沈没 東京以外の大学の40%が定員割れで大学倒産も続出か 関西の産近甲龍の科研費伸び率が目立つ 特別補助の多い私立大に注目 定員超過を定員増申請によって解消 国立大学にもある定員超過 定員割れを定員減で逃げるのは一時しのぎ 中退率2%のライン 専任教員の割合が少ない大学は心配だ 一般入試の比率が低いと、2020年入試改革に直撃される 倒産の大波は全大学に及ぶ

【第2章】東京の15私立大学だけで私大総志願者の3割近くを占める 慶応上智は受験生の質を重視か 合格者数上位の高校名でわかる大学学部別受験生事情 「大学ランキング」に見る大学の強みと弱み 科研費と司法試験実績は? 就職率はどうか? 早慶文系は10年前よりも学費ダウン(〈図表12〉主要私立大学の初年度納付金・最新年度の例によれば、早稲田大社会科学部118万円、国際教養学部159万円、慶応大総合政策学部154万円、看護医療学部181万円、上智大理工学部175万円、外国語学部126万円、明治大法学部129万円、農学部162万円、中央大総合政策学部155万円、法政大法学部126万円、関西大総合情報学部150万円、同志社大経済学部119万円、立命館大生命科学部172万円) 大学こそ人間形成の原点 関西圏の勢力図は? (続く)


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超人の面白読書 129 木村 誠著『大学大倒産時代』 3

少子化や国立大学運営費交付金削減をもろに受けている国立大学、特に教育学部の改編劇が、2年前の“通達”からさらに加速しているという記事を毎日新聞が一昨日書いていたばかりで、今度は今年の司法試験合格者が発表され上位ランキングが示されていた。面白いことに司法試験合格者は法科大学院出身者ではなく、「予備試験」の通過者が圧倒的に多かったことだ。そして、法科大学院を巡っては、廃止や募集停止が相次いでいるという。立教大や青山学院大などは来年度から募集停止すると発表、法科大学院の凋落は政府の制度設計の甘さを如実に示しているようだ。法科大学院志願者が2004年には84,000人であったのに対し、13年後の今年度は8,159人まで激減している(2017年9月13日付『毎日新聞』朝刊)驚きである。高額の授業料を払って不合格ではやりきれないはずだ。またしても考えてしまう高等教育機関の問題。 本題の書評に戻ろう。(続く)

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超人の面白読書 129 木村 誠著『大学大倒産時代』 2

目次

はじめに

序 章 なぜ「大学大倒産時代」なのか

第1章 データで読み解く大学教育の現状

第2章 志願者を囲い込む有名私大
早慶上智とMARCH、そして関関同立の分かれ道

第3章 明暗を分ける都会派中堅私大
成成明國武、日東駒専、大東亜帝国、産近甲龍の
「 崖っぷち作戦」

第4章 活路を切り開くローカル中規模大学

第5章 有力国立大学も格差が拡大

第6章 冬の時代の地方国立大学のチャレンジ

第7章 不要論まで出た女子大はどう生き残るのか

おわりに

以上が本書の目次だが、タイトルはいかにも大学が今直ぐ数多く潰れてしまうような感じを受け仰々しい。新書版222頁、読みやすく最新のデータも入っているので理解しやすい。(続く)

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超人の面白読書 129 木村 誠著『大学大倒産時代』

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津田塾大や東京女子大など有名女子大の凋落が著しいと伝えた今朝のネットニュース。何日か前にイギリスのTHE(The Times Higher Education)が今年の世界大学ランキングを発表したが東大が順位を落としたとのニュースもあった。
そんな中、木村 誠著『大学大倒産時代 都会で消える大学、地方で伸びる大学』を読んだ。『危ない私立大学 残る私立大学』(既読)など一連の大学進学の傾向と対策ものの一つ。『学研進学情報』で活躍中の著者の最新刊。筆者は時々この手の本をゲットして最近の大学情報を更新している。この本で最近の大学新興勢力グループの名称がMARCHだと初めて知った。明治大、青山学院大、立教大、中央大、法政大の頭文字から取っている。また、日東駒専は日本大、東洋大、駒沢大、専修大の頭文字だと前から知ってはいたが、産近甲龍が京都産業大、近畿大、甲南大、龍谷大の頭文字羅列は初。いずれも早慶上智、関関同立の後を追う私立大学群である。(続く)


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超人の面白読書 128  雑誌『うえいぶ』第50号 終刊号(2017年3月31日発行) 10

ここまで書いてきてふとタイトルを読み返した。確かにこの関内幸介氏のエッセイのタイトルは、夏井川のほとりにて―“本郷界隈のことども”―と名付けられている。草野心平家だけの人たちだけではなく、草野家とゆかりのある群像でもあったのだ!それは前にも書いたが、extraordinary family history 傑出した人物の家族史、個性豊かな人たちの物語だろう。否、家族の栄枯盛衰の物語としても読める。江戸後期から追った主に草野心平家には、病気で早死にした人たちなど不幸も相当あってまた、子宝に恵まれず養子縁組をして家督を守ってきた。その血筋の不思議さ、怖さを思わずにはいられない。このファミリーヒステリーには当時の磐城中学を中退している人たちが心平をはじめ何人かいる。一つの枠には収まり切れない、個性豊かで血気盛んな人たちもいたのだ。それにしてもと思う、血筋の不思議さや育てられ方の不思議。草野心平の詩にはこの体験が反映しているようで、中国での詩作とグローバルな詩的世界、アメリカの詩の影響、初期詩集、蛙に託した詩、宇宙観、汎神論、アナーキズム等々の根底には存在のいたずら、虚無感、寂寥感があったように筆者には思われる。また、エネルギッシュで生活力が旺盛(『火の車』や『学校』を営んで生活費を稼いでいたがずっと貧乏だった。『学校』は筆者の20代の頃に何度か訪ねてみようと思ったが実現しないままだった。3年ほど前にようやく新宿ゴールデン街の店を訪ねたが、場所は同じでも店の名前や経営者が替わっていた。実は『学校』は大分前に草野心平のファンだった女性が引き継ぎ、新宿ゴールデン街に移ってしばらく営業していたがその女性も高齢で今は人に譲って引退。現在の店の女性経営者の特別な計らいで筆者は、元『学校』店主と電話で話すことができた。店の看板は草野新平記念館に寄贈したと店主が電話の向こうで語っていた。新宿ゴールデン街の入口の案内板には『学校』の名前だけが残されている)、詩人や作家との交流の広さ、面倒見の良さ、一言でいえば人間的魅力に溢れ、宮澤賢治をはじめ村山槐多や吉野せいなどを発掘した名編集者でありコーディネーターでもあった。
この関内幸介氏のエッセイを注意深く読めばもの悲しいトーンが流れていることも感知できよう。草野心平については今まで数多く書かれてきた。新たな視座で取り組めば生誕120年が草野心平詩にとって大きなエポックになるだろう。その意味でもこのエッセイにある第一級資料の草野氏文書の公開を俟ちたい。

タイトルの本郷界隈は、JR磐越東線「小川郷」駅近くの、福島県いわき市上小川・本郷公民館周辺。貴重な写真も何枚か挿入されている。

追記 草野心平の前橋時代の写真。ここには珍しく心平の奥さんも写っている。なかなかの美人である。若い伊藤信吉もいる。88年前の昭和4年の写真。

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前橋文学館特別企画展
風邪には風ー草野心平の前橋時代
萩原朔太郎記念 水と緑と詩のまち前橋文学館 2011年11月
発行より

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超人の面白読書 128 雑誌『うえいぶ』第50号 終刊号(2017年3月31日発行) 9

ここで執筆者関内幸介氏のエッセイに登場した草野心平家に関係する主な人物名を筆者流に挙げてみよう。そうすれば具体的に人物関係がよりたやすく理解できるはずだ。ついでに当時の名前の付け方の特徴も見出せる。小見出し「紋十郎家」。草野紋十郎、喜佐衛門、源蔵、政五郎、富蔵、興兵衛、林之輔、やす、はま。小見出し「登と欽一郎」。白石長兵衛、キヨ、登(みのる)、吉田一民、さだ、モリ、ヨシ、欽一郎、タカ、コト、豊、鷹雄、エイ、信男、悟郎、武子、萬次郎、草野晴次郎、シゲル、政右衛門、白井菊造、渡邊己之吉、草野正壽。小見出し「佐平太と遠平」。佐藤幸助(後の白井佐平太)、常松(後の白井遠平)、酒井興兵衛、柴原の鈴木才兵衛門、子眞山人、鶴、きさ、草野米吉、根本武郎。小見出し「戊辰戦争と奥羽出張病院」。関寛斎、小野亀七、関内半兵衛、本郷の庄兵衛、兵吉、新吉、ヒサ、正太郎、甚三郎。小見出し「宮本壽硯」。宮本秀英、室桜関。小見出し「牧牛共立社」。大久保利通、大悲山重一、伊藤正太郎、緑川萬次郎。小見出し「天文一揆と草野興八」。草野興八。小見出し「高蔵・馨・心平」。高蔵、トメ。小見出し「櫛田民蔵とマルクス學」。櫛田民蔵。小見出し「眞崎甚三郎」。眞崎甚三郎。小見出し「草野氏文書」。仁太郎。小見出し「生と死と」。幸平、セキ、庄平、アサ、半平。(続く)

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