書評

2019/06/25

超人の面白読書 138 川勝平太著『富国有徳論』 2

目次

提言 富国有徳の国づくり
第1部 富国の士民
1 平成の“米騒動”と勤勉の徳
2 西洋の資本主義と東洋の資本主義
3 富の再定義――マルクスからラスキンへ
4 市民から士民へ
第2部 対談
1 鎖国と天皇――日中韓「近代化」の検証(毛利敏彦×川勝平太)
2 日本経済はどこから来てどこへ行くのか(速水 融×川勝平太)
3 東西文明システムと殖産融合― 一国資本主義から文明論へ(角山 榮×川勝平太)
4 シュムペーターを超えて(岩井克人×川勝平太)
第3部 今西錦司と宮沢賢治

1 心の書―今西錦司『生物の世界』今西錦司翁との一期一会
2 今西自然学の可能性
4 今西錦司と宮沢賢治
5 宮沢賢治―「地球時代」の先駆者
あとがき

追記   一通り読んで大分経つが、コメントする前にこの本が約四半世紀前の1995年に出版された本に注目したい。バブルが弾けてから少し経った時期に相当するのだ。それとその前に刊行された『日本文明と近代西洋「鎖国」再考』(NHKブックス 1991年初版)では、イギリスとインドの具体的な例を取り上げて、有名な“イースタン・インパクト(東洋の衝撃)”について書かれている。いやー、何十年か振りで書店で再購入した。前に購入した本は手元にない。現物が書店にあることが不思議なくらい。普通なら絶版だが、いわゆるロングセラーものだ。購入した本は奥付けに2015年12月、19版とある。いろんな意味でインパクトのある本だ(2019.7.9   記)。

追記2 『日本文明と近代西洋「鎖国」再考』(NHKブックス 1995年19版)の目次。

序  アイデンティティーの探求
グローバルな経済史をもとめて  経済学者の自然観   本書の立場と構成   社会科学の個性
第1部 日本と西洋の併行的「脱亜」―アジア文明圏からな自立
1 鎖国と近代世界システムの連関
木綿の西方伝播とイギリス産業革命
木綿の東方伝播と日本産業革命
「脱亜」の2つの形
第2部「経済と文化」の構想
1  唯物史観と近代日本
2  今西「自然学」への注目
3  文化・物産複合論
4 日本文明の形

(2019.7.15 記)

2019/05/17

超人の面白読書 137 出版社のPR誌をよみくらべる 11

『ちくま』を読了したあと、『一冊の本』を読み始めたら格段と読みやすくなった。やはりフォントやサイズは重要だ。これは何冊かよみくらべることで―ここではたった3冊だが―得られた結果だろう。PR誌3冊目の『一冊の本』も読み終えた。島薗進の「巻頭随筆――一冊の本  人は「喪失」とどうつきあってきたのか?――『ともに悲嘆をいきる――グリーフケアの文化と歴史』の射程」は、医学から宗教学に転じた学者の一文だが、東日本大震災と福島原発事故後に死と向き合うこと、ともに悲嘆(グリーフ)を生きることの意義を垣根を超えた新たな宗教者たちのグリーフケアを紹介しながら綴る。偶然にもこの記事を読み終えた日の夕刊に同じ執筆者の記事が掲載されていた(毎日新聞5月7日夕刊「特集ワイド」)。今注目の人かも。今回から始まった爆笑問題の太田光の「芸人人語 第1回  言葉」。父親の暴力で小学2年の女の子が死亡した事件を取り上げ、言葉で言い表せない部分、論理的に説明できない残虐性が潜んでいると書くが、「闇」の部分の解明が重要でまた、社会強いていえば近隣、学校側の気づきも必須。すでに黄色信号をあげていたというではないか。対応のまずさや遅れが悲惨な結果を招いた結果だろう。簑原俊洋の「アメリカから見た戦後日米関係史 7 パクス・アメリカーナの時代――アメリカの庇護下で国際社会への復帰を果たす日本」の記事は、戦後の日米関係を追った連載ものだ。1~6までまとめて読もうと該当のバックナンバーを揃えている。この手のものはいろいろと書かれてきてはいるが、アメリカからの視点がユニークなところ。アメリカカリフォルニア生まれで五百頭眞の弟子らしい。落合恵子の「明るい覚悟」では中也が出て来る、なぜかほっとさせてくれる。山田清機の「寿町のひとびと 32」は、バプテスト横浜教会とある牧師の話。武田砂鉄、群ようことエッセイが続く。岡本裕一朗の「世界を知るための思考実験 22」は、今回は不倫を取り上げ、サルトルとボーボワールの関係を例に論じている。お馴染みの佐藤優の「混沌とした時代のはじまり」は、こどもの虐待救出の話。前後するが、作家鴻上尚文(筆者はNHKの番組「Cool Japan」でお馴染み)の「ほがらかな人生相談 息苦しい「世間」を楽に生きる処方箋 第9回」が、意外と面白かった。発想の転換がいかに人を明るくさせるか考えさせられた。夢枕  獏の小説は少し興味がもてるかも知れないが、菊地秀行の小説にはお手上げだ。この類いの小説は読んだことがないので批評外、致し方ない。それにしてもカタカナ語の名前の覚えづらいこと!改めて 『一冊の本』(2019年4月号)を隅から隅まで読んでみた感想は、盛り過ぎで腹一杯それでいて読後感が意外とウスいということだ。やはり“躍動感”がほしい。蛇足だが、最後のページの広告に雑誌『JOURNALISM』3月号の特集「福島を見つめる、伝える」を見つけて書店に走った。幸い手に入れることができて、今筆者の手元にある。PR誌3点のうち小説を掲載していたのは『一冊の本』だけだ。

さて、『図書』、『ちくま』それに『一冊の本』を休み休み約1ヶ月かけて朝の通勤電車の中で読んできたわけだが、新書本丸々一冊読むことにも匹敵する分量で、エッセイや小論が中心しかもテーマは多種多様、雑誌編集者は、書き手の魅力を充分に引き出すことに成功していただろうか。筆者としては何点か興味を引いたものもあった。やがてこの中から書籍化されて世に出るものも。ネットの時代にあってこのような雑誌の役割もまだまだ需要があるはずだ。また、多種多様な文章を味わうことで感度を磨き、教養の幅を広げることに一役買ってきたと思うのだ。そして忘れてならないのは、PR誌は自社の書籍紹介がその役割だということだ。だから安価で提供しているのだ。編集・製作コストはそれなりにかかっているはずだ。これからもインパクトのある誌面づくりを期待したい。このコラムを書くきっかけは新聞の紙面批評だった。筆者にとってはまだまだこの手の雑誌に目が離せない。果たしてこの試みは意義があったか、あるいは大いなる時間のムダだったか――。

このコラムを終えるにあたり再度執筆陣に目を通した。新たに片山杜秀、佐伯泰英(今や売れっ子作家。辛苦を舐めた重いテーマを書いていたが、だからこそ今があるという人間の証明みたいなもの。書き残したかったのかも)、島薗進を新たに発見、勉強不足を恥じているが学ばせてもらった。休み休み読んでいたらすでに5月号が手元に届いていた!

 

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2019/05/09

超人の面白読書 137 出版社のPR誌をよみくらべる 10

PR誌『ちくま』は、興味を引いたところの記事から読んだ。鹿島茂の連載、「吉本隆明 2019」が前号から始まって2回目。鹿島流読み解き、解きほぐし、吉本隆明論だ。難解な吉本の重要なキーワードを一つひとつ解き明かしながら『共同幻想論』に迫る。何度も挫折した体験をもつ筆者には有難い企画だ。読み応えがある。鹿島茂はこの雑誌に以前にも「神保町書肆街考」や『一冊の本』に「ドーダの人、小林秀雄」のタイトルで小林秀雄論を連載していて、筆者は両方読んでいたのだ。注目して読んでいた戸田山和久「ひっこめ教養」がついに最終回だ。題して「教養くん、不死鳥のごとく蘇るの巻」。特に大学の教養教育ついて示唆に富むエッセイを残した。いわゆる「教養」本には筒井清忠や竹内洋のものがあるが。猪木武徳の「地霊を訪ねる 4 津山から柵原鉱山、智頭宿をぬけて岩井温泉へ」を読んだ。特に津山の洋学資料館を訪ねた件、コーヒーに珈琲を当てたのは洋学者宇田川榕庵だったことをこのエッセイで知った。文芸評論家斎藤美奈子の長期連載ものは、テーマに関わる書籍を毎回3冊を取り上げて論じている。「世の中ラボ」、今回は108回目、住民投票にはどんな意味があるのかがタイトル。巻原原発、吉野川可動堰、岩国米軍基地の住民投票を実現させた様子を紹介しコメントしている。住民投票の意義を示すヒントが。プレディみかこはイギリス在住のライターらしく、人と人を結ぶほのぼの愛犬の話だ。次にノンフィクション作家の井上理律子の〈絶滅危惧個人商店 5〉「吉祥寺ハモニカ横丁の「ウェスタン」」では老舗の洋品店の店主とジーンズ談義に花咲かせ、ジーンズやデムニの由来を書いていておもしろい。いつもながら聞き書きを得意とする作家だ。イラスト入りのほしおさなえは異人坂で、谷根千の根津周辺にスポットを当てて書いている。岡田、藤井、安藤、清水のエッセイ、書き手では若い方の部類に入る劇作家の藤田貴大の連載ものは独特な言葉使いで孤島の話。梨木、岸本、穂村、最果、ドミニクとそれぞれが個性的な書きぶりを披露。ここで気づいたことだが、16本のうち連載ものが12本とほとんど〈続きもの〉で構成されているのだ。紙面構成上安定はしているが、切れ味良いスポット的なものがほしい。強いていえば躍動感が足りないような気がする。それにしても字が小さくて読みにくい。書き手17名の平均年齢は54歳だった。意外と若くないことが判明した。そして、とてもユニークな西村ツチカ(男性のイラストレーター!)のちくまさん vol.28 壁活用ガールの8コマ漫画へ戻った。さて、いよいよ最後は『一冊の本』の読み解きだ。

2019/04/25

超人の面白読書 137 出版社のPR誌をよみくらべる 9

編集者あとがきの「こぼればなし」は、前号に続きドイツ出版界事情。そのコラムによると、ドイツには出版社が現在1800社、取次企業80社、主要書店3000店があるという。ライフスタイルの変化で読書する時間が持てないことが本を買わない主な理由らしいが、潜在的読者も数多くいることも、ドイツ図書館連盟(BDB)の2016年のアンケート調査でわかったと。本の価格は日本の1.5倍、図書館の年間利用料は20ユーロで(フランクフルトの場合)、延滞料は1週間につき2.5ユーロかかるらしい。図書館の利用が増えれば予算が増えるので読書推進運動は重要な仕事となっている由。翻って日本の出版界、今アマゾンなどのネットショップ大手が弱者に不利な取引をしていないか問題になっているが、ざっくりいって縮んでいる。雑誌や書籍のトータルの売上高がピーク時より半減していることはもちろんのこと、書店の廃業が止まらない。ネットの出現でライフスタイルの変化が大きいといってしまえばそれまでだが、楽しみ方が多様化したことが大きいような気がする。何せ高校の国語の教科書から文学鑑賞が外され契約書の読み方などが導入される国柄だ。筆者なども教科書に載っていた文学作品にはさほど関心がなかった。理由は教科書に載っていたからかも。一見矛盾しているようだが、要は毛嫌いしていたのだ。体裁のところで書き忘れていたことがここに来て判明した。そう、『図書』は3段組だった!一段大体400字弱で400字詰め原稿用紙約1枚分に相当する。1頁約1200字弱、原稿用紙で約3枚分である。

超人の面白読書 137 出版社のPR誌をよみくらべる 8

さて、本題に戻して『図書』、『ちくま』、『一冊の本』3誌読みくらべの続きだ。『図書』の執筆者15名、表紙裏面エッセイそれに「こぼればなし」とすべて読んでみた。文学関係の長短含めたエッセイものが8本と断トツで、意外と少なかったのが絵画・芸術関係のエッセイである。作曲家武満徹が夢に出てきた話を語る表紙裏面の司修、巻頭エッセイで北斎「富獄三十六景」は、「感覚を解放する力の発見である」と横尾忠則、指揮者山本直純の回想を楽しく綴るさだまさしのエッセイくらいだ。際立っていたのは、料理研究家辰巳芳子の筍の話。まさしく旬の食材を取り上げ、文章も春の小川のように流麗で素敵なおばちゃまという感じだ。御年94才らしい。そう、その昔おばちゃまには元帝人社長夫人の大屋政子、映画評論家の小森和子、料理評論家の岸朝子などがいてテレビのバラエティー番組を賑わしていたっけ。「口説きのテクニック」のエッセイの持ち主の小説家高橋三千綱には、ある時代スポーツ小説みたいなジャンルを開拓した記憶が筆者にはあるが、この人のエッセイには何か哀しみの通低音が響いていてやるせない。やはり犬もありか――。ムーミン谷は、もはやフィンランドのスウェーデン語系童話作家トーベ・ヤンソンの北欧のおとぎ話の特権ではなくなり、埼玉県飯能市にテーマパークとしてこの3月に出現し人気らしいが(似たような地形が飯能市にあるらしい)、フランス哲学が専門の聖心女子大学の冨原眞弓(北欧文学の翻訳家でもある。多分語学が堪能なのかも)の北欧文化や文学などを扱った“ミンネのかけら ”の連載ものも毎回楽しく読ませてもらっている。トーベ・ヤンソンが青森産の綿入れを着こなしていた、いいね、この話。今号『図書』の出色は松井茂記の「なぜカナダは大麻を合法化したのか」である。知らなんだ、今時のカナダ事情!2019年1月に発見され“注釈”を施した漱石の通信簿、魯迅の仙台医専のノート写し、アガサ・クリスティーに関するエピソード、植物、古代文学、モダン語のエッセイ、どれもこれも退屈させない。スキップしないで良かった。得した気分。植物、古代文学には多少退屈したが、こういったものに慣れていないのだ。風土記はオモシロイと思う。すんなりと出社途中の電車で読めた。で、気がついた、岩波カルチャーネットワーク人が多いか、若手の書き手が少ない。明るくエネルギッシュな言葉の迸りがほしいところだ。少なくとも他の2誌にはある。

2019/04/19

超人の面白読書 137 出版社のPR誌をよみくらべる 7

一応雑誌の外側を分析できたところで、少し👀を外に向けてみよう。PR誌といえば、その昔エッソスタンダード石油の『エナジー』、サントリーの『洋酒天国』などが有名で、最近では焼酎「いいちこ」の三和酒類のPR誌『iichiko』が面白かった。もちろんこの他にたくさんの有名なPR誌は存在するが、ここでは一つひとつ言及する場ではないので割愛する。『エナジー』は今でも筆者の書棚の隅にあるはずで、また、確か『洋酒天国』は銀座の三笠会館地下のバーに行けば見れるはずである。『iichiko』は特集によっては昔大分にある会社から取り寄せていた。デザインや文章に時代の息吹を感じるオモシロみがあった。これらの雑誌は企業のPR誌だから、話を元に戻して今度は出版社と密接な関係にある書店のPR誌に少しばかり言及してみたい。後発だが頑張っている雑誌にジュンク堂書店の『書標』があるが、創刊当初から知っている雑誌で本の書評が中心でなかなかよく出来ている。そんな中、大手書店、紀伊國屋書店出版部の『SCRIPTA』を偶然に手にした。2018年冬号、通巻50号(A5判・60頁)のもの。定期的に揃えておこうと何回か試みたりしたりしているのだが途中で途絶えてしまう。無料なのは良いが発行時期に大学の売店や紀伊國屋書店にその都度取りに行かなければならない。少し面倒でつい忘れがちになるのだ。それはさておき、今回の号には森まゆみの「30年後の「谷根千」9  第8号、団子坂特集」が5頁にわたって掲載されておりおもしろく、一気に読み終えた。団子坂聞きがたり、今昔といったところか。この辺は筆者にとっても思い出深い場所でいろんな場面が目に浮かぶ。森まゆみも書いているように、吉本隆明が自転車を引いて団子坂を登っていた。筆者がよく目撃したのは、ズボンのバンドに手拭いをぶら下げながら自転車を押している姿だった。また、能楽師安田登の「野の古典18――ホームレス賢者のように」中の芭蕉の俳句に言及しているところに興味津々。斎藤美奈子は執筆者の常連、よく書いていると感心しきりだ。執筆者は全部で9名、長く続いている連載ものが目立つ。

2019/04/18

超人の面白読書 137 出版社のPR誌をよみくらべる 6

次に広告関係。裏表紙を覗いてみよう。『図書』は公益財団法人日本バレー協会の広告。由緒あるバレー協会の活動よろしくと、黒が目立つ。『ちくま』は河出書房新社の書籍広告だ。平成最後の衝撃小説とやや大袈裟なキャッチコピーの、赤坂真理著『箱の中の天皇』。『一冊の本』の広告はひのきの家を讃えるサイエンスホーム。抽選でひのきの柱プレゼントだと。『図書』と『一冊の本』の裏表紙の広告は、直接出版とは関係ないものだ。ついでに裏表紙の裏面は『図書』が、法政大学出版局、北海道大学出版会、ヨベル、新教出版社、『ちくま』がみすず書房、ミネルヴァ、文藝春秋、吉川弘文館、『一冊の本』が文遊社一社のみでユニーク。新学期の時期としては各社とも地味だ。『図書』の自社広告は33頁、『ちくま』16頁、『一冊の本』が8頁で『図書』が断トツに多い。頁内のタテ3分の1の広告では『図書』が3本、『ちくま』が7本、『一冊の本』が11本の順で『一冊の本』が一番多い。しかも『一冊の本』は表紙裏面に作品社、平凡社、吉川弘文館、勉誠出版の4本の書籍広告を載せている。インパクトのある広告は少ないようだ。無難におさめた感じだ。この手の広告は発行部数や社の方針によって違うが、1本10万円以上とか。ここで気づいたことだが、『一冊の本』が他の2誌と比べて頁数も多いが広告本数も多いのだ。事業にかける熱量が違うのだろう。それとも広告もしっかりやらないと維持できないということなのか。少しはゆったり感もほしいところだ。岩波朝日文化それに筑摩を加えて典型的な硬派出版社(揶揄されることも)のものを見ていくと、『図書』に掲載された書籍の数が圧倒的に多いのがわかる。ここで読者は、岩波書店の出版物の近刊、新刊、既刊、重版、品切などについての情報が得られる。また、一瞥して最新の出版傾向が会得できるのだ。それにしても相変わらず硬い本が並んでいる。硬い本が売れなくなっている昨今だが、これだけ出ているのだからPR誌の役割は益々重要になる。そうそう、出版社は企画力、“岩波文化人”をフル回転しなければならない――。

 

2019/04/16

超人の面白読書 137 出版社のPR誌をよみくらべる 4

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読みやすさの点では『図書』➡『一冊の本』➡『ちくま』の順(『図書』については長年読んでいるので慣れきっているかも)か。字面、活字の大きさでは『ちくま』が一番小さく些か読みづらい。これは情報量の圧縮の問題があるかもしれないが、活字を少し大きくした方が読みやすい。何年か前から活字が少し小さくなった。『図書』、『ちくま』、『一冊の本』、いずれも執筆者数は15名~18名で3誌とも大差はない。執筆者の顔ぶれはそれぞれ下記の通り。

『図書』: 横尾忠則、高橋三千綱、宮  紀子、中島国彦、三宝政美、松井茂記、加藤典洋、片山杜秀、さだまさし、佐伯泰英、辰巳芳子、円満字二郎、三浦佑之、冨原眞弓、山室信一 

『ちくま』: 西村ツチカ、岡田育、藤井誠二、安藤智子、清水良典、斎藤美奈子、藤田貴大、鹿島茂、ブレディみかこ、梨木香歩、戸田山和久、ほしおさなえ、岸本佐知子、井上律子、穂村弘、猪木武徳、最果タヒ、ドミニク・チェン

『一冊の本』: 島薗  進、太田  光、簑原俊洋、和田秀樹、太田直子、鴻上尚史、植木  建、小島慶子、群ようこ、落合恵子、山田清機、武田砂鉄、岡本裕一朗、菊地秀行、夢枕  獏、原  研哉、波多野  光

目次に連ねた執筆者の総数は50名、女性比は 約30%。年齢構成は分からないが若者組から年寄りまでと層は広そう。本はいろんな人たちにアピールしなければ実売に結びつかない。 このなかで筆者が知っている執筆者は24名で約半分。

最初は目次、巻頭記事、あとがき(『図書』のみ。宣伝はあるものの編集子の呟きがいい)、広告、連載ものの続き、単発もので自分のアンテナに感応したものに👀を通すのが筆者流の読み方。ページを行ったり来たりするが、それが楽しくもあり、時として雑誌づくりの裏側を覗けたような、妙な錯覚に陥ることも。

 

 

2019/04/14

超人の面白読書 137 出版社のPR誌をよみくらべる 3 閑話休題 上野千鶴子氏の東大入学式での祝辞

出版社のPR誌の記事を書いている途中で、ネットを覗いていたら東大名誉教授で社会学者の上野千鶴子氏の東大入学式(2019年4月12日)でのユニークな祝辞が話題になっていた。実は筑摩書房のPR誌『ちくま』で彼女が連載していた記事が刺激的だったので、このコラムで参考のため取り上げてみようと考え、調べたら2018年3月に終了していたことが分かった。筆者の記憶の曖昧さを嘆くと同時に、月日の過ぎるのが早いと実感させられたが、また、半年後の9月に『情報生産者になる』というタイトルでちくま新書の一冊として書籍化されたスピードにも驚かされた。筆者は書籍化されたことを知らなかったのだ!それだけ雑誌連載中に評判が良かったことの証左かも。学術論文の書き方について懇切丁寧に書かれているのだ。参考書として大いに役に立つと思う。

さて、3200人の新入生の前で行った上野千鶴子氏の東大入学式でのユニークな祝辞である。前半部分は主にジェンダー的視点の開陳だが、後半部分は今の時代における〈知のあり方〉と〈行動〉を考える上で示唆に富む講演で、言い換えれば、羅針盤のない航海を述べたようなもの。既存の知を吸収するだけに終始せず独創的な知を作り出せ、しかも、自分の強さだけで押しのけて進むのではなく、自分の弱さも知りつつ困っている人たちには手をさしのべて進んでほしい、というメッセージだ。その新聞記事を読むはこちら➡http:http://smart.asahi.com/m/article/ASM4D3JLQM4DUTIL00L.php?ref=kiji_search//smart.asahi.com/m/article/ASM4D3JLQM4DUTIL00L.php?ref=kiji_search 

東京大学のホームページで上野千鶴子の祝辞の全文を読みはこちら➡https://www.u-tokyo.ac.jp/ja/about/president/b_message31_03.html

 

 

 

2019/04/12

超人の面白読書 137 出版社のPR誌をよみくらべる 2

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今回は『図書』、『ちくま』、『一冊の本』の直近の2019年4月号(場合によっては3月号も参照)を取りあげてみたい。この手のものとしては老舗の『図書』があるが、最近は後発ものにも面白いものが出てきている。大昔PR誌作りにほんの少し参画したことがあるが、雑誌のランニングコストがかかりお荷物状態で、終いには休刊(実際には廃刊)に陥った。結局編集者の自己満足で終わってしまうのがオチである。社の新刊既刊の書籍の購買につながるような手短なインパクトのある記事はもちろんのこと、連載ものなど掲載したもののうちいくつかが、書籍化も考慮に入れてペイできるような編集者のコスト意識を含めた用意周到さがないと続かない。そうそう、広告掲載も重要だ。内容が濃い割には安価(PR誌の性格上仕方ないが例外もある。某老舗書店の明治時代から続いている『學鐙』などは価格が乱気流気味だし、ライバルの大手書店のものも休刊したり、復刊しては季刊になったりと四苦八苦しているようにみえる。2誌とも内容はそう悪くない、むしろ前者は風格があり良い味を出している。後者にしても意外な発見があってお得なところも)、いかに成り立たせるか思案のしどころだ。台所事情は分からないが成功しているところは編集方針がしっかりしていてぶれていないということだ。また、販売面では定期講読者を増やすなど不断からの努力を怠らないということだろうか。ネット時代だからこそその存在意義が問われているのだ。

さて、雑誌の外面から。分量、総頁数では『図書』と『ちくま』は64頁、『一冊の本』だけが32頁も多い96頁、断トツの多さだ。価格は3誌とも100円で同じ価格。紙質は『ちくま』、『図書』、『一冊の本』の順の感じ。判型は3誌ともA5判、このサイズは他の出版社、例えば、『未来』、『みすず』、『波』などのPR誌でも同じサイズで、このサイズが大半なのは持ち運びに便利だからかもしれない。

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