北欧映画

超人の面白映画鑑賞 デンマーク映画 ラース・フォン・トリアー監督『メランコリア』

映画『二ンフォマニアックⅠⅡ』を観た翌日偶然にもスカパーで同じラース・フォン・トリアー監督の前作『メランコリア』を観賞。この映画は3年前の作品で、『二ンフォマニアック』とは対照的にセックス描写が一度ぐらいしかなく、全体的なトーンは憂いに満ちて暗いが饒舌。“メランコリア”という惑星に囚われたイカれたコピーライターの妹(キレティン・ダンスト)と生真面目な姉(シャーロット・ゲンスブール)、その姉の夫(キーファー・サザーランド)や息子(キャメロン・スパー)を取り巻く奇妙な人間ドラマ。2部構成で舞台は姉夫婦が経営する由緒ある高級ゴルフ場。結婚式場のゴルフクラブハウスに大分遅刻してやってきた妹がさらに式をぶち壊すイカレた行動を取ったことに、式次第全般を取り仕切る姉が怒りを露わにする。反社会的な母親キャビー(シャーロット・ランプリング)と冗談好きの父親デクスター(ジョン・ハート)、過大評価する新郎マイケル(アレキサンダー・スカルスガルド)、金儲けしか頭にない会社の上司(ステラン・スカルスガルド)と少しおっちょこちょいの上司の甥の新人君ティム(ブラッディ・ユーベット)等々親戚縁者が集う結婚式の披露宴ではよくみえる世間―。そんな宴の中で何度も取り乱す妹に姉が、やがて精神的な病(鬱状態)だと気づき理解しようと努める。
後半は姉夫婦が生活を営む由緒あるゴルフ場が舞台で、妹が訪ねてくるところからストーリーが展開する。今度は前半とは対照的に姉がおかしくなり、妹がシャーマン的な役割を果たしてゆく。天文好きで科学的な姉の夫と叔母の妹を愛してやまない息子ー。“メランコリア”という惑星にとりつかれ地球と接近するとき爆発すると信じ、その実現性に恐れ戦く家族。やがて夫は馬小屋で自殺し、残された姉と息子それに妹の3人が爆発を避けるメイポールのようなシェルターを建てて入る。そのとき“メランコリア”という惑星が爆発したかのように周りが急に明るくなる。この世の終末を思わせるシーンだ。ストーリーの中身や展開についていけないところもあったが、映像がいい、音楽も効果抜群。

【キャスティング】
ジャスティン(コピーライター): キレティン・ダンスト
クレア(ジャスティンの姉): シャルロット・ゲンスブール
マイケル(ジャスティンの夫): アレキサンダー・スカルスガルド
ティム(ジャスティンの会社の若手社員): ブラッディ・ユーベッド
レオ(クレアの息子): キャメロン・スパー
キャビー(ジャスティンの母親): シャーロット・ランプリング
デクスター(ジャスティンの父親 ) : ジョン・ハート
ジャスティンの上司 : ステラン・スカルスガルド
クレアの夫 : キーファー・サザーランド

上映時間135分。

最後のシーンはハッピーエンドを思わせるものだと監督が仄めかせたとか。

追記 デンマーク映画のラース•フォン•トリアー監督の記事を読みたい方は、こちらも参考になるかも。
筆者のコラムのカテゴリー「北欧映画」をクリックして「より以前の記事一覧」から「超人のジャーナリスト•アイ 81 『デンマーク映画特集』2008年5月31日」をさらにクリックして見てください。

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超人の面白映画鑑賞 デンマーク映画 ラース・フォン・トリアー監督『ニンフォマニアックⅠⅡ』

デンマークのテレビドラマ『キングダムⅠⅡ』をWOWOWで観たのは今から16、7年前、それともそれ以前 ? サスペンスドラマで、いつの間にかストリーに引き込まれてしまう妙なスリリングがあった。舞台は王立病院。医師を取り巻く人間ドラマだが、病院内で次々と起こる奇妙な出来事に恐ろしさも加わり、犯人捜しについ拍車がかかった。また、このドラマのもう一つの見どころは、2人の知的障害者の少女が病院内の軒下で出来事の展開を予測するあたり。続編を期待していた筆者だったが、医師役の俳優が死去したことで続編は中止になっていた。
今回新宿武蔵野館で観た映画『ニンフォマニアックⅠ Ⅱ』の監督が、このテレビドラマ『キングダムⅠ Ⅱ』のラース・フォン・トリアーだった!
『ニンフォマニアック Ⅰ Ⅱ』のテーマは女性のセクシュアリティー。ストーリーは“ニンフォマニアック(色情狂)”なジョーという女性の半生を描いたものだが、過激なセックス描写があるものの映像や演技は新鮮かつ重層的。そして過激でショッキング。
映画は2部8章の構成。第1部 1.コンプレートアングラー 2.ジェローム 3.ミセスH 4.せん妄 5.リトル•オルガン•スクール 第2部 1.東方と西方の教会 2.鏡 3.銃、とそれぞれにタイトルが付けられ、ストーリー展開を示唆する。
とある路地裏で殴打され血まみれになって倒れている女性ジョー(シャーロット・ゲンスブール)を通りがかった初老の男性セリグマン(ステラン・スカルスガルド)が助け自分の家に連れ込み、そして彼女の生い立ちを尋ねる。ストーリーは知的でハンサムな初老の男性の質問に女性が答える形式で回想を織り交ぜながら展開する。幼少期の性的な目覚めと物まね的行為、前が5と後が3のセックス(こういうゲームがあるのかが不思議だが)に明け暮れる10代、結婚しても止まらないセックス依存症的でアブノーマルな行為による男性遍歴、離婚、不感症、自己愛と孤独の愛憎連鎖、ついには裏社会まで踏み込み、そこでひょんなことで再会する羽目になった元夫ジェローム(シャイア・ラブーフ)におもっきり仕返され血まみれになる。回想はここで終わり、男性は半生をすべて語った彼女にゆっくりお休みと告げて自分の部屋に戻る。ここで終了かと思いきや、彼は下半身裸で戻り彼女に迫る。これは一体? 観客の常識を裏切った斬新さ。笑っちゃいマンねん。滑稽、コケコッコウである。彼は彼女のエロス的話に魅惑され欲望を剥き出しにされたということかー。しかし、すべてをさらけ出した彼女はそれを拒んだ。ここで映画は終わる。
驚いたことが一つ。第2部でセリグマンがバッハの「ポリフォニー」を説明していたが、筆者はこの言葉を文学用語(複数の独立したパートからなる文学、とりわけ小説の類)として拙い書きものの冒頭に使った。まさかこの映画に出て来るとは。また、推理小説・ホラー小説の先駆的作家のエドガー・アラン・ポーを登場させ、ヌードと重ね合わせた映像美を作り出している。その他セリグマンに語らせる文学(監督好みの?)などややもすると低俗に落ち入りやすい映画(日本でいえば、かつての日活ロマンポルノ映画など)を文学や音楽を導入することで質的転換を図り、特異な映像美を作り出した。高級なポーノグラフィーを観た感じだろうか。

【キャスティング】
ジョー : シャルロット•ゲンスブール
セリグマン : ステラン•スカルスガルド
若いジョー : ステンシー•マーテイン
ジェローム•チリス : シャイア•ラブーフ
ジョ-の父 : クリスチャン•スレター
ミセスH : ユマ•サーマン

上映時間『ニンフォマニアック Ⅰ』 117分 『ニンフォマニアック Ⅱ』 123分。

【写真左下 : この映画のチラシより】

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超人の面白映画観賞 スウェーデン映画『シンプル・シモン』

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アスペルガー症候群は自閉症の一種で興味・意志疎通に特異性がみられる広汎性障害。普通の自閉症とは違って行動にこだわりなどはみられるものの、知的障害や言語障害はないし、IQが高いといわれている。
そんな障害者が主人公のスウェーデン映画を渋谷のユーロスペースで観た。映画の邦訳名は『シンプル・シモン』だが、原題は『I rymden finns inga kanslor』で和訳すれば、宇宙には感情がないという意味だ。
アスペルガー症候群を表明している主人公シモンが大好きな兄サムと日々の葛藤をコメディータッチで描いた映画。
あらすじはこうだ。こだわりを持つ物理とSF好きのシモンは“ロケット”というブリキ缶に閉じこもったまま、母親の必死の呼びかけにも応じない。兄サムが2人にだけ通じる不思議な交信言語で発信すると弟シモンが反応する。兄サムはそんな弟シモンを面倒みれるのは自分しかいないと恋人を含め3人で暮らし始めるが、兄サムの恋人はこだわりが激しすぎる(ある意味では非常識に映って)弟シモンの行動について行けず兄サムと別れてしまう。やがて落ち込んでいる兄サムのために新しい恋人探しにシモンが自ら一役買って奔走するが、兄に自分のルールで折角選んだ女性を気に入ってもらえず、今度は兄のアドバイスに従って性格が正反対の女性イァニファーを探し当て(仕事に行く通勤バスの運転手が有名なフランスのシェフの言葉を持ち出しながら、愛はソースと同じく時間がかるものだと言ったこともしかと聞き入れて)兄が好きになれば弟の自分も好きになるはずと探し当てた女性イェニファーに自分の仕事の様子を見てもらったり彼女の家に呼ばれて遊興する。そこでシモンは強がりで天真爛漫な彼女の意外な一面を見る。そうとは知らず兄サムは何時になっても帰宅しない弟シモンを必死に探し回る。そして、遅く帰宅した弟に対して兄が感情をむき出しにして怒りをぶつける…。その後シモンが仕事仲間に協力してもらい兄のデートを大々的に演出し実行に移す。一生懸命努力したにもかかわらず、兄は乗り気ではなくその表情を見て彼女が一足先に帰ってしまう。そのことで落ち込んでしまったシモンは、また、例の“ロケット”に閉じこもってしまう。兄が再び交信言語を弟に発信、彼女はきっと現れると…。そうこうしているうちに彼女が家に入ってきて例の“ロケット”の“ハッチ“を開けシモンの手に触れる。触れられることに今まで嫌悪感を示していたシモンにある種の感情の変化が現れる。彼女がシモンに恋愛感情を抱きシモン自身を変えてしまったのだ。ハートフルなこのストーリーはここで終わる。感情を持たない人がポップミュージックやいろんな人と触れあうことで頑なに閉ざしていた心の世界を外へ向かって開く。この映画はそういうことを深刻ぶらずにコメディタッチで描いているのが味噌。
アスペルガー症候群も自閉症の一種だが、自閉症を持つ家庭の人々はこの映画に共感し励まされるはず。また、この映画はさらに他人との触れ合いが苦手でこだわりを持つ障害者にもっと理解をとのメッセージも込められているはずだ。日本の映画にもこういった深刻だがユーモラスに描いた映画作品があってもいい。監督は新鋭アンドレアス•エーマン監督。俳優たちの演技も新鮮、難しい役柄をこなしていた。スウェーデンの色彩豊かな風景も魅力の一つ、またポップなミュージックも聴けて面白かった。泣き笑いしてしまうほどユーモアもあり深刻さもちょっぴりあって好感度一杯の映画。新しい世代の人たちの登場だ。
2011年アカデミー賞 外国語映画スウェーデン代表作品。2010年製作。上映時間86分。
午前11時35分の上映でチケットには68の番号が振られていた。これは入場者数を表しているはず、上映前にさっと観客を数えたら80人あまりだった。やはり女性が多かったが。映画終了後にドアから出たら次の午後1時35分上映の観客がすでに待っていた。午前の上映より観客数は多いようだ。
この映画でもそうだが、日常生活では障害者も悪戦苦闘、親・関係者も悪戦苦闘の連続なのだ。

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超人の面白映画鑑賞 リヴ&イングマール ある愛の風景

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渋谷のユーロスペースで『リヴ&イングマール ある愛の風景』を観た。ノルウェー出身の女優りヴ・ウルマンとスウェーデン映画監督の巨匠イングマール・ベルイマンとの個人的な関係を描いたドキュメンタリー映画。
リブ・ウルマンがベルイマンと愛憎劇を繰り広げたスウェーデン・フォール島のベルイマンの自宅でのインタビューそれにベルイマンが彼女に宛てた手紙などから構成されたドキュメンタリー映画で、『仮面 ペルソナ』、『狼の時刻』(劇場未公開作品)、『恥』(劇場未公開作品)、『沈黙の島』(劇場未公開作品)、『叫びとささやき』、『ある結婚の風景』、『秋のソナタ』や『サラバンド』の作品を挿入しながら、監督と女優の関係からパートナーへ、また、愛憎劇の後友人となり、2007年7月のベルイマンの死に際してはいち早く駆けつけて看取った一人として、彼女のベルイマンに対する思いのたけを語りつくしたラブストリー。ここには人間ドラマの究極な姿、尊敬と理解の入り混じった人間の“痛いほどの絆”painful connectionがあった―。有体に言えば、リブ・ウルマンは強い女だったということか。
そう言えば、イプセンの戯曲『人形の家』でノラが家から出で行く最後の有名なシーンも登場(りヴ・ウルマンが演じた舞台のシーン)し、リブ・ウルマンは自分の個人的な体験も踏まえてこのことに言及していた―。

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超人の面白映画鑑賞 イングマール・ベルイマンの初期作品『野いちご』と『処女の泉』余滴

ベルイマン監督の映画『処女の泉』の原作、中世スウェーデン南部のバラード“Per Tyrssons 's daughters in Vänge“の歌詞は次のようだ。

Pehr Tyrssons's daughters in Vänge
The forest was so cold
They slept a sleep too long
While the forest came into leaf
They youngest one woke up first
The forest ...
And so she woke up the others
While the forest...
Then they sat up on their beds.
So they braided each other's locks.
So they put on their silken clothes.
So they went to church.
But when they came to the Vänge hill.
They met three highwaymen
" You either be highwaymen's wives,
Or would you lose your lives?"
"We do not wish to be highwaymen's wives,
We'd rather lose our young lives."
They cut their heads off on a log of birch.
There soon three wells sprung up.
The bodies buried in the mud.
The clothes taken to the village.
When they came to Vänge farm,
Lady Karin met them in the yard
"And would you buy silken shifts,
By nine maidens knitted and stiched?"
"Untie your sacks and let me see,
Perhaps I know all three."
Lady Kalin beat her chest in pain.
And went to find Pehr Tyrsson.
"There are three highwaymen in the yard,
Who have our daughters slain."
Pehr Tyrsson grasped his sword.
He slew the eldest two.
The third he left alive.
And then he asked him thus:
"What is your father's name?
What is your mother's name?"
Our father is Pehr Tyrsson in Vänge,
Our mother is Lady Kalin in Stänge."
Pehr Tyrsson then went to the smithy,
And had iron crafted'round his waist.
"what shall we do for sins?"
"we shall build a church of lime and stone.
That church will be named Kerna.
And we will willingly build it.

from " Töres döttrar i Wänge"("Töre's daughters in Vänge" ) or "Pehr Tyrssons döttrar i Vänge"("Per Tyrsson's daughters in Vänge") is a medieval Swedish ballad on which Ingmar Bergman's The Virgin Spring is based. Wikipedia.


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超人の面白映画鑑賞 イングマール・ベルイマンの初期作品『野いちご』と『処女の泉』

渋谷の映画館「ユーロスペース」で始まったイングマール・ベルイマン映画のデジタルリマスター版での上映第二弾。今回は1956年の第10回カンヌ国際映画祭審査員特別賞作品の『第七の封印』、1957年の第8回ベルリン国際映画金熊賞受賞作品の『野いちご』それに1959年の第33回アカデミー賞外国語映画賞作品の『処女の泉』の初期3大傑作。20130731120937_00001
【写真は「ユーロスペース」のパンフレットより】

筆者は酷暑の中、ゲリラ豪雨が来ないことを祈りつつ、渋谷の道玄坂の映画館「ユーロスペース」に向かった。昨年12月に上映された『秋のソナタ』に続いてのベルイマン作品鑑賞のためである。渋谷の人混みの中を掻き分けて真っ直ぐに目的地へ。到着したのはなんと上映開始の1分前だった。ネットで書いてある案内で3本、1500円と思っていたら、当映画館は“名画座“ではありませんとチケット売り場の受付嬢に言われた。各作品、1500円ときちっと書いておかないと勘違いする人もいると筆者が指摘。『野いちご』と『処女の泉』を続けて鑑賞。
『野いちご』は人生の終焉にさしかかって小旅行する老医師が、短い一日を通して人間の老いや死や家族を、夢や追想を織り交ぜながら描いた映画。青春の叙情的な象徴としての野いちごがこの映画のタイトル名。人生の豊饒さと優しさに満ち溢れた作品。成功者として名誉博士号を授与される老医師にも、夢にまで出てくる青春の甘酸っぱさがあったこと、息子の妻が同伴する小旅行では青春を過ごした家の周りにあった野いちごを案内、それは青春時代を過ごした、男女間の懐かしい一コマ、車中で息子のことを語る息子の妻、老母見舞い、また、イタリア行きの若い男女に出会い世代間を超えた優しい交流を、たまには“交通事故”もー。旅は道ずれ世は情けを地でいく。やがてルンド大学での名誉博士号の授与式に出席、祝福のうちにそれも無事終える。息子夫婦も仲直り、家の外ではイタリア行きの若者が歓喜の歌を披露、家政婦に最高の日と祝福され、老医師は平和のうちに眠りにつく。
誰でもやがては味わう老後、大事な人生の充実感をいかに味わうかと問うた作品。何でもこの映画の着想はベルイマンの出身地ウップサラに行く途中に浮かんだとか。出演はビビ・アンデショーンやイングリッド・チューリン、ヴィクトル・シューラストルムなど。女優のあやしい演技が光るが、主旋律は哲学的。56年前の映画だが現代でも充分に通用するテーマ、否現代に生きる日本にとっては更に深刻かも。映画のタイトルの『野いちご』からの連想だけでは全体のストーリーは掴めなかった。もっとロマンチックなものとずっと考えていたのだった。
午後3時から始まった2本目は『処女の泉』。ベルイマンが黒澤明監督の作品『羅生門』に感銘を受けてできた作品といわれている。清らかな少女に起こった悲劇と父親の痛烈な復讐を描いた名作。北欧独特の光のコントラストが見事。出演はマックス・フォン・シドー、ビルギッタ・ヴァルベルィ、ビルギッタ・ペテルソン、グンネル・リンドブロム他。
ある本によれば、この映画の直接の題材はスウェーデン南部のイェトランド地方に伝わるバラード『浮浪者の処女殺し』から取られたらしい。しかもスウェーデンの中世を題材にしている。スウェーデンの最初の宗教は戦いの神オーディンを中心とする自然神的多神教だったが、9世紀前半ごろから急速にキリスト教ーカトリック教にとって代わられた。しかし、民間、特に下層階級には、古来の信仰も長いこと根強く残っていた。この映画のテーマは、そうした時代と社会とを反映している。
浮浪者に処女殺しをされた父親の復讐は凄絶で聴衆の目に鋭く焼き付き、心にもぐさっと来るものがあった。迫力満点の演技。浮浪者の犯すシーンも凄まじいが、それにもまして感動的なシーンは、娘の死体を抱き上げた後その亡骸の前で父親が叫ぶシーンだった。父親が神に向かって痛烈な祈りを捧げる。神の存在する余地がないほど、哲学的な命題が露出する。復讐と異常な殺人の後の祈り。ラストシーンは死体のほとりから自然に湧き出た水だ。やがて清らかな泉に。父親はここに教会を建てることを誓う。
今回ベルイマンの初期作品『野いちご』と『処女の泉』の2作品を鑑賞したが、これらの作品に共通していることは、一見静と動のコントラストのようにみえて実は二つとも神の赦しの問題を扱っている。Gods silenceー。ベルイマンは牧師の息子で権威主義的だった牧師の父を長い間嫌っていたー。


残りの一本『第七の封印』はかつてテレビで観たので今回はパス。

追記 この7月30日でベルイマン監督が亡くなって丸6年が経った。(2013年7月31日 記)

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超人の面白映画鑑賞 イングマール・ベルイマン作『秋のソナタ』 3

ベルイマンの作品には登場人物は少ないが饒舌さがある。この後の作品『ある結婚の風景』にしてもほとんど夫婦の会話で終始終わっている。これは北欧人の解決法の一つを提示している証左なのか。それにしてもあからさまだ。母娘が激しくぶつかった結果、一つの答えを引き出し、もう一つには解決へと氷解して行く過程が読み取れる。人生の諸問題の、人間の生き方の根源にあるものを抉りながらー。
最後に「ユーロスペース」のパンフレットから。舞台となった北欧ノルウェーの静謐な風景と柔らかな秋の光が、人間たちのドラマに深い陰影をもたらしている。

冬の土曜の昼下がりは生憎小雨模様、ジャストセーフで渋谷の道玄坂にある映画館「ユーロスペース」に入った。やはり年配者、特に女性が多かったが中には若い人たちもいた。ベルイマン映画の世代間を超えた人気だろうか。観客はそう多くはなかった。『第7の封印』、『野いちご』と『処女の泉』も来年7月に上映予定とか。
イングリッド・バーグマンの英語はきれいで分かりやすかったが、スウェーデン語の聞き取りはまだまだで、修業が足りないことを痛感。30年以上経った映画だが決して色褪せていない。『秋のソナタ』は“秋のドナタ”と言い違えてしまうほど(笑)。
この映画の上映を知ったのはインターネットラジオ「オッターヴァ」の視聴者のショパンの「プレリュード2番イ短調」のリクエストからだった。多謝。

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超人の面白映画鑑賞 イングマール・ベルイマン作『秋のソナタ』 2

あらすじ。とあるノルウェーの町の牧師館でエーヴァ(リブ・ウルマン)が手紙を書いている。彼女の夫で牧師のヴィクトルがドアの後ろで彼女とのなれそめなどを語るところから物語が始まる。ジャーナリストのエーヴァとは教会の会合で知り合い結婚・・・。エーヴァの手紙は愛人を亡くした国際的なピアニストである母親シャーロッテ(イングリッド・バーグマン)を慰め、休息を自分の家で取ってほしいとの手紙だった。夫にも読んでもらった。
楽譜などを詰めたトランクをもちながら母親シャーロッテがエーヴァの家にやって来る。母娘は久し振りの再会に喜び合う。シャーロッテは愛人と病院で過ごした出来事を芝居じみて話す。その後エーヴァが退行マヒの障がいをもつ妹エレーナがいることを告げると母親シャーロッテの表情が急変。エーヴァは妹エレーナを施設から引き取って自分が夫とともに面倒みていると話す。なぜ手紙でエレーナのことに触れなかったかと母親のシャーロッテがエーヴァを責めるが、書けばきっと来ないとエーヴァが反論。多少口論なるもシャーロッテはエレーナのいる2階へ。母親に会えた喜びを一言喋るのがやっとのように振る舞うエレーナ、この時ばかりとファンからもらった高級腕時計をエレーナの腕にはめてやるなど母親なりの愛情を注ぐシャーロッテ。夕食の準備をするからとシャーロッテに告げたエーヴァは、夫と夕食の支度に取りかかりながら母親のことや自分のことについて夫に話す。夫は妻を労わる。
夕食後シャーロッテは外国にいるマネージャー、ポールからの英語の電話でコンサートの受注を受ける。少し明るくなったところでシャーロッテは娘のエーヴァにピアノを弾いくれるよう依頼する。ショパンの『プレリュード2番イ短調』を弾き、母親シャーロッテに感想を求める。シャーロッテは最初褒めるも娘の執拗な感想の求めにプロ意識丸出しの辛辣な批評を吐いてしまう。そして自分が見本を示してピアノを弾く。ヴィクトルは何も言わず見ている。まだ陽があるので散歩にシャーロッテが誘うもエーヴァは水死した息子の部屋に閉じこもる。その夜エーヴァから幼くして水死した息子のスライドばかりを見せられ、娘がおかしくなっているとシャーロッテが呟く。ベッドに着いて亡くなった愛人の資産管理のこと、パリ行のことを考え、また、新車を娘夫婦にと考えるも今乗っている車を譲って自分が新車を買うと心変わりしたりする。やがて眠りにつくが悪夢にうなされ起きてしまう。気づかったエーヴァがシャーロッテに付き合うが、ワインを飲むほどに自己主張が激しさを増していく。芸術家気取りで男性的な性格のシャーロッテを娘エーヴァが家庭を顧みない女性のエゴイストと激しく非難する。そのためにいかに惨めだったかと自分の子ども時代を告白。これに対してシャーロッテは音楽家としてちょうどスランプの時期で大変だったと激しく反論。母娘譲らずの激しい口論はこの映画の最大の山場、二人の女優の迫力ある演技が光る。やがて憎悪劇は母親シャーロッテが罪を認め許しを乞うことで収束する。シャーロッテは予定の宿泊を早めに切り上げ、マネージャーのポールとジュネーブに演奏旅行へ。一方エーヴァは死んだ息子の墓に。そしてエーヴァが言い過ぎた自分を反省し、いつでも分かり合える、これからでも遅くないと手紙を書き、郵便局に行く準備をしている夫ヴィクトルに読ませ、彼が封をとじる。物語はここで終わる。

この物語はベルイマンが現実には母親と娘との確執があまりないことにヒントを得て書かれたらしい。<続>

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超人の面白映画鑑賞 イングマール・ベルイマン作『秋のソナタ』

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イングマール・ベルイマン監督『秋のソナタHöstsonaten』を観た。ベルイマン60才の作品で主演のイングリッド・バーグマン、共演のリブ・ウルマンの迫力のある演技が光っていた。イングリッド・バーグマン没後30周年記念デジタルリマスター版。上映時間92分。彼女はこの映画出演(1978年スウェーデン劇場公開)から4年後、癌のため67才で亡くなっている。だからこの映画は彼女の遺作。オールドファンにはお馴染み、イングリッド・バーグマンといえば『ガス燈』だろう。あの美貌、そして霧の街ロンドン。時は1939年、相手役はシャルル・ポワイエ、推理白黒映画。スカパーなどではこれでもかと再放送を繰り返している名作。しかしこの映画で見せた晩年のバーグマンの演技力も凄い。40本以上あるベルイマン映画は全て鑑賞するつもりでいる筆者にとっては良い機会だった。この映画が日本公開された1981年になぜか見逃していて、その後も気にかけてはいたが観る機会がなかった。その年は某社に途中入社したばかりで映画を観る余裕がなかったのだ。

恋愛経験も持つ国際的なピアニストと抑圧されて育った娘との壮絶な確執を描いた母親と娘の愛憎劇。<続>

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『ベルイマン アイランド』観に再びスウェーデン大使館へ

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曇天で気温8度と寒空の今日(2012年3月4日)、ベルイマンの“難題を投げかけた男”の展示関連映画『ベルイマン アイランド』を観に再び六本木のスウェーデン大使館へ。
スウェーデン文化交流協会Swedish Institute 制作の英字字幕付日本語訳なしの映画。上映時間84分。ベルイマンが晩年住んでいたフォーレ島の自宅でのインタビューや話題に上った作品を随時挿入しながら回想するドキュメンタリー。2004年制作。手法、恐怖、時間、女性、包み、策略、カメオ浮き彫り、苦悩、、リハーサル、疑惑、スウェーデン、オスカー、悪魔、仲間、色彩、音楽、沈黙、死、回想、恥、母、窃盗、顔、父などを語り、映画のシーンが挿入される構成だが、ここには言わばベルイマン映画の謎を解く鍵が豊富にちりばめられていた。難解で知られる作品のモチーフは彼の幼少、少年時代の体験にあった。この時ベルイマン86才、亡くなる3年前の映像だ。
筆者が印象に残ったことと言えば、やはり8才の時に映写機Img016_3
を買ってもらったこととそこに映し出されていたのがチャップリン映画だったことだ。初期に見られる社会派的な映画から徐々に人間の内面にへばりつく諸問題を扱う映画に。それは難題を投げかけた男が自ら映画の“神様”になっていく過程でもあったか(あるいは伝説的になっていく)、それとも“紙一重”に賭けた男の生き様だったか。ベルイマン映画を更に魅力的にしているのは、女優や男優(つい最近亡くなったエールランド・ヨーセフソンなど)の名演技だった。完璧を求めたベルイマン監督によく応えたからこそベルイマン映画には観客を虜にして離さない魅力があるのだろう。更にもう二つ、時計や人形など小道具の効果それに象徴的な風景描写もいい。それらが実存的、心理的な映画で難解なテーマを私たちに投げかけた映画であっても…。
この日午前の部の観客は3名だった。帰りがけに偶然映写担当の男性に感謝の印か笑顔で見送られた。

外は今にも雨になりそうな気配。地下鉄六本木一丁目駅に戻る高層ビルの階段で結婚式の場面か晴れ着姿の集団に出くわした。

【写真左上:スウェーデン大使館入口の開催案内=筆者撮影 写真右上:自分の映写機を手にするベルイマン=スウェーデン文化交流協会制作の「イングマール・ベルイマン」P.41から】
参照:スウェーデン文化交流協会作成の英文小冊子 Ingmar Bergman: The man who asked hard question. Ingmar Bergman by Maaret Koskinen.


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