絵画

2019/03/05

超人のドキッとする絵画 33 すみだ北斎美術館 余滴

①超有名な名所浮世絵冨嶽三十六景 神奈川沖浪裏
②伊藤晴雨 葛飾北斎像 貧しき或る日の北斎老 柄澤齋 肖像XXXⅣ
③百物語さらやき 百物語しうねん
④開館記念図録 北斎の帰還 幻の絵と名品コレクション表紙

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2019/02/18

超人のドキッとする絵画 32 ムンク展―共鳴する魂の叫び(東京都美術館) 3

会場は人で溢れ(中には車椅子で熱心に鑑賞していた年配者も)作品鑑賞もままならぬまま出口のミュージアムショップへ(館内鑑賞時間は約1時間30分。いつもより40分くらい少ない)。ところが、ここも人で溢れていたのだ。15分くらい並んでいつものように図録と絵葉書を買ってさっさと外に出た。外はこの季節にしては意外と日差しがあって暖か。右にフェルメール展、左にルーベンス展の看板が並び、上野公園界隈はさながら著名な西洋絵画のオンパレード風。先々週あたりの新聞の文化欄には美術館関係者が美術館は儲かるかのタイトルで最近の美術館事情を書いていたが、その関係者によると、この界隈で150万人が来館したようだ。
さて、筆者なりの今回のお気に入りをピックアップしてみたのが前々回のコラムだ。その中でも⑦「生命のダンス」や⑧「マドンナ」、⑩「メランコリー」(以前から取り上げていた)を除いて⑨「星月夜」、⑪「二人、孤独な人たち」と⑫「自画像、時計とベッドの間」の絵がいい。⑨の「星月夜」はゴッホの同名の絵1433695175288_2

【写真: ニューヨークのMoMA 美術館所蔵のゴッホ作「星月夜」 筆者=撮影】

と比べて夜景がどう描かれているか。⑪の「二人、孤独な人たち」の色遣いと配置が抜群、気に入った一枚。なぜ二人は後ろ向き?チコちゃんに訊いてみたい(笑)。そして⑪の「自画像、時計とベッドとの間」の絵がこれまたいいではないか。最晩年、死と隣り合わせの生活の一コマ、都美術館の図録の解説でも言及していたが、自意識過剰から解放されたありのままの作者がいる、しかもかつてはすべてを“捧げた”彼女の姿も侍らせて、柱時計には時間は刻まれず“溶けている、“あるいは消えかけている、今や何にも役に立たない、時間が止まったまま。赤と黒のツートンカラーのベッド、そして猫背で立っている。すべては自然、ありのままの自分を受け入れている、老境、死を意識した姿だ。実際にムンクはこの絵を描いた翌年の1944年に亡くなっている。絵に一生を捧げ独身を貫いた。
今回のムンク展はテーマ別の構成で配置され、暗さから明るさへと変化していく様が絵間(感)から読み取れた。“感性の画家”理解が更に深まったようだ。残念ながら、筆者が好きな「思春期」や「カール・ヨハン通りの夕べ」は観ることができなかった。今回のオスロ市立ムンク美術館所蔵とは違う美術館などで所蔵しているみたいだ。これらの絵を観に今年の夏はノルウェーのオスロに飛んでみたい。その前に1970年開催の「ムンク展」のことを遠い記憶を辿りながら書いてみるつもり。手がかりは少しはあるのだ。筆者の古いノートから雑誌『世界』(1971年2月号。P.221~P.242)の座談会、ムンク―芸術と狂気の間―(小野忠重、寺田透、なだいなだ、針生一郎)の切り抜きが出てきたのだ。
その出てきた雑誌『世界』の座談会ではムンクの版画、リトグラフ、エッチングなどの技法を取り上げていた。そこには日本の浮世絵の影響もみられると 。また、なだいなだが精神科医らしくムンクの狂気について熱く語っていた。美術評論家の針生一郎の意見が鑑賞者としては一番参考になった。座談会の冒頭で次のようにムンクについて語っている。
「彼は絵画のなかに文学をもちこんでいるんじゃなくて絵画でも文学でもなくなるような、表現の限界を越えるようなところにぶつかった作家ではないか」
作家の寺田透は、ムンクの絵など日本人に人気なのは、絵より人なのかもと、精神に異常のある人たちの絵がカタルシスになるような要素があると。
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【写真左上: 「思春期」 写真左下: 「カール・ヨハン通りの夕べ」『図録 ムンク展 ―フリーズ・装飾性 』(東京新聞 2007年)より】

2019/02/12

超人のドキッとする絵画 32 ムンク展―共鳴する魂の叫び(東京都美術館) 2

ムンク展は1970年、2007年それに今回の2019年1月と3度鑑賞した。ムンクの絵画はルノアール、モネやセザンヌなど印象派の絵画それにゴッホ、モジリアーニ、ユトリロ、ミッシャなどと同様に日本人にウケるらしく、今回も開催日の2018年10月27日~最終日の2019年1月20日の約3ヶ月間で67万人が来館し成功を収めたようだ。
筆者は前売券をコンビニで購入していたにもかかわらず、会場の上野の東京都美術館に足を運んだのは最終日の前々日だった。平日とあって30分くらい並ぶだけで会場に入れたのでラッキーだった。今回はやはり目玉の「叫び」を鑑賞することが主目的だが、過去に観たものとどう違うかも興味のあるところ。
1 ムンクとは誰か 2 家族―死と喪失 3 夏の夜―孤独と憂鬱 4 魂の叫び―不安と絶望 5 接吻、吸血鬼、マドンナ 6 男と女―愛、嫉妬、別れ 7 肖像画 8 躍動する風景 9 画家の晩年 の9パーツから構成。第一印象は自画像や肖像画が多いことだった。エドヴァルト・ムンクはドイツ「表現主義」、北欧リアリズムそして資本主義の矛盾を突く社会派の画家で、巧みな心理描写で愛、欲望、不安、絶望、嫉妬、憧憬、孤独、死をテーマにいくつもの作品を残した。また、多くの自画像や肖像画も描いた。代表作『人形の家』のイプセン、代表作『令嬢ジュリ―
_20190212_171826_3_20190212_105015_2や映画監督ベルィマンにも多大な影響を与えたストリンドベリ、フランスの象徴主義を代表する大詩人マラルメ(筆者はまたまたこの詩人に挑戦中)それに『ツァストラはかく語りき』でニヒリズムの創始者ニーチェの肖像画は、ごく身近に作家や哲学者がいて交流、刺激を受けた人たちを優しさを込めて描いている。イプセンやストリンドベリは明治期・大正期に日本でも流行った自然主義文学に影響を与え、ムンクの絵は大正文学の一大潮流を形成した“白樺派”によって日本に紹介されたのが最初らしい。
超有名な「叫び」の前では、係員が立ち止まらないで次にお進みくださいと何度も来館者に声をかけていて煩いくらいだった。それほど多くの人たちが観に来たということだが、肝心の絵の前ですっと通りすぎるとは画家に対して失礼と思うのだが・・・。じっくり鑑賞する暇がないのだ!美術館に来ていつも思うのだか何とかならないものか。しかも混雑している館内では少し離れて作品を眺めざるを得ない、視力の衰えた筆者などにとっては何かと不自由さも感じたのだ。
さて、「叫び」である(「叫び」は様式や描いた時期が違うものが全部で5点存在している。今回の回顧展ではオスロ市立ムンク美術館所蔵の1910年制作?の絵が初出展された)。橋の上で耳を塞いで何かを叫んでいる、顔には目玉が描かれていない、そう、あの有名な絵だ。夕陽が血の色に染まるような空の明るさと微妙な暗さも不気味、また、橋の奥に見える黒い無関心を装う男たちにも注目だ。恐怖―。画家はこの時期精神を病んでいて、心の、魂の叫びを表出、人間として一杯一杯の表情を見せているのだ。それはレッドとオレンジ、ディープブルーそれにグリーンを配した独特の色彩と曲線で紡いだ心模様、言い換えれば、心象風景だろうか。〈不安〉と〈疎外感〉の象徴―。画集ほかでこの絵を何度観てもその時々で印象がかわるから不思議だ。今に生きる私たちにも共感を呼び起こす「叫び」は確かに普遍性を帯びている(だからこの絵はスキャンダルにまみれ、窃盗団―テレビでは事件の一部始終をドキュメンタリータッチで放送していた―に持ち逃げされたり、価格が跳ね上がったりと善悪は別として世界中の絵画ファンを魅了しているのだ)。はて、この人は叫びながら何を訴えているのだろう、それとも声にならない声を心の底から発しているのだろうか。後ろから何者かに追いかけられている、切羽詰まったものが・・・。うむ、橋の右上の方にはフィヨルドに浮かぶ小さな二艘の舟の姿も―。忘れようとしても忘れられない強烈な印象を残す。大昔作家の五木寛之がこの絵を繙いて解説していたのを思い出した。そして今回印象に残った作品は前のコラムで書いた作品だが、特に―。(続く)

【写真右上: 『令嬢ジュリー』英文ペーパーバック版 の表紙と裏表紙 METHUEN &CO LTD 1967。購入日: 北澤書店にて1972年10月28日】

2019/02/11

超人のドキッとする絵画 32 ムンク展―共鳴する魂の叫び(東京都美術館)

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_20190211_134140_2 _20190211_134024_2②③
_20190211_133017_2_20190211_133951_2④⑤
_20190211_133833_2 _20190211_133203_2⑥⑦
_20190211_133303_2 _20190211_161245⑧⑨
_20190211_133722_2 _20190211_133433_2 ⑩⑪
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①叫び The Scream 1910年? テンペラ・油彩、厚紙 83.5×66.0cm
②自画像 Self-Portrait 1895年 リトグラフ 46.0×31.5cm
③ハンス・イェーゲル Ⅰ Hans Jaeger Ⅰ 1896年 リトグラフ 52.0×40.1cm
アウグスト・ストリンドベリ August Strindberg 1896年 リトグラフ 66.5×49.7cm
④フリードリヒ・ニーチェ Friedrich Nietzsbhe 1906年 油彩・テンペラ、カンヴァス 201.0×130.0cm
⑤ステファンヌ・マラルメ Stephane Mallarme 1887年 リトグラフ 61.0×37.6cm
⑥グラン・カフェのヘンリック・イプセン Henrik・Ibsen at the Grand Cafe 1902年 リトグラフ 51.6×66.4cm
⑦生命のダンス The Dance of Life 1925年 油彩、カンヴァス 143.0×208.0cm
⑧マドンナ Madonna 1895/1902年 80.0×60.0cm
⑨星月夜 Starry Night 1922-24年 油彩、カンヴァス 12.5×100.5cm
⑩メランコリー Melancholy 1894-96年 油彩、カンヴァス81.0×100.5cm
⑪二人、孤独な人たち Two Human Beings, The Lonely Ones 1899年 多色刷り木版 46.0×59.5cm
⑫自画像、時計とベッドの間 Self-Portrait Between the Clock and the Bed 1940-43年 油彩、カンヴァス 149.5×10.5cm
⑬ムンク展図録 MUNCH: A Restrospective A4変型 230頁
2018年10月27日刊
※上記の①~⑫の絵は『ムンク展図録―共鳴する魂の叫び』(朝日新聞社)からピックアップしたもの。


2017/07/07

超人のドキッとする絵画 31 東京都美術館 ボイマンス美術館所蔵「バベルの搭」展

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 【東京都美術館の案内チラシの
 「バベルの搭」】
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【東京都美術館入口付近の案内ポス
ターの「バベルの搭」】
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【入口の大友克洋の「Inside Babel」】
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   【出口の「バベルの搭」】
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【上野構内の『たいめいけん』。海老
オムライス+チラシ「バベルの搭」】

ジョージ・オーウェルの『1984』をやっと読み終えた。ディストピア小説の最高傑作。新訳もこなれていて読みやすい。限りなく「現代」を映し出していてそら恐ろしい。この想像力・創造力!恐らく著者の経験が背景にあることは容易に想像がつく。でないとこれだけの小説は書けない。トーマス・ピンチョンの解説もまたよく読み込んでて的確、素晴らしい。今度は念願のジョージ・スタイナーの『After Babel』に原著と翻訳書でチャレンジしたい。この原著の見返しにはこの本の内容を象徴的に表している「バベルの搭」の絵が挿入されている。原著は複数の言語で書かれていてかなり根気のいる読書となるはず。翻訳は原著が出て35年後に刊行された([上]が1997年、「下」が2009年に刊行)。まさしく言語と翻訳の問題を扱っている。 その前に気になっていた展覧会に出向いた。

東京都美術館特別席展
ボイマンス美術館所蔵
ブリューゲル「バベルの搭」

16世紀ネーデルラントの至宝ーボスを越えてー
オランダのボイマンス・ファン・ベーニンゲン美術館のコレクションから、ピーテル・ブリューゲル1世の「バベルの搭」(旧約聖書の「創世記」にある伝説の搭。天まで届く高い搭を築こうとするも、同じ言葉を話す民だからこんなことをすると言葉を通じなくし搭の建設を途中で打ち切ってしまう。神の逆鱗に触れた話。傲慢さと愚かさの戒め)と奇想の巨匠ヒエロニムス・ボスの作品を中心に、絵画、彫刻、版画など16世紀ネーデルラント美術のコレクション約90点を展示紹介。(参照: 東京都美術館CALENDAR 2017[平成29].4→2018[平成30].3)

16世紀北ヨーロッパのオランダ絵画の世界に。
「aera_mook_2017.4.20刊ボイマンス美術館所蔵 ブリューゲル「バベルの塔」展公式ガイドP.78-P.79).pdf」をダウンロード
少し薄暗い世界、幻想、怪奇、寓話の世界へ。教会関係者の彫刻から始まり、肖像画などホラント地方の美術、ボスの絵

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【ボス: 浮浪者(行商人)  よく観察すると面白い】
や版画などを観て歩き、奇想の世界に

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【ブリューゲル: 大きな魚が小さな魚を食う。
当時の体制批判、寓意画】

少し引き込まれたあと(何故か横須賀美術館て開催された「澁澤龍彦展」を思い出した)、ピーテル・ブリューゲル1世の[バベルの搭]を観賞。その絵の何とも言えない造形美、人々の表情など描写の緻密なこと、それに色彩の冴え、一つ一つ観ていても飽きず、これが16世紀中期のものかと驚くばかり。筆者的には褐色の搭に不穏な雲、それはニューヨークの世界貿易センタービルに飛行機が突撃してビルが崩壊し多数の犠牲者を出した大惨劇、あの16年前の9.11同時多発テロのシーンを思い起こした。しかし、この絵の前には人だかりができていて、じっくり観賞している暇はなく係員の誘導するまま歩を進めざるをえなかったのが残念。特に出口付近のミュージアムショップでは買い物客でレジは長蛇の列、いやはや凄いことになっていた。これでは“建設中”の「バベルの搭」も崩れそうな気配(笑)。それで急いで東京都美術館を出て、JR駅構内の『たいめいけん』で食事をしたのだが、驚くなかれここのメニューに“バベルの搭カレー”なるものがあったのだ。ファミリーで食事のテーブルにはそのバベルの搭カレーが供されていた。搭は黄色みがかっていてきもち高かった。老舗の洋食屋はあやかりメニューまで作ってしまったー。

2017/03/13

超人のドキッとする絵画 30 国立新美術館 ミュシャ(ムハ)展

2017年3月8日から開催中の「ミュシャ展」(6月5日まで開催)。混雑が予想されるため早めの観覧をと考えて、先週の土曜日の午後六本木の国立新美術館に出掛けた。「ミュシャ展」を観覧するのは、堺市立文化会館、森美術館、そごう美術館に次いで4度目。主に大作「スラブ叙事詩Slav epic」を観るためだ。春になっても天候が落ち着く様子もなく、寒暖の差が激しい三寒四温の日々が続いていて土曜日の午後も例外ではなかった。そんな土曜日の午後、久しぶりの国立新美術館訪問だった。当日券購入に30分近くは並んだが、あとはスムーズに鑑賞できた。意外と混んでいなかったのだ。あの上野の「惹冲展」での長蛇の列を経験した者としては多少肩透かしを喰った感じだ。

写真が許可されたアートスペースで2枚をゲット。このコラム用に多少加工。
このスラブ叙事詩は題材のスラブ民族の歴史を描いた点(伝統に偏りすぎの感も)といい、その大きさといい、圧倒的な迫力をもって観る者を楽しませてくれる。更に付け加えれば色使いや構図の巧みさもー。

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【「ミュシャ展」図録表紙】

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【スラブ菩提樹の下でおこなわれるオムラジナ会の誓い スラブ民族復興 1926 (未完成) 390×590cm テンペラ、油彩/カンヴァス プラハ市立美術館】

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【スラブ民族の賛歌 スラブ民族は人類のために 1926 480×405cm テンペラ、油彩/カンヴァス プラハ市立美術館】

(続く)

2016/12/25

超人のドキッとする絵画 29 神奈川県立近代美術館 葉山館『陽光礼讚 谷川晃一・宮迫千鶴展』 続

「谷川晃一・宮迫千鶴展」展示品、アトランダムにディスプレイ。

①②
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④⑤
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⑥⑦⑧
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⑨⑩⑪
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⑫⑬⑭⑮⑯⑰
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⑱⑲
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上からタイトルと制作年。

①T-16 La GOLONDORINA Ⅰ 2000年
②T-17 La GOLONDORINA Ⅱ 2000年
③美術評論、エッセイ、絵本など自著展示コーナー
④ T-14 大室山脈 2009年
⑤ T-35 大室山脈・秋 2009年
⑥ T-31 ムーンクロス 2005年
⑦ T-29 カラベラ・ダンス 2005年
⑧ T-26 マスク・ボックス 2005年
⑨M-63 コラージュC(「珈琲色のStory」 シリーズ) 2007年
⑩M-62 コーヒーアンドビスケット 2007年
⑪M-57 青いレモンの夜 2005年
⑫M-59 月のピアノ 2007年
⑬M-52 花言葉・月夜の夢 2007年
⑭M-53 花言葉・夕暮れの想い 2007年
⑮M-54 花言葉・静な夜 2007年
⑯M-55 花言葉・小さな情熱 2007年
⑰M-51 緑の庭 2006年
⑱T-50 静かな夜 2015年
⑲T-49 海辺の町 2015年
⑳T-70 大室山と大島 2016年
※T-番号: 谷川晃一の作品と展示番号
M-番号: 宮迫千鶴の作品と展示番号

2016/12/19

超人のドキッとする絵画 29 神奈川県立近代美術館 葉山館「陽光礼讚 谷川晃一・宮迫千鶴展」

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昨夜のテレビ東京の美術番組『美の巨人たち』は、ピカソが55歳時に描いた20世紀最高傑作『ゲルニカ』、25歳時の作品『アヴィニオンの女たち』

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そして15歳時に描いた『科学と慈愛』を取り上げ、時間を逆戻りしながらピカソの早熟ぶりとその隠された苦悩それに創造と破壊に費やしたピカソ絵画の秘密を解き明かしていた。素直な子どもの絵を描くことがピカソの目標だったーそれはポップアートの第一人者谷川晃一にも当てはまる。今神奈川県立近代美術館葉山館で開催中の「陽光礼讚 谷川晃一・宮迫千鶴展」の図録解説からも読み取れる(「子どもに向かって成長する」)。もっともこの展覧会は伊豆高原での絵画芸術活動の作品群だ。今までの色彩に森のイメージとしての“緑”が多用されているのも彼の新しい境地かも知れない。興味を引くのは宮迫作品もポップアートを得意とする画家だったが、谷川作品と比べると色使いはもちろんのこと、線描写が少し太くゆったりした感じを受けるのだ。おおらかさがあるといっても過言ではない。谷川作品も刺激しあってポップアートの完成度が高くなっているのを感得できるが、最近の諸作品は“緑の王国”とも言っていい、豊かな森に入り木々と呼応している豊穣なイメージを私たちに与えてくれる。そこでは時間がゆったりと流れているのだ。

絵画鑑賞後美術館の裏手の海に通じる散歩コースを回り葉山の海を一瞥、冬の光が眩しく海は穏やかだった。“額縁”にと一枚を写真に収めたら、さながら19世紀のターナーやコンスタブルの英国風景画が現前にあるような構図に。不思議な光景である。

追記 日曜美術館(2016年12月4日放送)「絵は歌うように生まれてくる~画家・谷川晃一森の生活~」を11日の再放送で観た。かつて前衛画家として名を馳せた谷川晃一氏の最新映像だ。伊豆高原での画家・谷川晃一さんの暮らしぶりを追った番組。コックをやっていたこともあるしく料理の腕前はなかなかなもの、さらに驚いたことには仏壇に向かって般若心経をすらすらと唱えていたことだ。時間が止まるようなゆったりとのんびりした芸術生活があって羨ましい。高齢にもかかわらず仕事に意欲的でアトリエでの絵筆を持つ仕草も若々しく見えた。

写真上から : 筆者撮影
西日を浴びた神奈川県立近代美術館葉山館
「陽光礼讚 谷川晃一・宮迫千鶴展」図録表紙 チラシ

眠りの舟 2001年 アクリル 紙 35.0×51.0cm(谷川晃一)
太陽の鳥 1993年 アクリル カンヴァス 90.8×116.50cm (谷川晃一)
キャラバン 2005年 ミクストメディア 43.0×33.0×12.3cm (谷川晃一)
南下するナウマン象 2005年 ミクストメディア43.0×33.0×12.3cm (谷川晃一)
旅のトランプ 2005年 ミクストメディア 43.0×33.0×12.0cm (谷川晃一)
マスク・ボックス 2005年 ミクストメディア 43.0×33.0×14.0cm(谷川晃一)

畑の至福 1992年 コラージュ グアッシュ 紙 パネル 141.0×103.0cm (宮迫千鶴)
奥の農場 1992年 コラージュ グアッシュ 紙 パネル 146.0×104.0cm(宮迫千鶴)
5月の風 1992年 コラージュ グアッシュ 紙 パネル 140.5×103.0cm(宮迫千鶴)
フィンランドの夏 1995年 コラージュ グアッシュ 紙 パネル 146.0×103.0cm(宮迫千鶴)

雑木林の音楽 2015年 アクリル 紙 パネル 73.0×103.0cm(谷川晃一)
神奈川県立近代美術館葉山館裏手から眺めた葉山の海

追記 一度だけ筆者は編集者のT 氏の計らいで谷川氏、宮迫さんと談笑する機会があった。もう遠い昔、宮迫さんからは便箋に書かれたメモをもらった記憶があるが、はてどこにあるか?その後何十年か振りで谷川氏とはドイツ文学者の種村季弘展でお会いした。大きな文字の名刺が印象的だった。

2016/05/24

クロカル超人が行く 194 上野・東京都美術館『若冲展』 6

米国収集家が愛した若冲Jakuchu Beloved By American Collectors
40 月梅図(絹本着色、宝暦5年1755年、メトロポリタン美術館蔵)、41 菊花図(紙本墨画、寛政4年1792年、デンバー美術館蔵)、42 葡萄図(紙本墨画、江戸時代18世紀、エツコ&ジョー・プライスコレクション蔵)、43 旭日雄鶏図(絹本着色、江戸時代18世紀、エツコ&ジョー・プライスコレクション蔵)構図技法の巧みな絵、44 雪芦鴛鴦図(絹本着色、江戸時代18世紀、エツコ&ジョー・プライスコレクション蔵)、45 紫陽花双鶏図(絹本着色、江戸時代18世紀、エツコ&ジョー・プライスコレクション蔵)、46 虎図(絹本着色、宝暦5年1755年、エツコ&ジョー・プライスコレクション蔵)、47 竹梅双鶴図(絹本着色、江戸時代18世紀、エツコ&ジョー・プライスコレクション蔵)、48 鳥獣花木図屏風Birds, Animals, and Flowering Plants in Imaginary Scene(紙本着色Color on paper、江戸時代18世紀Edo period, 18 century、エツコ&ジョー・プライスコレクション蔵Etsuko and Joe Price Collection)若冲絵画最高傑作の一つ、方眼に見事なまでに塗り込まれた動植物。豊かな想像力の世界。何となくユーモアのある象の表情と大きさが際立つが独特な青色も印象的。アメリカ人がこの絵に取りつかれたことも納得がいくような気がする。ところで、若冲は本物の象を見たのか?家人が何度も筆者に訊いていた・・・。江戸時代に象が江戸まで運ばれたことはあるようだ。さぞかし驚いたに違いない―。象プライス、と駄洒落まで出た。

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【生誕300年記念 若冲展 カタログ】より

49 伏見人形図(紙本着色、寛政12年1800年、エツコ&ジョー・プライスコレクション蔵)、50 鷲図(紙本墨画、寛政12年1800年、エツコ&ジョー・プライスコレクション蔵)

20 : 47 『若冲展』鑑賞終了。この混雑では絵をじっくり鑑賞できる状態ではなかった。

追記 言語学者の井上史男氏が2016年6月7日付「日刊ゲンダイ」の週間読書日記欄で若冲展に言及して、こんなことを書いていた。

5月×日 若冲の絵の中の文字に注目。「画像言語学」の実践だ。ほぼ漢字だけだ。仏教に帰依して描いたからだろう。浮世絵で漢字以外にひらがなが使われ、近代の写真や絵はがきでカタカナやアルファベットも現れるのとは大違いだ。筆者も若冲絵画のタイトルを書き写して不思議に思ったことの一つを言い当てているみたい。(2016年6月16日 記)

2016/05/23

クロカル超人が行く 194 上野・東京都美術館『若冲展』 5

2-21 動物綵絵 芦鴛図(絹本着色、宝暦11年1761年、宮内庁三の丸尚蔵館蔵)、2-22 動物綵絵 芦雁図(絹本着色、明和3年1766年頃、宮内庁三の丸尚蔵館蔵)、2-23 動物綵絵 池辺群虫図(絹本着色、明和2年1765年以前、宮内庁三の丸尚蔵館蔵)蛙(かわず)の表情の可愛いこと、観察眼の勝利!生命の讃歌ともいえる絵。

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【生誕300年記念 若冲展 カタログ】より

2.-24 動物綵絵 貝甲図(絹本着色、明和2年1765年以前、宮内庁三の丸尚蔵館蔵)、2-25 動物綵絵 諸魚図(絹本着色、明和3年1766年頃、宮内庁三の丸尚蔵館蔵)、2-27 動物綵絵 蓮池遊魚図(絹本着色、明和2年1765年頃、宮内庁三の丸尚蔵館蔵)、2-28 動物綵絵 菊花流水図(絹本着色、明和3年1766年、宮内庁三の丸尚蔵館蔵)、2-29 動物綵絵 紅葉小禽図(絹本着色、明和3年1766年頃、宮内庁三の丸尚蔵館蔵)、2-30 動物綵絵 桃花小禽図(絹本着色、明和2年1765年以前、宮内庁三の丸尚蔵館蔵)。

20 : 37 混雑し過ぎてじっくり観られず、極めて残念。待った時間の長さと美術鑑賞時間の短さ、何だこれはと思いながら、2階の画遊人、若沖(2)の陳列室へ。Jakuchu, A Man Rejoicing in Painting(2)

7 雪梅雄鶏図(絹本着色、江戸時代18世紀、京都・両足院※5月8日までで観られず)、15 百犬図(絹本着色、江戸時代18世紀、個人蔵※5月8日までで観られず)、25 果蔬涅槃図(紙本墨画、江戸時代18世紀、京都国立博物館蔵)、30 石峰寺図(絹本墨図、寛政4年1792年、京都国立博物館蔵)、34 菜蟲請(重要文化財、絹本着色、寛政4年1792年、佐野市立吉澤記念美術きい館蔵)、35 仙人掌群鶏図襖絵(重要文化財、紙本金地着色、寛政2年1790年、大阪・西福寺蔵)この展覧会の監修者で日本美術史家の辻氏が何度もこの襖絵について言及している前衛画家杉全直氏のことばにすべてが凝縮しているような気がする。それは『奇相の系譜』の引用を読めば足りる。このコラム(「クロカル超人が行く 194 上野・東京都美術館『若冲』」でも言及しているので参照されたい。またもやじっくり観られないのが何よりも惜しい。

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【生誕300年 若冲展カタログ】より

36 蓮池図(重要文化財、紙本墨図、寛政2年1790年、大阪・西福寺蔵)、37 三十六歌仙図屏風(紙本墨画、寛政8年1796年、岡田美術館蔵)、38 石燈籠図屏風(紙本墨図、江戸時代18世紀、京都国立博物館蔵)、39 象と鯨図屏風(紙本墨図、寛政9年1797年、MIHO MUSEUM蔵)(続く)

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