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2019/05/17

超人の面白読書 137 出版社のPR誌をよみくらべる 11

『ちくま』を読了したあと、『一冊の本』を読み始めたら格段と読みやすくなった。やはりフォントやサイズは重要だ。これは何冊かよみくらべることで―ここではたった3冊だが―得られた結果だろう。PR誌3冊目の『一冊の本』も読み終えた。島薗進の「巻頭随筆――一冊の本  人は「喪失」とどうつきあってきたのか?――『ともに悲嘆をいきる――グリーフケアの文化と歴史』の射程」は、医学から宗教学に転じた学者の一文だが、東日本大震災と福島原発事故後に死と向き合うこと、ともに悲嘆(グリーフ)を生きることの意義を垣根を超えた新たな宗教者たちのグリーフケアを紹介しながら綴る。偶然にもこの記事を読み終えた日の夕刊に同じ執筆者の記事が掲載されていた(毎日新聞5月7日夕刊「特集ワイド」)。今注目の人かも。今回から始まった爆笑問題の太田光の「芸人人語 第1回  言葉」。父親の暴力で小学2年の女の子が死亡した事件を取り上げ、言葉で言い表せない部分、論理的に説明できない残虐性が潜んでいると書くが、「闇」の部分の解明が重要でまた、社会強いていえば近隣、学校側の気づきも必須。すでに黄色信号をあげていたというではないか。対応のまずさや遅れが悲惨な結果を招いた結果だろう。簑原俊洋の「アメリカから見た戦後日米関係史 7 パクス・アメリカーナの時代――アメリカの庇護下で国際社会への復帰を果たす日本」の記事は、戦後の日米関係を追った連載ものだ。1~6までまとめて読もうと該当のバックナンバーを揃えている。この手のものはいろいろと書かれてきてはいるが、アメリカからの視点がユニークなところ。アメリカカリフォルニア生まれで五百頭眞の弟子らしい。落合恵子の「明るい覚悟」では中也が出て来る、なぜかほっとさせてくれる。山田清機の「寿町のひとびと 32」は、バプテスト横浜教会とある牧師の話。武田砂鉄、群ようことエッセイが続く。岡本裕一朗の「世界を知るための思考実験 22」は、今回は不倫を取り上げ、サルトルとボーボワールの関係を例に論じている。お馴染みの佐藤優の「混沌とした時代のはじまり」は、こどもの虐待救出の話。前後するが、作家鴻上尚文(筆者はNHKの番組「Cool Japan」でお馴染み)の「ほがらかな人生相談 息苦しい「世間」を楽に生きる処方箋 第9回」が、意外と面白かった。発想の転換がいかに人を明るくさせるか考えさせられた。夢枕  獏の小説は少し興味がもてるかも知れないが、菊地秀行の小説にはお手上げだ。この類いの小説は読んだことがないので批評外、致し方ない。それにしてもカタカナ語の名前の覚えづらいこと!改めて 『一冊の本』(2019年4月号)を隅から隅まで読んでみた感想は、盛り過ぎで腹一杯それでいて読後感が意外とウスいということだ。やはり“躍動感”がほしい。蛇足だが、最後のページの広告に雑誌『JOURNALISM』3月号の特集「福島を見つめる、伝える」を見つけて書店に走った。幸い手に入れることができて、今筆者の手元にある。PR誌3点のうち小説を掲載していたのは『一冊の本』だけだ。

さて、『図書』、『ちくま』それに『一冊の本』を休み休み約1ヶ月かけて朝の通勤電車の中で読んできたわけだが、新書本丸々一冊読むことにも匹敵する分量で、エッセイや小論が中心しかもテーマは多種多様、雑誌編集者は、書き手の魅力を充分に引き出すことに成功していただろうか。筆者としては何点か興味を引いたものもあった。やがてこの中から書籍化されて世に出るものも。ネットの時代にあってこのような雑誌の役割もまだまだ需要があるはずだ。また、多種多様な文章を味わうことで感度を磨き、教養の幅を広げることに一役買ってきたと思うのだ。そして忘れてならないのは、PR誌は自社の書籍紹介がその役割だということだ。だから安価で提供しているのだ。編集・製作コストはそれなりにかかっているはずだ。これからもインパクトのある誌面づくりを期待したい。このコラムを書くきっかけは新聞の紙面批評だった。筆者にとってはまだまだこの手の雑誌に目が離せない。果たしてこの試みは意義があったか、あるいは大いなる時間のムダだったか――。

このコラムを終えるにあたり再度執筆陣に目を通した。新たに片山杜秀、佐伯泰英(今や売れっ子作家。辛苦を舐めた重いテーマを書いていたが、だからこそ今があるという人間の証明みたいなもの。書き残したかったのかも)、島薗進を新たに発見、勉強不足を恥じているが学ばせてもらった。休み休み読んでいたらすでに5月号が手元に届いていた!

 

追記   ここで分かる範囲で創刊年月と発行部数を記しておきたい。『図書』、1938年8月で150,000部、『ちくま』、1969年4月で40,000部、『一冊の本』、1996年6月、発行部数は6000部。

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