« クロカル超人が行く 219 【北欧最新情報】フィンランド・ヘルシンキ&スウェーデン・ストックホルムとウプサラの旅 余滴 | トップページ | クロカル超人が行く 220 山梨県立文学館で「草野心平展」、美術館でミレー作「落穂拾い」や新着「角笛を吹く羊飼い」などを鑑賞 »

クロカル超人の面白読書 133 大矢悠三子著『江ノ電沿線の近現代史』

_20181030_142447

藤沢と鎌倉を走る江ノ電は、走行距離10キロ、10駅約30分の短いレイルウェイだ。しかし、民家や海岸線をすれすれに走る緩い走りの車窓からは風光明媚な箇所がいくつもあり、一駅一駅降りては乗るを繰り返せば1日あっても時間が足りないくらいだ。筆者などは、春には鶴岡八幡宮での花見や江の島マリンタワーすぐ近くのイタリアンで誕生日祝いをしてもらうのが恒例だし、夏には海辺でシラスを食べ、秋には鎌倉山麓で紅葉狩りも。そして冬、鯵の干物買いついでに蕎麦を食べに出かける。混雑する観光シーズンはなるべく避け、土曜日などにふらっと出かけるのがいい。そんなとき車に乗れない筆者はいつも江ノ電を利用して移動している。そっと耳を傾ければ線路を走るガタコトガタコトという音が聴こえる、それが心地良いのだ。最近では中国からの若いカップルも多くなり、極楽寺駅(かつてはテレビドラマで脚光を浴びた)をはじめ江ノ電沿線の駅に甲高い中国語が飛び交う。これも古都鎌倉の新たな風物詩になりつつある。
そんな江ノ電利用者に待望の本が刊行された。藤沢市史に関わり、『湘南の誕生』の共著もある海水浴(そう、湘南の海水浴に触れた、タレントのタモリが主演のNHK番組「ブラタモリ #115 湘南~湘南の人気のヒミツは“いとしのヘリにあり”~」が10月13日に放映された!)やリゾート史に詳しい大矢悠三子氏の『江ノ電沿線の近現代史』、ここには今まで知らなかった事柄が分かりやすく書かれていて沿線の顔をリアルに浮き彫りにさせてくれる。目次は下記の通り。

第1章 江ノ電の開業―湘南トライアングルの形成
第2章 湘南の大都市・藤沢
第3章 憧憬の鵠沼―開発分譲型別荘地の嚆矢
第4章 大東京の風景地と湘南海岸
第5章 湘南ランドマーク―不思議アイランド・江の島
第6章 海岸線―「江ノ電のある風景」の変貌
第7章 鄙の地、聖地となる
第8章 鎌倉を愛した文士たち
第9章 由比ヶ浜に海浜院ありき
第10章 古都・鎌倉に遊ぶ、暮らす
あとがき、関連年表、参考文献

筆者としては特に江ノ電小史、藤沢駅と周辺エリアの盛衰、湘南海岸物語、鵠沼などの宅地開発、江の島アイランドストーリー、鎮魂歌であまりにも有名な逗子開成高校ボート水死事故の話、由比ヶ浜海浜院物語、江ノ電唯一のトンネル極楽洞の話(ツルハシで掘削)、戦後すぐ鎌倉文士によって開校した鎌倉大学校→鎌倉アカデミー、鎌倉文庫、いくつものテレビドラマの舞台そして数字で示してみせた観光のあゆみなどが著者の視点も見え隠れしていて興味を引いた。鉄道本にはビジュアル的なものが多いが、コンパクトに活字で読ませる本書には、電車で未知の旅に出るようなある種のワクワク感がある。今度の週末は本を片手に江ノ電乗車といきますか。窓外から見える沿線の景色が少し違って見えるかも。
A5判・177頁、定価本体1800円+税。2018年10月31日、クロスカルチャー出版刊。

追記 FMいわきの番組、「いわきの人、まち、文化」<文学散歩>でこの本が紹介された。2018年12月12日(水曜日)午前9時30分~9時59分。司会は馬場典枝さん、ゲストは鈴木英司氏。筆者はゲストから連絡を受けてインターネットラジオで聴取。録音がうまくできなかったのが残念。ユーチューブにあげてくれると嬉しいのだが・・・。ゲストは歴史や文学に造詣が深いだけに、自分の鎌倉旅行を含めてコンパクトに本の内容を伝えていた。CPCシリーズ、版元と著者紹介、湘南の由来、江戸時代の鎌倉、江ノ電唯一のトンネル、大仏、NHK大河ドラマ「もみの木は残った」、江ノ電のはじまり藤沢、鎌倉文学館、初めは棒を使って医療のための海水浴等々面白おかしく。歴史散歩のガイドブックとして最適と。(2018.12.13 記)

|

« クロカル超人が行く 219 【北欧最新情報】フィンランド・ヘルシンキ&スウェーデン・ストックホルムとウプサラの旅 余滴 | トップページ | クロカル超人が行く 220 山梨県立文学館で「草野心平展」、美術館でミレー作「落穂拾い」や新着「角笛を吹く羊飼い」などを鑑賞 »

コメント

コメントを書く



(ウェブ上には掲載しません)


コメントは記事投稿者が公開するまで表示されません。



トラックバック

この記事のトラックバックURL:
http://app.cocolog-nifty.com/t/trackback/77059/67379960

この記事へのトラックバック一覧です: クロカル超人の面白読書 133 大矢悠三子著『江ノ電沿線の近現代史』:

« クロカル超人が行く 219 【北欧最新情報】フィンランド・ヘルシンキ&スウェーデン・ストックホルムとウプサラの旅 余滴 | トップページ | クロカル超人が行く 220 山梨県立文学館で「草野心平展」、美術館でミレー作「落穂拾い」や新着「角笛を吹く羊飼い」などを鑑賞 »