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クロカル超人が行く 207 市川市文学ミュージアム企画展―永井荷風の見つめた女性たち― 5

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市川市文学ミュージアムの売店で購入した図録『永井荷風―「断腸亭日乗」と「遺品」でたどる365日―』を丹念に読んだ。そもそもは市川市文学ミュージアム開館記念特別展(2013年)用に作成されたもので、筆者が購入した図録は2018年1月に再版されたもの。「断腸亭日乗」をひもとく(大正7年から昭和36年まで44年間綴った日記は、作家の井上ひさしが言うように日記文学の傑作)、創作から広がる荷風の世界、荷風の本棚(フランス語の原書も並ぶ。興味津々)、荷風の暮らし(七輪を使って自炊していたこと、葬式の模様など興味深い)、市川を歩く(当時の市川の様子がよくわかる)、東京と荷風(銀座にあった『萬茶亭』と『ラインゴルト』。荷風が描いた店と女給。スケッチも上手い。1932年(昭和7)当時、なかなか洒落ていた様子が伺えて面白い)、玉の井(「通り抜けできます」の文字。猥雑な路地を訪ねてみたい。浄閑寺の詩碑「震災」は訪ねた)、浅草(ベレー帽と眼鏡がトレードマークの荷風が踊り子などをこよなく愛したところ。『ロック座』は何度か行ったことがある)、荷風をめぐる人々、ある日の荷風(何気ない日常の一コマが切り取られ表情が豊か。ファニー。これがとても面白い)など。
この図録に寄せた作家の井上ひさしは、荷風の浅草通いを近くで見ていた人で、『フランス座』でのエピソードを紹介していて可笑しい。ずっこけて笑った荷風の歯は汚なかった、と書いている。また、評論家の川本三郎は、荷風はどのように女性を愛したか、というタイトルで荷風の女好きの真髄に迫っている。かいつまんで引用しよう。「娼妓、芸者、女給、私娼など玄人を相手にしたわけは、明治人の女性に対する倫理観それに金銭を介した情事だから、ビジネスライクに割りきれる。江戸時代の男が吉原など遊郭で遊ぶのと同じ感覚である。ただ荷風の場合には、それだけにとどまらない独特の女性観がある。それは、何人もの男を相手にする玄人の女性を、ミューズ、美神としてみてしまう詩人としての目である。汚れたもののなかに美しさを見る。『墨東奇譚』の玉の井の私娼、お雪はそういうミューズの代表になっている」。そして、荷風の作品は老人文学と定義し、自分を無用の者、世捨人に見立て女性を見る。そこにぎらぎらした欲望をそぎ落とした詩情が生まれると書く。

図録(P..27まで)を読むはこちら→「20180227110540.pdf」をダウンロード

永井荷風展を観に市川市文学ミュージアムを訪ねたプチトリップは、予想外の副産物を生み出した。いろいろと読みたい本が山積みの筆者だが、『断腸亭日乗』をさらに読み進んでみたい。
『墨東奇譚』を青空文庫で読むはこちら→http://www.aozora.gr.jp/cards/001341/files/52016_42178.html「20180227110540.pdf」をダウンロード

松岡正剛の千夜一夜の『断腸亭日乗』http://1000ya.isis.ne.jp/0450.html
なかなかオモロイ。

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