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超人の面白読書 130 小冊子『神保町が好きだ!』第11号 特集 神田神保町書肆街考 3

神保町も来年1月から「神田神保町」と神田が付く地名に変わる。二文字増えていろいろと大変なことも。住所表記を直さないといけないからだ。それはともかく神保町は神保某の地名に由来するが、鹿島茂氏が描き出した界隈は、古本の街の歴史だがそれより何より大学街としての神保町を浮かび上がらせたことだ。社史や大学史それに区史などを駆使して幕末からの神保町の変遷を辿っている。博識な著者の面目躍如といったところ。池上彰ではないが、ああ、そうだったのか、神保町さん、といったところが随所に出てきて興味が尽きずまた、教えられることもしばしば。トレビアの噴出である。
さて、小冊子から筆者の目に留まった箇所を抜き出してみたい。

鹿島 明治42年からある(筆者注: 主語はランチョン)。1972年、3年にランチョンが火事になった時に、僕の友人がその前を通るとビールを持って逃げ出してきた吉田健一に遭遇したそうです(笑)。

森 中央大学の先生でしょう。テストの採点をランチョンの人にやらせて自分はビールを飲んでいたとか(笑)。その話を書いて見せに行ったら、そこだけは書かないでくれと言われたことがありました。

吉田健一は文芸評論家、英文学者、作家でエッセイスト。あのぎょろっとした眼と目立つ鼻、それでいて英国紳士を地で行くような独特な風貌が懐かしい。旧字体で句読点の取り方がユニークな、くねくねした文章を書いた。当時筆者は『ヨオロッパの世紀末』のタイトルの“ヨオロッパ”の表記に不思議な匂いを感じたものだ。

鹿島 (中略)なぜ私立大学ができたかと言うと、東大が明治初年に外国語教育を英語だけに統一する方針を打ち出したからです。フランスやドイツで学んだ人たちの行き場がなくなってしまった。それでフランス留学組が明治大学、ドイツ留学組が日本大学の前身の法律学校を自分たちで作った。一方、英米のロースクールに留学した人たちは、官史養成の東大の法学部とは異なる弁護士養成のためにイギリス留学組が中央大学、アメリカ留学組が専修大学を作った。東大の英語統一が色々なところで余波を与えている。

森 どうして英語に統一したんでしたっけ?

鹿島 それは英独仏の3ヵ国語の授業があれば教師をたくさん雇わなくてはならないから。一人にたくさん授業をやらせる大学経営の簡略化です。これで日本の文化も随分変わったでしょうね。私立大学ができたから良いけれども。

ここには日本の大学の黎明期の話が手短に示されている。大学の成り立ちとつながりが解って面白い。いま大学では英語による授業が盛んになってきているが、その他のドイツ語やフランス語の衰退が叫ばれて久しい。その代わりに中国語の台頭が著しい。ヨーロッパの魅力が薄れているということか。インターネットの急速な普及が英語の世界的な制覇に拍車をかけた格好だ。多様な言語の活用がもっとあってもいい。

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