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超人の面白読書 128  雑誌『うえいぶ』第50号 終刊号(2017年3月31日発行) 10

ここまで書いてきてふとタイトルを読み返した。確かにこの関内幸介氏のエッセイのタイトルは、夏井川のほとりにて―“本郷界隈のことども”―と名付けられている。草野心平家だけの人たちだけではなく、草野家とゆかりのある群像でもあったのだ!それは前にも書いたが、extraordinary family history 傑出した人物の家族史、個性豊かな人たちの物語だろう。否、家族の栄枯盛衰の物語としても読める。江戸後期から追った主に草野心平家には、病気で早死にした人たちなど不幸も相当あってまた、子宝に恵まれず養子縁組をして家督を守ってきた。その血筋の不思議さ、怖さを思わずにはいられない。このファミリーヒステリーには当時の磐城中学を中退している人たちが心平をはじめ何人かいる。一つの枠には収まり切れない、個性豊かで血気盛んな人たちもいたのだ。それにしてもと思う、血筋の不思議さや育てられ方の不思議。草野心平の詩にはこの体験が反映しているようで、中国での詩作とグローバルな詩的世界、アメリカの詩の影響、初期詩集、蛙に託した詩、宇宙観、汎神論、アナーキズム等々の根底には存在のいたずら、虚無感、寂寥感があったように筆者には思われる。また、エネルギッシュで生活力が旺盛(『火の車』や『学校』を営んで生活費を稼いでいたがずっと貧乏だった。『学校』は筆者の20代の頃に何度か訪ねてみようと思ったが実現しないままだった。3年ほど前にようやく新宿ゴールデン街の店を訪ねたが、場所は同じでも店の名前や経営者が替わっていた。実は『学校』は大分前に草野心平のファンだった女性が引き継ぎ、新宿ゴールデン街に移ってしばらく営業していたがその女性も高齢で今は人に譲って引退。現在の店の女性経営者の特別な計らいで筆者は、元『学校』店主と電話で話すことができた。店の看板は草野新平記念館に寄贈したと店主が電話の向こうで語っていた。新宿ゴールデン街の入口の案内板には『学校』の名前だけが残されている)、詩人や作家との交流の広さ、面倒見の良さ、一言でいえば人間的魅力に溢れ、宮澤賢治をはじめ村山槐多や吉野せいなどを発掘した名編集者でありコーディネーターでもあった。
この関内幸介氏のエッセイを注意深く読めばもの悲しいトーンが流れていることも感知できよう。草野心平については今まで数多く書かれてきた。新たな視座で取り組めば生誕120年が草野心平詩にとって大きなエポックになるだろう。その意味でもこのエッセイにある第一級資料の草野氏文書の公開を俟ちたい。

タイトルの本郷界隈は、JR磐越東線「小川郷」駅近くの、福島県いわき市上小川・本郷公民館周辺。貴重な写真も何枚か挿入されている。

追記 草野心平の前橋時代の写真。ここには珍しく心平の奥さんも写っている。なかなかの美人である。若い伊藤信吉もいる。88年前の昭和4年の写真。

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前橋文学館特別企画展
風邪には風ー草野心平の前橋時代
萩原朔太郎記念 水と緑と詩のまち前橋文学館 2011年11月
発行より

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