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超人の書評紹介 2017年7月9日(日)新潟日報読書欄 にいがたの一冊 加藤孝男、 太田昌孝著『詩人 西脇順三郎 その生涯と作品』

『新潟日報』2017年7月9日(日)読書欄に澤正宏氏による、加藤孝男、太田昌孝著『詩人 西脇順三郎 その生涯と作品』が掲載された。西脇順三郎研究の第一人者による書評は、「詩の基層にある絶対的な現実を追体験するところから記された貴重な著作である」と本書の性格を述べたあと、「西脇順三郎の従兄が記した『西脇義一郎日記』への太田昌孝氏の言及は特記すべきである」、また、加藤孝男氏のイギリス留学時代の追跡は、新事実を調査しての圧巻で新鮮と論評した。
澤正宏氏の書評全文は下記の通り。

郷愁の表現 足跡たどり追及

この度刊行された本書は、日本の現代詩のパイオニア(開拓者)の筆頭にあげられる詩人・西脇順三郎(1894~1982年)を紹介、解説する一冊である。
1920年代中頃よりスタートした日本の現代詩をリードしていった詩人だけに、順三郎の詩は難解であり、現時点でノーベル賞候補者に8回も推薦されていたことが分かっているのだが、正式な受賞を逃した一因に詩の難解さがある。加藤孝男、太田昌孝両氏が共著の本書は、こうした順三郎の「詩の基層にある絶対的な現実を追体験する」(あとがき)ところから記された貴重な著作である。
確かに、小千谷が生んだこの偉大な詩人については、詩や詩論が紹介されることに比べれば、「詩の基層」、つまり、順三郎の生活体験から詩を読んでみるという試みは少なかった。本書の最大の特色は、長期にわたって小千谷に深く関わり、とくに小千谷市民でもあった1年間の経験を生かしながら、太田氏が西脇家一門を含めた、順三郎の幼少期を掘り起こしている部分、また、戦後から晩年にかけての郷里・小千谷に対する味わい深い郷愁の表現を紹介している部分などである。ことに順三郎の従兄が記した「西脇義一郎日記」への言及などは特筆すべきであろう。
加藤氏の順三郎の足跡やその詩への探求心も見事な成果を展開している。とりわけ、往路を含めた順三郎のイギリス留学時代の足跡は、新事実を調査しての圧巻で、順三郎の旅路やロンドンでの生活実感が伝わってくる手応えがある。エジプトでのピラミッド見学の検証、ロンドンで下船した埠頭の確定、マージョリ・ビットルとの出会いから恋愛、結婚、彼女を伴っての帰国などの記述は、知られざる事実の満載でとても新鮮である。
本書は「新潟日報」紙に「聖地をたずねて」と題して1年半にわたり連載した記事をまとめたものである。この一冊をあらためて読み返してみると、書物の基本的な骨格として、太田氏の民俗学を重視した小千谷からの視点と、加藤氏の当時のヨーロッパ社会、文学動向をふまえてのロンドンからの視点とが見事に対をなして、順三郎の郷里・小千谷とそこへの郷愁という詩の表現とに向かっていることに気づかされる。
詩人・西脇順三郎をより深く知ることのできる一冊が、順三郎に関する書架に加わったことを喜びたい。

全文を書き写してみて澤正宏氏の批評の確かさを思った。

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