« 超人の面白読書 127 加藤孝男(東海学園大学教授) 太田昌孝(名古屋短期大学教授)『詩人 西脇順三郎 その生涯と作品』 | トップページ | 超人の面白読書 127 加藤孝男(東海学園大学教 授) 太田昌 孝(名古屋短期大学教授) 『詩人 西脇順三郎 その生涯と作品』 3 »

超人の面白読書 127 加藤孝男(東海学園大学教 授) 太田昌 孝(名古屋短期大学教授) 『詩人 西脇順三郎 その生涯と作品』 2

1496376407735.jpg

本書の構成は前半が『新潟日報』の記事で、太田氏の西脇順三郎の故郷小千谷を訪ねるところから始まる。第1章の小見出しを追ってみよう。記念室の神話、花を摘む少年、舟陵の学舎、「西脇本家」の蔵、深地ケはば、従兄・義一郎の日記で終わる。特に出だしの「記念室の神話」は印象深い。執筆者の太田氏は1年間小千谷に住んだ経験からこの手作り感たっぶりの「西脇順三郎記念室」を熟知していて、尚且つこよなく愛していることが短い文章から読み取ることができる。
第2章は、加藤氏執筆による英国留学時代の西脇順三郎の軌跡を追う旅。風のバラ、漱石から20年、人形の夢、ルイスの芸術論、Ambarvalia、緑の夜明け、カフェ・ロイヤル、西海岸の街 オーバン、凹型のパラダイス、鼈甲のような夏、病める時代、シュールレアリスムと英国を訪ねる旅、それは遥か昔大正10年代を彷彿させる心象風景でもある。筆者的には「鼈甲のような夏」に惹かれた。西脇が新婚旅行で2週間過ごしたセルシーの町を訪ねる小文だ。

「やがて/黄色い麦畑/その上にかすかに見える/コバルトの海/車前草(筆者註。読みはおほばこ)の路/風車のまはる田舎で/鼈甲のやうな夏を/過ごした」(『あむばるわりあ』

鼈甲のような夏とは特別な夏と加藤氏は書く。そして風車探しに。当時大分あった風車は今一つしかないと。それにしても「鼈甲のような夏」の喩えは尋常な人間にはなかなか思いつかない。しかし「鼈甲」という言葉の響き、エコーが焦げ茶色の艶々したイメージと相まって素敵。それが夏を形容していて、一瞬どんな夏だろうと思ってしまう。凡人には「鼈甲」の“鼈”の感じが書けるかのほうにむしろ気をとられてしまうのだが。
また、「シュールレアリスム」の項では、『日本のシュールレアリスム(超現実主義)』という本のなかで、澤正宏は、西脇順三郎の帰国と、その後の活動が、日本のシュールレアリスム受容の初期において「大きな事件」であったことに言及しつつ、西脇のシュールレアリスムの作詩法について語る。
西脇が繰り返し述べるのは、人間がもっている習慣化した意識を打ち破り、新たなヴィジョンを描くことであった。そのために、遠く離れたイメージを連結して、詩を作れと言ったことに着目している。(続く)

|

« 超人の面白読書 127 加藤孝男(東海学園大学教授) 太田昌孝(名古屋短期大学教授)『詩人 西脇順三郎 その生涯と作品』 | トップページ | 超人の面白読書 127 加藤孝男(東海学園大学教 授) 太田昌 孝(名古屋短期大学教授) 『詩人 西脇順三郎 その生涯と作品』 3 »

コメント

コメントを書く



(ウェブ上には掲載しません)


コメントは記事投稿者が公開するまで表示されません。



トラックバック

この記事のトラックバックURL:
http://app.cocolog-nifty.com/t/trackback/77059/65357403

この記事へのトラックバック一覧です: 超人の面白読書 127 加藤孝男(東海学園大学教 授) 太田昌 孝(名古屋短期大学教授) 『詩人 西脇順三郎 その生涯と作品』 2:

« 超人の面白読書 127 加藤孝男(東海学園大学教授) 太田昌孝(名古屋短期大学教授)『詩人 西脇順三郎 その生涯と作品』 | トップページ | 超人の面白読書 127 加藤孝男(東海学園大学教 授) 太田昌 孝(名古屋短期大学教授) 『詩人 西脇順三郎 その生涯と作品』 3 »